(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、物価高、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響を受けつつも、サービス消費を中心に持ち直し傾向がみられ、4月から6月における実質GDPはプラス成長となりました。ただし、7月以降は新規感染者数が急増しており、自粛等の影響による消費の変動には引き続き注視する必要があります。
このような環境下、当社グループを取り巻く事業環境においては、合計特殊出生率が6年連続で前年を下回るなど、厳しい状況が続いています。一方で、子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」の設置関連法が公布され、2023年4月1日設置が予定されます。これにより、シームレスな子どもに関する施策が行われ、少子化や子どもの貧困等、子ども・子育てを取り巻く課題へ、より機動的な対策が実行されていくことが見込まれます。
株式会社さくらさくみらいを中心に子ども・子育て支援事業を展開する当社グループにおいては、全国的な少子化や働き方改革、ライフスタイルの変容等により保育需要が減少する中、入園児童数の減少による売上高の伸び悩みや、物価高騰に起因するコスト増加による利益圧迫等の影響がありました。このような状況下、子育て家庭の包括的な支援を図るべく、保護者向け子育て支援DX(デジタルトランスフォーメーション)、子育て支援カフェ、進学塾サービスなど保育サービス周辺事業の整備・拡張を進めています。また、保育所運営のノウハウを利活用した子育て支援住宅の企画・開発をするべく、販売用不動産を取得いたしました。
なお、当連結会計年度において、合計11施設の東京都認可保育所を新規開設いたしました。
(2021年10月開園)
さくらさくみらい佃 (中央区)
(2022年4月開園)
さくらさくみらい豊玉北(練馬区)
さくらさくみらい木場 (江東区)
さくらさくみらいつくだ大通り(中央区)
さくらさくみらい谷中 (台東区)
さくらさくみらい西葛西(江戸川区)
さくらさくみらい新東陽(江東区)
さくらさくみらい小竹向原(板橋区)
さくらさくみらい光が丘(練馬区)
さくらさくみらい板橋四丁目(板橋区)
さくらさくみらい荻窪 (杉並区)
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高11,992百万円(前年同期比19.9%増)、営業利益21百万円(同95.5%減)、経常利益1,160百万円(同29.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益365百万円(同61.8%減)となりました。
なお、当社グループは子ども・子育て支援事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
財政状態については以下の通りであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、4,162百万円となり、前連結会計年度末と比べて1,714百万円増加しました(前連結会計年度末比70.0%増)。これは主に、仕掛販売用不動産が1,180百万円増加したことによるものです。固定資産は、9,259百万円となり、前連結会計年度末と比べて325百万円増加しました(前連結会計年度末比3.6%増)。これは主に、建物及び構築物が691百万円増加したことによるものです。この結果、資産合計は13,421百万円となり、前連結会計年度末と比べて2,039百万円増加しました(前連結会計年度末比17.9%増)。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は、3,597百万円となり、前連結会計年度末と比べて789百万円増加しました(前連結会計年度末比28.1%増)。これは主に、短期借入金が311百万円増加したことやその他流動負債が355百万円増加したことによるものです。固定負債は、5,170百万円となり、前連結会計年度末と比べて853百万円増加しました(前連結会計年度末比19.8%増)。これは主に、施設の新規開設のための借入れにより、長期借入金が897百万円増加したことによるものです。この結果、負債合計は8,767百万円となり、前連結会計年度末と比べて1,642百万円増加しました(前連結会計年度末比23.1%増)。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は4,653百万円となり、前連結会計年度末と比べて396百万円増加しました(前連結会計年度末比9.3%増)。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴い、利益剰余金が343百万円増加したことによるものです。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて192百万円増加し、1,351百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは176百万円の収入となりました(前連結会計年度は1,720百万円の収入)。これは主に税金等調整前当期純利益の計上830百万円、減価償却費の計上507百万円による資金増加があった一方で、仕掛販売用不動産の増加1,180百万円による資金減少があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは1,343百万円の支出となりました(前連結会計年度は2,742百万円の支出)。これは主に有形固定資産及び無形固定資産の売却による収入914百万円があった一方で、有形固定資産の取得による支出2,008百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは1,358百万円の収入となりました(前連結会計年度は1,390百万円の収入)。これは主に長期借入金の返済による支出2,475百万円があった一方で、短期借入金の純増加額1,161百万円や長期借入れによる収入2,686百万円があったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社グループは生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
b. 受注実績
当社グループは受注生産を行っていないため、該当事項はありません。
c. 売上実績
当連結会計年度の売上実績を示すと、次のとおりであります。
なお、当社グループは子ども・子育て支援事業の単一セグメントであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年8月1日 至 2022年7月31日) |
前年同期比(%) |
子ども・子育て支援事業(百万円) |
11,992 |
119.9% |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の売上実績及び当該売上実績の総売上実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年8月1日 至 2021年7月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年8月1日 至 2022年7月31日) |
||
売上高(百万円) |
割合(%) |
売上高(百万円) |
割合(%) |
|
練馬区 |
1,128 |
11.3 |
1,390 |
11.6 |
大田区 |
