課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針について

 当社グループでは、「世界をワクワクでINCLUSIVEする。」というミッションを掲げ、当社グループが実現していく世界観を明確にするとともに、当社クライアントとのコミュニケーション・ブランディングのパートナーとしてのあり方を明確にする目的で、「DXと企画の力で新しい価値を生み出す。」という企業ビジョンを制定しております。また、このミッションならびにビジョンを達成するために求められる事業のあり方ならびに施策を明確化する目的で、今期より事業セグメントを再整理し、中長期的な戦略目標をそれぞれのセグメントで規定し事業を推進してまいります。

 

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メディア&コンテンツ事業

 これまでメディアマネジメントサービス、クリエイターエージェンシーサービス、個人課金サービス、ゴルフテックサービスとしていた各サービスを統合し、メディア&コンテンツ事業としてセグメントを設定しました。メディア&コンテンツ事業は、メディア、漫画、ニュースレターなど多岐に渡る情報発信フォーマットを通して、インターネット上でユーザーを集客し、広告による法人クライアントからの収益獲得、もしくは個人ユーザーに対するコンテンツ・サービス販売による課金を行う事業領域です。まず、デジタルメディア領域においてはレガシー地域メディアとの事業連携の強化を通したサービス拡大を図ってまいります。また、漫画領域については、デジタル配信冊数を更に増加させていくとともに、ウェブ特化型漫画であるウェブトゥーンにおけるオリジナルIPの開発に着手し、収益構造の更なる多角化を図ってまいります。

 

企画&プロデュース事業

 これまで広告運用サービス、プロモーション企画・PRサービス、エンジニアリングサービスとしていた各サービス、ならびに、オレンジグループのうち株式会社オレンジ・アンド・パートナーズ、株式会社ジョージクリエイティブカンパニーを統合し、企画&プロデュース事業としてセグメントを設定しています。当セグメントにおいては、主に法人をクライアントとし、企業や団体ブランディングに関連する企画の提供、プロモーション関連サービスの提供、空間デザイン、施工サービスの提供、あるいはシステム開発の支援等を行っております。当該事業領域については、まず企業ブランディングとデジタル上のプロモーション、あるいはSNSの運用等、企画から広告、認知施策を一気通貫で提供するサービスラインを立ち上げることで、収益性の最大化を図ってまいります。また、メディア&コンテンツ事業領域とも連携し、地域に関連するプロモーション機会を獲得、パッケージ化されたサービスを提供していくことで、コストを抑制しつつプロモーション効果の高いサービスを提供していく予定です。将来的には、これらのサービスを更に型化し、SaaS的なサービス提供機会も検討してまいります。

 

食関連事業

 食関連事業には、2022年4月に関連会社化した株式会社下鴨茶寮が含まれます。当セグメントは、安政三年(1856年)創業の下鴨茶寮というブランドを基盤として、現在は食に関連する各種サービスを提供しています。具体的には、料亭におけるサービスの向上を通して下鴨茶寮のブランド価値を高め、オンライン、ふるさと納税ならびに百貨店等のチャネルを通したコマース関連サービスと、レストランや通販運営会社に対するブランド提供によるライセンス収入を最大化していくビジネスモデルを展開しています。当該領域については、短期的には現在の戦略を踏襲し、オンラインコマースの強化と、ふるさと納税に関連する事業領域の強化、ならびに地域産品に下鴨茶寮のブランドを付加した商品のプロデュースを強化してまいります。中長期的には、下鴨茶寮のブランド展開で得た知見をその他の料亭、ホテル運営等に横展開し、地域産業の復興をレストラン運営、オンラインコマース、商品プロデュース、誘客強化等、様々な形で支援する事業を強化していく方針です。

 

