課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、「ヘルシアプレイスをすべての人々へ!」を企業理念としております。

この企業理念は、エニタイムフィットネスの世界共通の理念であった「Get to a Healthier Place!」を日本語で表現したものですが、そこには、「ヘルシアプレイスを一人でも多くの方へ届けたい」という強い想いが込められております。

当社グループは、エニタイムフィットネスが24時間年中無休・マシンジム特化型等の特徴的なフィットネスクラブを運営することで利用者の健康増進に寄与していることに深く共感し、日本でのエニタイムフィットネスのビジネスを開始しました。

当社グループは、「ヘルシアプレイスをすべての人々へ!」を実現するために、ヘルシアプレイスを一人でも多くの方へ届けることを経営方針としております。

 

(2) 経営環境、中期的な経営戦略及び対処すべき課題等

当社グループは、企業理念のもと、「フィットネス習慣を拡大させることで健康寿命を延ばし、豊かな社会を創る」というパーパスを制定し、2022年5月に策定しました2025年3月期を最終年度とする中期経営計画達成に向け、主に3つの施策に取組んでまいります。

① 新規出店による事業規模の更なる拡大

当社グループは、企業理念を実現する上で、何より継続的なエニタイムフィットネスの出店が最重要課題であります。年間100店舗以上の出店規模を目指し、持続的に成長するとともに、コロナ以前の成長軌道へと回復させることを目指してまいります。

② 既存店舗の会員数回復

アフターコロナのライフスタイルも見据えながら、コロナ前の会員数水準への回復を目指し、新規会員を獲得するための施策を講じてまいります。

会員数が回復することで、FCオーナー様の事業環境も回復し、そして出店意欲も増していくという好循環を生み出すためにも、店舗数の拡大とともに既存店の会員数の拡大が重要であると考えております。そのため、新規会員獲得の取組みとして、既にタレントを起用した紹介キャンペーンなどを実施しており、さらなる会員数の回復に努めてまいります。

③ 店舗における新たな収益源の創出

会員数の回復を目指すと同時に、回復の遅れも見据えた事業運営も必要であると認識しております。店舗網や会員様といった当社が保有する資産を活用し、会費収入に留まることなく、新たなサービスを開発し、店舗売上の底上げを図ってまいります。

これらの施策を遂行するため、2022年2月より海外のエニタイムフィットネスで広く使われている会員管理システムへのアップデートを開始しております。このシステムのグローバル化により、将来的には、海外でも使用されているコーチングアプリ等の利用が可能となる等、会員の皆様の利便性向上を目指してまいります。

 

これら3つの重点施策に取組むとともに、当社グループは、企業理念である「ヘルシアプレイスをすべての人々へ!」の実現のため、より一層強固な経営基盤の確立に向け、ESG経営を推進するための3つのマテリアリティ(重要課題)として、1)「日本の健康を創る先進企業へ」、2)「地域の健康・安全を担うインフラへ」、3)「ヘルシアプレイスの礎」を設定しました。これらESG経営の課題にも事業活動を通じて取組むことで、店舗を創るだけでなく、4%台前半と言われている日本のフィットネス参加率を欧米並みの10%台に近づけ、フィットネスを日常的でスタンダードなカルチャーにするため、エニタイムフィットネスがより社会に開かれたフィットネスクラブになることを目指し、社会的価値と経済的価値の創出及び持続可能な社会の実現と企業価値の向上に取組んでまいります。

 

(3) 経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、継続的に事業を拡大していくために成長性と収益力を重視しており、FCから1店舗毎に所定の金額を店舗数に応じて得ているロイヤリティ収入と、直営店における会費収入という主に2つの大きな収益源を有していることから、成長性を示す指標として出店数、会員数及び売上高対前年比を、収益力を示す指標として売上高営業利益率を重視しております。

 

(4) 気候変動への取組みとTCFD提言に基づく情報開示

当社グループでは、気候変動問題を経営の重要課題のひとつと捉え、積極的に対策に取組んでおります。パリ協定の長期目標や2030年に向けた政府の脱炭素目標を踏まえ、ガバナンス体制の強化や、事業への影響分析、CO2削減目標の設定など、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づく気候変動に関する分析と適切な情報開示を進めております。

 

<ガバナンス>

 2021年9月に代表取締役社長を委員長とするESG委員会を設置しました。

 ESG委員会は原則として年4回開催され、ESGに関する当社の重要課題に対する報告並びに審議が行われます。設置初年度であった2022年3月期は、特に気候変動に関する分析を取り上げて、開催回数を増やして、将来予測されるリスクと財務インパクトの分析や、2030年に向けたCO2削減目標の設定に関する分析と審議を重ねました。

<排出量算定の範囲>

 算定範囲は、当社グループの燃料消費、並びに電気の使用によるCO2排出量(Scope1及びScope2)とします。

<当社の気候関連に関わるリスク及び機会の分析>

① 気候変動のリスクの分析

当社の主要事業である、フィットネスクラブ運営事業に関して、将来予想される気候変動に関するリスク・機会を把握する作業を行いました。

 

気候変動関連リスクと機会の抽出から、重要性が高いと判断された項目

 

項目(大分類)

項目(中分類)

