文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、「価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献します。より良い地球環境の実現に努め、倫理的・社会的責任を果たすとともに、顧客・株主・従業員をはじめ全ての人々を大切に、企業価値の最大化を目指して、誠心誠意をもって「考働(※)」します。」を経営理念に掲げ、「モノづくりからコトづくり」「製造業から創造業への変革」の実践と、「品質、コスト、納期、サービス、技術」などあらゆる面で最上級を目指すトップノッチ経営を打ち出し、積極的な成長戦略を展開し、企業価値の向上を図ります。
これらを踏まえ、当社グループは中期成長目標「Vision 2025」に基づき、売上高と営業利益率の持続的な成長を経営指標として事業運営を行っています。
※考働:考えて働くという当社の造語
(2)中期的な成長戦略、経営環境と対処すべき課題
当社グループは、アルミ電解コンデンサ、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、小形リチウムイオン二次電池等の電子デバイスを主体としたコンデンサ事業と、家庭用/公共・産業用蓄電システム、各種電源、機能モジュール、応用関連機器等の回路製品を主力製品としたNECST(Nichicon Energy Control System Technology)事業を展開し、「エネルギー・環境・医療機器」、「自動車・車両関連機器」、「白物家電・産業用インバータ機器」、「情報通信機器」の4市場を重点分野と定め、高信頼性、高安全性、高機能性を追求し、競争力に優れる新製品開発により社会課題の解決に貢献し、既存事業の拡大と新規事業の創出に努めています。
①低炭素社会の実現とキーテクノロジーの進展に向けた事業機会の獲得
コンデンサ事業では、アルミ電解コンデンサの幅広い製品群と国内外の生産・販売体制を強みとし、モビリティ、通信、環境関連の成長市場にフォーカスし、品質、コスト、納期、サービスに渡る事業基盤を強化、拡充します。また、金属蒸着フィルムから独自開発、生産するxEV(電動車)用フィルムコンデンサでは、需要の拡大を成長機会と捉え、販売拡大とグローバル生産体制の強化に向け、積極的に経営リソースを投下します。コンデンサ事業で創業以来培った強みを今後も継続的に進化させていくため、技術面ではニーズ開発から商品開発、産学連携によるシーズ開発を、生産面では共通指標をベースとしたKPI目標管理を導入し、プロセス強化に取り組んでいきます。
NECST事業では、エネルギー・環境関連の幅広い製品群とスイッチング電源から応用機器までをカバーする電源技術を生かし、脱炭素化のメガトレンドを受けて、製品群のさらなる充実を図ります。とりわけ、環境関連事業では、世界的な脱炭素化の高まりによる再生可能エネルギー、蓄電市場拡大への対応と、蓄電、電力制御技術を活かしたカーボンフリーなトータルシステム展開を強化します。EV(電気自動車)関連事業では、ガソリン車規制により急速に拡大するEVシフトへの対応として、急速充電器、パワー・ムーバー®(外部給電器)、V2H(Vehicle to Home)で社会充電インフラを拡充していきます。スイッチング電源においては、ユーザー対応力でトップシェアを堅持する強みを生かし、特に空調機器、ロボット、5G(第5世代移動通信システム)通信などの成長市場へ拡大を目指します。応用機器、分散電源事業では、大型特殊電源、医療用/学術用加速器電源でグローバル展開を図るとともに、蓄電、エネルギーマネジメント技術で社会インフラシステムへ貢献します。また、アライアンス戦略やソリューションによる価値創造ビジネスの拡大を強化します。
加えて、小形リチウムイオン二次電池、家庭用蓄電システム、V2Hに代表されるナンバーワン、オンリーワンの革新的な製品・技術開発体制を強化し、社会課題の解決に貢献する製品開発をさらに加速していきます。
②外部環境に左右されない強い経営体質への変革