宇宙事業をはじめとしたその他新規事業

 既存事業領域で得たノウハウや、クライアントコネクションを活用した新規事業の開発を行っていきます。宇宙関連領域においては、新たに設立された戦略子会社INCLUSIVE SPACE CONSULTING株式会社の事業展開を強化し、衛星データ利活用に関連する実証実験の実施や、当社グループの出資先でもあるインターステラテクノロジズ株式会社、あるいは北海道スペースポートを運営するSPACE COTAN株式会社とも連携し、発射場に関連するプロモーション支援等を行っていきます。将来的には、地域自治体との連携を強化し、農林水産業、あるいは土木関連データの利活用を強化することで、これらの産業の活動効率の最大化を支援するサービスを強化していく方針です。

 

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(2)目標とする経営指標

 当社グループでは、収益規模を持続的に拡大させていくことと、効果的なリソース配分がなされている事の両面を担保していく観点から、売上高ならびに営業利益を重視しております。また、今後の成長に向けた新規サービス等の開発投資が重要との認識から調整後EBITDA(=営業利益+減価償却費及びのれん償却費+株式報酬費用+寄付金)についても、当社グループの経常的な事業収益力を測る指標として重視しております。これまで、サービス毎の業務内容を明確に規定し、それぞれのプロセスごとにKPIを設定して業務の型化と効率化を進めたことで、特にメディアマネジメントサービスにおける利益率の改善を実現しましたが、今後は、これまでの取組みに加え、提供するサービスをシステム化して行くことで、事業構造の更なる効率化を図っていく方針です。また、当社グループの事業成長の進捗は、前出の通りウェブサービスの拡大状況から把握できることから、運営インターネットサービス数や、それらのサービスから創出される売上高推移を主なKPIとしております。

 

(3)経営環境について

 当連結会計年度におけるわが国の経済は、ウクライナ危機等地政学リスクの上昇に端を発した国際情勢の緊迫化の影響が一部あり、また、新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動の停滞の影響を受け、景況感が悪化し不透明な状況が続いております。そういったマクロ環境下で、当社グループが属するインターネット広告領域においては、引続き一部広告主による出稿控えなども見られましたが、全体的には過去数年にわたる成長基調が継続しており、当社グループにとって重要な市場でもあるマスメディア媒体のデジタル化が更に進行するなど、事業機会の拡大につながる展開も見受けられました。

 当社グループが属するインターネット広告領域においては、我が国におけるインターネット利用者数が前年に引き続き増加を続けており、総務省が発表した「令和2年通信利用動向調査の結果」によると、2019年にインターネットの人口普及率は83.4%に達しました。その中でも、20代から30代では、スマートフォン利用率が全国で9割、13歳~19歳、40代、50代で8割を超えてきており、これにより室内だけでなく、外出先でインターネットを利用することが日常的に行われていることが見て取れます。また、10代後半から50代のインターネットの利用率が9割を超える結果となっており、利用率の増加に伴い利用用途も多様化していることが想定され、検索以外の手段で情報を取得する人々が増加していることが示唆されています。

 広告業界におきましては、2021年(暦年)の「2021年 日本の広告費」(株式会社電通)によると、日本の総広告費は6兆7,998億円(前年比10.4%減)と、上半期は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたものの、下半期はワクチン接種が進んだことによる消費者心理の変容、景況感の回復を受けて、前年実績を上回りました。従来からの主力媒体であるマスコミ四媒体の広告費は2兆4,538億円と微増となった一方で、インターネット広告費(媒体費+広告制作費)は、2兆7,052億円(前年比21.4%増)となり、マスコミ四媒体の広告費を初めて上回りました。また、インターネット広告媒体費は2兆1,571億円(前年比22.8%増)と、引き続き市場が拡大しております。

 また、広告形態としては、運用型広告の市場は1兆8,382億円(前年比26.3%増)と成長しており、新型コロナウイルス感染症の影響によるオフラインの販促施策の制限が続いていることによって、さらに運用型広告の需要が高まったものと想定されます。また、前年に引き続きブランドセーフティへの関心が高まり、アドフラウド問題への対処なども注目されており、各メディアやプラットフォーマー側ではその対応策が進んでおります。Appleのプライバシーポリシーの変更や、Googleが予定しているサードパーティークッキーの規制など、クッキーフリー時代の到来に向けて、各種プラットフォーマーのルール整備が進みつつあります。

