(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済においては、感染対策と社会経済活動の両立を進める中、所得や雇用環境の改善等の景気の持ち直しの動きが見られました。また、住宅市場では、コロナ禍での生活様式の変化を背景に、住宅取得需要は底堅い状況が続きました。そのような状況のなか、新設住宅着工は戸建住宅・賃貸住宅ともに持ち直しの動きが継続し、子育て世代の住宅取得支援制度の創設や環境性能等に応じた住宅ローン減税制度の導入等、住宅取得への政策面での追い風もあり、2021年(1月~12月)の新設住宅着工戸数は85万6千戸と前年比5.0%増となり5年ぶりに増加となりました。
当社グループはこのような経営環境のなか、住宅の省エネルギー性能獲得のための一次エネルギー計算サービスや補助金サポート事業の拡充、デジタル化支援のためのBIM事業拡大、多層階木造化のためのインフラ整備、木造構造の実験・研究施設「木構造技術センター(ティンバーラボ)」の開設など積極的な投資を行いました。
一方、アメリカの住宅需要増大に端を発した世界的な木材価格高騰(ウッドショック)により、木材不足と価格高騰が起こりましたが、当社は長年構築したサプライチェーンにより、木材の安定供給を行うことができました。
これらの施策によって、各分野の結果は以下の通りとなりました。
<住宅分野>
世界的な木材不足と価格高騰の中、構造計算と材料供給の一体型サプライチェーンにより、SE構法による住宅構造の出荷は1,473棟、売上高は7,240百万円(前年同期比31.7%増)となり、過去最高を大きく更新いたしました。また、SE構法登録施工店は新規に53社加入し、577社(前年同期比5.7%増)となりました。
<大規模木造建築(非住宅)分野>
新型コロナウイルス感染症の影響により公共工事等の工期が大幅に延長している中、売上高866百万円(前年同期比51.1%増)となりました。
また、積極的なセミナー活動により、新規依頼件数は535件(前年同期比28.0%増)、2020年設立の子会社である㈱木構造デザインが展開するプラットフォーム事業への参加会社は20社となりました。
<その他(開発・サポート部門)>
2021年4月より説明義務化となった住宅の省エネ性能に対して木造住宅に特化した戦略をとったことにより、木造住宅における一次エネルギー計算書の出荷は、1,615棟(前年同期比56.2%増)となり、住宅の省エネルギー化政策の追い風を受け、木造耐震設計事業との相乗効果を発揮し成長いたしました。
<技術分野>
脱炭素社会へ向けた、建築物木造化の流れを受け、より高い強度の木造接合へのニーズが高まるなかで、木造構造の実験・研究施設「木構造技術センター(ティンバーラボ)」を2022年2月に開設いたしました。
<子会社および関連会社>
サブスク型セカンドハウス事業を行う㈱Sanuとの合弁会社N&S開発㈱を設立し、セカンドハウスの商品開発を行うとともに、ネットワークを利用したセカンドハウス建設を計画し、需要増加へ向けた取り組みをスタートさせました。
また、㈱良品計画との合弁事業である㈱MUJI HOUSEにおいても郊外型平屋商品「陽の家」のBtoBへの販売を開始し、新たに事業領域を拡大しています。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は8,571百万円(前年同期比33.3%増)となりました。利益につきましても、営業利益396百万円(前年同期比40.1%増)、経常利益419百万円(前年同期比29.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益305百万円(前年同期比35.4%増)となり、売上・利益ともに過去最高となりました。また売上高営業利益率については4.6%、ROE(自己資本当期純利益率)は14.9%となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における資産合計は6,823百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,719百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が631百万円、売掛金が508百万円、有償支給未収入金が317百万円増加したこと等によるものです。
当連結会計年度末における負債合計は4,634百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,524百万円増加いたしました。これは主に買掛金が1,050百万円、電子記録債務が269百万円、預り保証金(完成保証基金の預り金を含む)が54百万円増加したことによるものです。
当連結会計年度末における純資産合計は2,189百万円となり、前連結会計年度末に比べ195百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金215百万円の増加によるものです。
この結果、連結ベースの自己資本比率31.7%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益が419百
万円(前年同期比33.8%増)であったことに加え、売上債権及び仕入債務の増加、有形固定資産及び無形固定資
産の取得による支出等により、前連結会計年度末に比べ631百万円増加し、当連結会計年度末には3,537百万円
となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は997百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益419百万円、減価償却費が95百万円、仕入債務の増加1,320百万円による増加の一方、売上債権の増加による減少831百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は285百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出100百万円、無形固定資産の取得による支出141百万円及び、関係会社株式の取得28百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は80百万円となりました。これは主に、配当金の支払額90百万円等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループの事業セグメントは、木造耐震設計事業及びその他の事業でありますが、木造耐震設計事業の全セグメントに占める割合が高く、その他の事業は開示情報としての重要性が乏しいため、生産実績のセグメント別の記載を省略しております。
