当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、各国で経済対策やワクチン接種が進んだことから社会・経済活動が回復基調となりました。一方で、昨年末からのオミクロン株の感染拡大、資源高や半導体の需給ひっ迫に加え、ウクライナ情勢もあり、景気の先行きは不透明な状況で推移しました。国内では、新型コロナウイルスに対応する医療提供体制の確保が継続される中、感染状況の波によるものの医療機関における検査・手術件数は回復傾向にありました。医療機器業界においても、感染症への対応および医療の質向上と効率化に寄与するソリューション提案がより一層求められる状況となりました。海外における医療機器の需要は、感染症患者に対応するための整備に加え、新型コロナウイルス関連以外の需要が回復傾向にあるなど、総じて堅調に推移しました。
このような状況下、当社グループは、昨年4月に中期経営計画「BEACON 2030 Phase I」をスタートさせ、事業と企業活動を通じたサステナビリティを推進するため、「コンプライアンスの徹底とグループガバナンスの一層の強化」「既存事業の収益性の改善と戦略的な先行投資」「グローバルSCMの構築とコーポレート主要機能の強化」に取り組みました。商品面では、当社初となる網赤血球測定付き全自動血球計数器を日本・海外で発売したほか、ITシステムとの連携を強化したセントラルモニタ、当社初のオートショックAEDを日本で発売しました。また、人工呼吸器を対象とした医療機器リモート監視システムのサービスを日本で開始しました。さらに、ドバイ試薬工場で生産を開始、患者容態管理のためのアルゴリズムおよびソフトウェアの研究開発を行う米国アンプスリーディ㈱を買収するなど、海外事業の基盤強化を図りました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は前期比2.7%増の2,051億2千9百万円となりました。利益面では、増収効果に加え、売上構成の変化により売上総利益率が改善したことから、営業利益は前期比14.4%増の309億9千2百万円、経常利益は前期比21.8%増の345億6千3百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比28.5%増の234億3千5百万円となりました。
<市場別の状況>
国内市場においては、急性期病院、中小病院、診療所といった市場別の取り組みを強化するとともに、医療安全、診療実績、業務効率につながる顧客価値提案を推進、消耗品・サービス事業の強化に注力しました。生体情報モニタが好調に推移したほか、前期に低調だった一部製品の需要が回復、ITシステム商談の再開も売上に寄与しました。一方で、自社品の販売に注力したことから、現地仕入品は大幅減収となりました。市場別では、私立病院、診療所市場が堅調に推移したほか、大学病院市場は前期並みを確保しました。一方で、官公立病院市場は減収となり、PAD(※)市場におけるAEDの販売も前期実績を下回りました。この結果、国内売上高は前期比0.7%減の1,363億2千1百万円となりました。
海外市場においては、米国、新興国市場における事業基盤の強化が奏功し、全ての商品群で売上を伸ばすことが出来ました。米州では、米国が好調に推移した一方、中南米は前期に売上が倍増したコロンビアでの反動により減収となりました。欧州では、一部製品の需要は回復したものの、大幅増収となった前期の反動を補うには至らず、減収となりました。アジア州他では、インド、タイ、マレーシア、エジプトでの売上が倍増し、中国、ベトナムも好調に推移しました。この結果、海外売上高は前期比10.2%増の688億7百万円となりました。
※PAD(Public Access Defibrillation):一般市民によるAEDを用いた除細動。PAD市場には公共施設や学校、民間企業などが含まれる。
<商品群別の状況>
[生体計測機器]国内では、凍結されていた設備投資の再開により診断情報システムが二桁成長となり、心電計群も好調に推移しました。脳神経系群は前期並み、心臓カテーテル検査装置群は現地仕入品の減収影響を除くと二桁成長となりました。海外では、脳神経系群が全ての地域で需要が回復し二桁成長となりました。心電計群もアジア州他、中南米で増収となりました。この結果、売上高は前期比5.6%増の396億8千1百万円となりました。
[生体情報モニタ]国内では、送信機、医用テレメータが大幅増収となったほか、臨床情報システムも二桁成長となりました。センサ類などの消耗品も好調に推移しました。海外では、欧州、中南米は前期の需要増加の反動により減収となったものの、米国、アジア州他での売上が二桁成長となりました。この結果、売上高は前期比7.7%増の848億6千万円となりました。
[治療機器]国内では、前期に需要が増加した人工呼吸器の反動に加え、AEDの一部出荷が期ずれたこともあり減収となりました。海外では、AEDが需要の回復により全ての地域で大幅増収となりました。除細動器もアジア州他、中南米で大幅増収となりました。人工呼吸器は、前期の需要増加の反動により減収となりましたが、インド、東南アジアでは需要が増加しました。この結果、売上高は前期比3.9%減の433億8千8百万円となりました。
