課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

(1)経営方針

日本国内のエンジニア人材市場は、高齢化と人口減少を背景とした構造的な人材不足に直面しております。一方で、2020年に施行された改正労働者派遣法、所謂「同一労働同一賃金」や、新型コロナウイルス感染症拡大による景況感の悪化により、中小派遣事業者の淘汰の可能性が増すなど、国内エンジニア人材関連サービス業界は転換期を迎えているというのが当社の基本的な環境認識です。

このような認識のもと、当社は「エンジニア人材の流動性の向上」が求職人材と求人企業双方のニーズを満たす鍵となると考え、当社のビジョンとして「エンジニア人材流動プラットフォームの構築」と「テクノロジーによる求職人材・求人企業マッチング自動化の実現」の2つを掲げております。

 

(2)経営戦略等

当社は、上述のビジョンの実現を目指して、長期的な視点に立ってICTへの先行投資を行ってまいりました。その成果がAIを活用した独自のスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」であり、2020年3月期にエンジニア人材の全ての流動局面を捕捉できる5つの「コグナビ」サービスが出揃いました(第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容 ご参照)。今後当社は、顧客企業に対してこれらの「コグナビ」サービスを提供することを通じて、エンジニア人材不足に悩む顧客企業のニーズを充足し、当社収益基盤の拡充に努める方針です。

従来当社は高い収益性と安定した需要の存在の双方を兼ね備えた機電系エンジニア人材サービスに焦点を当ててまいりましたが、今後は機電系エンジニアと同様に樹形図によってスキルを可視化できるITエンジニア人材セグメントの開拓も進めてまいります。

また、テレビCMを中心としたメディアミックスによる「コグナビ」ブランドの認知向上施策を展開し、広告やサービスブランドの認知向上とそれに伴う「コグナビ」サービス登録会員数の増強に取り組んでまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、収益性を判断する指標として売上高や売上総利益・営業利益及びそれぞれが売上高に占める比率を重視しております。

また、当社の売上高と売上総利益の大半を占めるエンジニア派遣サービスの売上高に大きく影響する稼働人数を、収益目標の達成度を判断する指標として重視しております。

 

(4)経営環境

当社が特化する機電系エンジニアの需要は、新型コロナウイルス感染症拡大を契機に在宅勤務が増えたため、派遣エンジニアの所定外稼働時間は減少し、景気の先行き不透明感から顧客企業の機電系エンジニア人材採用意欲は弱含んでおりました。

しかしながら、わが国の15~64才までの労働力人口約6,000万人(出典:総務省統計局 2022年3月 労働力調査)の中で、機電系エンジニアは概ね64万人(出典:2015年国勢調査、当社が元データの「電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く)、機械技術者、輸送機器技術者」合計人数から65歳以上の人数を除いて算出)であり、機電系エンジニアが労働力人口に占める割合は低い状況にあります。

さらに、少子化に伴う就労人口の減少や学生の理系離れなどを背景として、機電系エンジニアは正社員、非正規社員共に構造的な不足状態が続いております。

一方、世界的にカーボンニュートラルをはじめとした新たな技術的課題への対応が求められる中、当社はエンジニアに対するニーズが今後も拡大するものと見込んでおります。

このような環境のもと、近年機電系エンジニアの派遣単価は継続的な上昇傾向が続きました。2020年4月の所謂「同一労働同一賃金」の導入もその傾向を後押ししております。

また、一連の労働者派遣法の改正に伴い、人材派遣業界では中小派遣事業者の淘汰の可能性が増す一方で、近年のHRテック企業の台頭により、人材紹介サービスを取り巻く環境に変化が表れる可能性がございます。

当社は、国内エンジニア派遣業界大手の一角を占めておりますが、このような経営環境の動きを的確に捉えて事業機会を見出し、当社ビジョンの達成と持続的成長の実現を図ってまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

上述の経営方針、経営戦略等、経営環境を踏まえ、今後当社は主に以下の課題に対処いたします。

①エンジニア人材の確保

日本国内のエンジニア人材市場は社会の高齢化と人口減少を背景とした構造的な人材不足に直面していることから、新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んだ人材需要は、短期的には回復基調が続くものの、中長期的にはエンジニア人材の確保が難しい状況が継続するものと予想されます。

従って、エンジニア人材採用力を強化することは当社の重要な経営課題であると考えております。

このような環境下において、当社は、AIを活用したスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」を基盤として、全ての機電系及びITエンジニア人材の流動局面を捕捉し得るサービスラインアップを有しております。今後当社が持続的に成長するためには、「コグナビ」ブランドの認知度を高めて「コグナビ」各サービスへの会員数を増やしていくことが最も重要であると考えております。

 

②テクノロジーとビジネスモデルによる競合優位性の確立

所謂「同一労働同一賃金」の実現を目的とした2020年4月の労働者派遣法の改正や近年のHRテック企業の台頭、新型コロナウイルス感染症の影響等を背景として人材紹介サービスを取り巻く環境にも変化が表れております。一方で、様々なHRテックが登場しているものの、まだ業界に根本的な変化を起こして市場を制覇するテクノロジーやビジネスモデルが見当たらないことも事実です。

当社は、数年間にわたる時間をかけて先行投資を行い、独自のAIを活用したスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」を構築し、この「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系及びITエンジニア人材の流動局面を捕捉し得るサービスラインアップを2021年3月期までに整備いたしました。「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系及びITエンジニア人材の流動局面を捕捉するという当社のビジネスモデルは類例を見ない革新的なものであり、国内エンジニア派遣企業他社のそれと明確に異なっております。当社独自のスキルマッチング機能を前面に営業活動を展開し、ターゲット顧客である大手機電系製造業やIT企業との取引拡大を目指してまいります。

