(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。なお、当社グループの事業は、デジタルコミュニケーション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
①財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,801,995千円となり、前連結会計年度末に比べ164,389千円減少いたしました。これは主に売掛金及び契約資産が226,499千円増加し、現金及び預金が404,208千円減少したこと等によるものであります。固定資産は1,322,785千円となり、前連結会計年度末に比べ944,870千円増加いたしました。これは主に有形固定資産が13,150千円、無形固定資産が640,109千円、投資その他の資産が291,609千円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は、3,125,628千円となり、前連結会計年度末に比べ780,292千円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は870,875千円となり、前連結会計年度末に比べ365,203千円増加いたしました。これは主に買掛金が199,710千円、1年内返済予定の長期借入金が33,508千円、未払法人税等が12,516千円増加した等によるものであります。固定負債は333,322千円となり、前連結会計年度末に比べ6,822千円減少いたしました。これは主に社債が17,000千円、長期借入金が13,728千円減少したこと等によるものであります。
この結果、負債合計は、1,204,198千円となり、前連結会計年度末に比べ358,381千円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は1,921,429千円となり、前連結会計年度末に比べ421,911千円増加いたしました。これは、主に資本金が244,433千円、資本剰余金244,433千円、非支配株主持分が38,649千円増加した一方で、利益剰余金が115,423千円減少したことによるものです。
②経営成績の状況
当連結会計年度における売上高は1,743,880千円(前年同期比26.7%増)、売上総利益は816,798千円(前年同期比19.9%増)、調整後EBITDAは71,431千円(前年同期比17.4%増)、営業損失は42,388千円(前年同期は営業利益31,820千円)、経常損失は30,745千円(前年同期は経常利益42,504千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は115,423千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益22,829千円)となりました。
当連結会計年度における経営成績の詳細は次のとおりであります。
なお、調整後EBITDAは、減価償却費、のれん償却費や株式報酬費用の非現金支出項目、ならびに寄付金支出を控除した収益指標であり、当社グループの経常的な事業収益力を測る指標として今後モニタリングしていく方針です。
(売上高)
当連結会計年度における売上高は1,743,880千円(前年同期比26.7%増)となりました。これは主に、広告運用サービスにおける広告単価の減少の影響が継続した一方で、メディアマネジメントサービスにおけるクライアント獲得が順調に推移したこと、また、プロモーション企画・PRサービスにおいて新規クライアントの獲得が進捗したことや株式会社OGS及び株式会社ナンバーナインを子会社化したことによるものです。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度における売上原価は927,082千円(前年同期比33.3%増)となりました。これは主に、広告運用サービスにおける広告配信費用が減少した一方で、メディアマネジメントサービスにおいて、人員強化に伴う人件費が増加したこと、また、プロモーション企画・PRサービスにおける外注費用ならびに業務委託費が増加したことや、株式会社ナンバーナインにおける印税支払い等が増加したことによるものです。この結果、当連結会計年度の売上総利益は816,798千円(前年同期比19.9%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は859,187千円(前年同期比32.3%増)となりました。これは主に、採用関連費用やオフィス関連費用等を削減した一方で、企業版ふるさと納税の寄付を実施したこと、新規の株式取得や事業買収に伴うのれん償却費が発生したことや、新たにグループに加わった株式会社ナンバーナインの販売費及び一般管理費が計上されたことによるものです。この結果、当連結会計年度の営業損失は42,388千円(前年同期は営業利益31,820千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当連結会計年度における営業外収益は15,921千円、営業外費用は4,279千円となりました。これは主に、助成金収入12,388千円、支払利息3,501千円によるものです。この結果、当連結会計年度の経常損失は30,745千円(前年同期は経常利益42,504千円)となりました。
(特別損失、親会社株主に帰属する当期純損失)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は115,423千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益22,829千円)となりました。これは株式会社morondoならびにSuMiKaに関連するのれんを減損処理したこと、また、投資有価証券評価損を計上したことによるものや、法人税、住民税及び事業税27,661千円、法人税等調整額△8,464千円を計上したことによるものです。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、1,247,627千円となり、前連結会計年度末に比べ404,108千円減少いたしました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は113,892千円(前年同期は27,082千円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失が89,058千円、売上債権の増加額が53,329千円、法人税等の支払額が11,707千円あった一方で、のれん償却額が71,482千円、減損損失が39,324千円、仕入債務の増加額が12,007千円、助成金の受取額が12,388千円あったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は839,341千円(前年同期は248,297千円の使用)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出が250,913千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が531,584千円、事業譲受による支出が40,000千円、関係会社株式の取得による支出が10,500千円あったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は321,303千円(前年同期は740,759千円の獲得)となりました。