事業インパクト

想定するシナリオ

移行リスク

新たな規制

炭素税の導入

操業コストの増加

〈2℃シナリオ想定〉

政府による温室効果ガス排出の規制が強化され、炭素税が導入されることを想定

再生可能エネルギー調達

再生可能エネルギー調達による電力価格、エネルギー調達コストの増加

〈2℃シナリオ想定〉

政府による温室効果ガス排出の規制が強化され、再生可能エネルギー調達が推進されることを想定

フロン規制や省エネの推進

フロン規制や省エネ政策の推進による設備の新設、入れ替え(ZEB基準に基づく空調+換気、照明、給湯)コストの増加

〈2℃シナリオ想定〉

政府によるフロン規制や省エネ規制が強化され、直営店舗の設備導入において、ZEB仕様が必要になることを想定

市場

ZEB仕様への対応

賃貸料の上昇

〈2℃シナリオ想定〉

2030年以降新築物件はZEB Readyとなり、建築費用は10%以上増と仮定。賃料へもおよそ同額反映されることを想定

物理的リスク

急性

風水害リスク

異常気象、温度変化に伴う洪水の激甚化により直営店舗が浸水することによる復旧費用の発生

〈2℃、4℃シナリオ想定〉

2030年時点において、2℃、4℃シナリオで起こりうる風水害のリスクを想定

直営店舗が被災した店舗の会費収入減少

 

※ZEB:Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略。高効率設備や再生可能エネルギー導入により、快適な室内環境を実現しながら、消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建築物。

 

② 2℃シナリオと4℃シナリオ

 分析にあたって定義するシナリオ群は2℃シナリオ、4℃シナリオの二つを採用しました。パリ協定目標として提唱された1.5℃シナリオについては、現状予測される世界観を特定するデータの収集が不十分と判断し、今後の分析課題としております。

 

③ シナリオ分析の実施

 特定された気候変動リスクを基に、シナリオ分析を行い2030年の世界観を考察しました。シナリオ分析では、フィットネスジムの事業運営を「出店計画・事業計画」「出店開発」「保守・管理・運用」の3つのフェーズに分け、2℃シナリオ、4℃シナリオのそれぞれにおいて、「規制」「技術」「市場」「評判」「物理的リスク」など起こり得るシナリオの分析を行いました。

 

特定された2030年の世界観

フェーズ

2℃シナリオ

4℃シナリオ

出店計画

事業計画

気候変動対策への関心の高まりや投資家からのESG情報開示要求の高まり、消費マインドの変化

異常気象の激甚化による建設コストの上昇、工期の遅れ

出店開発

規制が強化され、低炭素/脱炭素社会に向けた持続可能な社会の推進

異常気象の激甚化に伴い、市場の基幹機能が麻痺することによる物流経済の影響

保守・管理・運用

気候変動対策への関心の高まりや投資家からのESG情報開示要求の高まり、消費マインドの変化

店舗における風水害被害の発生頻度の上昇による修繕費の増加

被害の発生頻度の上昇に伴う一時的な会費収入の減少

分析結果

2℃シナリオにおいては、社会の脱炭素化の動きが加速し、規制の強化等による移行リスクが高まると考えられる

4℃シナリオにおいては、異常気象の激甚化による複合的な災害の発生頻度が高まると予想される

 

 

 

④ 財務インパクトの算定

 シナリオ分析に基づき、2030年に予想される財務インパクトの算定を行いました。

2℃シナリオにおいては、炭素税の導入や、再エネ導入コストの増大、フロン規制の強化に対応する費用が主要な財務インパクトとなり、その額は約164百万円と想定されます。4℃シナリオにおいては、規制の導入は進まない代わりに災害の発生頻度がより上昇すると考えられ、財務インパクトは、約5百万円と想定されます。

 上記算定から、よりインパクトの大きい2℃シナリオを重視して今後の対策を立てることが重要であると考えております。

 

2030年時点での2℃シナリオ、4℃シナリオの財務インパクト評価       (百万円)

区分

2℃シナリオ

4℃シナリオ

炭素税の導入

90

再エネ調達によるコスト増

21

フロン規制・省エネの推進によるコスト増

37

賃貸コスト上昇

9

被災店舗設備の復旧費用

1

2

被災店舗の会費収入の減少

2

3

合計

164

5

 

※2030年度に直営店舗展開数を340店舗と仮定し、想定するシナリオ下ですべてのリスクが顕在化した場合の予測値。

 

<指標と目標>

Scope1及びScope2のCO2排出量実績

 エニタイムフィットネスにおいては、1店舗あたり平均で46.4t/年のCO2が排出されていると算定されました。当社の展開するジムは、プールや温浴施設を持たないため、フィットネスジムの中では現時点でもCO2排出量は比較的低く抑えられております。(1㎡あたりで比較)

 

2021年3月期 1店舗あたりの平均CO2排出量         (単位:tCO2)

1店舗平均CO2排出量

46.420

 ・電気の使用によるCO2排出量

42.927

 ・ガスの使用によるCO2排出量

3.493

 

 

② 指標と目標

 算定したCO2排出実績をベースとして、排出量削減の具体的対策を様々な角度から検討した結果、2030年に2021年3月期比で1店舗あたりのCO2排出削減量を50%とする目標を設定しました。

 

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