文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「日本に安心・安全な木構造を普及させる。」「日本に資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくる。」ことを目標としております。その上で、この国の木造住宅の資産価値を維持向上させることを当社グループの取り組む課題と捉え、その解決に向け次の5つのテーマを掲げております。
・住宅の安全性の確保(大地震発生時の安全性)
・住宅の耐久性の確保(経年劣化に対する対策)
・住宅の利用価値の確保(間取りの可変性)
・住宅の品質に対する第三者による証明(流通価値の確保)
・住宅のデザイン品質の確保(時代の変化に耐えられる普遍的デザインの追求)
これらのテーマを当社グループのみでは解決が困難であることから、全国の住宅供給会社とのネットワークを形成し、その問題解決を図り、社会の仕組みとして築き上げてまいります。
(2)経営戦略等
当社グループは、以下の事項を成長戦略と位置づけ、事業の拡大を図ってまいります。
① 住宅分野での事業拡大
2022年3月期末時点の登録施工店は577社であります。耐震性の高い木造住宅の更なる普及に向け、工務店を中心とした新規顧客の開拓を着実に進めてまいります。
また、高付加価値の工務店ブランドである「重量木骨の家」についても、注目度・認知度を更に上昇させるべく、WEBサイトコンテンツの充実やSNSを活用した情報発信などのプロモーションを積極的に推進し、ブランディングを強化します。
今後も、登録施工店ネットワークを通じたSE構法の更なる普及により、住宅分野の収益基盤の拡大を図ってまいります。
② 大規模木造建築(非住宅)分野での事業拡大
2010年10月施行の「公共建築物等木材利用促進法」を改正した「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が2021年10月に施行され、木材利用を促進する対象が公共建築物だけでなく民間建築物にも拡大されたことにより、大規模木造建築(非住宅)の建築需要が更に高まり、当社グループの受注は堅調に推移しております。
そのような環境の中、当社では株式会社ネットイーグルとの合弁会社として「株式会社木構造デザイン」を2020年2月に設立し、これまでのSE構法に加え、SE構法以外の大規模木造建築(非住宅)の構造計算及び生産設計を事業化するとともに、ゼネコン・設計事務所と構造加工工場をつなぐ大規模木造マッチングプラットフォーム事業を推進しております。
今後は、大規模木造非住宅建築に対応した設計システム等の技術研究開発や、構造加工品等の生産・供給体制を更に強化し、当社グループとして非住宅分野における収益の拡大を図ってまいります。
③ 新分野への投資の拡大
当社グループでは、新しい住まい方やライフスタイルに関する研究・企画開発を行う企業に投資を行い、事業領域の拡大を図っております。
これまで、小屋・可動産活用による遊休地の企画・開発事業やまちづくり支援事業を行うYADOKARI株式会社との資本業務提携や、千葉県いすみ市にオープンしたグランピング施設「いすみフォレストリビング」へのSE構法によるアウトドアデッキの提供など、当社グループの木造に関する知見や構造計算ノウハウを活用した新しいビジネスモデルの創出と展開をすすめてまいりました。
2022年4月には、サブスク型セカンドハウス事業を行う株式会社Sanuとの合弁会社N&S開発株式会社を設立し、セカンドハウスの商品開発を行うとともに、当社グループの施工店ネットワークを利用したセカンドハウス建設の取り組みをスタートしております。N&S開発株式会社は、今後、株式会社Sanuが海に近接したエリアにおいて展開を予定している「海Sanu(仮称)」の第一弾の開発及び運営を行う会社で、海Sanu(仮称)に設営される宿泊棟(SANU CABIN)にはSE構法がスペックインされ、当社グループの木造建築に関する構造計算ノウハウや資材調達・施工ネットワークを提供する予定です。
今後も新たな分野への投資を継続し事業規模の拡大を推進してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは主な経営指標として、企業の事業活動の成果を示す営業利益を注視し、収益性の指標に営業利益率を掲げているほか、資本及び資産の効率性判断の指標にROE(自己資本利益率)、財務の安定性判断の指標にネットキャッシュ(注1)及び、流動資産構成比率(注2)を掲げております。達成状況につきましては、月次の取締役会及び月1回以上の執行役員会等で定期的にモニタリングを行ってまいります。
(注1)ネットキャッシュは以下の方法にて算定しております。
ネットキャッシュ=現金及び預金-預り保証金
(注2)流動資産構成比率は以下の方法にて算定しております。
流動資産構成比率=流動資産÷総資産
(4)経営環境
当社グループが属する住宅建設市場では、コロナ禍での生活様式の変化を背景に、住宅取得需要は底堅い状況が続きました。そのような状況のなか、新設住宅着工は戸建住宅・賃貸住宅ともに持ち直しの動きが継続し、子育て世代の住宅取得支援制度の創設や環境性能等に応じた住宅ローン減税制度の導入等、住宅取得への政策面での追い風もあり、2021年(1月~12月)の新設住宅着工戸数は85万6千戸と前年比5.0%増となり5年ぶりに増加となりました。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループにおける経営方針、経営戦略を実現するための対処すべき課題は以下のとおりであります。
① 木造耐震設計事業住宅分野の収益の拡大
当社グループは、木造耐震設計事業を主力事業としておりますが、この事業の安定的・継続的な発展が収益基盤の基礎として必要であると考えております。そのためには、登録施工店ネットワークの継続的な拡大に向けて、工務店を中心とした新規顧客の開拓を着実に進めていくことが必要不可欠であり、引き続き営業体制の強化を進めてまいります。
また、高付加価値の工務店ブランドである「重量木骨の家」についても、パートナー工務店の拡大とともに、WEBプロモーションを推進し、ブランド化を進めてまいります。
