課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループは、2021年度に長期経営構想の見直しと中期経営計画「Accelerate Growth 2023」の策定を行うにあたり、YOKOGAWAのIdentityを以下のとおり整理しました。創業の精神と、それを受け継いだ企業理念は、社会におけるYOKOGAWAの在り方を示すものです。Vision statementは、10年先を見据えてYOKOGAWAが何をしていくかを示し、共有する価値観は行動をするうえでの指針を示しています。Yokogawa’s Purposeは、それら全てを踏まえ、YOKOGAWAが存在する意義を、意思を込めたコミットメント(公約)として示しています。

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[創業の精神]

創業にあたり、横河民輔は、日本の計測業界の先駆者として歩み始めた横河一郎(後の初代社長)と青木晋(後の初代技師長)に、「君たちは、この仕事でもうけようなどと考える必要はない。それよりもまず、技術を覚え、技術をみがくことだ。横河電機の製品はさすがに良い、といわれるようにしてもらいたい」と語りました。この言葉は創業の精神として今日まで受け継がれています。

[企業理念]

創業の精神を受け継ぎ1988年に制定された企業理念は、社会に向けてのYOKOGAWAの使命とYOKOGAWA人の価値基準や行動指針を表した、YOKOGAWAの決意表明です。Yokogawa’s Purposeの制定を機に、「より豊かな人間社会」にとどまらず、広く地球環境へのYOKOGAWAの貢献を示すために、「持続可能な社会」に変更されました。

[Yokogawa’s Purpose]

お客様、市場、社会からの要望や期待に応えるYOKOGAWAのコミットメントであり、社会に存在することの意義を表したものです。同時に組織としての求心力を高め、グループ全社員の変革への志を喚起します。

[共有する価値観]

企業文化や風土を醸成し継承していくうえで、YOKOGAWA社員一人ひとりが「大切にすべき」行動の指針と意志をより具体的に示したものです。共有する価値観に根差した行動は新たな価値の創造を実現し、他社との差別化力、競争力をもって社会に貢献し続けるための原動力となります。

[Vision statement]

長期経営構想で描くYOKOGAWAの10年後のありたい姿、企業としての理想を端的に示したものです。2015年に発表した中期経営計画「Transformation 2017」策定時に定めたVision statementを置き換えるものとして新たに制定されました。

 

(2) 中長期的な経営戦略

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長期経営構想と中期経営計画の全体像

 

[長期経営構想]

当社は2015年度の中期経営計画「Transformation 2017」策定時に、10年先のありたい姿とその実現に向けた考え方を長期経営構想として定め、「Transformation 2017」の次の中期経営計画「Transformation 2020」策定時に、一部内容を見直しました。今回の中期経営計画「Accelerate Growth 2023」の策定にあたっては、改めて10年後に考えられる大きな環境変化を鑑み、社会共通価値の提供を通じた持続的な成長を目指すために抜本的な見直しを行いました。

<Vision statement>

 10年後のYOKOGAWAのありたい姿を端的に表現したVision statementを以下に変更しました。

 YOKOGAWAは、自律と共生によって持続的な価値を創造し、

 社会課題の解決をリードしていきます。

<お客様への提供価値>

 世界は今、あらゆるものが複雑につながり合う時代となっています。運用や管理に独立性のあるシステムが連携し、単独では実現できない目的をシステム全体として実現する「System of Systems(SoS)」が進む世界において、当社は、効果的な「つながり」を進め、統合化・自律化・デジタル化による「全体最適」の価値を生み出していきます。当社は「IA2IA※1」と「Smart Manufacturing※2」によるアプローチでこれを実現し、社会全体が「SoS」となる世界をリードするインテグレーターになることを目指します。

(※1) IA2IA(Industrial Automation to Industrial Autonomy)

 ロボティックスやブロックチェーンなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)トレンドを取り込み、Industrial Automation(自動)からIndustrial Autonomy(自律)へと進化させる活動です。

(※2) Smart Manufacturing

 DX(デジタルトランスフォーメーション)やIA2IAによって生産現場、エンタープライズ、及びサプライチェーンにおける自律を実現し、革新的な生産性向上を達成することです。

