1.経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
①当連結会計年度の概況
当連結会計年度の経済環境は、期末にかけてロシアのウクライナ侵攻により先行きの不透明感は増したものの、新型コロナウイルス感染症による経済活動の制限が緩和されてきたことに伴い、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。
当社グループの主要なお客さまであるエレクトロニクス製造業、自動車関連・産業機器製造業におきましては、設備投資全体の持ち直しの動きは続いており、IT投資への意欲も高い状態が継続いたしました。
このような中にあって、当社グループは、世界のモノづくり企業に向けて最適なソリューションを提供していく「真のグローバルカンパニー」を目指し、コロナ禍においても事業活動の効率化を進め、主力製品の拡販や新製品のリリースに注力してまいりました。当連結会計年度の主な取り組みは、次のとおりであります。
(ⅰ) 主力製品の拡販
エレクトロニクス製造業向けの主力の電気設計システム「CR-8000」シリーズにおいて、リモートワーク環境でもスムーズに製品設計を行える機能を拡充し、また「CR-5000」シリーズからの移行を促進するなど拡販を推し進めてまいりました。自動車関連・産業機器製造業においては、ワイヤハーネスの設計システム「E3.series」の販売に引き続き注力し、特に欧米において売上を伸ばしました。
また、これらの設計システムにデータ管理システムDSシリーズを連携させ、設計からデータ管理まで一貫したソリューションとして、大手顧客を中心に販売を強化してまいりました。
なお、営業活動において対面が制限された時期についても、Webコミュニケーションツール「ZUKEN digital」を活用し、お客さまの要望を的確にとらえてタイムリーな提案を行い、コロナ禍前を上回る活発な営業活動を実施してまいりました。
(ⅱ) 新製品のリリース
大規模な設計を行う輸送用機器製造業に向けて、従来の製品を飛躍的に進化させた新たなワイヤハーネスの設計システム「E3.infinite」を開発し、本格的に販売を開始いたしました。これは、大規模システムの分散・並行設計やサプライヤ協業に適合し、またワイヤハーネス配線の自動設計をも実現する製品であり、これに対応するデータ管理システム「DS-E3.inifinite」とともに拡販してまいります。
また、エレクトロニクス製造業においては、米国子会社のMBSEモデリングツール「GENESYS」と図研の主力設計システム「CR-8000」シリーズをつなぐ「GENESYS-CR」を新たに開発いたしました。この製品は、本格的な導入には多くの時間や労力を要するMBSEの手法をエレキ設計向けに最適化しており、構想設計段階の既存の設計資産をデジタル化することで、設計全体の一元的な管理を可能とします。今後、MBSEの導入を検討するお客さまに向けて、広く販売を推進してまいります。
※MBSEは、モデルベースシステムズエンジニアリングの略で、航空・宇宙、自動車関連等の複雑で高い品質が求められる製品に使われ始めた次世代の設計手法です。この手法には、電気・機械・ソフトウェアなど複数の分野の技術者が共通認識できるモデルを使うことにより、様々な技術が複雑に関連し合う製品開発を構想企画段階で最適化するねらいがあります。
②当連結会計年度の業績
(連結業績)
売上高 |
: |
315億 2百万円 |
(前期比 9.3%増) |
経常利益 |
: |
41億7千7百万円 |
(前期比 32.5%増) |
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
: |
30億 2百万円 |
(前期比 40.5%増) |
以上の取り組みにより、当連結会計年度の売上高は、前期を大きく上回り、過去最高を更新いたしました。これは、ワイヤハーネスの設計システム「E3.series」の売上が伸長したことや、主力の電気設計システム「CR-8000」シリーズの販売が堅調に推移したことによるものです。
また、利益面につきましても、売上高の伸長により大幅な増益となり、営業利益、経常利益ともに過去最高を更新いたしました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、英国子会社の退職年金制度のバイアウトに伴い特別損失を計上したものの、政策保有株式の売却に伴う特別利益の計上により大幅な増益となりました。
基板設計ソリューションの主な製品 |
CR-8000 Design Force CR-8000 Board Designer CR-8000 DFM Center CADSTAR eCADSTAR |
|
回路設計ソリューションの主な製品 |
CR-8000 Design Gateway CR-8000 System Planner E3.series E3.infinite Cabling Designer Harness Designer |
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ITソリューションの主な製品 |
DS-CR エクスプレッソ DS-2 Expresso DS-E3 DS-E3.infinite GENESYS プリサイト ビジュアル ボム PreSight visual BOM |
|
(セグメントの業績)
報告セグメントの業績につきましては、次のとおりであります。
・日本
電気設計システム「CR-8000」シリーズを中心に回路設計ソリューションの売上が順調に伸びたことや、ネットワークセキュリティ関連製品を中心にITソリューション及びクライアントサービスの売上が順調に推移したことなどから、売上高は236億1千1百万円(前期比 6.8%増)となりました。営業利益につきましては、売上高の増加などから30億9千1百万円(前期比 31.0%増)となりました。
・欧州
ワイヤハーネスの設計システム「E3.series」を中心に回路設計ソリューションの売上が増加したことなどから、売上高は63億6千4百万円(前期比 17.2%増)となりました。営業利益につきましては、売上高の増加などにより3億8百万円(前期比 396.5%増)となり、前期に比べて大幅に伸長いたしました。
・米国
回路設計ソリューション及びクライアントサービスの売上が堅調に推移したことなどから、売上高は
