当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境につきましては、国内外で設備投資や生産等の持ち直しの動きが見られはじめましたが、電子部品や樹脂部品の調達難や原材料価格の高騰、コンテナ不足や港湾混雑など物流混乱の常態化に加え、ウクライナ情勢など依然として先行き不透明な状況で推移しました。
このような状況のなか、当社グループは中期事業計画「R1」に掲げた目標の達成に向けて、現行ビジネスの安定化と利益ある成長に向けた取り組みを推し進めております。新型コロナウイルス(COVID-19)への感染拡大防止策を柔軟に実施しながら、リチウム電池生産ラインの増設をはじめとした需要増への対応や部品調達難・物流混乱下でのお客様への確実な製品供給などに努めました。また、低温環境下での放電性能や寿命特性を向上させた車載アクセサリ市場向けニッケル水素電池、交通インフラ市場向けニッケル水素バッテリーシステムの開発と量産出荷、自己放電率が低く長期保存が可能なスマートメータ・セキュリティ機器用途向け高容量円筒形二酸化マンガンリチウム一次電池の開発などとともに、展示会へも出展しビジネス拡大に努めました。
当連結会計年度の経営成績につきましては、電池事業の売上高はニッケル水素電池とリチウム電池、設備関連ビジネスが増加しましたが、アルカリ乾電池で前連結会計年度に実施した海外製造子会社の株式譲渡や国内市況低迷による売上減により、事業全体として減収となりました。電子事業の売上高はスイッチング電源やトナー、液晶ディスプレイ用途向け各種モジュールが減少しましたが、モビリティ用途向け各種モジュールが増加したことにより、事業全体として増収となりました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ87百万円(△0.1%)減少の614億56百万円となりました。
損益面につきましては、電池事業はニッケル水素電池と設備関連ビジネスの売上増による利益の増加がありましたが、アルカリ乾電池の売上減による利益減少に加え、原材料価格高騰の影響により、減益となりました。電子事業は各種モジュールの売上増により、増益となりました。この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ3億39百万円増加の20億83百万円、経常利益は前連結会計年度に比べ6億94百万円増加の19億68百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は関係会社清算益4億59百万円、関係会社株式売却益13百万円の特別利益を計上しましたが、アルカリ乾電池にかかわる固定資産の減損損失12億13百万円を特別損失に計上したことにより、前連結会計年度に比べ12億68百万円減少の7億40百万円となりました。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用により、当連結会計年度の売上高は1億15百万円、営業利益は31百万円それぞれ減少し、経常利益は2百万円増加しております。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
電池事業
電池事業はニッケル水素電池とリチウム電池、設備関連ビジネスが増加しましたが、アルカリ乾電池が減少したことにより、前連結会計年度を下回りました。
製品別につきましては、ニッケル水素電池は、海外の市販用途および工業用途向けが堅調に推移したことにより、前連結会計年度を上回りました。アルカリ乾電池は、前連結会計年度に実施した海外製造子会社株式譲渡や国内市況の低迷による売上減により、前連結会計年度を下回りました。リチウム電池は、国内外のセキュリティ・スマートメータ用途向けが堅調に推移したことにより、前連結会計年度を上回りました。設備関連ビジネスは、電池組立設備や自動車用部品組立設備受注が堅調に推移したことにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、当事業全体の売上高は、前連結会計年度に比べ24億97百万円減少の430億82百万円、セグメント利益は2億8百万円減少の12億21百万円となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の売上高は1億15百万円、セグメント利益は31百万円それぞれ減少しております。
電子事業
電子事業はスイッチング電源とトナーが減少しましたが、モビリティ用途向け各種モジュールが増加したことにより、前連結会計年度を上回りました。
製品別につきましては、スイッチング電源は、半導体装置用途向けの需要が堅調なものの、部品調達難による納期延伸などにより、前連結会計年度を下回りました。トナーは、在庫調整やテレワーク推奨による印刷減少などにより、前連結会計年度を下回りました。各種モジュールは、液晶ディスプレイ用途向けで減少しましたが、モビリティ用途向けで増加したことにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、当事業全体の売上高は、前連結会計年度に比べ24億9百万円増加の183億73百万円、セグメント利益は5億47百万円増加の8億61百万円となりました。
当連結会計年度の総資産は、前連結会計年度に比べ11億60百万円(△2.4%)減の469億3百万円となりました。流動資産は前連結会計年度に比べ3億48百万円(△1.1%)減の319億95百万円、固定資産は前連結会計年度に比べ8億11百万円(△5.2%)減の149億8百万円となりました。流動資産減少の主な要因は、コンテナ不足に伴なう販売延伸や電子部品や樹脂部品の調達難に伴なう先行手配などの影響により、製品および原材料などの棚卸資産が25億91百万円増加した一方で、短期借入金の返済を進めたことにより現預金が42億38百万円減少したことによるものです。固定資産減少の主な要因は、アルカリ乾電池にかかわる固定資産の減損により、有形固定資産が7億43百万円減少したことによるものです。