1,135 |
11.3 |
1,241 |
10.4 |
2.上記は、子ども・子育て支援事業における同区からの委託費収入、補助金収入等を売上計上しているものです。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
財政状態の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b. 経営成績
(売上高)
当連結会計年度における売上高は11,992百万円となり、前連結会計年度に比べ1,987百万円増加しました(前年同期比19.9%増)。これは主に、認可保育所の開設(当連結会計年度は11施設)により、運営する施設数が増加し、当連結会計年度末現在85園となったことによるものです。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度における売上原価は10,693百万円となり、前連結会計年度に比べ2,280百万円増加しました(前年同期比27.1%増)。これは主に、認可保育所の開設により、運営する施設数が増加したことによるものであります。また、保育サービス水準維持を目的とした人員増員を計画通り行ったことと、物価高騰の影響等による施設運営に係る経費の増加も、売上原価の増加要因となりました。売上原価の主な内訳は、給料及び手当4,507百万円、地代家賃2,038百万円であります。この結果、売上総利益は1,298百万円となり、売上総利益率は10.8%(前年同期比5.1ポイント減)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は1,277百万円となり、前連結会計年度に比べ151百万円増加しました(前年同期比13.5%増)。これは主に、連結子会社の増加や保育所の新規開設による本部の人件費等の増加によるものであります。販売費及び一般管理費の主な内訳は役員報酬124百万円、給料及び手当354百万円、地代家賃120百万円及び租税公課135百万円であります。この結果、営業利益は21百万円となり、営業利益率は0.2%(前年同期比4.5ポイント減)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は1,767百万円となり、前連結会計年度に比べ349百万円減少しました(前年同期比16.5%減)。営業外収益の主な内訳は、新規開設11園のための施設整備等にかかる補助金収入1,720百万円であります。営業外費用は627百万円となり、前連結会計年度に比べ311百万円減少しました(前年同期比33.2%減)。営業外費用の主な内訳は、開業準備費573百万円であります。この結果、経常利益は1,160百万円となり、経常利益率は9.7%(前年同期比6.7ポイント減)となりました。
(特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における特別利益は、218百万円となり、前連結会計年度に比べ218百万円増加しました(前年同期の発生はありません)。これは、固定資産売却益218百万円を計上したことによるものであります。特別損失は540百万円となり、前連結会計年度に比べ540百万円増加しました(前年同期は0百万円)。これは主に、東京都渋谷区と目黒区の保育所施設合計5施設の減損損失437百万円と、のれん償却額101百万円を計上したことによるものです。この結果、税金等調整前当期純利益は830百万円となり、また法人税等合計を466百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は365百万円となりました(前年同期比61.8%減)。
c. 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、「2 事業等のリスク」に記載のとおり、人材の確保、国及び地方自治体の政策、法規制等の様々なリスクの顕在化により業績に影響を受ける可能性があるものと認識しております。
したがって、内外の経営環境及び事業環境に影響を及ぼす要因に留意しつつ、適時に情報を収集・分析する体制を整備し、リスクに対応可能な内部管理体制を構築するとともに必要な経営上の施策を実行することにより業績に影響を与えるリスク要因の分散及び低減を図ってまいります。
d. 経営者の問題意識と今後の方針について
合計特殊出生率が継続的に減少しており、数年前の予測を遥かに上回るスピードで少子化が進行しております。併せて、新型コロナウイルス感染症を起因とする保育所の利用控え等も相まって、待機児童は大きく減少いたしました。保育サービスへの需要は将来的に反転増する余地は残されるものの、子ども・子育て支援業界は今後、利用者の多様なニーズへ応えられる、より質の高い水準のサービス提供が求められる時代へ転換するものと考えられます。
少子化問題の解消ならびに子どもと家庭の福祉・保健その他の支援・整備等、我が国経済の発展のためにはこれらの問題解決を通じて社会における女性の活躍、児童の健全な成長等を図ることは重要なテーマであると認識しております。
当社グループが民間事業者の立場からこれらの課題の解決に取り組むためには、未だ、保育サービスへの社会的要請が残る地域に優先的に良質な認可保育所を開設していくことや、保育所で働く保育士の教育や待遇の改善を通じて優秀な人材の確保・育成を図ることが必要であり、また、高度なコンプライアンス意識を社内文化として醸成していくことが不可欠であると認識しております。
当社グループは、社会的な問題の解消を図りつつ、当社グループで働く人材が社会ニーズに応えている満足感や充実感を感じながら働くことができる環境を構築し、同時に企業として健全な発展と成長を図ることを基本的な方針として事業拡大に取り組んでまいります。
e. 経営上の客観的指標の達成状況について
当社は営業利益率を重要な経営指標として位置付けております。
当社グループは、「安全と安心を提供し、自然で和やかな笑いに満ちたあたたかい子育て環境を作り出す」という経営理念及び方針を掲げ、持続的な成長を目指していく方針であります。当連結会計年度においては、このような方針のもと、現在の主要事業である子ども・子育て支援事業において新規施設の開設や既存施設の稼働率、入園児童の定着率の向上等をはかり、前連結会計年度から営業利益率を向上させることを目標として事業の推進をしてまいりました。
当連結会計年度における営業利益率は0.2%(前年同期比4.5ポイント減)となりましたが、この指標について、前年度より改善されるように引き続き、取り組んでまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析、検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの分析につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループのキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
今後の資金需要のうち主なものは、保育施設の運営に係る運転資金、新規に開設する保育所、子育て支援カフェ、子育て支援住宅、保育所のICT化支援等に係る設備投資資金であります。
当社グループにおける運転資金及び設備投資資金等につきましては、自己資金、金融機関からの借入金、新株発行による調達資金により充当することとしております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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