<事業セグメント>

 事業環境の変化を踏まえ、YOKOGAWAが磨き上げてきた技術・ノウハウや強みを生かせる事業領域を成長させていくために、従来の製品・機能別組織から業種軸の組織に再編し、ビジネス拡大とソリューションビジネスへの転換のスピードアップを図っています。

● エネルギー&サステナビリティ

 多様化するエネルギーの生産・供給・利用・廃棄・リサイクルのバリューチェーン全体にわたり安全かつ最適な運用を支えていきます。

● マテリアル

 素材産業のお客様との強固な関係を生かして変革に貢献するとともに、環境対策、エネルギーマネジメント、開発・生産へのデジタル技術活用などの強みを生かし、快適さとサステナビリティを両立させる社会を支えていきます。また、自らがマテリアルを生産し市場を開拓する事業にも展開していきます。

● ライフ

 人々の命と健康を守る医薬、誰もが安心して口にできる安全な水と食料の供給に貢献します。前中期経営計画で医薬品・食品産業のバリューチェーン全体の生産性向上に寄与するために立ち上げた、ライフイノベーション事業の取り組みを強化していきます。

 

 測定器事業、新事業他(横河バイオフロンティア株式会社、アムニモ株式会社など)は、製品や商流の特性などから、独立した事業運営を維持する必要があるためセグメントを分けていますが、10年後の提供価値についての方向性は共有していきます。

 

※ あるべき姿として描いた業種別の事業セグメントは上記のとおりですが、2021年度の開示セグメントについては、移行期間として「制御事業」「測定器事業」「航機その他事業」の3つとした上で、制御事業のサブセグメントとしての位置づけで「エネルギー&サステナビリティ事業」「マテリアル事業」「ライフ事業」に関する情報開示を充実させました。

 

[中期経営計画 「Accelerate Growth 2023」]

長期経営構想で定めた10年後のありたい姿を実現するために、2023年までの3年間で取り組むべきこととして、4つの基本戦略とその重点施策を策定しました。それぞれの基本戦略の概要は以下のとおりです。

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「Accelerate Growth 2023」の4つの基本戦略

 

● IA2IA/Smart Manufacturingの実行と存在価値の変革

 IA2IAの構想を実行フェーズに移行します。また、Smart Manufacturingの鍵となる上位系基幹システムビジネスのグローバル展開を図っていきます。

 

● 業種対応力の強化と非業種依存のビジネス拡大

 変わりゆくエネルギー産業のお客様に新しい価値を提供しつつ、多種多様なお客様に価値を提供していきます。

 

● 収益性の確保と健全な成長

 販管費率の改善など健全な収益構造に向けて、一層の改善を図っていきます。

 

● 社内オペレーションの最適化とマインドセットの変革

 グループ構造や機能の最適化と変革に向けた社員一人ひとりの能力向上を図っていきます。

 

 

中期経営計画「Accelerate Growth(アクセラレート グロウス)2023」についての詳細は、当社ウェブサイト

https://www.yokogawa.co.jp/about/yokogawa/company-overview/corporate-strategy/ をご参照ください。

 

 

 

(3) 経営環境

当社グループは、1915年の創立以来、計測、制御、情報の技術を軸に、最先端の製品やソリューションを産業界に提供し、社会の発展に貢献し続けています。また、社会課題・お客様のニーズを捉え、その主要製品・サービスの内容を変化させてきており、2021年度のセグメント別売上高比率は制御事業約93%、計測事業約5%、航機その他事業約2%となっています。

主力事業の制御事業では、石油、ガス、化学、電力、鉄鋼、紙パルプ、医薬品、食品などの多様な業種展開により日本国内で高いシェアを有しています。さらに、日本での多様な業種展開により得られた知見やノウハウのもと、ダウンストリームを中心に、中東、ロシア、中国、アセアンなどの資源国や新興国で高いシェアを有しています。なお、2021年度の海外売上高比率は約71%となっています。現地に根付いたグローバルな事業展開を始めてからの約60年で、競合他社に比べ偏りがない地域構成を実現してきており、世界中で4万件以上のプロジェクトを手掛けてきた豊富な納入実績があることも特徴です。豊富な納入実績を活用することで、お客様の既設のプラント設備の生産性向上につながる運用や、保守の効率化に向けたソリューションの比重を高め、あらゆる外部環境の変化にも耐えられるレジリエンス(変化に柔軟に対応できる適応力・回復力)を高めてきています。

