(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当企業集団は、2021年度以降のV字回復を可能とし、将来的な発展の足がかりとすべく、会社の体質強化(収益力を強化させるビジネスモデルへの転換)を目指して2023年3月期を最終年度とする「中期経営計画2023」をスタートさせており、その2年目を終了しました。
当連結会計年度において、前年度より継続しているコロナ禍の影響は、新たな変異株の流行の波によって大きく変動しましたが、ワクチン接種など対策が進む先進諸国では薄れつつあり、経済活動も活発化してきております。しかしながら、電子部品等原材料の供給不足・高騰は生産面で大きなマイナス影響を及ぼしており、加えて物流の遅延やエネルギー価格高騰、更にはロシアによるウクライナ侵攻が始まり、世界経済に影響を及ぼす懸念材料が増大しました。
当企業集団は、電子部品等原材料の入手難の影響を年度後半から強く受け、一部製品の減産を余儀なくされたことから、その影響を最小限に留めるべく、販売チャネルとの連携強化、代替製品の販売促進、調達方法の多様化を進めるとともに、新規分野である5G関連機器の開発、ロボット化等の業務効率化に注力しました。
品目別では、欧米地域でレジャー用途需要が活発化したことで海上用無線通信機器が増収となり、新型コロナウイルス感染拡大前を超える水準まで回復しました。陸上業務用無線通信機器は、海外市場において経済活動の回復により増収となりましたが、国内市場では前年度第4四半期の防災無線並びにオリンピック需要の反動から減収となったことで、品目全体としても減収となりました。アマチュア用無線通信機器は、減産の影響から旺盛な需要に対応できず前年度に比べ伸び悩みました。
地域別では、先進国を中心に経済活動が活発化しており、欧米地域では新型コロナウイルス感染拡大前の水準を上回るまでに売上が回復しました。アジア・オセアニア地域においても、主要国で増収となりました。国内市場は、前年度第4四半期における特需の反動から減収となりました。
<参考>地域別売上高
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前連結会計年度 (自2020年4月1日 至2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自2021年4月1日 至2022年3月31日) |
増減率 (%) |
|||
金額 (百万円) |
構成比 (%) |
金額 (百万円) |
構成比 (%) |
|||
国内 |
12,247 |
43.8 |
10,378 |
36.7 |
△15.3 |
|
|
北米 |
7,409 |
26.5 |
8,606 |
30.5 |
16.2 |
欧州(EMEA) |
4,038 |
14.5 |
4,467 |
15.8 |
10.6 |
|
アジア・オセアニア |
3,611 |
12.9 |
3,853 |
13.6 |
6.7 |
|
その他(含む中南米) |
634 |
2.3 |
971 |
3.4 |
53.0 |
|
海外計 |
15,693 |
56.2 |
17,898 |
63.3 |
14.0 |
|
合計 |
27,941 |
100.0 |
28,277 |
100.0 |
1.2 |
これらの結果、売上高は282億7千7百万円(前年同期比1.2%増)、電子部品等原材料の高騰から売上総利益は113億7千1百万円(前年同期比2.6%減)となりました。試験研究費、支払手数料等の増加から販売費及び一般管理費が103億1千3百万円(前年同期比5.4%増)となったことで、営業利益は10億5千8百万円(前年同期比44.0%減)、為替差益の発生により経常利益は15億7千4百万円(前年同期比30.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は10億9千3百万円(前年同期比37.0%減)となりました。
また、当該期間に適用した米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ111.56円及び130.45円であり、前年同期に比べ対米ドルでは5.4%、対ユーロでは5.8%の円安水準で推移しました。
|
売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
親会社株主に帰属する当期純利益 (百万円) |
当連結会計年度 (2022年3月期) |
28,277 |
1,058 |
1,574 |
1,093 |
前連結会計年度 (2021年3月期) |
27,941 |
1,889 |
2,259 |
1,736 |
増減率 |
1.2% |
△44.0% |
△30.3% |
△37.0% |
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(セグメント業績については、58ページ(セグメント情報等)にある所在地別区分で記載しており、前記「地域別売上高」とは異なります。)