 こうした市場環境のもと、コミュニケーション領域全般、あるいは事業会社におけるプロモーション活動等のデジタル化ニーズの拡大に伴い、当社グループのサービス提供機会も今後拡大していくことが想定されます。今後については、漫画のデジタル配信を中心とした個人課金事業も事業ポートフォリオに加わったことにより、広告市場に依存しない収益の獲得も見込んでおります。加えて、新たにグループ傘下となった株式会社オレンジの企画・プロデュースサービスや、ブランディングサービスとメディア関連サービスとのシナジーを創出することにより、グループ間企業の連携を軸にした新たな売上創出にも取り組んでいく方針です。

 

 

(4)対処すべき課題

①業界動向について

 個人および法人のインターネット活用の場面が拡大したことに伴い、インターネット広告市場も拡大しております。しかし、インターネット広告業界は、広告領域の他の事業同様に景気変動の影響を直接的に受ける性格を有しております。そのため当社は、新たな業界動向を察知し、外部環境の変化に対応できる臨機応変な組織構築を行ってまいります。

 また、インターネット広告業界の中で、予約型広告の市場成長をしのぐスピードで運用型広告市場の成長が顕著となっております。かかる事業環境の中、当社は子会社であるData Tailor株式会社とも連携し、広告枠の効果的な配置による収益機会最大化と、収益性の高いメディアの制作・運用ノウハウの強化や改善を行っていく方針です。

 

②競合環境の変化について

 当社収益の大半は、広告主によるインターネット媒体出稿費用に直接あるいは間接的に依存する比率が高いのが現状です。昨今のインターネットメディアの増加により、メディア間での競合が激化し当社の広告受注単価あるいは受注数に影響が出る場合には、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため当社グループは、継続した広告メニューの改善・開発を、広告主や媒体社との意見交換を頻繁に実施しつつ継続していくとともに、サービス間で連携しSNSやオウンドメディアの運用、コンテンツマーケティングやEC関連ソリューションの提供など、広告獲得以外の価値をクライアントに提供する活動にも注力してまいります。

 

③ブランドセーフティへの対応について

 インターネット広告を行う際には、数多くの広告配信ネットワークやメディアから広告が配信される事から、適切なコントロールがなされていない場合、広告主が表示を想定していない、コンテンツの質が低いメディアに広告が表示される可能性があります。かかる事象が発生する事で、広告を実施した事によって広告主のブランド毀損が発生する可能性があるため、このようなブランド価値毀損が発生しうる広告掲載を防止する、ブランドセーフティが意識されるようになってきており、広告主が不適切な広告媒体を避けたり、アドネットワークを配信ネットワークとしての質に注目し選別するなどの動きが注目されつつあります。その中で、当社グループはコンテンツ制作体制を強化し、コンテンツに対する社内レビュー体制の強化や、専門家の監修強化を通して、コンテンツの質向上に取り組んでいます。

 

④特定の経営陣への依存緩和について

 当社グループの代表取締役社長である藤田誠は、2007年の創業以来当社の代表を務めております。同氏は、インターネットサービス事業に関連する豊富な経験と知識を有しており、当社の事業戦略の決定に重要な役割を果たしております。当社では、取締役会や、事業運営に必要な定例会議の実施を通した情報共有や幹部の育成、組織の強化を行う事や、適宜権限の委譲を行っていく事で、同氏に過度に依存する体制を緩和していく方針です。

 

⑤内部管理体制について

 当社グループは現在、成長段階であり、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であります。そのため、当社グループは経営の公正性・透明性を確保するための更なる内部管理体制強化に取り組んでおり、従前より実施している定期的な内部監査の実施によるコンプライアンス体制の更なる強化などを行っていく方針です。

 

⑥人材の確保及び育成について

 当社グループは、今後想定される事業拡大や新規事業の展開に伴い、継続した人材の確保が必要であると考えております。特に、新規事業を立ち上げ、拡大・成長させていくための事業開発力・マネジメント能力を有する人材や、コンテンツ制作のスキルを有する人材の確保に努めるとともに、人事・教育体制の整備を進め人材の定着と能力の底上げに努めております。

 

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