SDGsやカーボンニュートラル等により、循環経済やシェアリングエコノミーといった新しい価値観が世界規模で広がりを見せています。また、with COVID19により、産業構造や社会経済の変革をもたらし、DX(デジタルトランスフォーメーション)化の進展と相まって、大きなビジネスチャンスを生み出す可能性が高まっています。これらを受け、クルマの電動化とEVへのシフトが飛躍的に進み、人びとの生活では5G、AI、IoT等デジタルテクノロジーの革新的進歩が見られ、自動化や省電力化の需要が先進国だけでなく新興国にも拡大し、これを支えるための発電コストの低減による再生可能エネルギーの主力電源化が進展していくことが予想されます。
パラダイムシフトと不確実性がより一層増すなか、当社グループでは、中長期視点での成長を成し遂げていくにあたり、「G:グリーン(環境)」と「D:デジタル(DX)」が重要なポイントになると考えています。
G(環境)については、気候変動問題が世界的な課題になる中、関連マーケットもさらに巨大化し、環境配慮型の当社の製品・ビジネスのチャンスもさらに大きくなると予想されます。再生可能エネルギーの活用を拡大する蓄電システムをはじめ、気候変動ニーズに対応したコンデンサ事業、NECST事業の各製品をさらにレベルアップしていくことで競争優位性をさらに高めていきます。
また、D(デジタル)については2021年6月に「デジタル化推進室」を設け、DXへの取り組みを本格化しています。企業競争力の強化という面でデジタル化は必須であり、とりわけコロナ禍以降、リモートワークの普及など急速に社会が変化している中、DXの推進がより不可欠になっています。事業成長では単に良い製品・技術を生み出すだけでなく、生産性の向上や投資効率の向上によって収益体質を高めることも必要条件であり、DXを駆使して「稼ぐ力」に磨きをかけることで、次なる成長のための設備投資や研究開発投資、優秀な人材の確保といった好循環を生み出していきます。サステナブルな社会に貢献していくには、まず当社グループ自身が収益を上げ持続可能であることを念頭に、DXを成長ドライバーとして各部門の業務を合理化・効率化し、ビジネスの創出と利益体質の構築に取り組んでいきます。
③ESG経営の構築と推進
当社グループではESGで評価される企業を目指して「サステナビリティ方針」を定め、持続的な成長と企業価値の増大に向けて、当社製品による地球環境への貢献と自社での対応取り組み、多様な働き方など人材面の基盤強化、コーポレートガバナンスやコンプライアンス体制の強化に努めています。
環境課題については、自社拠点において太陽光で発電した電力を蓄電し、これを電気自動車への充電や生産設備への給電を無駄なく効率的に行う複合システムを設置し、生産工場などの大規模施設における再生可能エネルギーの新たな活用方法によるCO2削減に取り組んでいます。さらに「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による提言への賛同や、気候変動が事業に与えるリスク・機会について分析を進め、ガバナンス・戦略などの関連する情報開示にも取り組んでいきます。
また、当社グループでは「人」こそ最大の経営資源であり、会社のエネルギーであるとの観点に立ち、従業員一人ひとりが社会や時代のニーズを敏感に察知し、コンプライアンスへの意識を高く持ちながら考働していくこと、やりがいや成長を実感でき、能力を発揮できるよう、人材面での基盤強化を重視しています。社会との接点においては、産学連携にも注力しており、エネルギーの地産地消とスマート社会の創造に寄与することを目的にスタートした東京大学生産技術研究所との包括的な産学連携研究協力協定など、大学機関との研究開発活動も積極的に推進しています。
これらに加え、コーポレートガバナンスについては、取締役会の経営の監督と執行の役割の一層の明確化を図るため、社外取締役比率を3分の1以上としており、取締役会の諮問機関として過半数を社外役員で構成する指名・報酬委員会を設置し、取締役の指名および報酬等に関する手続きの公正性、透明性、客観性を確保しています。コンプライアンス体制の強化では、業務の適正を確保するための体制ならびに財務報告の信頼性を確保するための体制を充実させ、一層の内部統制の整備・運用を推進しています。
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