(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響による個人消費が落ち込むなど経済活動は引き続き停滞し、極めて厳しい状況で推移いたしました。
海外におきましても、欧米ではウィズ・コロナに舵を切り、経済活動を再開させた結果、景気は好調に推移しましたが、中国においては、秋口持ち直しの兆候がありましたが、コロナ感染拡大懸念により、輸出・個人消費に停滞感がありました。
このような状況下当社グループは、主にスマートフォン市場向け、自動車市場向け及び産業用機器市場向けのグローバル事業拡大を進めると共に高度化する市場ニーズへの更なる迅速な対応を目指し、高付加価値新製品の開発・販売・生産体制の強化を推進して参りました。その結果、民生用及び産業用機器市場向けビジネスが堅調に推移したため、当連結会計年度の売上収益は、1,636億71百万円(前年同期比22.6%増)、営業利益は407億65百万円(同46.2%増)、税引前利益は430億81百万円(同52.1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は314億37百万円(同57.8%増)となりました。
セグメントの業績を示すと、以下のとおりであります。
(多極コネクタ)
当社の主力製品群であります多極コネクタは、丸形コネクタ、角形コネクタ、リボンケーブル用コネクタ、プリント基板用コネクタ、FPC(フレキシブル基板)用コネクタ、ナイロンコネクタ等多品種にわたります。
主としてスマートフォン、通信機器、カーエレクトロニクス等の分野から計測・制御機器、FA機器及び医療機器などの産業用機器等の分野まで幅広く使用されているコネクタであり、今後の更なる高度情報通信ネットワーク化社会及び環境を考慮した省エネ化社会の進展とともに需要の拡大が見込まれております。
当連結会計年度は、売上収益は1,474億51百万円(前年同期比23.1%増)、営業利益は377億78百万円(同43.7%増)となりました。
(同軸コネクタ)
同軸コネクタは、マイクロ波のような高周波信号を接続する特殊な高性能コネクタであり、主にスマートフォンやパソコンなどの無線LANやBluetooth通信のアンテナ接続や自動車でのGPSアンテナ接続として、また無線通信装置や電子計測器の高周波信号接続として使用されるコネクタであります。
なお、光コネクタ、同軸スイッチもこの中に含んでおります。
当連結会計年度は、売上収益は114億34百万円(前年同期比20.5%増)、営業利益は28億5百万円(同98.7%増)となりました。
(その他)
以上のコネクタ製品以外の製品としてマイクロスイッチ類及びコネクタ用治工具類を一括しております。
当連結会計年度は、売上収益は47億86百万円(前年同期比11.5%増)、営業利益は1億82百万円(同2.3%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(資金)は、前連結会計年度末と比べて105億57百万円増加して、683億94百万円となりました。
a.営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、443億23百万円の増加(前年同期は358億18百万円の増加)となりました。
これは、税引前利益430億81百万円や減価償却費及び償却費164億7百万円の計上などによる資金増、営業債権及びその他の債権の増加額49億97百万円、棚卸資産の増加額38億18百万円、並びに法人所得税の支払額97億43百万円による資金減などによるものです。
b.投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、108億75百万円の減少(前年同期は207億2百万円の減少)となりました。
これは、有形固定資産の取得による支出138億55百万円による資金減などによるものです。
c.財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、252億49百万円の減少(前年同期は92億78百万円の減少)となりました。
これは、自己株式の取得による支出145億81百万円及び配当金の支払額100億10百万円による資金減などによるものです。
③ 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、現金及び現金同等物、営業債権及びその他の債権の増加等により、前連結会計年度末に比べ242億79百万円増加して3,947億83百万円となりました。負債は営業債務及びその他の債務、未払法人所得税の増加等により83億2百万円増加して527億14百万円となりました。また、資本合計は利益剰余金の増加、在外営業活動体の換算差額の増加等により159億77百万円増加して3,420億69百万円となりました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は86.6%となり、前連結会計年度末と比べ1.4%減少しました。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
多極コネクタ |
152,399 |
19.8 |
同軸コネクタ |
11,383 |
23.0 |
その他 |
3,809 |
7.1 |
合計 |
167,591 |
19.7 |
(注)金額は、販売価格によっております。
b.受注状況
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
多極コネクタ |
182,459 |
42.1 |
63,933 |
121.0 |
同軸コネクタ |