23億1千3百万円(前期比 15.2%増)となりました。営業利益は1億2千5百万円(前期比 6.7%減)となりました。
・アジア
韓国で基板設計ソリューション及びITソリューションの売上が増加したことなどにより、売上高は
15億3千4百万円(前期比 12.6%増)となり、営業利益は3億7千3百万円(前期比 10.2%増)となりました。
(2) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動で12億4千7百万円、投資活動で47億3百万円の収入、財務活動で7億6千5百万円の支出となったことから、前連結会計年度末に比べ54億8千7百万円増加し、当連結会計年度末は269億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、12億4千7百万円(前期比 14億1千3百万円減)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益61億2千5百万円(前期比 31億4千6百万円増)の計上、前受金の増加額14億7千2百万円(前期比 7億円増)、減価償却費7億6百万円(前期比 4百万円増)などの増加要因と、投資有価証券売却益の調整58億8百万円(前期比 58億1千2百万円増)、法人税等の支払額11億3千5百万円(前期比 8千2百万円増)などの減少要因との差引合計によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、47億3百万円(前期比 58億7千2百万円増)となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入58億8百万円などの増加要因と、固定資産の取得による支出7億1千7百万円(前期比 1億4百万円増)、関係会社株式の取得による支出3億4千2百万円(前期比 3億2千3百万円増)などの減少要因との差引合計によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、7億6千5百万円(前期比 1千6百万円増)となりました。これは主に配当金の支払額7億2千万円(前期比 2千3百万円増)によるものであります。
(3) 生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当社グループの売上高は、受注に基づくソフトウェア及びそれに付随するコンサルティングが主体であり、生産高と極めて近似しております。従って、セグメント別生産実績については、有用性が乏しいとの判断から記載を省略しております。
②受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前期比(%) |
受注残高(千円) |
前期比(%) |
日 本 |
24,076,563 |
107.7 |
10,556,561 |
118.4 |
欧 州 |
5,853,810 |
125.5 |
2,598,141 |
128.9 |
米 国 |
2,440,821 |
131.1 |
1,693,588 |
126.4 |
ア ジ ア |
1,391,398 |
104.8 |
525,607 |
98.3 |
合 計 |
33,762,594 |
111.8 |
15,373,898 |
120.1 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(千円) |
前期比(%) |
日 本 |
22,433,098 |
106.3 |
欧 州 |
5,400,892 |
120.1 |
米 国 |
2,246,819 |
114.7 |
ア ジ ア |
1,421,455 |
113.2 |
合 計 |
31,502,266 |
109.3 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(参考)製品区分別実績は次のとおりであります。
①受注実績
当連結会計年度における受注実績を製品区分ごとに示すと、次のとおりであります。
製品区分 |
受注高(千円) |
前期比(%) |
受注残高(千円) |
前期比(%) |
基板設計ソリューション |
4,335,436 |
102.0 |
941,949 |
112.7 |
回路設計ソリューション |
6,913,672 |
110.7 |
1,514,492 |
105.9 |
ITソリューション |
7,775,450 |
107.4 |
1,790,392 |
150.4 |
クライアントサービス |
14,728,184 |
118.2 |
11,126,676 |
119.0 |
その他 |
9,850 |
147.8 |
387 |
48.4 |
合計 |
33,762,594 |
111.8 |
15,373,898 |
120.1 |
②販売実績
当連結会計年度における販売実績を製品区分ごとに示すと、次のとおりであります。
製品区分 |
金額(千円) |
前期比(%) |
基板設計ソリューション |
4,262,916 |
100.3 |
回路設計ソリューション |
6,884,653 |
116.2 |
ITソリューション |
7,198,240 |
102.2 |
クライアントサービス |
13,146,192 |
113.4 |
その他 |
10,263 |
165.4 |
合計 |
31,502,266 |
109.3 |
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析等
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析等の内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より19億3千7百万円増加して591億5百万円(前期比 3.4%増)となりました。流動資産は59億8千2百万円増加して452億5千9百万円(前期比 15.2%増)、固定資産は40億4千4百万円減少して138億4千6百万円(前期比 22.6%減)となりました。流動資産の増加の主な要因は、現金及び預金が54億9千7百万円、前払費用が10億2千4百万円増加したことなどであります。固定資産の減少の主な要因は、投資有価証券が59億9千9百万円減少したことなどであります。
