課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社は長期ビジョン「ESPEC Vision 2025」の実現に向けて、4カ年ごとの中期経営計画(StageⅠ~Ⅲ)を実行しており、2022年度より最終ステージである中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」をスタートいたしました。長期ビジョンでは、環境創造技術を要とする事業により世界の先端技術の安全・安心に貢献する企業を目指しております。また、創造性や活力ある多様な社員の活躍によって成長を続ける企業を目指しております。

 当社は、企業理念「THE ESPEC MIND」の実践と長期ビジョン「ESPEC Vision 2025」の実現に向けた事業活動により「経済的価値」「社会的価値」の創出と向上を図り、持続的成長を目指すサステナビリティ経営を推進しております。当社が社会と共に成長し中長期の価値向上を果たすために、中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」の策定と併せて優先的に取り組む重要課題(マテリアリティ)を特定いたしました。事業構造の革新、機能強化、地球環境保全、ガバナンス強化、人材育成・職場の活性化、ダイバーシティ推進・人権尊重の6つの課題を特定し、社会の変化に合わせて柔軟に見直しを行ってまいります。

 中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」では、基本方針「個と職場の慣性と惰性を打破し、先端技術の実用化に貢献する」を掲げ、長期ビジョンの実現に取り組んでまいります。新型コロナウイルス感染症の拡大や国際情勢の悪化など先行き不透明な状況ではありますが、クリエイティビティとバイタリティにあふれる組織、自律的な社員が活躍する組織へと改革に取り組み、IoTや次世代自動車など先端技術分野における課題解決に貢献してまいります。

 

(1)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、営業利益、営業利益率、ROE(自己資本利益率)です。2018~2021年度の中期経営計画「プログレッシブ プラン2021」の目標は、2021年度売上高520億円以上、営業利益52億円以上、営業利益率10%以上、ROE(自己資本利益率)8.5%以上でしたが、米中問題や新型コロナウイルス感染症の拡大により事業環境が悪化し、未達となりました。2022年度をスタートとする中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」では、2025年度売上高550億円、営業利益70億円、営業利益率12.7%、ROE(自己資本利益率)10%を目標としております。引き続き質の向上を重視し、さらなる成長を目指してまいります。中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」の基本方針や中期経営戦略につきましては(2)③に記載しております。

 

(2)長期ビジョンおよび中期経営計画

①長期ビジョン「ESPEC Vision 2025」

<エスペックの姿>

・グローバルに<環境>をインテグレートするエスペック

・先端技術の安全・安心に貢献する企業

・クリエイティビティとバイタリティにあふれる成長企業

 

②中期経営計画「プログレッシブ プラン2021」(計画実施期間2018~2021年度)

<基本方針>

戦略投資と着実な「質の向上」による安定継続成長

・成長分野をターゲットとしたグローバル化とカスタム対応力の向上

・業績変動の緩和と次代の成長のための新分野事業の開発

 

<中期経営戦略>

a.装置事業セグメント 事業戦略

(ⅰ)自動車、IoT分野をターゲットに、カスタマイズ対応力の強化による収益拡大

(ⅱ)環境因子技術の拡充により多様化・高度化する試験ニーズへの対応

(ⅲ)新規分野事業の開拓

b.サービス事業セグメント 事業戦略

お客さまの潜在ニーズを先取りしたサービスメニューの開発とテストコンサルティング事業の拡大

c.グローバル戦略

(ⅰ)中国、韓国を継続拡充地域とし、欧州、ASEAN(インド含む)を重点拡大地域とした

    グローバルマーケティングの展開

(ⅱ)グローバル全体最適のモノづくり体制構築

 

<主な取り組み>

a.装置事業セグメント 事業戦略

 