今後10年間における事業環境のメガトレンドは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の観点で、大きく変化していくと想定しています。Politicsでは、自国主義や法規制の強まり、Economyでは、資源の枯渇や、食料・水の不足、Societyでは、高齢化、都市化や気候変動、Technologyでは、AI、IoT、5G、バイオテクノロジーの進歩など、さまざまな変化が予想されます。2019年度第4四半期から全世界に拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、ワクチン接種の進行に伴い徐々にその影響が低下する傾向にありますが、局面的なロックダウンなどによるサプライチェーン混乱など経済活動への影響が懸念されており一進一退の状況にあります。さらに、ロシア・ウクライナ情勢の深刻化は、エネルギー需給のひっ迫、資源・原材料価格高騰などを顕在化させています。政治、経済、社会活動の課題が浮き彫りになる中、さらにパラダイムシフトが加速すると考えています。このような中で、当社グループのお客様は、プロセスの変革、持続可能な未来を意識したビジネスモデルへのシフトを進めており、かつ、安全安心、セキュリティなどの観点から人の介在を減らすことの重要性も認識されています。主力事業の制御事業におけるProcess Automation 業界では、既存製品の市場が成熟し、ハードウエアのコモディティ化が進んでいると同時に、MES(Manufacturing execution system)やセキュリティ関連のソフトウエア、センサの市場は成長し、サブスクリプションなど新しいビジネスモデルの普及が進んでいます。また、当社グループの成長の糧であるオイル&ガスなどのハイドロカーボン系エネルギーの需要はその社会的役割・位置づけからも急激に失われないと考えられますが、エネルギー活用の多様化、環境規制対応などへの世界的な再生可能エネルギー活用、デジタルトランスフォーメーション(DX)への世界的な要求も高まってきています。

劇的に変化する事業環境において、当社グループは、未来世代のために目指す持続可能な低炭素・循環型社会の姿として定めたサステナビリティ目標「Three goals」の「脱炭素社会(Net zero emission)」「循環社会(Circular Economy)」「人の命と健康に対する要求の高まり(Well-Being)」が事業機会になると捉えています。長期経営構想でもお示しした通り、「System of Systems(SoS)」が進む世界の中で、統合化・自律化・デジタル化により複雑につながり合う社会システム全体を効果的に結びつけ、当社グループが先駆者として「全体最適」の価値を生み出すことで、3つの事業機会をしっかりと捉え、私たち自身が変革しながら、社会共通の課題の解決と持続的な成長を実現していきます。グローバルの競合のみならずIT企業との競合が激化するなど、事業環境は厳しさが増している中で、これまで蓄積・獲得してきたシステムインテグレーション(SI)とエンジニアリングの能力を、さらにSoSのためのSIやエンジニアリング能力に昇華させ、世界をリードするインテグレーターになることを目指します。

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<ご参考:ロシア・ウクライナ情勢に関する補足説明>

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 ロシア・ウクライナ情勢の影響を受け、各地域でエネルギーの代替供給に向けた動きが進み、新たな需要創出が見込まれます。短期的には増産のための既存設備の増強、進行中案件の前倒しなどの需要増が想定され、当社グループとしてお客様のご要望に全力で応え、エネルギーや資源供給の安定化に貢献すると同時に、ロシア地域で失われる事業機会をリカバリーしていきます。ただし、新設の案件については一般に計画段階で数年かかる場合が多く、当社グループの事業機会としては来年度以降を見据えています。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

[中期経営計画「Accelerate Growth 2023」で目指す経営目標]

中長期的視点での企業価値及び株主価値の最大化を基本方針とし、1株当たり当期純利益(EPS)成長、営業キャッシュフローの創出、自己資本利益率(ROE)の向上を目指すべき指標とします。

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(*)EPS:1株当たり当期純利益、ROS:売上高営業利益率、ROE:自己資本利益率

想定為替レート(1米ドル):105円

[資本政策・財務戦略]