[その他]国内では、自社品販売の注力により現地仕入品が大幅減収となりました。医療機器の設置工事・保守サービスは好調に推移し、検体検査装置も堅調でした。海外では、全ての地域で血球計数器・試薬の需要が回復し、大幅増収となりました。この結果、売上高は前期比2.6%減の371億9千8百万円となりました。
売上高を商品群別に分類すると次のとおりです。
(参考)地域別売上高
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ171億7千1百万円増加し、2,102億1百万円となりました。
流動資産は前連結会計年度末に比べ157億3千5百万円増加し、1,718億7千5百万円となりました。これは前期末の売上債権の回収が進んで受取手形及び売掛金が減少し、有価証券が増加したこと、および、半導体の需給ひっ迫を受け一部の部品を先行仕入したため原材料在庫が増加したことなどによるものです。
固定資産は前連結会計年度末に比べ14億3千5百万円増加し、383億2千5百万円となりました。これはアンプスリーディ㈱の取得に伴い無形固定資産やのれんが増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ2億2千3百万円減少し、538億2千万円となりました。これは未払法人税等が減少したことなどによるものです。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ173億9千4百万円増加し、1,563億8千1百万円となりました。これは、利益剰余金が増加したことなどによるものです。
これらの結果、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に比べ220.51円増加して1,852.39円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末の72.0%から2.4ポイント増加し74.4%となりました。
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ157億3千9百万円増加して600億9千5百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前期比117億5千3百万円増の256億9千9百万円となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益342億6千3百万円、前期末の売上債権の回収が進んだことなどによる売上債権の減少125億6百万円、および法人税等の支払128億6千8百万円などです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前期比13億5千6百万円増の43億3百万円となりました。主な内訳は、生産設備や販促用製品などの有形固定資産の取得24億5千万円、子会社株式(アンプスリーディ㈱)の取得9億2千9百万円などです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、前期比42億9千2百万円増の73億円となりました。主な内訳は、配当金の支払48億4千2百万円、自己株式の取得24億円などです。
当社グループの事業は、医用電子機器関連事業の単一セグメントであり、セグメントごとの業績は、記載を省略しています。
当連結会計年度における生産、受注および販売の実績を商品群別に示すと次のとおりです。
なお、表中の金額は販売価格によっています。
(注) 上記金額には、商品購入高が合計で54,316百万円含まれています。
当社グループの商品は、需要予測による見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。当社グループの事業は、医用電子機器関連事業の単一セグメントであり、セグメントごとの業績は、記載を省略しています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に貸倒引当金、賞与引当金、退職給付に係る負債であり、見積りおよび判断・評価については、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っています。
詳細については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しています。
イ.当連結会計年度の経営成績および「BEACON 2030 Phase I」の進捗状況
当連結会計年度においては、前年度のコロナ禍で低調だった一部製品・消耗品の需要が国内外で回復するとともに、変異株の感染拡大により、新型コロナウイルスに対応するための医療機器の需要が期初の想定を上回りました。このような状況下、当社グループでは、世界的な半導体の需給ひっ迫に対応するため、開発・調達・生産・物流・販売部門が一丸となってサプライチェーンマネジメント改革を推進し、グローバルでの製品供給の継続に取り組みました。