当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度に比べ27億32百万円(△7.4%)減の344億43百万円となりました。流動負債は前連結会計年度に比べ23億28百万円(△6.9%)減の314億50百万円、固定負債は前連結会計年度に比べ4億3百万円(△11.9%)減の29億92百万円となりました。流動負債減少の主な要因は、電子部品や樹脂部品の調達難に伴なう先行手配の影響で支払手形及び買掛金が8億85百万円、電子記録債務が6億96百万円増加した一方で、短期借入金の返済を進めたことにより27億10百万円減少したことによるものです。固定負債減少の主な要因は、退職給付に係る負債が3億15百万円減少したことによるものです。
なお、有利子負債残高は、主に借入金の返済により前連結会計年度に比べ27億79百万円減の123億40百万円と2000年度以降最も低い水準となりました。
当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度に比べ15億71百万円(14.4%)増の124億60百万円となりました。純資産増加の主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより利益剰余金が7億34百万円、為替換算調整勘定が6億79百万円、退職給付に係る調整累計額が1億87百万円、それぞれ増加したことによるものです。
収益認識会計基準等の適用により、利益剰余金の期首残高が6百万円減少したことなどにより純資産が減少しております。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加などによる現金及び現金同等物(以下「資金」という)の減少はありましたが、税金等調整前当期純利益の計上や減価償却費の計上などにより21億77百万円の資金増加(前連結会計年度は19億96百万円の資金増加)となりました。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、リチウム電池のライン増設をはじめとする有形固定資産の取得による支出などにより39億20百万円の資金減少(前連結会計年度は3億73百万円の資金減少)となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少などにより27億80百万円の資金減少(前連結会計年度は40億77百万円の資金減少)となりました。
これらの結果、当連結会計年度における資金の期末残高は期首残高より42億38百万円減少し、27億63百万円となりました。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準にもとづき作成されております。
なお、個々の「重要な会計方針及び見積り」については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表、注記事項、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表、注記事項、重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。
当社グループの連結売上高は、614億56百万円(前連結会計年度比0.1%減)となりました。電池事業のニッケル水素電池、リチウム電池、設備関連ビジネスや電子事業の各種モジュールの売上増があったものの、電池事業のアルカリ乾電池で前連結会計年度に実施した製造子会社株式の譲渡影響が大きく、前連結会計年度を下回りました。連結営業利益は、アルカリ乾電池の売上減による利益減少に加え、原材料価格高騰の影響による減少がありましたが、ニッケル水素電池、設備関連ビジネスや各種モジュールの売上増による利益の増加により、前連結会計年度に比べ3億39百万円増加の20億83百万円となりました。
当社グループは中期事業計画「R1」において、営業利益率やROIC(投下資本利益率)を経営の指標としており、特に営業利益率を主指標としております。これは当社グループにおいては本業での収益性の向上が最も重要な課題であると認識しているためであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであることに加え、当社グループ事業の製品の売上は、電池事業においては電池が使用される機器の拡大・縮小や使用数の影響を受け、また、電子事業は主たる顧客であるエレクトロニクス関連のセットメーカーの製品やサービスの売れ行きに影響を受けるなど、当社グループが管理できない要因により大きな影響を受けます。
また、当社電池製品の主要材料であるニッケル、亜鉛、リチウムやレアアース類は需給バランスや投機的要因などにより価格が大きく変動するため、材料費に大きな影響を与えます。
さらに、当社グループの売上高の42.2%は海外ビジネスであるため、為替レートの変動により円換算による増減の影響を与えます。この為替変動のリスクに関しては、売上と調達のバランスを取ること、為替予約などにより対処を図っております。
主にこれらの要因が当社グループの経営成績、事業の収益性に影響するものと認識しております。そのため、当社は、毎月1回受注状況、受注見込み、年間予算との乖離などの最新の業績の状況を把握するとともに、必要な改善の立案、実施を行なっております。
当社グループの資本の財源および資金の流動性については、当社グループは、主に事業の継続性の確保と収益性向上を図るため、その生産設備類の維持・更新、能力増強を主とした設備投資に加え、SMD対応小型全固体電池(SoLiCell®)をはじめとする新電池の研究開発と量産体制構築に向けた設備投資を継続しており、その財源は営業活動から得られたキャッシュ・フローおよび外部より調達した資金を主としております。