a. 日本[当社、和歌山アイコム㈱、アイコム情報機器㈱]
《国内市場》主力の陸上業務用無線通信機器は、官庁案件の納入継続、大イベントであるオリンピック開催によるIP無線の回線数増が寄与したものの、前年度第4四半期の防災無線並びにオリンピック特需には及ばず減収となりました。
《海外市場》電子部品等原材料の入手難の影響を受けたものの、欧州地域では、経済活動が活発化したことから需要が回復し増収となりました。アジア地域でも、主要国で徐々に需要が回復しつつあり増収となりました。
これらの結果、本セグメントの外部顧客に対する売上高は155億9千万円(前年同期比7.9%減)となりました。
利益面では、減収により営業利益は5億4百万円(前年同期比69.4%減)となりました。
b. 北米[Icom America,Inc.、ICOM CANADA HOLDINGS INC.、ICOM DO BRASIL RADIOCOMUNICACAO LTDA.、ICOM CENTRAL AMERICA,S.DE R.L.DE C.V.]
電子部品等原材料の入手難の影響を受けたものの、経済活動の正常化が進展し、カナダ、中南米の需要も旺盛となったことから全品目において増収となり、本セグメントの外部顧客に対する売上高は95億9千6百万円(前年同期比18.8%増)となりました。
利益面では、増収により営業利益は2億5百万円(前年同期比120.8%増)となりました。
c. ヨーロッパ[Icom(Europe)GmbH、Icom Spain, S.L.]
コロナ禍の影響も縮小し需要は順調に回復したことから、海上用無線通信機器は増収となりましたが、電子部品等原材料の入手難の影響を大きく受けた陸上業務用無線通信機器及びアマチュア用無線通信機器はいずれも減収となりました。為替レートが対ユーロで前年同期に比べ5.8%の円安水準で推移したことから、本セグメントの外部顧客に対する売上高は18億8千5百万円(前年同期比3.6%増)となりました。
利益面では、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は1億2千2百万円(前年同期比26.8%減)となりました。
d. アジア・オセアニア[Icom(Australia)Pty.,Ltd.、PURECOM CO.,LTD、ICOM ASIA CO.,LTD]
主力市場となるオーストラリアにおいて、経済活動が活発化したことにより陸上業務用無線通信機器及び海上用無線通信機器が増収となりました。アマチュア用無線通信機器は、電子部品等原材料の入手難の影響を受け大きく減収となりました。また、ベトナム現地法人も商流を変更したことから減収となりました。この結果、本セグメントの外部顧客に対する売上高は12億4百万円(前年同期比7.6%増)となりました。
利益面では、ベトナム現地法人の設立により販売費及び一般管理費が増加したことで営業利益は4千6百万円(前年同期比14.0%減)となりました。
②財政状態の状況
(資産)
総資産は前連結会計年度比17億円増加し、633億6千9百万円となりました。
主な内訳は、棚卸資産(合計)の増加16億7千7百万円、投資有価証券の増加10億9百万円、現金及び預金の増加7億5千3百万円及び流動資産のその他の増加2億1百万円の増加要因と、受取手形及び売掛金の減少12億3千9百万円、有価証券の減少3億2百万円、機械装置及び運搬具の減少2億1千5百万円、繰延税金資産の減少6千5百万円及び投資その他の資産のその他の減少6千4百万円の減少要因によるものであります。
なお、流動資産のその他の増加2億1百万円の主な内訳は、未収消費税等の増加1億7千6百万円の増加要因によるものであります。
また、投資その他の資産のその他の減少6千4百万円の主な内訳は、長期前払費用の減少6千6百万円の減少要因によるものであります。
(負債)
負債合計は前連結会計年度比4億8千2百万円増加し、56億3千2百万円となりました。
主な内訳は、買掛金の増加6億8千2百万円、未払金の増加1億7千6百万円及び賞与引当金の増加6千8百万円の増加要因と、未払法人税等の減少3億3千6百万円及び退職給付に係る負債の減少1億7千万円の減少要因によるものであります。
(純資産)
純資産合計は前連結会計年度比12億1千8百万円増加し、577億3千6百万円となりました。
主な内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益による増加10億9千3百万円、為替換算調整勘定の増加6億6千2百万円、その他有価証券評価差額金の増加1億4千2百万円及び退職給付に係る調整累計額の増加3千6百万円の増加要因と、剰余金の配当による減少7億1千7百万円の減少要因によるものであります。