ターゲット市場であるIoTや自動車分野での受注拡大に取り組むとともに、技術開発棟や動的な気象環境を再現する全天候型試験ラボを開設いたしました。オープンイノベーションを推進し、環境因子技術の拡充や環境配慮型製品の開発につなげてまいります。新規事業では、医薬品分野において新型コロナワクチンの輸送・保管に適した製品を発売するなど市場開拓に取り組んでまいりました。

b.サービス事業セグメント 事業戦略

クラウドを活用した新サービスの開発などITを活用したサービスの拡充に取り組んでまいりました。テストコンサルティング事業では、ドイツ自動車業界の試験規格に対応するとともに100%再生可能エネルギーによる受託試験サービスの提供を開始いたしました。

c.グローバル戦略

中国事業の拡大や欧州事業の推進に取り組むとともに、東南アジアではベトナムに新会社を設立し技術サポート体制を強化いたしました。また、日本・米国において生産能力を増強いたしました。

 

③中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」(計画実施期間2022~2025年度)

 当社は、2014年11月に策定した長期ビジョン「ESPEC Vision 2025」において、目指すべき経済像として、2025年度連結業績目標 売上高600億円以上、営業利益60億円以上、営業利益率10%以上と掲げ、取り組んでまいりました。この度、中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」を策定するにあたり、事業環境の変化をふまえ2025年度の連結業績目標を見直しました。中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」では、売上高550億円、営業利益70億円、営業利益率12.7%、ROE(自己資本利益率)10%を目指してまいります。

 

<基本方針>

個と職場の慣性と惰性を打破し、先端技術の実用化に貢献する

・IoT・次世代自動車市場に貢献する商品・サービス提供に向けた積極的な成長投資

・ビジネスチャンスと不測の事態に対する変化対応力を高める

 

<中期経営戦略>

a.環境試験事業戦略

■装置事業セグメント

(ⅰ)重点先端技術分野(IoT、次世代自動車)の製品ラインアップの拡充

(ⅱ)カスタム製品のグローバルでの競争力強化と新市場開拓

(ⅲ)オープンイノベーションの推進による新環境因子技術の拡充

■サービス事業セグメント

(ⅰ)お客さまの悩みを解決するトータルテクニカルサポート業への転換

(ⅱ)先端技術分野向け試験の拡充と試験技術の高度化

b.グローバル戦略

 中国、欧州、韓国におけるマーケティングの強化

c.新規事業戦略

 新規事業の基盤確立と新たな分野へのチャレンジ

d.モノづくり改革とDX戦略

(ⅰ)デジタル技術による先進的カスタマイズモノづくり

(ⅱ)データ活用による顧客接点強化と社内情報蓄積・共有

(ⅲ)デジタル技術によるビジネススタイルの刷新

e.組織開発・人材開発戦略

(ⅰ)企業理念の浸透と自律的な社員が育つ組織づくり

(ⅱ)リーダーシップ改革と学び直しの推進

(ⅲ)DX、グローバル人材育成と多様な社員の活躍推進

f.経営基盤強化戦略

(ⅰ)安定調達と品質システムのレベルアップ

(ⅱ)持続的で健全な成長を支えるコーポレートガバナンス

(ⅲ)第8次環境中期計画の達成

 

④2022年度の連結業績目標と主な重点戦略

<連結業績目標>

売上高500億円、営業利益50億円、営業利益率10%、ROE(自己資本利益率)8%

 

<主な重点戦略>

a.環境試験事業戦略

■装置事業セグメント

先端技術分野の試験ニーズに応える製品ラインアップの拡充や、大型製品の海外への市場投入により販売拡大に取り組んでまいります。

■サービス事業セグメント

新サービス「スーパーサポートプラン」による予防保全サービスの拡大や、自動車市場向け試験設備の増強によるテストコンサルティング事業の拡大に取り組んでまいります。

b.グローバル戦略

欧州において自動車市場向け製品の投入を進めてまいります。また、グローバルカスタマーを中心とする販売活動の強化に取り組んでまいります。

c.新規事業戦略

医薬品事業や食品機械事業において、市場浸透に向けた取り組みを強化してまいります。

d.モノづくり改革とDX戦略

モジュール化を推進しカスタマイズ設計の容易化を進めるとともに、デジタル技術による最新モジュール工場の設計に着手してまいります。市場情報のデータベース化やWebを活用したプロモーション・商談の拡充を図ってまいります。

e.組織開発・人材開発戦略

新しい評価システムやコミュニケーション手法を取り入れ、マネジメントスタイルの変革を図るとともに、社員のスキルアップや学び直しの機会を提供し、社員一人ひとりが自律的に行動し成長できる組織改革を推進してまいります。さらに女性管理職の育成、中途採用者、シニア社員、外国人など多様な人材の活躍推進に取り組んでまいります。

f.経営基盤強化戦略

安定調達に向けた取り組みを強化するとともに、プライム市場上場企業としてコーポレートガバナンスの強化を図ってまいります。

 

