当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による社会・経済活動への影響が継続いたしましたが、当社におきましては、昨年度より実施している、デジタル・マーケティング活動の強化、そして、昨年4月より新たに開始した、日本初の「さい帯保管サービス」が寄与し、過去最高の売上高を計上いたしました。そして、今後の検体数の増加を見据えて、今期既に従来の3倍の規模に対応できる横浜細胞処理センター及び第二保管センターを稼働させ、今後の更なる業績の拡大に対する備えを行っております。
再生医療分野での研究開発につきましては、日本国内においては、高知大学医学部附属病院や大阪公立大学医学部附属病院等における「さい帯血」による、小児神経疾患を対象とした臨床研究が、また米国においては、デューク大学での第Ⅱ相臨床研究の成果を受け、「さい帯血」により、脳性麻痺等の治療を行う専門クリニックの設立が進められる等、大きく進展しております。
また、引き続き、東京大学医科学研究所及び東京大学医学部附属病院との小児形態異常等の先天性疾患に対する「さい帯」を用いた治療法の開発、大阪大学大学院医学系研究科との「さい帯」を用いた新たな半月板治療法の開発等、再生医療分野でのアカデミアとの共同研究にも注力しております。
これらの活動の結果、当事業年度における売上高は、過去最高の1,781,943千円と前年同期と比べ372,428千円(前事業年度比26.4%)の増収、営業利益は、226,952千円と前年同期と比べ140,072千円(同161.2%)の増益となりました。また、当社は、2021年6月25日に東京証券取引所マザーズ市場(市場区分の変更により現在はグロース市場)に上場し公募増資を行いました。それに伴い株式交付費6,219千円、株式公開費用9,378千円を営業外費用に計上した結果、経常利益は、212,554千円と前年同期と比べ120,146千円(同130.0%)の増益、当期純利益は、133,726千円と前年同期と比べ71,355千円(同114.4%)の増益となっております。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用により、売上高、営業利益、経常利益及び税引前当期純利益はそれぞれ7,691千円増加しております。
総資産は 5,215,602 千円となり、前事業年度末に比べ 1,257,109 千円(同 31.8%)増加 いたしました。流動資産は 4,178,346 千円となり、前事業年度末に比べ 1,028,034 千円増加いたしました。これは主に、東京証券取引所マザーズ市場への上場に伴う公募増資等により、現金及び預金が 767,834 千円増加したこと、また、売上の増加に伴い売掛金が 314,385 千円増加したことによるものであります。固定資産は 1,037,256 千円となり、前事業年度末に比べ 229,074 千円増加いたしました。これは主に、細胞保管センターの開設等により有形固定資産が 71,013 千円増加したこと、役員に対する長期貸付金が 133,050 千円増加したことによるものです。
負債は 3,111,619 千円となり、前事業年度末に比べ 475,334 千円(同 18.0%)増加 いたしました。流動負債は 3,051,805 千円となり、前事業年度末に比べ 462,902 千円増加いたしました。これは主に、新規契約者数の増加により前受金が 349,210 千円増加したことによるものであります。固定負債は 59,813 千円となり、前事業年度末に比べ 12,431 千円増加いたしました。
純資産は、 2,103,983千円 と前事業年度末と比べ 781,774千円 (同 59.1%)増加 しております。これは主に、東京証券取引所マザーズ市場への上場に伴う公募増資により、資本金及び資本準備金がそれぞれ 329,985 千円増加したこと、当期純利益の計上により利益剰余金が 133,726 千円増加したことによるものであります。
なお、収益認識会計基準等の適用により、利益剰余金の期首残高が11,923千円減少したことにより純資産が減少しております。
また、当社は、「細胞バンク事業」の単一セグメントのため、セグメントごとの記載を省略しております。
当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末と比べ1,517,834千円増加し、3,510,318千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果得られた資金は、469,290千円(前事業年度は238,996千円の獲得)となりました。これは主に、増加要因として、税引前当期純利益の計上212,554千円、前受金の増加330,246千円があった一方で、減少要因として、売上債権の増加314,385千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果得られた資金は、404,170千円(前事業年度は520,262千円の使用)となりました。これは主に、増加要因として、定期預金の払戻による収入750,000千円があった一方で、減少要因として有形固定資産の取得による支出181,156千円、役員に対する長期貸付金の貸付による支出133,050千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果得られた資金は、644,373千円となりました。これは、2021年6月25日の株式上場に伴う新規株式発行によるものであります。
当社は、生産活動を行っておりませんので該当事項はありません。
当社は、受注生産を行っておりませんので該当事項はありません。
当事業年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社は「細胞バンク事業」の単一セグメントであります。
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しております。
2.販売実績の3つの構成の「技術料」、「保管料」、「その他」別の売上は次のとおりであります。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項については、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたっては、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、これらについては、過去の実績や現在の状況等を勘案し、合理的と考えられる見積り及び判断を行っております。ただし、これらには見積り特有の不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、当社が財務諸表を作成するにあたり採用した重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