「Accelerate Growth 2023」では、持続的な企業価値及びTotal Shareholders Return(TSR:株主総利回り)の向上を実現するために、成長を支える財務基盤の維持、成長投資、株主還元への最適なキャッシュフロー配分を行いながら、将来的かつ累積的なキャッシュフロー創出力を強化していきます。

● 資本性成長投資(戦略投資)枠を3年間累計で700億円とします。リスク総量、自己資本増減、及びリスク投資実行に伴うリスク量の増加想定を織り込んだ上で最適資本構成を維持します。

● 株主還元方針(利益処分に関する基本方針)は、中長期的な企業価値向上の最大化に向けた投資に優先的に配分していくものの、一定の財務基盤の確保を前提に、積極的な配当による株主還元の向上を図るものです。配当性向による期間利益の一定比率を還元する考え方に加え、株主資本配当率を踏まえた安定的な配当の維持の考え方を維持します。

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[株主価値の考え方]

株主資本コストを上回るTSR(株主総利回り)を実現し、中長期視点での株主価値の最大化を図っていきます。

成長投資により、「成長性」「収益性」を高め、さらにキャッシュ・フローを増大し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指す中で、一定の財務基盤の確保を前提に積極的に配当還元の向上も図ります。

さらに、IR活動を通じて資本市場をはじめとするステークホルダーの皆様との対話を積極的に行うなかで、共通理解を深めるとともに、信頼の醸成に努めます。

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[非財務目標]

当社が社会に価値を提供し続けるためには、ESG(環境・社会・ガバナンス)の3つの視点で経営を行うことが大前提であり、長期経営構想ではこの点を重視しています。

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「Environment」と「Social」の2つについては、当社のサステナビリティ目標「Three goals」の達成に向けて、「サステナビリティ中期目標」を設定し、「Accelerate Growth 2023」の取り組みと連携させて進めています。

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エネルギー&サステナビリティ、マテリアル、ライフ、測定器の各事業と、それを支える自社での領域に対し、6つの貢献分野にまたがり注力領域を設定しています。

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当社グループのサステナビリティについての詳細は、これらの6つの貢献分野に対する社会的インパクトの観点での2030年に向けた指標と目標、その社会的インパクト指標の達成に貢献する事業活動についての2023年に向けた指標と目標を含め、当社ウェブサイト、

https://www.yokogawa.co.jp/about/yokogawa/sustainability/ をご参照ください。

 

「Governance」については、既存の仕組み/体制の活用・改善、取締役会のさらなる多様化や情報開示の充実など、コーポレートガバナンスのさらなる強化を目指しています。

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当社グループは、グループ全体に適用される企業理念とYOKOGAWAグループ行動規範を定め、すべてのステークホルダーとの適切な関係を持ち、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に努めています。また、「企業は社会の公器である」との考えのもと、健全で持続的な成長により、株主、お客様、取引先、社会、社員等すべてのステークホルダーからの信頼に応えていくことを企業経営の基本的使命と位置づけています。

当社グループは、企業価値の最大化を実現するためには、コンプライアンスの徹底、リスクの適切な管理、株主をはじめとするステークホルダーとの建設的な対話のための情報開示等が重要と考えます。

当社グループは、こうした考え方からコーポレートガバナンスの継続的な充実に取り組む基本方針として「YOKOGAWAコーポレートガバナンス・ガイドライン」を制定しています。

 

当社グループのコーポレートガバナンスについての詳細は、当社ウェブサイト

https://www.yokogawa.co.jp/about/ir/governance-ja/ をご参照ください。

 

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

[中期経営計画「Accelerate Growth 2023」で目指す経営目標]

「Accelerate Growth 2023」の初年度となる2021年度の受注高は、COVID-19からの本格的な経済活動の回復を背景としたお客様の投資意欲が堅調であったことや為替の変動影響があったことから、前期比で18.2%増(為替の変動影響を除くと12.4%増)となりました。売上高は、主に為替の変動影響により前期比で4.2%増(為替の影響を除くと0.9%減)となりました。営業利益は、助成金の減少による反動、新事業関連投資の増加、ロシア・ウクライナ情勢の深刻化に係る貸倒引当金の計上等により、前期比で2.9%減(為替の変動影響を除くと15.7%減)となり、売上高営業利益率(ROS)は7.9%となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益が、航空機用計器事業譲渡による特別損失を計上した一方で、持分法投資利益の改善および税金費用の減少などにより増益となったことから1株当たり当期純利益(EPS)成長率が10.7%/年、自己資本利益率(ROE)は6.6%となりました。なお、営業キャッシュフローは約516億円となりました。