このように、「コグナビ」テクノロジー及び「コグナビ」ビジネスモデルは当社の差異化の源泉であり、これらを活用したテクノロジーとビジネスモデルで競合優位性を確立することは重要な経営課題であると考えております。

 

③財務体質の強化と流動性資金の確保

当社は健全な財務体質の維持に努めておりますが、新型コロナウイルス感染症の影響による環境変化に対応するべく、手許資金額・借入枠を積み増しております。

今後も取引金融機関からの高い信用力を維持し、流動性資金を適宜確保することは当社の重要な経営課題であると考えております。

 

④リスク管理の強化

当社はリスクを事前に回避すること及び万一リスクが顕在化した場合の被害最小化を図ることが重要であると考えております。

事業を進める上での様々なリスクの特定、リスク低減に向けた適切な対策の構築を目的に、リスクマネジメントの基本方針及び推進体制に関する基本的事項を定めたリスクマネジメント規程を定めています。

事業活動及びその他付随するリスク要因のうち、特に発生の可能性が高いと想定されたリスクについては、コンプライアンス委員会においてモニタリングを行うとともに、リスクとなる事象が発生した際には、総務担当部門、内部監査担当部門等の関係部門が連携・協議し、再発防止策等の対応を行います。
 自然災害、新興感染症、サイバー攻撃等、経営資源に損害を与え、業務の停止・機能低下をもたらしかねない事象や緊急事態に迅速かつ一貫して対応するために、対策本部等の組織を設置し、危機管理体制の確立に努めています。
 具体的な施策として、自然災害等不測の事態に備えたBCP(事業継続計画)の策定や情報セキュリティ基本規程等を定めるとともに、社内教育や訓練の実施、備えるべきリスク項目の見直しやその対応策を検討する等、リスク管理を継続的に強化していくことは当社の重要な経営課題であると考えております。

 

⑤新型コロナウイルス感染症への取り組み

当社は新型コロナウイルス感染症拡大を受け、当社従業員とその家族、顧客企業や取引先等、ステークホルダーの安全確保、感染拡大防止を最優先に考え、在宅勤務や時差出勤、オンラインでの面接や商談等の基本対策を実施しながら事業活動に引き続き取り組んでおります。

 

(6)対処すべき課題に対する具体的な取組状況等

①エンジニア人材の確保のための取り組み

当社のエンジニア派遣サービスにおいては、上述のとおり、顧客となる大手製造業からの需要が存在するものの、エンジニアの確保が難しい市場構造ができております。

このような環境下において、当社は、AIを活用した独自のスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」を基盤として、全ての機電系及びITエンジニア人材の流動局面を捕捉し得るサービスラインアップを2021年3月期までに整備し、理工系新卒学生の就職支援から転職、人材派遣、教育、社内人材配置まで、エンジニアの全てのキャリアシーンを支援することが可能となりました。

今後当社がエンジニア人材を持続的に確保するためには、「コグナビ」ブランドの認知度を高めて「コグナビ」各サービスに登録しそれらを利用する人材の数を増やしていくことが最も重要であると考えております。このため、当社は2020年4月、5月及び2021年3月にテレビCMを中心としたメディアミックス型認知度向上施策の展開を開始し、「コグナビ」ブランド認知度の向上と「コグナビ」各サービス登録会員数の増強に取り組んでおります。

 

②テクノロジーとビジネスモデルによる競合優位性の確立のための取り組み

当社は、これまで製造業のうち収益性の高い「主要8業種(自動車、輸送用機械、産業用機械、精密機器、電気機器、家電、電子部品、情報通信)」に集中し、同時にICTの活用による営業活動の効率化に取り組むことで、エンジニア派遣他社よりも高い売上高総利益率を実現してまいりました。

さらに当社は、数年間にわたる時間をかけて先行投資を行い、独自のAIを活用した独自のスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」を構築し、この「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系及びITエンジニア人材の流動局面を捕捉し得るサービスラインアップを2021年3月期までに整備いたしました。「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系及びITエンジニア人材の流動局面を捕捉するという当社のビジネスモデルは、あまり類例を見ない革新的なものであり、国内エンジニア派遣企業他社のそれと明確に異なっております。従って、「コグナビ」テクノロジー及び「コグナビ」ビジネスモデルは当社の差異化・競合優位性の源泉であり、当社が求人企業・求職人材双方に対して独自の付加価値を提供する基盤となります。

今後当社は、「コグナビ」各サービスを本格展開することを通じて、競合優位性を顕在化させていく方針です。

 

③財務体質の強化と流動性資金の確保への取り組み

当社は、これまでも健全な財務体質の構築に取り組んでまいりましたが、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大による環境の変化を踏まえて、銀行借入による手許資金の積み増しを行いました。この結果、現時点で6ヶ月分以上の月間支出額に相当する手許資金(銀行借入枠を含む)を確保しております。

当社は、今後も引き続き取引金融機関からの高い信用力を維持し、適時に流動性資金を確保できる状況を整備する方針です。

 

④リスク管理の強化への取り組み

当社は、これまでもリスクを事前に回避すること及び万一リスクが顕在化した場合の被害最小化を図ることに取り組んでまいりましたが、外部機関を利用したリスクの洗い出しを実施し、定期的な社内教育の実施や、BCPに基づいた訓練や情報セキュリティに関する社内教育を継続的に実施するなど、リスク管理の体制を強化してまいります。

 

⑤新型コロナウイルス感染症への取り組み

当社は、新型コロナウイルス感染症の影響が継続する状況において、業務プロセスの見直しを積極的に行い、在宅勤務や労働時間の弾力的な運用にも耐えられる業務システムを構築するため、新たなシステムの導入検討などを積極的に進めてまいります。

 

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