なお、当社グループにおける生産は、構造計算、省エネルギー計算等であり、当連結会計年度の実績は次のとおりであります。
|
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
生産実績(千円) |
235,369 |
113.0 |
b.受注実績
当社グループの事業セグメントは、木造耐震設計事業及びその他の事業でありますが、木造耐震設計事業の全セグメントに占める割合が高く、その他の事業は開示情報としての重要性が乏しいため、受注実績のセグメント別の記載を省略しております。
なお、当社グループにおける当連結会計年度の受注実績は、次のとおりであります。
|
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|||
受注高 (千円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前年同期比 (%) |
|
受注実績 |
8,321,849 |
131.2% |
698,637 |
92.8% |
c.販売実績
当社グループにおける当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
|
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
木造耐震設計事業(住宅分野)(千円) |
7,240,483 |
131.7 |
木造耐震設計事業(非住宅分野)(千円) |
866,379 |
151.1 |
その他(千円) |
465,038 |
128.5 |
合計(千円) |
8,571,902 |
133.3 |
(注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
㈱MUJI HOUSE |
1,123,194 |
17.5 |
1,297,164 |
15.1 |
㈱アールシーコア |
1,036,397 |
16.1 |
1,267,679 |
14.8 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 財政状態
財政状態の概況につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載しております。
b 経営成績
経営成績の概況につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績等の状況」に記載しております。
c キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの概況につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
d 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金需要のうち主なものは、売上原価に係るもののほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。運転資金は自己資金を基本としており、金融機関からの借入は行っておりません。
将来の成長のための内部留保については、成長分野におけるシェア拡大や人員体制の整備、新技術の開発のための投資に資源を優先的に充当してまいります。また、各事業のさらなる強化のため社内業務システムや設計ソフトウエアの開発投資、また、脱炭素社会へ向けた建築物木造化の流れを受け、より高い強度の木造接合に関する研究開発投資を継続していきます。
当連結会計年度においては、基幹業務システム及び設計ソフトウエアへの開発投資に加えて、木造構造の実験・研究施設「木構造技術センター(ティンバーラボ)」を開設するための投資を実施いたしました。この結果、当連結会計年度における設備投資の総額は265,789千円となりました。これらの投資資金は、自己資金にて賄っております。
e 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
貸倒引当金
当社グループは、売掛債権等について貸し倒れの可能性を予測する必要があります。これらの債権の回収可能性を検討するにあたっては、各相手先の業績、債権残高、財政状況等を考慮して個別に信用リスクを判断する等、重要な判断が必要であります。相手先の財政状態が悪化した場合は貸倒引当金を積み増すことがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
有価証券の評価損
その他有価証券について、時価が取得原価に比べて著しく下落した場合、回復する見込みがあると認められるものを除き、合理的な基準に基づいて減損処理を行うこととしております。今後、株式市場等の状況によっては、有価証券評価損を計上する可能性があります。
② 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。また、今後の経営成績に影響を与える課題につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、事業環境、法的規制等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制の強化や、人材の確保と育成等に力を入れ、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切な対応に努めてまいります。
③ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりでありますが、今後収益を拡大するためには、既存の事業の更なる拡大、新たなシステム及びサービスの開発、事業規模の拡大に合わせた人材の確保等が必要であると認識しており、これらの課題に対して最善の事業戦略を立案するよう、努めてまいります。
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