当連結会計年度末の負債の合計は、前連結会計年度末より21億6千3百万円増加して204億8千9百万円(前期比 11.8%増)となりました。流動負債は38億3千2百万円増加して164億8千2百万円(前期比 30.3%増)
、固定負債は16億6千8百万円減少して40億7百万円(前期比 29.4%減)となりました。流動負債の増加の主な要因は、未払法人税等が20億2千8百万円、前受金が16億7千2百万円増加したことなどであります。固定負債の減少の主な要因は、その他が繰延税金負債の減少により10億1千4百万円減少したことなどであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末より2億2千5百万円減少して386億1千6百万円(前期比 0.6%減)となりました。株主資本は22億3千6百万円増加して366億1千3百万円となりましたが、この増加の主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益を30億2百万円計上したことと、配当金7億2千万円の支払いとの差し引きなどで、利益剰余金が22億3千7百万円増加したことであります。その他の包括利益累計額は、その他有価証券評価差額金が30億4千6百万円減少したことなどから、25億3百万円の減少となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の67.4%から2.7ポイント減少し、64.7%となりました。
(2) 経営成績の分析
当連結会計年度の業績につきましては、ワイヤハーネスの設計システム「E3.series」の売上が伸長したことや、主力の電気設計システム「CR-8000」シリーズの販売が堅調に推移したことにより、売上高は315億2百万円(前期比 9.3%増)となって前期を大きく上回り、過去最高を更新いたしました。利益面につきましては、原価率の高い外部仕入品の売上割合が増加したことなどにより売上原価が増加したものの、売上高の増加により売上総利益は217億9千4百万円(前期比 8.7%増)となりました。販売費及び一般管理費は178億8千9百万円(前期比 4.3%増)となり、営業利益は39億4百万円(前期比 35.0%増)と、前連結会計年度を大幅に上回りました。
営業外収益から営業外費用を差し引いた純額は、2億7千3百万円の収益の計上となりました。これは主に、営業外収益として持分法による投資利益8千4百万円、受取配当金が7千9百万円、助成金収入が5千万円計上されたことなどによります。
以上の結果、経常利益は41億7千7百万円(前期比 32.5%増)となりました。
特別利益から特別損失を差し引いた純額は、19億4千8百万円の収益の計上となりました。これは主に、特別利益として投資有価証券売却益が58億8百万円計上されたことと、特別損失として退職給付費用が35億9百万円計上されたことなどの差引合計によるものであります。
以上の結果、税金等調整前当期純利益は61億2千5百万円となり、法人税等と非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は30億2百万円(前期比 40.5%増)となりました。また、1株当たり当期純利益は129円16銭(前期は91円92銭)となりました。
なお、セグメントごとの分析につきましては、「1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績の状況 (セグメントの業績)」を参照願います。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度末における当社グループの資金(連結キャッシュ・フロー計算書の「現金及び現金同等物」)残高は、前連結会計年度末より54億8千7百万円増加して269億円となり、当社グループの流動性は、十分な水準にあると考えられます。また、財務状態につきましては、流動比率は274.6%、自己資本比率は64.7%であり、健全な財務状態であると認識しております。
将来の事業活動に必要な運転資金及び設備投資資金並びに株主還元等につきましては、営業活動により得られた資金及び内部資金より調達しております。また、資金の運用につきましては、信用リスク、金利等を考慮し、安全性を第一と考え、元本割れの可能性が極めて低いと思われる金融商品で行っております。
なお、キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フロー」を参照願います。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者によって行われた見積りや評価が含まれております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、収束時期の見通しは立っていないものの、現時点において連結財務諸表作成における重要な見積りの判断等に与える重要な影響は認識しておりません。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、設計・製造の効率化という課題の解決に向けたソリューションビジネスを展開しております。エレクトロニクス製造業、自動車関連・産業機器製造業を主要な市場とするほか、ソリューションを拡充し、設計・製造プロセス全体の最適化を提供していくこと等により、新たな市場、技術領域への取り組みを積極的に展開し、事業基盤のさらなる拡大を図っております。そのため、各種ソリューションの開発・強化の進捗やその品質・信用性の向上、エレクトロニクス、自動車関連・産業機器を中心に製造業における設備投資の動向、さらには有力企業や関連会社との良好な協業・連携の維持といった要因が経営成績に重要な影響を与えるものと思われます。詳細につきましては、「2.事業等のリスク」を参照願います。
(6) 今後の見通し
今後の経済環境につきましては、新型コロナウイルス感染症やウクライナ紛争の影響が見通せない中、先行き不透明な状況は続いていくものと思われます。
このような中にあって、当社グループは、お客さまの次世代のモノづくりに貢献する最適なソリューションを提供し、さらなる企業価値の向上に努めてまいります。詳細につきましては、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を参照願います。
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