今後も、登録施工店ネットワークを通じたSE構法の更なる普及により、住宅分野の収益基盤の拡大を図ってまいります。
② 木造耐震設計事業大規模木造建築(非住宅)分野での収益の拡大
国内における木材利用の促進政策として2010年10月に「公共建築物等木材利用促進法」が施行されたことにより、国や地方自治体の関与する公共建築物への木材利用が促進されております。また、2050年のカーボンニュートラル実現と脱炭素社会の実現を目指し、「公共建築物等木材利用促進法」を改正した「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が2021年10月に施行され、木材利用を促進する対象が公共建築物だけでなく民間建築物にも拡大されるとともに、脱炭素社会の実現に向けて積極的に木材を活用し、森林の適正な整備や木材自給率の向上を目指すこととなりました。
そのような状況を踏まえて、集合住宅や病院・保育園等においても木造建築のニーズが高まっておりますが、これら住宅よりも規模の大きい木造建築においては、当社グループがこれまで培った構造計算ノウハウが必要となることから、当社グループの成長分野として位置づけ事業展開しております。
また、SE構法以外の木造構造計算ニーズの高まりに対応し、S構法以外の大規模木造非住宅建築物の構造設計と生産設計を行う「株式会社木構造デザイン」をネットイーグル株式会社との合弁会社として2020年2月に設立いたしました。当事業年度においては、2020年10月から開始したゼネコン・設計事務所と構造加工工場をつなぐ大規模木造マッチングプラットフォーム事業では、構造加工工場のネットワーク化をすすめることで引き続き生産体制の強化をすすめております。
合わせて、脱炭素社会へ向けた建築物木造化の流れを受け、より高い強度の木造接合へのニーズが高まる中で、木造構造の実験・研究施設として「木構造技術センター(ティンバーラボ)」を2022年2月に開設いたしました。
今後も大規模木造非住宅建築に対応した設計システム等の技術研究開発や、構造加工品等の生産・供給体制を更に強化し、当社グループとして非住宅分野における収益の拡大を図ってまいります。
③ 構造加工品の供給体制の強化
当社グループは全国10か所の構造加工工場に集成材等の加工を委託しております。
当事業年度においては、2022年3月に浜松工場が稼働を開始し、委託先の構造加工工場は全国10工場となりました。
今後も住宅分野及び非住宅分野の拡大に対応して構造加工工場の増設を行うとともに、M&Aによる構造加工の内製化も視野に、供給体制の強化を図ってまいります。
④ 省エネルギー計算サービス等の環境設計量産体制の構築と収益の拡大
2021年4月から住宅の省エネ性能の説明が義務化され、2025年度にはすべての建築物・住宅において、省エネ基準への適合が義務化される見込みとなっております。
当社グループでは2017年から省エネ計算サービスを開始しておりますが、ニーズの高まりを受け、木造建築の省エネルギー計算サービスの量産体制を整えるとともに、収益基盤の拡大を図ってまいります。
⑤ SE構法中古住宅物件の買取再販事業創設に向けて
新築マンションの供給が年々減少する中、中古住宅を含む戸建住宅への期待とニーズはますます高くなってきております。そのような状況の中、当社グループは「日本に資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくる」ことを目標の一つとして掲げております。
この目標を達成するためには、当社グループがこれまでの27年間で出荷してきた約2万6千棟のSE構法物件について、高い構造品質と省エネルギー性能を備える既存住宅であることを示すための戦略が必要であると考えております。一方で、木造による建築が多様化している中において、非住宅物件の木造化を推進するためにグループ会社である株式会社木構造デザインと連携し、木造化を推進するコンサルティング機能を充実させることも必要であると考えております。
当社グループとしましては、上記の事象を発展充実させることにより、SE構法による中古住宅物件の買取再販を事業化したいと考えており、今後の事業化に向けて必要な施策を実行してまいります。
⑥ 内部管理体制の強化
当社グループが更なる事業拡大、継続的な成長を遂げるためには、確固たる内部管理体制構築を通じた業務の標準化と効率化の徹底が重要であると考えております。
当社グループとしましては、内部統制の環境を適正に整備し、コーポレート・ガバナンスを充実させることによって、内部管理体制の強化を図り、企業価値の最大化に努めてまいります。
⑦ コンプライアンス体制の強化
当社グループは、法令、定款及び社内規程等の遵守は勿論のこと、日々の業務を適正かつ確実に遂行し、クリーンで誠実な姿勢を企業行動の基本として、顧客の信頼を得ると同時に事故やトラブルを未然に防止する取り組みを強化してまいります。
今後、更なる事業拡大と企業価値の向上に向けて、引き続き日常業務における関連法令の遵守を徹底し、各種取引の健全性の確保、情報の共有化等を行うとともに、社内啓蒙活動を実施し、透明性のある管理体制の構築を図ってまいります。
⑧ ウッドショックへの対応
米国の住宅需要の急激な拡大と中国での木材需要の増大により、世界的に木材資源の需給バランスの不均衡を背景とした木材価格の高騰及び供給体制の混乱が継続しております。
そのような状況の中、当社グループでは構造設計を起点とした資材調達・施工までの一貫したサプライチェーンマネジメントにより、登録施工店に対する資材の安定供給に努めております。具体的な取り組みとしては、構造加工工場とのシステム連携や構造計算と連動した発注システムの強化によるサプライチェーンの強化を行うとともに、国産材利用を促進してまいります。現在、使用材のうち国産材の利用率は約3割ですが、SE構法における杉材等の技術評定は2020年9月に取得済みで国産材比率を上げる準備は整っております。
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