これは、長期借入金の返済による支出が145,667千円、社債の償還による支出が27,000千円あった一方で、株式の発行による収入が67,592千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入が417,918千円、新株予約権の発行による収入が8,146千円あったこと等によるものであります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
⑤生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループの主たる業務は、インターネットに関する事業であるため、生産に該当する事項はありません。
b.受注実績
当社グループの事業は、受注確定から売上計上の期間は最短5日程度から2.5ヶ月程度であります。
よって、当連結会計年度末日現在の受注残高は、年間売上高に対して僅かであるため、その記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループはデジタルコミュニケーション事業の単一セグメントであります。
事業の名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
デジタルコミュニケーション事業 |
1,743,880 |
26.7 |
合計 |
1,743,880 |
26.7 |
(注)1.当社グループはデジタルコミュニケーション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載はしておりません。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
popIn株式会社 |
181,397 |
13.2 |
134,606 |
7.7 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用とともに、資産及び負債または損益の状況に影響を与える見積りを用いております。これらの見積りについては、過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なることがあります。
当社の連結財務諸表を作成するにあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
当連結会計年度におけるわが国の経済は、ウクライナ危機等地政学リスクの上昇に端を発した国際情勢の緊迫化の影響が一部あり、また、新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動の停滞の影響を受け、景況感が悪化し不透明な状況が続いております。そういったマクロ環境下で、当社グループが属するインターネット広告領域においては、引続き一部広告主による出稿控えなども見られましたが、全体的には過去数年にわたる成長基調が継続しており、当社グループにとって重要な市場でもあるマスメディア媒体のデジタル化が更に進行するなど、事業機会の拡大につながる展開も見受けられました。
当社グループでは、メディアマネジメントサービスにおける既存取引先との関係強化とデジタルトランスフォーメーションの推進支援による運営メディアの獲得や、既存メディアの収益力強化に注力しております。当連結会計年度につきましては、2021年5月に開示した事業戦略の骨子に従い、事業を展開いたしました。まず、非連続成長領域への投資につきましては、2021年6月にECソリューションを開発・展開していくSTOKK株式会社を合弁会社として設立し、メディアECソリューションの研究開発を実施しております。また、2021年7月にはNewsletter Asia株式会社がオンラインサロン事業『田端大学』を譲り受けました。当社グループが今期注力していく領域の一つである、個人課金ビジネス領域を強化していくための施策の一つとして展開してまいります。個人課金ビジネス領域については、「クリエイターエコノミー構想」を掲げ、個人の発信者が主体となり、持続的な活動が担保されるエコシステムを構築してまいります。本領域においては、既存のメルマガ事業の展開に加え、『田端大学』の展開を強化してまいります。これらの事業に対して、当社グループがこれまで培ってきた事業開発ノウハウや、事業のスケール拡大に有効な制作・編集効率化ノウハウを活用することで、個人の情報発信を支援し、ニュースレターサービスとして事業をさらに拡大させていく方針です。さらに、2021年10月には派遣業界で最大級のeラーニングサービス等を展開するHRテック企業である株式会社manebiに出資するとともに、「大蔵ゴルフスタジオ」の屋号にてゴルフクラブフィッティングサービスを展開する株式会社OGSの全株式を取得いたしました。また、インターステラテクノロジズ株式会社との資本提携を実施するなど、宇宙関連領域に対する投資も強化いたしました。宇宙領域については、宇宙事業開発室を設立した後、それを発展させる形で2022年4月にINCLUSIVE SPACE CONSULTING株式会社を設立し、衛星データ活用プラットフォーム「Tellus」を活用した衛星データ利活用事業の展開を開始しました。直近では、経済産業省「SERVISプロジェクト」における地域課題解決のための提案募集に、北海道大樹町と共同応募を実施しました。
2022年1月には株式会社ナンバーナインを子会社し、電子コミック領域へと展開し、クリエイターエージェンシーサービスの展開を開始しました。クリエイターエージェンシーサービスにおいては、デジタルプラットフォームでの漫画の配信を支援するだけでなく、メディアミックス展開や確定申告の支援まで、漫画家のビジネスニーズに対してワンストップでサービスを提供することが特徴です。今後についてはニュースレター、サロン、漫画の三軸から、「クリエイターエコノミー構想」の実現に向けて事業展開を強化いたします。さらには、2022年4月にはクリエイターである小山薫堂氏と軽部政治氏が共同代表を務め、企画・プロデュースサービスや、ブランディングサービスを手掛ける株式会社オレンジを子会社化しました。当社グループは、これまでウェブメディアの立ち上げや運営を軸として、広告媒体としての展開、システム開発など関連領域を拡張させることで事業を展開しており、ユーザーがインターネット上に集う場である媒体を構築、運営し、事業として持続的に成長させるための包括的なノウハウを有しています。株式会社オレンジのグループ化により、ウェブメディア展開能力に、トレンドを生み出す企画力が掛け合わさることで、世の中の変革のきっかけとなるコンテクストとコンテンツをゼロからつくり、メディアの力で数多くのユーザーに拡大していくまでの事業開発をグループ内で完結させることが可能となります。今後については、一連の買収で獲得してきた新たな事業領域間のシナジー機会を創出し、実現していくことで、事業ポートフォリオの中長期的な成長を計っていく方針です。
