事業等のリスク

2【事業等のリスク】

(1)リスクマネジメント体制

事業活動を進めていく上で、様々なリスクが財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性が考えられます。ロームグループではこうしたリスクを回避、あるいはその影響を最小限に食い止めるため、リスクマネジメントの強化に取り組んでおります。2022年4月に設置された「EHSS統括委員会」の下、「リスク管理・BCM委員会」(年4回開催)を組織しており、グループにおいて発生する可能性のある重要リスクを抽出した上で、発生頻度と事業に与える影響度の側面からリスクマップにて評価し、対策を管理・推進しております。また、各マネジメントシステム及び部署の活動状況を確認するとともに、事業継続計画(BCP)の策定等を進め、あらゆるリスクに対応できるよう、全社に徹底を図っております。

 

(リスクマネジメント体制図)

0102010_002.jpg

 

(リスクマネジメント活動概要)

0102010_003.jpg

 

(リスクマップによる評価イメージ)

0102010_004.jpg

 

(2)事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。ただし、以下はすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された項目以外のリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてロームグループが判断したものであります。

①事業戦略・市場変動に係るリスク

 

内容

ロームグループは注力市場として「自動車関連市場」、「産業機器関連市場」、「海外市場」を、注力商品として「パワー」、「アナログ」、「汎用デバイス」を掲げるなど、より成長が見込める市場、あるいはロームグループの強みを発揮できる市場や技術に、重点を置いております。こうした重点分野においては、今後グローバルな競争がより激化する可能性があり、コストダウンの限界を超えた価格競争や熾烈な開発競争に巻き込まれる可能性があります。また、社会ニーズの様々な変化等により市場成長の鈍化や市場の縮小が起こる可能性があります。こうした市場の動向や競争環境の変化により、ロームグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローが悪影響を受けるリスクがあります。

主な対策

このようなリスクに対し、EV化へのシフトが期待される自動車関連市場や中長期的に成長が期待される産業機器関連市場などへの製品ラインアップを強化し、顧客ニーズを先取りする提案型の営業体制への見直しなどを進めております。また、ロームグループが強みを持つ「パワー」、「アナログ」及び「汎用デバイス」などの技術領域を中心とした新製品・新技術の開発を進め競争力を高めております。

グローバルな競争力を持つ商品開発を行うために、技術や市場に精通したPME(Product Marketing Engineer)を海外に派遣し、欧州、中国、台湾、米国を中心にグローバルレベルで市場のニーズを先取りする新製品の商品企画と製品の詳細仕様の落とし込みを行います。これにより、幅広い地域の顧客に喜んでいただける新製品の市場へのインプット数を増やしております。

また、海外市場での売上を上げるため、世界中の販売ネットワークが全体最適の戦略の下に活動できる販売体制を整えております。また、顧客である完成品メーカーの開発動向などの技術情報を熟知したFAE(Field Application Engineer) を中心に据えた「SSE(System Solution Engineering) 本部」を組織し、ソリューション提案力の強化を進めております。営業担当者とFAEとの連携によって、顧客が求める最適なソリューション提案ときめ細かな技術サポートが全世界で提供できる体制となっております。

②為替リスク

 

内容

ロームグループは開発・製造・販売の拠点を世界各地に展開しており、各地域通貨によって作成された各拠点の財務諸表は、連結財務諸表作成のために円に換算されております。そのため、現地通貨における価値が変わらない場合でも、換算時の為替レートの変動により、連結財務諸表上の損益が影響を受ける可能性があります。

また、ロームグループは日本、アジア、アメリカ及びヨーロッパにて生産活動を行うとともに、世界市場において販売活動を行っております。このため、生産拠点と販売拠点の取引通貨が異なり、常に為替レート変動の影響を受けております。概して言えば、円高の場合は業績にマイナスに、円安の場合にはプラスに作用します。

主な対策

為替変動リスクを軽減するため、外貨建ての営業債権に対して、一定程度の為替予約を行っております。

 

 

③製品の欠陥リスク

 

 

内容

ロームグループでは、企業目的である「われわれは、つねに品質を第一とする」を基本理念とし、厳しい品質管理のもとに生産を行っておりますが、全ての製品について欠陥がなく、将来において販売先からの製品の欠陥に起因する損害賠償請求等が発生しないという保証はありません。万一損害賠償請求があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

ロームグループでは、各事業本部の品質部門が設計品質を保証し、各生産本部の品質部門がつくり込み品質を保証しております。

また、社長直轄部門の一つである品質本部は、事業本部、生産本部の枠を超えた全社の品質保証システムの構築や情報展開及び各事業・生産本部の業務監視を行っております。また、社外で頻発している品質コンプライアンス違反に対するリスクを低減するため、品質保証部に「品質監査室」を新設しました。

事業本部における新製品開発では、顧客要求を満足する安全で、信頼のおける製品をタイムリーに提供するため、開発検討、設計審査、初期流動、量産の各段階で評価を行います。改善情報は源流にフィードバックすると共に、次期設計に展開します。