② 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の目標とする経営指標は、年間保管(売上)検体数と営業利益率であります。
経営成績の分析
(売上高)
当事業年度の売上高は、前事業年度に比べ 372,428千円増加 の 1,781,943千円 (前事業年度比 26.4%増 )となりました。これは主に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により活動が制限される状況下において、さい帯血採取協力産科施設で開催される母親学級の開催中止・開催自粛が継続されましたが、Web広告をはじめとするインターネットを通じたマーケティング活動(Web広告、SEO対策、SNSの3つの柱)を深耕し、更に産科施設へはパンフレットの配布等の協力を頂くなど、当社サービスの認知度向上に努め、「細胞バンク事業」の拡大に注力したこと、そして、当事業年度より「さい帯保管サービス」を開始した影響によるものであります。この結果、今期の目標売上検体数はさい帯血7,120検体に対し、実績はさい帯血6,907検体、さい帯1,511検体となりました。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は、前事業年度に比べ 185,378千円増加 の 670,686千円 (同 38.2%増 )となりました。これは主に、さい帯血の分離処理検体数が増加したことによるものであります。この結果、当事業年度の売上総利益は、前事業年度に比べ187,049千円増加の1,111,257千円(同20.2%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ 46,977千円増加 の 884,305千円 (同 5.6%増 )となりました。これは主に、当事業年度に新規上場したこと等により支払手数料が18,366千円増加、派遣・パートの新規採用の増加等により人件費が16,841千円増加、Web施策により広告宣伝費が8,968千円増加、資料請求数の増加により通信費が7,802千円増加したこと等によるものであります。一方で、2021年3月に完成した横浜細胞処理センターの稼働により賃借料を売上原価に計上しており、賃借料が18,556千円減少したことによるものであります。この結果、当事業年度の営業利益は、前事業年度に比べ140,072千円増加の226,952千円(同161.2%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当事業年度の営業外収益は、前事業年度に比べ 4,300千円減少 の 1,227千円 となりました。これは主に、東京証券取引所マザーズ市場への上場に伴う公募増資により、株式交付費が6,219千円増加、株式公開費用が9,378千円増加したことによるものであります。この結果、経常利益は、前事業年度に比べ120,146千円増加の212,554千円(同130.0%増)となりました。
(当期純利益)
当事業年度において、法人税等を78,827千円計上しました。この結果、当期純利益は133,726千円(同114.4%増)となりました。
キャッシュ・フローの分析
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の資本の財源及び資金の流動性については、営業活動により得られた資金を財源として運営しており、外部からの資金調達はありません。
また、主な運転資金需要は、さい帯血の分離等に使用する材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用の支払いのほか、設備投資などであります。
財政状態の分析
当事業年度末の総資産は前事業年度末に比べ1,257,109千円増加の5,215,602千円(前事業年度末比31.8%増)、負債は前事業年度末に比べ475,334千円増加の3,111,619千円(同18.0%増)、純資産は前事業年度末に比べ781,774千円増加の2,103,983千円(同59.1%増)となりました。
主な増減要因は、次のとおりであります。
(流動資産)
当事業年度末における流動資産は、前事業年度末に比べ 1,028,034千円増加 の 4,178,346千円 (同 32.6%増 )となりました。これは主に、東京証券取引所マザーズ市場への上場に伴う公募増資等により、現金及び預金が767,834千円増加したこと、また、売上の増加に伴い売掛金が314,385千円増加したことによるものであります。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産は、前事業年度末に比べ229,074千円増加の1,037,256千円(同28.3%増)となりました。これは主に、細胞保管センターの開設等により有形固定資産が71,013千円増加したこと、役員に対する長期貸付金が133,050千円増加したことによるものです。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債は、前事業年度末に比べ 462,902千円増加 の 3,051,805千円 (同 17.9%増 )となりました。これは主に、新規契約者数の増加により前受金が349,210千円増加、増益により未払法人税等が77,903千円増加したことによるものであります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債は、前事業年度末に比べ 12,431千円増加 の 59,813千円 となりました。これは主に、細胞保管センターの開設により資産除去債務が 9,618 千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ781,774千円増加の2,103,983千円(同59.1%増)となりました。これは主に、東京証券取引所マザーズ市場への上場に伴う公募増資により、資本金及び資本準備金がそれぞれ329,985千円増加、当期純利益の計上により利益剰余金が133,726千円増加したことによるものであります。一方で、前受金が349,210千円増加した結果、当事業年度末における当社の経営指標である自己資本比率は、前事業年度末に比べて6.9ポイント増加し、40.34%となりました。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」をご参照下さい。
④経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
お知らせ