「Accelerate Growth 2023」策定時の想定に対し、ロシア・ウクライナ情勢の影響や部材調達難の長期化など、事業環境の厳しさが増しています。経営のレジリエンスを高めながら、引き続き「Accelerate Growth 2023」の取り組みを加速し、2023年度の目標達成に向けて注力していきます。

[資本政策・財務戦略]

「Accelerate Growth 2023」では、利益成長及び資本効率向上により、営業キャッシュフロー1,400億円以上(3年間累計)の創出を目指しています。初年度で創出した営業キャッシュフローは約516億円で、中長期的な企業価値の最大化に向けたM&Aやアライアンスを含む資本性成長投資(戦略投資)として約112億円、継続的・安定的増配を行い株主還元として約91億円(配当性向:2021年度:42.6%)を配分しました。2021年度の戦略投資の主な実績としては、ライフ事業拡大のためバイオ医薬品の開発から生産までのソリューション構築を目指しInsilico Biotechnology AGを、従来の電力系統と分散型エネルギーリソースの統合とシステム全体を最適化するMGC、DERMS※分野へ参入するためPXiSE Energy Solutions, LLCをそれぞれ買収しました。ライフ事業や再生可能エネルギー分野を中心に厳選して投資を行っており、概ね順調な進捗であると認識しています。引き続き、中長期視点での株主価値の最大化のため、成長を支える財務基盤の維持、成長投資、株主還元への最適なキャッシュフロー配分を行っていきます。

※MGC: Micro Grid Control,DERMS: Distributed Energy Resource Management Systems

[財務・非財務目標達成に向けた現状認識と課題]

当社グループは、2021年度からYokogawa’s Purposeとサステナビリティ目標「Three goals」を事業として実現するため、これまでの製品や機能を中心とした組織から、お客様の事業活動の業種を基軸にビジネス展開を行うサブセグメント体制に制御事業を移行させました。また、3つのサブセグメントを共通して支える機能として、CoE(Center of Excellence)機能、開発機能、デリバリー機能、サービス機能を設けています。この1年で概ねその体制は整ったと捉えており、これらの機能と3つのサブセグメントが組織横断的な連携を行う中、新たな価値の創造に向け、中期経営計画「Accelerate Growth 2023」の4つの基本戦略をこれまでとは異なる次元のスピードで実行していきます。

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主力の制御事業は、2021年度において組織変革により業種軸でグローバルの連携強化を進め、それぞれの事業セグメントの注力すべき分野で一定の成果を得ました。エネルギー&サステナビリティ事業では、再生可能エネルギー分野でのM&Aを実行し、成長の足掛かりをつかんでいます。マテリアル事業は、グローバルでナレッジ共有の体制を構築しました。化学、半導体・EV向けなど市場環境も好調の中、着実に成長しています。ライフ事業は、食品生産・医薬品生産・水といった従来国内で強みのあった分野で海外のお客様への提案が増え、その結果受注も獲得しています。バイオ関連のM&Aなど新たな取り組みにも着手しています。

また、「Accelerate Growth 2023」の初年度となる2021年度は、4つの基本戦略を着実に実行しており、その戦略ごとの現状と課題は以下のとおりです。

1.「IA2IA/Smart manufacturingの実行と存在価値の変革」においては、価値提供の拡張に確かな手応えがあります。IA2IA/Smart manufacturingを実現するソリューションの中から、早期にスケールアップが可能なものを見極めてパッケージ化を進め、50件のソリューションをリリースしました。リリースされたソリューションにより、今後、グローバルにおけるさまざまな業種で効率的なプロモーション展開が可能になります。

また、IA2IA/Smart manufacturing事業の受注件数は195件となり、国内で成功してきた課題解決型ビジネスの手法を活用しながら、今後はより大きなマーケットである海外でのスケールアップに重点的に取り組んでいきます。前述の新規ソリューションの活用・展開することでも加速させていきます。