また、生産本部のものづくり革新部における自社開発の組立加工装置では「設備で品質を作りこむ。不良を作れない設備」を目標に、装置自身が自己診断したり、不良を作らないようにすることを目指しております。

万一、製品に起因する不具合が発生した場合、ローム製品は現品から生産情報(製造時期もしくはロッ卜情報)がトレースできます。ロッ卜情報からは、全工程の4M情報(Man、Machine、Material、Method)が確認でき、それぞれの生産条件、出来映えについて迅速に調査できます。

加えて、以下の国際的な品質マネジメントシステム等に基づき、欠陥が発生しない管理体制の構築を進めております。

・ISO9001:品質マネジメントシステム

・IATF16949:自動車産業品質マネジメントシステム規格

・ISO/IEC17025:試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項

・ISO26262:車載電子制御の機能安全に関する国際規格

④生産・調達活動に係るリスク

 

 

内容

ロームグループでは、垂直統合型のビジネスモデルを採用しておりますが、電子部品の製造にはレアメタルを含む様々な素材を必要とします。そのため、特定の供給元からの調達に制約が発生した場合、生産活動やコスト構造に悪影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

事業部門においては、材料などの複数購買を進めるとともに、サプライヤー様のBCP状況等に基づき適切な在庫管理を推進しております。

調達部門においては、有事の際にいち早くサプライヤー様の被災・安否状況や供給状況の確認が取れるよう、調達部材の製造会社・製造場所の情報を調査し、データベース化するとともに、その調査範囲を二次サプライヤー様まで拡大し、サプライチェーンのBCP状況の全体把握に取組んでおります。

また、重要材料を扱うサプライヤー様とは有事発生の際の対応方法を、ロームとサプライヤー様との間で事前に合意する取り組みを進めております。

⑤法的リスク

 

 

内容

ロームグループでは、他社製品と差別化できる製品を製造するために様々な新技術やノウハウを開発しており、こうした独自の技術を背景に世界中で製品の製造・販売を行っております。そのためロームグループで保有する知的財産権の保護並びに他社との紛争の回避が必要不可欠になってまいります。

また、ロームグループが事業を行うあらゆる領域において、排気、排水、有害物質の使用及び取扱い、製品含有化学物質の管理、廃棄物処理、土壌・地下水汚染等の調査並びに環境、健康、安全等を確保するためのあらゆる法律・規制を遵守しております。しかしながら、事前に予期し得なかった事態の発生などにより何らかの法的責任を負う場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

ロームグループが使用している技術やノウハウは、知的財産権等で保護し自社技術を守りつつ事業競争力を高めるとともに、他社の保有する知的財産権を侵害しないように社内調査や、製品開発時のチェックなどを通じて厳重に管理しております。

また、ロームグループでは、環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001に準拠した環境マネジメントシステムをグループ全体で構築し、運用することで環境負荷削減をはじめとする環境保全に向けた継続的な環境改善を進めております。取組みにあたっては、ローム本社に設置した「環境保全対策委員会」が中心となり、法令や規制等に基づく生産や各拠点における活動・サービスに起因する環境影響を管理し、拠点ごとの内部監査で明らかになった改善点などをグループ各社に水平展開を行っております。

 

 

⑥自然災害・地政学的リスク

 

 

内容

ロームグループは日本のみならず世界各地で開発・製造・販売活動を行っており、地震や洪水等の自然災害や感染症の蔓延、または政情不安及び国際紛争の勃発などによる人的災害によって、当該地域の生産や営業拠点が損害を受ける可能性があります。また、これらのリスクが複数の地域で同時に発生する可能性があり、ロームグループのみならず、顧客やサプライヤー様なども含めたサプライチェーン全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

ロームグループでは、リスク分散のために生産ラインを世界の複数拠点に配置するなどの対策をとっております。また、ロームグループ防火・防災方針を定め各拠点で活動しており、中でも生産機能を持つ国内外の拠点では、外部専門機関と協力し、自然災害、感染症、安全、操業・経済・政治リスクの観点からリスクアセスメントを行い、工場ごとにトップリスクを特定・分析・評価しております。その上で、対策委員会等を組織し、事業継続計画の立案や、それに基づく訓練など、有事に備えた様々な取組みを行っております。

⑦M&Aリスク

 

 

内容

ロームグループでは、将来的な事業展望を踏まえ、既存事業に関連した新しい分野への進出を視野に入れたM&Aをワールドワイドに検討・実施し、常に企業価値の向上や企業規模の拡大を図る必要性があると考えております。一方、買収後における想定外の事態の発生や市場動向の著変等が原因で、買収事業が所期の目標どおりに推移せず、場合によっては損失を生む可能性があります。

主な対策

M&Aにあたっては、専門のプロジェクトチームを組成し、買収前の十分な調査・検討・審議の上、判断を行うとともに、買収後のPMI(Post Merger Integration)計画を策定、実行しております。