この結果、2022年3月期の業績は、売上高、利益ともに過去最高を更新することができました。国内では、医療安全、診療実績、業務効率につながる顧客価値提案を推進、自社品の販売に注力した結果、売上構成が良化、売上総利益率が改善したことは収益体質の変革につながる成果と考えています。海外では、生体情報モニタなど製品の設置台数が拡大する中、消耗品・サービス事業に注力するとともに、米国およびアジアでの事業基盤の強化に取り組みました。米国では、現地開発・販売・サービス体制の強化により、当社の生体情報モニタシステムが全米トップクラスの大学病院の新棟に全面採用されるなど、米国市場での当社プレゼンスが向上しました。また、中期経営計画で新規事業と位置付けるデジタルヘルスソリューション(DHS)構想の一環として、米国のアンプスリーディ㈱を買収し、DHS分野における技術開発力の強化に取り組みました。インドでは、現地販売・サービス体制の強化により、生体情報モニタの大口商談を獲得、検体検査装置は新製品効果もあって設置台数が拡大するなど、インド市場での当社プレゼンスが向上しました。
商品群別では、生体計測機器は、国内で診断情報システム、心電計群が好調に推移し、海外で脳神経系群、心電計群が増収となったことから、前期比5.6%の増収となりました。国内、海外ともに、低調だった前期から需要が回復し、計画を上回ることが出来ました。生体情報モニタは、国内で感染症対応のための需要が継続、臨床情報システムの需要が回復するとともに、海外で大口商談を獲得した米国、インドが好調に推移したことから、前期比7.7%の増収となり、計画を大きく上回ることが出来ました。治療機器は、前期に需要が急増した人工呼吸器が国内、海外ともに大幅減収となったことから、前期比3.9%の減収となりました。一方、前期に低調だった海外でのAEDの需要が回復し、除細動器も国内、海外ともに好調に推移したことから、計画を大きく上回ることが出来ました。その他商品群は、国内で自社品販売の注力により現地仕入品が大幅減収となったことから前期比2.6%の減収となり、計画を下回りました。血球計数器・試薬は、国内、海外ともに前期実績を上回りました。
営業利益については、増収効果に加え、売上構成の変化により売上総利益率が改善したことから、前期比14.4%の増益となり、計画を大きく上回ることが出来ました。
3ヵ年中期経営計画「BEACON 2030 Phase I」の2年目にあたる2022年度は、半導体の需給ひっ迫影響が継続するほか、ウクライナ情勢や上海ロックダウンなどの不確定要素が多くありますが、引き続きサプライチェーンマネジメント改革を推進、製品供給継続に注力するとともに、売上総利益率50%以上、営業利益率10%以上を定常的に確保できる企業体質への変革に取り組みます。
ロ. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
事業への資源配分については、新製品の投入による売上、利益の成長に資する投資を最優先としながら、研究開発や設備投資、M&A・提携、人財育成など将来の企業成長のために必要な資源配分を安定的かつ継続的に実施します。設備投資は56億円程度、研究開発費は63億円程度を計画しています。
株主還元については、経営の最重要政策の一つと位置付けており、内部留保の確保に配慮しながら、優先順位については、ⅰ)研究開発や設備投資、M&A・提携、人財育成など将来の企業成長に向けた投資、ⅱ)配当、ⅲ)自己株式取得とし、連結配当性向30%以上を目標に長期に亘って安定的な配当を継続することを基本方針としています。
資金調達については、当社グループの主な運転資金および設備資金として自己資金を充当しており、M&Aや新規事業など資金調達が必要になった場合には、資金需給のバランスを見ながら、借入を資金調達の有効な手段として検討し、負債コストも考慮した加重平均資本コストの最適化を図ります。
また、当社グループでは、財務健全性を維持した持続的成長と企業価値の向上を目指して、資産の効率化と資金の流動性の確保に努めています。資産の効率化については、グループ内の資金効率を高めるため、余資は当社に集中し、必要とするグループ会社に配分しています。資金の流動性については、安定的な利益の確保に加え、債権回収の早期化等を推進し、必要運転資金の増加を抑えることで、営業キャッシュ・フローの安定的な確保に努めています。当連結会計年度末における流動比率は、338.3%となっており、十分な流動性を確保しています。
ハ.経営指標の分析
当社は、企業価値・株主価値増大に向けて連結ROE(連結自己資本当期純利益率)を経営目標としており、3ヵ年中期経営計画「BEACON 2030 Phase I」において、10%を目標としています。当連結会計年度は15.9%と、前年度の14.0%から改善しました。増収効果に加え、売上構成の変化により売上総利益率が改善したことにより、売上高純利益率が改善したことが要因です。引き続き、中期経営計画の推進による利益率の改善を最優先としつつ、在庫圧縮など資産効率の改善、株主還元の充実により、経営目標の達成を目指します。
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