⑤環境への取り組み

 当社は2022年度より第8次環境中期計画(計画実施期間2022~2025年度)をスタートし、特に地球温暖化対策と生物多様性保全活動を中心に取り組んでおります。

 

<地球温暖化対策>

 環境負荷低減に向けた技術を開発されるお客さまへの製品・サービスの提供を通じて、温室効果ガス排出量の低減に貢献してまいります。また、低GWP(地球温暖化係数)冷媒の搭載や省エネなど環境配慮型製品の開発や、取引先と一体となった活動を強化してまいります。さらに、当社は2020年より再生可能エネルギーの事業所への導入を進めており、2021年度に国内拠点への導入を完了いたしました。今後は自家発電比率の向上や海外拠点への再生可能エネルギーの導入を進めてまいります。

<生物多様性保全活動>

 子会社であるエスペックミック株式会社が森づくりや水辺づくりなど環境保全事業を手掛けており、同社の技術やノウハウを活かして生物多様性保全に取り組む企業の活動を支援してまいります。また、当社の生物多様性保全活動の拠点である神戸R&Dセンターでは、同社の技術指導により、社員と家族が在来苗木を植栽し育てた森やビオトープ、地元六甲北部の植物だけで構成した屋上草地を設置しております。これらを活用し生物多様性保全に貢献してまいります。

 

■気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

 当社は2021年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明いたしました。TCFDの提言に基づき積極的に情報開示を行ってまいります。

a.ガバナンス

代表取締役執行役員社長を委員長とする全社環境管理委員会において、四半期ごとに環境課題に対する実行計画の策定と進捗管理を実施しております。取締役会は本委員会の報告を受け、環境課題への対応方針などについて議論・監督を行っております。代表取締役執行役員社長は執行役員会の議長を担うと同時に、諮問委員会である全社環境管理委員会の委員長を担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っております。

b.戦略

2℃未満および4℃シナリオにおける気候関連のリスク(移行リスク・物理的リスク)と機会について、短期・中期・長期の視点で事業影響や財務影響を評価しております。この評価をふまえ当社戦略のレジリエンスを検証しております。

 

 

気候関連リスク・機会に対する事業インパクト(財務影響と事業リスク)評価と当社の対応

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 影響時期:短期10年以内、中期10年~30年、長期30年超

 財務影響度:★1億円以内、★★1億円以上~10億円以内、★★★10億円超

 

c.リスク管理

リスク管理委員会と全社環境管理委員会および環境マネジメントシステム(ISO14001)において、リスクの識別・評価を実施し、発生頻度やインパクトから優先順位付けしたうえで対策を決定し、進捗を管理しております。重要リスクについては取締役会に報告し、取締役会による監督体制のもと当社戦略に反映しております。

d.指標・目標

2030年までのグループ全体の温室効果ガス排出量削減目標を4カ年ごとに設定する環境中期計画に展開しております。

・SCOPE1+2  2030年までに60%削減、2025年までに55%削減(2019年度比)

・SCOPE3   2030年までに30%削減、2025年までに10%削減(2019年度比)

 

⑥サステナビリティの推進に向けた取り組み

 2020年にサステナビリティ推進室を設置し、サステナビリティの推進やSDGsの達成に貢献する取り組みを強化しております。2021年には、サステナビリティ方針を策定し、ステークホルダーのみなさまとのより良い価値交換を実現していくための重要課題(マテリアリティ)を特定いたしました。サステナビリティ経営を推進し、事業を通じて環境や社会課題の解決に貢献するとともに持続的な成長を目指してまいります。

 

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

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