今年3月には、ENEOSマテリアル社(旧JSRエラストマー事業部門)との共同実証実験を行い、世界で初めてAIによる自律制御で化学プラントを35日間連続運転することに成功しました。国内外の多くの化学メーカーからの反響をいただいています。また、バイオフューエル精製プロジェクトにてMACとして選定されたこと、当社グループとKBCの総合ソリューションでDigital Twinを実現(上位系生産最適化ソリューションRIOS)し、サプライチェーンを含む生産プロセス全体を最適化・収益改善するための実証実験で効果が得られその横展開が開始されたことなど、先進的な取り組みにも着実に成果が見えてきている状況です。引き続き、IA2IAの構想の実行フェーズへの移行、Smart manufacturingによるソリューションの提供範囲の拡大に向けた活動を加速させます。

2.「業種対応力の強化と非業種依存のビジネス拡大」においては、3つのサブセグメントでの組織体制が始動した中、グローバルでの連携による業種拡大を着実に実行しています。

エネルギー&サステナビリティ事業では再生可能エネルギー業種に注力しており、2021年度の受注は45億円、前期比で15%増となりました。さらに、PXiSE Energy Solutions, LLCを買収し、MGC、DERMS分野に本格的に参入しました。当社グループとのシナジーにより、多くの引合いをいただくなど順調なスタートを切っています。

マテリアル事業では高機能化学業種に注力しており、日本国内で培ったソリューションの強みを生かして、海外での受注拡大を目指しています。2021年度の海外での受注は146億円、前期比で61%増となっています。

ライフ事業は、事業全体が注力領域となっていますが、中でも医薬・食品業種ではMES(Manufacturing Execution System)や生産性向上に関するビジネスが好調で、2021年度の受注は208億円、前期比で12%増となりました。また、水ビジネスの海外展開にも注力しており、広域配水管理あるいは海水淡水化などの案件を14件獲得しました。さらに、再生水の飲用利用に向けた下水処理施設の運転最適化実証実験に成功するなど、新たな価値を創出する取り組みに積極的にチャレンジしています。

一方で、バイオプロセスビジネスについては、スケールアップに向けての課題があると認識しております。引き続き、総合エネルギー企業にシフトするお客様への新たな価値の提供、他業種、非業種依存のビジネスの拡大に向けた活動を加速させます。

3.「収益性の確保と健全な成長」においては、物流費や部品価格の上昇、部品調達難への対応工数増などの影響を各取り組みにより一定程度吸収することができたものの、成長に向けた収益性確保の観点からは、さらに各施策の実行力を高め、加速していく必要があります。

CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)については、地域の商習慣として支払いサイトの長い日本や中東での売上比率が高く、課題があると認識しています。回収期間の短縮化への取り組みはもちろんのこと、サプライチェーン全体でシームレスな業務プロセスを目指し、全社で改善に取り組んでいきます。

4.「社内オペレーション最適化とマインドセットの変革」においては、持続的成長に向け、中長期を見据えたオペレーションの最適化や情報インフラの整備を粘り強く行った結果、その成果が出ています。すべての施策に対して異なる次元のスピードと実行力を得るべくマインドセットの変革が必要であり、引き続き、戦略立案機能の強化、挑戦を奨励する企業文化や組織風土の醸成、Internal DXとビジネスモデル変革、人財のスキル転換とエンゲージメント向上のための活動を加速させます。

「Accelerate Growth 2023」の中間年度となる2022年度は、目指す経営指標を達成するために極めて重要な年度となります。長期経営計画及び中期経営計画「Accelerate Growth 2023」を確実に達成し当社グループが目指す姿を実現するためには、将来のビジョンに基づいた先進的かつ画期的なソリューションにより、お客様の真の課題を解決する企業に変革していかなければなりません。従来からの当社グループが誇る高いプロジェクト遂行力に加えて、「統合化」「自律化」「デジタル化」により世界の衆知を集め、新たなグローバル・ソリューション・サービスを提供することで、社会共通課題の解決をリードしていく企業へと変革していきます。「Accelerate Growth 2023」の目標達成に向けて中長期的に当社グループが持続的成長をするための変革を加速し、「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす。」というYokogawa’s Purposeの実現に向け邁進していきます。

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