以上の結果、自己資本比率は91.6%から91.1%に低下いたしました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ16億3千6百万円減少し、224億8千9百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により増加したキャッシュ・フローは、20億8千4百万円(前年同期は29億7千1百万円の増加)となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益14億8千4百万円、売上債権の減少14億2百万円、減価償却費の計上10億1千3百万円及び仕入債務の増加6億7千9百万円、一方で主な減少要因は、棚卸資産の増加14億5千6百万円、法人税等の支払額6億7千6百万円、営業活動その他による減少2億6千1百万円及び受取利息及び受取配当金1億1千5百万円であります。
なお、営業活動その他による減少2億6千1百万円の主な内訳は、未収消費税等の増加1億7千6百万円の減少要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少したキャッシュ・フローは、34億3千5百万円(前年同期は7億3千2百万円の増加)となりました。主な減少要因は、預入期間3ヶ月超定期預金の増加23億7百万円、投資有価証券の取得による支出11億3千7百万円及び有形固定資産の取得による支出6億3千万円、一方で主な増加要因は、有価証券の売却による収入3億円、投資有価証券の売却による収入2億4千7百万円及び利息及び配当金の受取額1億3千3百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により減少したキャッシュ・フローは、7億1千7百万円(前年同期は19億4千1百万円の減少)となりました。主な内訳は、配当金の支払額7億1千7百万円であります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当企業集団の生産はすべて日本セグメントにおいて行っており、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
日本(百万円) |
20,281 |
80.5 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.商品仕入実績
金額的重要性が乏しいため、記載を省略しております。
c.受注実績
当企業集団の製品は、需要予測による見込生産を行っており、原則として受注生産は行っておりません。
d.販売実績
当連結会計年度における報告セグメントごとの販売実績はセグメント情報等をご参照下さい。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当企業集団の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。
①経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況をご参照願います。
なお、当連結会計年度の連結業績目標の達成状況は次のとおりであります。
需要は堅調に回復するも、電子部品等原材料の入手難から、製品供給に制約が生じることを想定していたため、売上高も、前連結会計年度に比して大幅な減収を計画しておりましたが、代替製品の顧客への推奨や、市場流通部品の確保に努めたことが功を奏し、計画比17億7千7百万円増(6.7%増)の282億7千7百万円となり、前連結会計年度売上高279億4千1百万円を上回ることができました。
利益面では、売上高が計画を上回ったことで、営業利益は計画比1億9千8百万円増(23.1%増)の10億5千8百万円となりました。又、営業利益率は計画を上回る3.7%となりました。
指標 |
2022年3月期(計画) |
2022年3月期(実績) |
2022年3月期(計画比) |
売上高(百万円) |
26,500 |
28,277 |
+1,777( 6.7%増) |
営業利益(百万円) |
860 |
1,058 |
+198(23.1%増) |
営業利益率(%) |
3.2 |
3.7 |
+0.5 |
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末において、当該項目に記載すべき資金の支出予定はなく、事業運営上必要な資金につきましては自己資金により賄う予定であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当企業集団の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって適用した重要な会計方針および見積りの方法につきましては、第5「経理の状況」1「連結財務諸表」「注記事項」(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
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