メディアマネジメント領域、地域メディア展開領域については、2021年7月にHBC北海道放送の新規メディアサービスである『Sitakke』の運営支援を開始するなど、引続き新規メディア支援先の獲得に注力いたしました。また、2021年9月にはスポーツチームを通じた地域マーケティングサービスの企画・運営を行う株式会社スポーツネーションに出資し、地域企業との連携を強化しています。今後につきましても、地域メディア企業等との連携を通してメディアネットワークを拡大していくとともに、個人の情報発信領域の強化を継続してまいります。さらには、2022年2月には、エンタテインメント分野やライフスタイル分野におけるIPの企画・製作、メディアの運営を手掛けるカルチュア・エンタテインメント株式会社と資本提携を実施し、また、データインテリジェンスを強みとし、報道領域に特化したテックベンチャーである株式会社JX通信社に出資いたしました。これらの活動の結果として、当連結会計年度においては、新規支援先メディアの獲得は順調に進捗しました。メディアマネジメント領域においては、将来的なアップセル機会を獲得する目的で取引先拡大を推進した結果、2022年3月末でのメディアマネジメントサービスにおける運営・支援メディア数は85となりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は1,743,880千円(前年同期比26.7%増)、売上総利益は816,798千円(前年同期比19.9%増)、調整後EBITDAは71,431千円(前年同期比17.4%増)、営業損失は42,388千円(前年同期は営業利益31,820千円)、経常損失は30,745千円(前年同期は経常利益42,504千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は115,423千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益22,829千円)となりました。なお、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析等は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
b.資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。当社グループの運転資金・設備資金等については、自己資金または金融機関からの借入等を基本としており、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,247,627千円となり、将来に対して十分な財源及び流動性を確保しております。
c.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、景気動向、市場環境、人材採用・育成、法規制等様々なリスクが経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社グループでは、内部管理体制を強化しつつ、優秀な人材を確保・育成することによって、景気動向、市場環境に留意して市場ニーズにあったサービスを展開し、経営成績に重要な影響を与えるリスクを低減する対策を引き続き行ってまいります。
d.経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループは、「必要なヒトに、必要なコトを。」を企業ビジョンとして、インターネットを通して事業を展開する雑誌出版社やテレビ局などのメディア企業や、ネットを通したブランドコミュニケーション強化ニーズを持つ事業会社に対して、様々なソリューションを提供する事により、事業規模を拡大してまいります。具体的には、情報発信主体であるメディア企業のインターネットサービス事業の支援を行う事や、インターネット上で情報を発信したいと考える企業を支援する事でビジョンを実現してまいります。中長期的な戦略として、地域の情報発信者や個人の情報発信支援を強化しており、地域や個人の情報・サービスのデジタル上での支援展開も推進し、多様なビジネスモデルやソリューションを提供する事で、社会全般に価値を還元していける企業となる様、事業展開を行っております。
当社グループは、インターネットを通じた情報発信やサービスの展開支援を行っており、主にはメディア企業や事業会社に対するコンサルティングサービスの提供のほか、コンテンツ制作やインターネットサービスの広告収益に応じたレベニューシェア、あるいはアドネットワークの運営により収益を創出しています。現在の事業構造上、インターネット広告市場の推移が最も大きく業績に影響します。インターネット広告市場は株式会社電通が公表している「2021年 日本の広告費」によれば、2014年から2021年にかけて年間平均成長率は14.5%と過去継続して成長を続けており、今後も同様の成長が見込まれます。また、コミュニケーション領域全般、あるいは事業会社におけるプロモーション活動等のデジタル化ニーズの拡大に伴い、当社グループのサービス提供機会も今後拡大していくことが想定されます。今後については、2023年3月期は新型コロナウイルス感染症拡大の影響が継続する仮定のもと、漫画のデジタル配信を中心とした個人課金事業も事業ポートフォリオに加わったことにより、広告市場に依存しない収益の獲得も見込んでおります。加えて、新たにグループ傘下となった株式会社オレンジの企画・プロデュースサービスや、ブランディングサービスとメディア関連サービスとのシナジーを創出することにより、グループ間企業の連携を軸にした新たな売上創出にも取り組んでいく方針です。
経営者は、事業を拡大し、持続的な企業価値の向上を実現するために様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。それらの課題に対応するため、常に事業環境についての情報を入手し、戦略の策定、競合動向の把握、顧客ニーズの把握、提供するソリューションの強化、企業規模の拡大に応じた内部管理体制・組織の整備を進め、企業価値のさらなる向上を目指して取り組んでおります。
なお、経営者の問題認識と今後の方針についての具体的な内容は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
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