事業等のリスク

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年3月24日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループでは、代表執行役CEOがリスク管理の最高責任者であるチーフ・リスクマネジメント・オフィサーとして、リスク管理を統括するリスクマネジメント委員会を設置し、リスクの把握・対策の実施・被害の最小化に向けた取り組みを継続的に行っています。

 以下のリスクについては、リスクの大きさ、頻度、継続性の観点から分析評価し、その対応としてリスクの軽減、移転後の残余リスクを把握し、その大きさの絶対的な順序ではありませんが、比較的大きいと考えるリスクを上位に記載しました。

 

・車載事業、大口顧客への依存度が高い

 当社グループの売上収益のうち、約60%が車載関連のビジネスであり、車載関連の顧客への依存度が高くなっています。また、上位10社が占める当社グループの売上比率は約44%であり、当該顧客の動向により売上収益が大きく変動する可能性があります。

 欧米や中国をはじめ、世界中が地球環境保全、省エネ化の動きを強め、ガソリン車からEV/xEVへとシフトする機運の中、車載関連の売上収益比率が高いことは当社グループの強みでもあります。しかし、新車販売台数の低迷等車載関連の事業環境の変化等によって当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

 当社グループは、大口顧客グループとの長期にわたる緊密な取引関係を通じ、生産及び販売の見通し、事業戦略に関する方向性を共有することで、当社グループの投資・事業戦略の判断に活用し、業績向上に取り組んでいます。

 

・技術革新と価格競争、競合環境の変化

 当社グループ製品は、コイルとその応用部品であります。現在までのところ民生機器、産業機器及び車載機器の電源周りに多く使用されています。特に車載機器は、使用されるコイルの数が著しく多くなることが予想され、今後拡大が予想されるEV/xEVにおいても数多く使用されることが予想されます。その結果、当社グループの製品に求められる技術要素は、今まで以上に高い耐電圧の要求を満たし、小型化を実現し、高い品質基準を確保することが求められています。当社グループとしましては、今まで培った要素技術をさらに強化し、顧客に当社グループの製品を選んで頂けるように対応していきます。

 EV/xEV化の市場が拡大していることから競合他社も多く参入してきています。約10年前より、中国・台湾企業が参入してきており、価格についても競争環境が厳しくなってきています。

 当社グループとしては、製品品質の向上とグローバル体制の強化を図り競合他社との差別化を図っています。また、顧客の初期開発段階から当社グループが参入し、顧客と共に製品開発を行っていくというビジネスモデルの構築も進めています。家電製品市場では、顧客の製品採用基準が、製品品質よりは価格重視へ変容してきていることから、最適価格での提供を目指し、製品設計は当社グループで担当し、製造委託先の活用も行い厳しい価格競争においても最適な販売価格で対応できる体制の構築も行っています。

 

・品質管理

 当社グループは常に製品の品質向上に尽力し、製品の品質確保に万全を期していますが、当社グループ製品の要求仕様への不一致や欠陥により供給先である顧客の製造ラインが停止する事態や、欠陥を含んだ当社グループの製品を利用した電子機器に不具合が生じる事態も考えられます。欠陥またはその他の問題が発生した場合は、当社グループの売上収益の減少、市場シェアの低下、当社グループブランドに対する信頼または評価の低下、市場認知度、開発などへの重大な影響が生じる可能性があり、また顧客からの法的手段による賠償の請求の可能性もあり、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

・銅価格、原材料価格等の変動、インフレ等による物流費、エネルギー価格の高騰

 当社グループは多くの原材料を外部調達しており、主要な原材料である銅、鉄、原油等の価格は国際市況に連動しています。その購入価格を決定する際の取引価格は、国際的な需給だけでなく投機的取引の影響も受けながら常に変動していて、市況の変動に伴い業績に影響を与える可能性があります。

 また、経済状況により、物流コンテナ不足や世界の港湾における流通の混乱からの物流費高騰や、急激なインフレによる原油・電力等のエネルギー価格の高騰は当社グループの業績に影響をもたらす場合があります。