13,874 |
44.8 |
4,507 |
118.2 |
その他 |
5,302 |
21.2 |
913 |
129.7 |
合計 |
201,635 |
41.6 |
69,353 |
120.9 |
(注)多極コネクタおよび同軸コネクタの受注残高が前年同期比で増加しているのは、民生用及び産業機器用の電子部品の需要が堅調に推移していることによるものです。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
多極コネクタ |
147,451 |
23.1 |
同軸コネクタ |
11,434 |
20.5 |
その他 |
4,786 |
11.5 |
合計 |
163,671 |
22.6 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態および経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態および経営成績等につきましては、事業全体で見ますと対前年同期にて増収増益となりました。セグメント別においても、すべてのセグメントで増収増益となりました。当社グループは、中期経営計画「G-WING」において、コンシューマ、産機、自動車の強い3本柱を形成することで、高収益体制を維持しつつ、中長期的に売上を伸長させていく計画を立てております。現在当社グループが置かれている状況はこの3本柱を中長期のビジネス基盤として確立させるための先行投資を行っている段階であり、投資の回収に向けて進んでまいります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としましては、国内外の経済動向の変化が挙げられます。現時点では特にスマートフォン市場の動向が当社グループの業績に大きな影響を与えております。当社グループとしましては、「G-WING」の3本柱を強固にしていくことでスマートフォン市場への依存率を減少させてまいります。
その他の当社グループの経営成績に影響を与える要因につきましては、「第2 事業の概況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、親会社所有者帰属持分比率が86.6%と十分な資本を維持しており、外部からの借入金はありません。
利益配分につきましては、経営方針に基づき、経営基盤を強化し、成長路線の確立を図るとともに、財務体質をより一層充実させ、安心される、また期待される企業を目指して安定した配当を継続していくことを基本とし、業績及び経営環境等を総合的に勘案して実施していくことが肝要と考えております。また、株主還元の充実の視点から、資本効率の向上を図るため自己株式の取得もあわせて実施していきたいと考えております。
なお、当社は自己株式の保有については、発行済株式総数の5%程度を上限とし、それを超過する部分は、原則として毎期消却する旨を自己株式の保有・消却に関する基本方針としております。
また、内部留保資金につきましては、中長期的な視野に立って、今後ますます進展する技術革新に対する研究開発投資、グローバル化に伴う設備投資及び経営環境の変化に対応した機動的なM&Aなどに備えてまいりたいと考えております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、IFRSベースの営業利益率を重視した経営を行っております。当連結会計年度における営業利益率は24.9%となり、前連結会計年度の20.9%を大きく上回る結果となっております。引き続き、高い営業利益率を安定的に生み出せる体制づくりを行ってまいります。
また、当社グループは中長期的に資本コストを上回るROE (自己資本利益率) の達成を目指しており、2025年度までに収益性の改善に加えて株主還元を進めることでROE10%の達成を目標としております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローの合計が334億48百万円となっており、成長と安定のバランスを図っております。詳細につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの資本の財源および資金の流動性につきましては、親会社所有者帰属持分比率は86.6%と高い水準を維持しており、資金の調達を行わずに事業に必要な資金の流動性を確保していると判断しています。
なお、内部留保資金につきましては、中長期的な視野に立って、今後ますます進展する技術革新に対する研究開発投資、グローバル化に伴う設備投資および経営環境の変化に対応した機動的なM&Aなどに備えるとともに、安定した配当を継続していくことを基本としています。
③ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって必要となる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針、4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。金融商品の公正価値及び棚卸資産の正味実現可能価額は社内外の環境の変化により変動する可能性は高いと考えておりますが、当社グループにおける連結財務諸表に大きな影響を与えるほど変動する可能性は極めて低いと考えております。
また、新型コロナウイルス感染症の今後の影響につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりです。
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