(経営成績等の状況の概要)
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(1)経営成績の状況
当事業年度における我が国経済は、数度にわたる新型コロナウイルス感染症の拡大の波とそれに対する緊急事態宣言等の対応策により、景気の悪化と持ち直しが繰り返されましたが、年度末にかけて景気は緩やかな回復を見せてきました。しかし、ウクライナ情勢の深刻化によるエネルギーなど原材料価格の高騰に加え、円安も進行し、物流費等の諸費用が上昇しています。新型コロナウイルス感染症の発生を契機に生じた半導体やその他部材の不足が続いており、これらの問題の進展次第では、今後の景気の回復が遅れることが懸念されています。
当社は、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の黎明期よりIoT事業に注力してきました。
IoTはこれからの社会基盤になる技術の一つであり、従来からIoTの利用を推進してきた企業では研究・実証の段階を終え、実運用が始まっています。今後は、多くの自治体や一般企業、事業体において導入が進み、市場が拡大していくものと考えられます。当事業年度は、新型コロナウイルス感染症の影響と世界的な半導体の供給不足により、IoT市場においても経済活動・企業活動の停滞が見られました。しかし、一方ではこれを契機として、産業界全般にわたるテレワークの普及、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速しています。これは当社の従来からの強みであるネットワーク製品とその技術が、来るべきIoT、DXにまたがる分野において活躍する機会でもあります。
このような状況のもとで、当社は「自由で安全なコネクテッドワールドの実現」をミッションとして、コアコンピタンスであるIoT事業を中核に、事業の拡大と推進を行っています。現事業領域であるIoT事業については、自社製品・自社サービス分野において、顧客のニーズや課題に対してより高度かつ柔軟に応えるため、パートナー企業との連携を強化しています。センサー製品を提供する企業との「IoTセンサー・デバイス パートナープログラム」に加え、IoTをはじめとするシステム導入や販路に強みを持つ企業との販売面でのパートナーシップを強化し、当社製品の活用場面や販路を拡大しています。
また、新規領域として、データ伝送・流通分野を位置づけ、自社技術を核としたアライアンスによる新たな成長を目指した取り組みを開始しました。IoTにおける分散型台帳技術(いわゆるブロックチェーン)の適用可能性について着目し、ブロックチェーンを利用したIoTのデータ流通に関する特許を取得し、実用化に向けて取り組んでいます。2020年に開始した慶應義塾大学SFC研究所とのIoTデータ交換のプロトコル策定に関する共同研究を継続するとともに、ブロックチェーンを使用したIoTデータ流通プロトコル及びそのサービスを発表し、初期顧客への実証システムの導入を開始しました。
当事業年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により一部商談の遅れと、半導体部品の供給の遅れや部材価格の上昇があったものの、顧客需要は比較的堅調に推移し、IoT事業の売上高は前年同期を上回りました。一方、前年同期に急増した顧客のテレワーク需要やリモート化需要が一段落したため、一般商材の売上高は減少しました。一般商材の売上の減少により、売上高全体は前年同期に比べ減少しましたが、利益率の高いIoT事業の売上が増加したため、売上総利益額は上回りました。
販売費及び一般管理費は大幅な節減を図り、前年同期に比べて減少いたしました。
この結果、当事業年度の売上高は1,219百万円(前年同期比14百万円・1.2%減少)、営業損失は56百万円(前年同期は営業損失119百万円)、経常損失は57百万円(前年同期は経常損失120百万円)となりました。また、2016年に当社取締役及び当社従業員に対しストックオプションとして発行した新株予約権の行使期間満了に伴い、新株予約権戻入益29百万円を特別利益に計上し、当期純損失は33百万円(前年同期は当期純損失124百万円)となりました。
主要品目別の売上高については、次のとおりであります。
① 自社製品コンピューター
マイクロサーバーについては、当社が注力している「OpenBlocks IoTシリーズ」が、新型コロナウイルスの影響はあるものの、顧客のIoT実運用化が進み出したことから、前年同期と比べ増加しました。この結果、自社製品コンピューター全体の売上高は、前年同期を上回る679百万円(前年同期比97百万円・16.8%増加)となりました。
② コンピューター関連商品
一般商材については、前年同期に急増したネットワーク関連商品などの需要が一段落したことにより、コン
ピューター関連商品全体の売上高は前年同期に比べて減少し、300百万円(前年同期比75百万円・20.1%減少)となりました。
③ サービス・その他
IoTのリモートマネジメントサービスの受注は堅調なものの、一般商材に係る保守・サポートが減少したため、当事業年度のサービス・その他全体の売上高は前年同期に比べ減少し、238百万円(前年同期比36百万円・13.2%減少)となりました。
なお、上記の各品目に含まれるIoT事業(マイクロサーバー製品、IoTサービス、その他サービス)に係る売上高及び売上総利益は前年同期に比べて増加し、売上高は808百万円(前年同期比113百万円・16.4%増加)、売上総利益は356百万円(前年同期比61百万円・20.9%増加)となりました。
(2)財政状態の状況
当事業年度末の資産につきましては、現金及び預金が8百万円、棚卸資産が49百万円減少しましたが、売掛金及び契約資産の増加33百万円、前渡金の増加11百万円、流動資産のその他の増加19百万円等により、前事業年度末に比べ5百万円増加し、755百万円となりました。
負債につきましては、買掛金の減少29百万円等により前事業年度末に比べ30百万円減少し、287百万円となりました。
純資産につきましては、当期純損失の計上により33百万円、新株予約権の失効により29百万円減少しましたが、自己株式の処分により98百万円増加した結果、前事業年度末に比べ35百万円増加し467百万円となりました。
なお、2022年3月30日開催の臨時株主総会における決議に基づき、資本金1,097百万円減資してその他資本剰余金に振り替え、さらに振り替え後のその他資本剰余金のうち795百万円を繰越利益剰余金に振り替え欠損を填補いたしましたが、これによる純資産の額の変動はありません。
(3)キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ8百万円減少し、309百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前当期純損失31百万円及び新株予約権戻入益29百万円の計上のほか、売上債権及び契約資産の増加33百万円、仕入債務の減少29百万円等の支出要因のほか、棚卸資産の減少49百万円などの増加要因がありました結果、営業活動により使用した資金は104百万円となりました。(前年同期は12百万円の使用)
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出により、投資活動により使用した資金は4百万円となりました。(前年同期は3百万円の使用)