 当社グループでは価格変動の激しい銅価格の変動によるリスクを最小限に抑えるため、計画的に安定調達を行うとともに、銅価格にスライドした販売価格の設定を行っています。また、顧客との契約に銅価格連動の仕組みを織り込む等価格変動による影響を最小限にするよう努めていますが、製品価格への転嫁が困難な場合や相場が大きく下落する局面では損失が発生し、当社グループの業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、地産地消を進め、物流費を抑制するとともに、再生可能エネルギー等の活用で急激なインフレによるエネルギー価格高騰の影響を最小限に留めるための取組みを進めていますが、その進捗によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

・サイバーセキュリティ

 コンピューターウイルスの高度化や巧妙化が進み、ますます脅威が高まっているサイバー攻撃等により、当社グループの技術上、営業上等の秘密情報が流出や改ざん、生産設備等が被害を受け生産に影響が生じる等のリスクがあります。また、盗難・紛失などを通じて第三者が不正流用する可能性もあります。

 当社グループではInformation Security Officeを組織し、セキュリティ方針や計画を策定しています。ウイルス対策ソフトの利用、強固なパスワードの利用、送信ドメイン認証の活用、多要素認証の導入、各システムへのアクセス権限管理に加え、フィッシング対策などの啓発を目的とした継続的なe-ラーニング、入社時研修やBCP対策を行っています。

 時流を踏まえて今後も必要な対策を行ってまいりますが、不測の事態によってこれらの情報の漏洩やインシデントが発生する可能性を完全に回避することは困難であり、また想定した防御レベルを上回る技術によるサイバー攻撃等などにより、当該情報の破壊・改ざん・流出・社内システム停止等が引き起こされる可能性もあります。このような事態が発生した場合は、追加対応や損害賠償等の多額の費用負担により当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・大規模災害

 当社グループは、中国・アジアをはじめとして海外にも生産拠点を持ち、各国の営業拠点等を通じて製品をグローバルの顧客に供給していますが、大地震、洪水、津波、竜巻などの自然災害、感染症などの疾病の流行、戦争及びテロ、内乱、現地従業員のストライキ等の労働問題、電力やエネルギーの使用制限に加え、近年の気候変動に伴う想定を超える災害の大規模化や、これまでに類を見ない、対応策に決め手のない感染症の発生などによる広い範囲での社会機能の停止などの発生も考えられます。これらが発生した場合には、原材料や部品の調達、生産、販売に遅延や停止を生じる可能性があり、そうした混乱などが当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、2013年6月にドイツにおいてドナウ川の氾濫により工場の一部が冠水し、操業を停止したことがありましたが、現在は災害防止対策として洪水から工場全体を護るため洪水防護壁を設けております。

 

・新型コロナウイルス感染症の影響

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行は感染の収束時期が見通せない状況です。感染蔓延はグローバルに事業展開する当社グループの事業活動に大きく影響しています。

 当社グループまたは当社グループの事業活動に関係する調達、生産、物流等の取引先企業において、感染が拡大した場合、原材料の調達ならびに製品生産の遅れ、顧客企業の事業活動が停滞し大きく需要が減少することが想定され、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは新型コロナウイルス感染症の感染予防、感染拡大防止のため、在宅勤務や時差出勤の活用、不要不急の出張の禁止やWeb会議システムの積極的活用等により社員の健康と安全を確保するとともに、当社グループの事業活動への影響が出来るだけ小さくなるよう取り組みました。

 製造拠点を除く拠点については、新型コロナウイルス感染拡大が発生したとしても継続した事業運営が行える環境を整えました。当社グループの製造拠点は、各国政府のロックダウンが行われない限り、継続した事業運営が行えるよう、徹底した感染予防措置を講じるとともにより一層の強化をしております。

 また、新型コロナウイルス感染症の拡大による業績への影響を最小限に留めるため、当社グループでは、銀行団のオープン・コミットメント・ラインを増額する等、不確実性の増大により大幅な業績変動や急な資金需要に備えて調達余力を充実させて、適切な手元資金を保有し、資金流動性を確保することによる安定的な事業運営の中で、固定費、経費等の削減に取り組み業績の改善を進めています。

 

・公的規制とコンプライアンス

 当社グループは、国内および諸外国・地域において、法規制や政府の許認可等、様々な公的規制の適用を受けています。こうした公的規制に違反した場合、監督官庁による処分、訴訟の提起、さらには事業活動の停止に至るリスクや企業ブランド価値の毀損、社会的信用の失墜等のリスクがあります。