セグメントごとの財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は、次のとおりであります。
電池事業
当連結会計年度における電池事業の売上高は前連結会計年度に実施した製造子会社株式の譲渡影響が大きく、前連結会計年度から減少したものの、ニッケル水素電池、リチウム電池は伸長しており、営業利益率は0.3ポイント減少の2.8%を確保しております。
売上高の確保・拡大のためには需要が伸張する地域、販路、市場、新規機器メーカーへの拡販が必要であるとの認識のもと、マーケティング、営業力の強化に努めております。市販用途向けニッケル水素電池、アルカリ乾電池はコモディティ化が進んでいるため、市販用途向けニッケル水素電池については品質、特性面での差別化、商品力の強化や環境・安全面での訴求をすすめ、売上拡大と利益率の維持・向上を図っており、アルカリ乾電池については当連結会計年度において固定資産の減損損失を計上しましたが、国内市販向けビジネスで新規顧客の開拓と既存顧客の深耕で売上拡大と事業規模に合った人員体制により、引き続き付加価値向上に取り組んでおります。
また、電池の主要材料価格の変動に関しては、適切な時期での予約などの施策に加え、材料使用量の低減、より安価な材料へのシフト、リサイクル材の活用などの技術VEとコストダウンを行ない、対応力の強化に努めております。
電子事業
当連結会計年度における電子事業の売上高は前連結会計年度から増加し、営業利益率は2.7ポイント増加の4.7%となりました。
電子事業については、事業価値の向上が必要であると認識しており、当連結会計年度においては製品モデル毎の選択と集中を継続し、需要が伸張しているモビリティ用途向け・半導体装置用途向け各種モジュールの売上拡大を図っております。
経営上の目標の達成状況は、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等に記載した方針にもとづき、当社グループは「Smart Energy Partnerとして、先進技術を結集し、お客様に電気エネルギーを安心して効率的に活用いただき、持続可能な社会の実現と発展に貢献する」というFDKグループ戦略Framework「10年の計」のVisionとそのあるべき姿の実現に向けて翌連結会計年度を最終年度とする中期事業計画「R1」を策定し、その達成に向けて取り組んでおります。「R1」の2年目となる当連結会計年度の経営上の目標としては、売上高600億円、営業利益19億円、経常利益15億円、親会社株主に帰属する当期純利益16億円を目指してまいりました。
その結果、当連結会計年度における売上高は614億56百万円、営業利益は20億83百万円、経常利益は19億68百万円、親会社株主に帰属する当期純利益7億40百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益を除いて目標値を大きく上回りました。
当連結会計年度の目標を上回った主な理由としましては、売上高は電池事業で国内外の市販用途向けニッケル水素電池が期初の見込みを上回ったことや国内外のセキュリティ・スマートメータ用途向けリチウム電池、電子事業でモビリティ用途向け各種モジュールなどが伸張したことにより、目標値を上回りました。営業利益は電子事業における各種モジュールの売上増やコストダウン、費用の削減により、目標値を上回りました。経常利益は為替差損が減少したことにより、目標値を上回りました。親会社株主に帰属する当期純利益はアルカリ乾電池にかかわる固定資産の減損損失を計上したことにより、目標値を下回りました。
<2022年3月期の目標と結果>
なお、前述のとおり当社グループは、10年後のあるべき姿を示したFDKグループ戦略Framework「10年の計」と中期事業計画「R1」を策定し、「R1」の最終年度である2023年3月期に売上高600億円、営業利益率5.1%、「10年の計」の最終年度である2030年3月期に売上高800億円、営業利益率7.5%を経営上の目標として取り組んでおります。
中期事業計画「R1」の最終年度の2023年3月期の経営成績の見通しは、売上高630億円、営業利益12億円、経常利益10億円、親会社株主に帰属する当期純利益7億円を予想しております。中期事業計画目標と見通しの差異の要因としましては、自助努力によるコスト削減を上回る原材料価格の高騰、電子部品や樹脂部品の調達難により、営業利益が減少するためであります。
これらの課題に対して当社グループは、技術VEによるコスト削減、徹底的な経費削減など原材料価格高騰に対するレジリエンスを強化するとともに販売価格の見直しや新規ビジネスの獲得、深耕開拓を行なうことにより、営業利益見通しと中期事業計画目標値との差異縮小に取り組んでまいります。
また、COVID-19の当社の業績等への影響につきましては、売上面において材料調達難や物流の停滞による供給の延伸などがありましたが、売上高は各種モジュールなどが増加し期初の見込みを上回りました。今後も同感染症の再拡大や当社グループ従業員の感染または濃厚接触による生産、供給への影響懸念が払しょくできず、感染拡大防止策を柔軟に実施しながらこれらの影響を抑制してまいります。
なお、ウクライナ情勢の当社の業績等への影響につきましては、ロシアやウクライナ両国に関連する当社ビジネスは少なく当連結会計年度において大きな影響はありませんが原油や天然ガス高騰により購入部品が一部で値上がりし始めており、今後対象部品の拡大やさらなる値上げ、入手難の影響が出る懸念があり、引き続き情報収集に努めてまいります。
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