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
自己株式の売却による収入により、財務活動により獲得した資金は98百万円となりました。(前年同期は資金の増減なし)
(4)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
品目 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
自社製品コンピューター(千円) |
446,120 |
111.6 |
合計(千円) |
446,120 |
111.6 |
(注)1.当社は、コンピューター関連製商品とサービス等を提供する単一セグメントであるため、品目別の記載をしております。
2.自社製品コンピューター以外の品目については、記載を省略しております。
② 受注実績
品目 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|||
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
自社製品コンピューター |
678,274 |
102.8 |
167,687 |
99.1 |
コンピューター関連商品 |
308,867 |
88.1 |
25,925 |
144.5 |
サービス・その他 |
255,824 |
90.3 |
128,221 |
115.2 |
合計 |
1,242,966 |
96.1 |
321,834 |
107.9 |
(注)当社は、コンピューター関連製商品とサービス等を提供する単一セグメントであるため、品目別の記載をしております。
③ 販売実績
品目 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
自社製品コンピューター(千円) |
679,780 |
116.8 |
コンピューター関連商品(千円) |
300,879 |
79.9 |
サービス・その他(千円) |
238,865 |
86.8 |
合計(千円) |
1,219,525 |
98.8 |
(注)1.当社は、コンピューター関連製商品とサービス等を提供する単一セグメントであるため、品目別の記載をしております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
なお、前事業年度の株式会社インターネットイニシアティブに対する販売実績は総販売実績の100分の10未満のため、記載を省略しております。
相手先 |
前事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
ダイワボウ情報システム株式会社 |
191,197 |
15.5 |
168,779 |
13.8 |
株式会社インターネットイニシアティブ |
- |
- |
154,728 |
12.7 |
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は、IoT市場に注力することにより収益を拡大し、経常損益の黒字化を目指しております。
「(経営成績等の状況の概要)(1)経営成績の状況」に記載のとおり、当事業年度は前年度に引き続いて新型コロナウイルス感染症の影響により一部商談の遅れと、半導体部品の供給の遅れや部材価格の上昇がありました。そのような状況において、すでに本格展開にある顧客や検討を終えて実用化の準備を進めている顧客は、コロナ禍にもかかわらず概ね計画通りに事業を進めたことから、比較的堅調に推移し、IoT事業の売上高は期初の予想を達成することができました。一方、前年度に急増したテレワークやリモート化需要のピークは当事業年度には一段落し、一般商材などIoT事業以外の売上高は期初の予想に達せず、全体の売上高も期初の予想を下回る結果となりました。販売費及び一般管理費については、大幅な節減を図ったものの売上高の減少を補えず、営業利益及び経常利益とも期初の予想を下回る結果となりました。当社は、引き続きIoT事業に経営資源を集中し、今後、需要が本格的に見込まれるIoT市場に向けた製品とサービスの提供を強化してまいります。
当社の当事業年度の財政状態の状況については、「(経営成績等の状況の概要)(2)財政状態の状況」をご参照下さい。
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の当事業年度のキャッシュ・フローの状況については、「(経営成績等の状況の概要)(3)キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
当社の運転資金需要のうち主なものは、商品及び原材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。当社は、高い手元流動性を維持しており、借入金は無く運転資金は全て自己資金により賄っておりますが、当事業年度においてはより安定的な手元流動性確保のため、第三者割当による自己株式の処分を行い、98百万円の資金調達を行いました。なお、重要な資本的支出の予定はありません。また、さらなる成長のため、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ④財務基盤の充実」に記載のとおり、財務基盤の充実を図ってまいります。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち重要なものは「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」及び「(重要な会計上の見積り)」に記載のほか、以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症による経済や産業活動に対する影響が継続すること、さらにウクライナ危機などに起因する原材料価格の高騰、円安、半導体不足の影響が続くものと仮定して見積りを行っております。
① 固定資産の減損処理
当社は、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、全社を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位としてグルーピングを行い、資産グループの帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。回収可能価額は使用価値により零として見積っております。
② 税効果会計
当社は、繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり、重要な税務上の欠損金が生じており、かつ、翌期における課税所得の発生が確実に見込まれる状況ではないことから回収可能性はないと判断し、繰延税金資産は計上しておりません。将来、課税所得が生じると見込まれる場合には、繰延税金資産を計上する可能性があります。
③ 継続企業の前提の評価
当社は、継続企業の前提に関する重要な不確実性の有無の判断にあたり、貸借対照表日の翌日から1年間のキャッシュ・フローを見積っております。事業計画の未達、変更等によりキャッシュ・フローが大幅に変動した場合、当該不確実性の判断に影響を及ぼす可能性があります。
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