 当社グループでは、公的規制の対象領域ごとに主管する部門を決めて対応しています。また、公的規制に対応した社内ルールを定め、未然に違反を防止するための対応をとっています。これらの取組みに加え、法令遵守のみならず、役員・従業員が共有すべき倫理観、遵守すべき倫理規範等を「スミダの経営に関する諸原則・行動規範」として制定し、当社および関係会社における行動指針の遵守ならびに法令違反等の問題発生を全社的に予防するとともに、コンプライアンス上の問題を報告する内部通報制度を設けています。また、法令順守の周知徹底の機会を設けると共に、カルテル等の反競争的行為や贈賄をはじめ、企業倫理・コンプライアンスに関して、役員および従業員への定期的な研修等を行っています。しかし、グローバルに事業を展開するなかで、国や地域において、公的規則の新設・強化及び当社グループが想定しない形でこれらが適用されること等により、当社グループが公的規制に抵触することになった場合には、事業活動が制限され、公的規制の遵守に係る費用が増加する等、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

・中国の賃金上昇

 当社グループは、日本のほか、アジア、ヨーロッパ、北米等に生産拠点を有し、グローバルに事業展開していますが、中国での生産が相当程度占めています。

 中国で行う当社グループの生産は労働集約的生産の側面があり、人件費、社会保険料の上昇や制度変更等による生産コストアップが当社グループの事業展開、業績に影響を与える可能性があります。そのため、中国における生産においては自動化を進めることで従業員数を削減し、労働集約的生産はベトナム等に移管することにより中国における賃金上昇の影響を最小限に留めるよう取り組んでいます。

 

・M&Aにより認識したのれんの減損リスク

 当社グループは技術力の強化や販売網の拡充を目的に、当社グループ以外の会社との事業提携、合併および買収(以下M&A等)を行うことにより、中期経営計画の達成を目指しています。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の収束の兆しが見えないことから、市場環境の不確実性を考慮し、中期経営計画ではM&A等を数値目標に織り込みませんでした。しかしながら、M&A等対象会社の選定と検討は積極的に継続し、良い候補先が見つかった場合は、実行していきます。

 M&A等の実施にあたっては事前に相乗効果の有無を見極めてから実施を決定し、完了後は相乗効果を最大にするように経営努力をしています。しかしM&A等の完了後に、対象会社との経営方針のすりあわせや業務部門における各種システムおよび制度の統合等に当初想定以上の負担がかかることにより、予想されたとおり相乗効果が得られない可能性があります。また、M&A等に係る費用等が、一時的に当社グループの経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。

 当社グループはM&A等に伴うのれん及びその他の無形資産などの資産を有しています。のれんおよびその他の耐用年数を確定できない無形資産についても、少なくとも年に一度、あるいは減損の兆候が認められる場合はその都度減損テストを行っています。M&Aにより発生したのれんと耐用年数を確定できない無形資産は年次で減損テストを実施していますが、拡販施策に伴う将来収益拡大の計画は不確実性を伴い、予想した相乗効果が得られない場合、減損損失の発生により財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 なお、2021年12月末現在におけるのれんの総額は4,425百万円となっています。

 

・地政学上のリスク(米中経済摩擦等)

 当社グループは、中国、ヨーロッパ等海外に多くの生産拠点を持ち、海外営業拠点を通じて製品をグローバルの顧客に供給しています。そうした中、米中貿易摩擦、米国国防権限法の動向等より生産、物流、営業活動が制限を受け、顧客への製品供給に支障をきたす場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、各国の関税の引上げや安全保障貿易管理に基づく輸出規制、新興技術等に対する取引制限等の政策に対して分析を行い、必要に応じて取引形態やサプライチェーンの見直し等も行うことにより、事業への影響の低減を図っています。また、複数の生産拠点で製品を生産することでリスクの分散を図っています。

 中長期的には、製造拠点と販売拠点を同一地域にて対応できるよう地産地消の方針で製造拠点を見直していきます。輸出拠点となる中核製造拠点は、今後、上記のようなリスクを回避できるよう、中国依存率を低下させていくため、タイ・ベトナムにおいての製造能力を増強していく予定です。

 

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