文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社は、コーポレートスローガンでもある、「あたらしい命に、あたらしい医療の選択肢を。」を実現するために、周産期の組織に由来する幹細胞を中心とした「細胞バンク事業」のノウハウの蓄積・技術開発・サービスの向上に努めて参ります。
そして、細胞バンクに保管されている細胞を用いて「新しい医療」を提供しようと日々努力を重ねられている医師や研究者の方々と協力し、これまで治療法のない病態に苦しむ患者さんに寄り添い、医療の発展に寄与する事を目標としております。
また、当社独自の、細胞バンク事業のネットワークを基盤とした新たなビジネスモデルの構築による収益拡大に取り組んでおります。
(2) 目標とする経営指標
当社は、「細胞バンク事業」の単一セグメントのため、事業の状況を的確かつ容易に把握する上で、年間保管(売上)検体数をベンチマークとしております。年間保管(売上)検体数増加を目指し、事業規模拡大に努めて参ります。また「細胞バンク事業」の安定した運営のため、内部留保を充実させ、自己資本比率を高めて参ります。
当社の中長期的な経営戦略は下記の3点であります。
・ 「さい帯(へその緒)」等を含めた、出産に由来する組織由来の細胞(周産期組織由来細胞)の採取、保管に向けて、医療機関・研究機関と協力しながら事業の拡大を図って参ります。また、アジアを中心とした、まだ「細胞バンク事業」が発達していない国々への事業展開を企図して、市場調査や現地の医療機関等との提携などを進めて参ります。
・ 保管する幹細胞を使用して、中枢神経系疾患(低酸素性虚血性脳症、脳性麻痺、自閉症スペクトラム障害等)等に対する再生医療・細胞治療に取り組む医療機関と協力して、臨床研究を推進し、当社の「細胞バンク事業」の利用者拡大に繋げて参ります。
・ 細胞バンク事業において構築した、産婦人科へのネットワークを活用した、妊婦及びそのご家族等へ向けた、他に無い、新しいサービス・製品を開発して参ります。
① 経営環境について
近年の再生医療分野の発展は目覚しく、さい帯血についても米国を中心に臨床研究が進展しております。米国デューク大学においては、脳神経疾患に対するさい帯血投与の第Ⅱ相臨床研究が終了し、良好な結果が発表され現在ではFDA(米国食品医薬品局)承認のもと、2017年10月より「拡大アクセス制度」(注)がスタートし、2021年9月までに464名の患者さんが治療を受けられております。日本国内でも、2014年に再生医療等安全性確保法が施行され、当社のような事業会社が臨床研究に参加する仕組みが整えられた事から、さい帯血等を利用した臨床研究が開始され、さい帯血等の体性幹細胞の医療応用のニーズは高まってきております。
当社としては、国内のさい帯血を用いた臨床研究を推進し、さい帯血の保管の意義を訴求しております。また、さい帯血のみならず、さい帯由来の間葉系細胞を用いた研究開発も世界的に着実に進展しており、さらには、さい帯由来間葉系細胞そのものではなく、それらが分泌する因子(生理活性物質)を用いた医療開発も近年では活発に行われております。このように多様化するさい帯由来間葉系細胞の応用は今後ますます進むと考えられ、さい帯組織の保管の必要性が高まるものと予想されます。当社は2021年4月よりさい帯保管事業を開始しており、将来のさい帯の医療化に備えた保管を訴求しております。当社としては、さい帯由来間葉系細胞及びその培養因子の研究開発を積極的に行い、いち早く臨床応用すべく推進しております。
② 事業上及び財務上の対処すべき課題について
当社は、コーポレートスローガンでもある、「あたらしい命に、あたらしい医療の選択肢を。」を実現するために、前項の経営戦略を推進するにあたり、下記の4点を課題と捉え対処して参ります。
・当社は、周産期の組織に由来する幹細胞を中心とした「細胞バンク事業」を主事業としております。この「細胞バンク事業」において、さい帯血の保管については、厚生労働省健康局より、「臍帯血取扱事業の届出」の提出を要請されており、当社は今後も同省と協議しながら、適切に事業運営を行って参ります。
・当社の主事業である「細胞バンク事業」においては、近年その需要が急激に高まってきており、当社は2021年3月に新たな細胞処理センター(横浜市)を増設いたしました。今後も2021年4月に開始した「さい帯(へその緒)保管サービス」を含めた、出産に由来する組織由来の細胞(周産期組織由来細胞)等の採取、保管事業の拡大に備え、細胞処理能力、細胞保管能力の増強を行って参ります。
・当社では、人員の増強、組織の強化が重要な経営課題の一つと捉えております。今後も、専門知識を持った優秀な人材を継続的に採用、また育成を行い、組織を強化して行くとともに、「デジタル化」による、より効率的な業務運用を目指して参ります。また、社員のモチベーションを上げるための研修制度、福利厚生も充実させて参ります。
・当社では、持続的な企業価値向上を図るためには、経営の健全性、透明性及び客観性を高めることが重要であると考えております。そのため、コーポレート・ガバナンス強化の取組みとして、社外取締役の充実等、意思決定プロセスの透明化を図って参ります。また、役職員に対して、コンプライアンス意識を高めるための啓蒙活動を継続して参ります。
(注)デューク大学で行われている「拡大アクセス制度」では、さい帯血を用いた臨床試験の選定基準に満たないお子さんに、所定の手続きを経て自家(お子さん自身)あるいは他家(ごきょうだい)のさい帯血投与の機会を提供しております。本書提出日現在、26歳未満の、脳性麻痺、低酸素性脳症、脳卒中、水頭症、言語失行症、自閉症スペクトラム、その他の脳障害を持つお子さんが対象となります。
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