⑧研究開発活動リスク

 

 

内容

現在、エレクトロニクス分野における、新技術、新製品の開発・発展はとどまるところを知りません。ロームグループも激しい技術、製品開発競争の渦中にあり、常に新製品・新技術を生み出すべく、材料から製品に至るまで日夜研究と開発に努めております。2022年3月期の研究開発費は連結売上高の約8%を占めております。

この研究開発活動において、例えば新製品開発のための技術力、開発力等の不足により、計画が大幅に遅れることで、市場への投入のチャンスを逸する可能性があります。また、開発が完了した新製品が市場で期待したほど受け入れられない可能性もあります。これらが現実に生じたときには、業績に影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

今後5年程度の売上拡大につながるテーマに重点的にリソースを配分しますが、その先に想定される新規分野にも一定のリソース配分を行い、長期的かつ持続的成長を可能にする研究開発力の強化を図ります。具体的には、研究開発部門のリソースの50%を注力する現有技術分野に配分し、注力市場のうち新技術が必要なところや、技術は同じでも異なる市場に適用するところへは各々20%ずつを、残りの10%については新技術を使った新市場に配分する予定です。社内でカバーしにくい分野は社外との協業も行います。

また、ロームでは顧客のニーズを先取りする迅速な新製品開発に注力することに加えて、長期的な視野での技術革新にも努めております。10年後、20年後のロームのイノベーションに向かって、多くの企業や大学、研究機関と連携し毎年研究テーマの見直しを行いながら研究開発を進めております。

10年後あるいはそれ以上先の将来に関しては、国内外の多くの大学との共同研究など、外部との連携を強化しております。さらに、オープンイノベーションの取り組みとしてCVC(Corporate Venture Capital)をスタートしました。

 

 

⑨気候変動に関するリスク

 

 

内容

世界的な気候変動により、過去に例のない異常気象による被害、炭素税の導入やステークホルダーからの要請への対応に伴う想定を超える費用の発生、また、リスクの顕在化に伴うブランド価値の低下等、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

環境課題について、2021年4月に「ロームグループ環境ビジョン2050」を策定し、「気候変動対策」、「資源循環型社会の実現」、「自然サイクルと事業活動の調和」を目標として設定し、取組みを進めております。ロームグループでは、気候変動対策に関して、継続的な省エネ施策に取組むことによる温室効果ガス排出量の抑制に努め、さらに太陽光発電を含めた再生可能エネルギーの導入に取組むなど、グループ全体において気候変動対策を推進しております。

2021年9月に脱炭素社会実現に向けた「2030年中期環境目標」を改定しました。同時に、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)※1の提言に賛同し、TCFD提言に沿った情報開示に取り組むことを決定しました。

現在、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4つのテーマについて、TCFD提言に基づく開示の準備を進めており、9月頃を目途に統合報告書及び弊社Webページにてご報告させていただく予定です。

また、2022年4月には事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際企業イニシアティブ「RE100」※2に加盟しました。

※1 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応方法を検討する目的で設立された組織。企業等に対して気候変動関連リスクおよび機会に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」を把握・開示することを推奨している。

※2 RE100(100% Renewable Electricity)

The Climate GroupがCDPとのパートナーシップのもとで主催し、We Mean Business連合の一部としても運営している国際企業イニシアティブ。日本では2017年より日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)が、RE100の公式地域パートナーとして日本企業の参加と活動を支援している。

⑩新型コロナウイルス感染症に関するリスク

 

 

内容

ロームグループでは、2020年初頭から世界的に蔓延を始めた新型コロナウイルス感染症によって、中国・フィリピン・マレーシアなど世界各地域の生産・販売拠点における規制を受けて、生産の一時停止や稼働率の低下などを強いられ、企業活動に制約を受けておりました。現時点では平常時の稼働状況に戻りましたが、今後も感染拡大の状況によってはロームグループの事業活動に更なる影響を与える可能性があります。

こうした事業活動に対する直接の影響に加えて、当該感染症が世界経済全体に波及することによりエレクトロニクス市場の動向、またロームの受注・売上に対して間接的に大きく影響することが考えられます。

主な対策

ロームグループでは、従業員、顧客およびサプライヤー様の安全を第一に考え、感染リスクの継続的な低減のために、在社率の低減、職場でのソーシャルディスタンスの確保、マスクの着用の徹底、在宅勤務や時差出勤などフレキシブルな働き方の実施とそれを可能とするITツールの導入と活用の促進など種々の対策を実施しております。

顧客に対する供給維持対策としましては、稼働縮小や一時停止に対応するため、一部の機種をロームグループ他拠点およびOSAT(※)への移管を進め、さらにフレキシブル生産ラインや省人化ラインの開発など、起こりうるリスクの低減に向けて長期視点で対策に取組んでおります。

※ OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)

半導体製造における後工程である組み立てとテストを請け負う製造業者のこと。

 

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得