課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、「さくらさく」という言葉から連想される、子どもが成長して花開いていく喜びや嬉しさを、子ども、保護者、職員の三者が笑顔に包まれた中で共有できることが最も重要と考え、「安全と安心を提供し、自然で和やかな笑いに満ちたあたたかい子育て環境をつくり出す」ことを経営理念及び方針として掲げております。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略等

当連結会計年度における子ども・子育て支援事業周辺においては、合計特殊出生率が継続的に減少しており(出典:令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-)、数年前の予測を遥かに上回るスピードで少子化が進行しております。併せて、新型コロナウイルス感染症に起因する保育所の利用控え等も相まって、待機児童は大きく減少いたしました。保育サービスへの需要は将来的に反転増の余地は残されるものの、子ども・子育て支援事業においては今後、利用者の多様なニーズへ応えられる、より質の高い水準のサービス提供が求められる時代へ転換するものと考えられます。

このような時代のニーズを受け、当社グループの保育方針「愛情をたっぷりと注ぎ あわてず個性を伸ばす」を軸に、東北大学、千葉大学、関東学院大学の各分野の専門家の協力を得て、認知能力の発達に繋がる幼児教育プログラム「CLiP」(Children Learn in Play)を当社グループの運営する保育所へ導入し、子どもたちの明るい未来のための成長をサポートしてまいります。

また、引き続き子ども・子育て支援の質を追求したサービス提供を行い、当社グループの強みである不動産開発力により、子育て支援住宅の企画・開発や進学塾運営の販路の拡大、当社グループの持つ情報資産を利活用したサービスを提供してまいります。

以上の基本的な方針を踏まえ、当社グループでは中長期的に以下の経営戦略に取り組んでまいります。

 

① 優秀な人材の確保・育成

保育所の開設計画の維持と高品質な保育サービスの維持を同時に実現し、サービス水準の継続的な向上を図るためには、優秀な人材を確保し、また、継続的に育成していくことが不可欠であります。

そのため、社内の研修制度の充実、研修の質の向上、従業員の健康維持及び増進のための労働環境の構築、適切な人事制度、適材適所の人材配置等に継続的に取り組んでいくことにより、従業員が働きやすい環境、モチベーションが維持できる環境や組織文化の醸成に努めてまいります。

② 組織力の強化

保育サービスの継続的な質の向上には保育所現場における運営の強化だけでなく、それを支える本部における運営サポート業務やその他の本部機能の質の向上が不可欠であり、また、コンプライアンス遵守の組織風土の醸成や保育理念・経営理念の共有、情報共有や情報管理の徹底を推進していくことが必要となります。

これらを実現していくために、コンプライアンス委員会、ハラスメント啓発委員会の継続的かつ積極的な運営、ブランドブックの作成・更新・周知、情報共有・情報管理の精緻化や組織運営の効率化のためのシステム投資等を推進してまいります。

③ 新規事業への進出

企業として持続的な成長を図るためには、既存の事業の収益を伸長させるのはもちろんのこと、子ども・子育て関連の新領域の事業や既存事業で獲得した経営資源を活用した関連領域や近接領域など、新たな事業を創出していく必要があるものと考えております。保育対象年齢の子どもに限らず、就学後の児童、子育て中の保護者の支援を目的に、2021年4月には保育所のICT化の推進と保育所がもつさまざまな情報資産を活用した事業を創設する新会社を設立し、同年6月には主に中学受験を支援する進学塾の子会社化も行いました。2021年9月にはベーカリーカフェ運営の株式会社日と々ととの合弁にて、子育て支援カフェの運営を行う新会社を設立し、2022年11月以降には1号店の開店を予定しています。

さらに子育て家庭の包括的な支援を図るべく、保育所運営のノウハウを利活用した子育て支援住宅の企画・開発を目的とし、当連結事業会計年度において販売用不動産を取得いたしました。

今後も外部環境分析や社内の経営資源の分析等を基礎とした新領域の事業化・収益化の可能性を検討する仕組みを整備し、新規事業を継続的に創出できる組織体制の構築に取り組んでまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、高い成長性を維持し、継続的に企業価値の最大化を図っていくことを経営上の目標としており、企業価値の向上を図るための経営指標としては営業利益率を特に重視しております。

当社グループは、現時点では安定的な収益基盤を築くことを最優先課題と認識しておりますが、子ども・子育て支援事業は投資が先行する傾向が強く、数年かけて収益性が向上していく特性があることから、営業利益率の向上が当該課題の進捗を図る適切な指標となるためです。

 

(4) 経営環境

子ども・子育て支援事業を取り巻く状況としましては、新型コロナウイルス禍の影響による「産み控え」等、2022年上半期の出生数は2000年以降初めて40万人を下回るなど、合計特殊出生率が6年連続で減少いたしました。一方で、子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」の設置関連法が公布され、2023年4月1日設置が予定されます。これにより、シームレスな子どもに関する施策が行われ、少子化や子どもの貧困等、子ども・子育てを取り巻く課題へ、より機動的な対策が実行されていくことが見込まれます。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 継続的な人材の確保

当社グループが運営する子ども・子育て支援事業は、事業拡大にあたって保育士・栄養士・看護師資格を有する優秀な人材の確保が不可欠であるため、優秀な人材の確保に努めてまいります。当社グループでは、年間を通じて全国各地で新卒の採用を含めた積極的な採用活動を行うとともに、従業員社宅制度や研修制度の充実、雇用条件の向上など、働きやすい環境づくりに注力してまいります。

② ドミナント戦略の強化

当社グループは、全国的な待機児童が減少する一方で、依然として底堅いニーズを保つ都心部をターゲットとして、過去の運営実績や経験により培ったノウハウにより、収益性の高い認可保育所に特化した施設開設に注力してまいりました。当面は首都圏都心部における児童の確保に優位性があると見込まれるため、当該エリアにおける認可保育所の開設に注力していく方針であります。

③ 新規事業への進出

当社グループの主要事業及び収益源は子ども・子育て支援事業であるため、国や地方自治体の政策の変更により当社グループの業績は大きく影響を受ける可能性があります。当該状況を踏まえ、当社グループの経営の安定化を図るためにも、当社グループが保有するノウハウを活用し、政策の影響を受けない新規事業領域への進出を継続的に検討してまいります。

④ コンプライアンスの遵守

当社グループの運営する子ども・子育て支援事業は許認可事業が中心であるため、児童福祉法や施設利用者の個人情報保護に関する法令等の関連法令を遵守することは、事業を継続するために特に重要であると認識しております。当社グループでは、適宜改正される関連法令を適時に把握し、社内に周知できるように社内規程等をはじめとしたルール及び体制を整備し、社内研修等によりコンプライアンス遵守の組織文化の醸成を図ってまいります。また、当社では、個人情報保護・情報セキュリティ確保についての社内体制の整備等を進め、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)からプライバシーマークの認定を受けております。

⑤ 設備投資資金の調達

当社グループでは、当連結会計年度において11園を開園いたしました。今後も継続的な保育所の開設を計画していることから、保育所開設に係る設備資金を安定的に確保することが重要な課題であると認識しております。一方で、有利子負債比率の上昇は経営の健全性を阻害する可能性があるため、財務の健全性を図るべく、金融機関からの借入、社債発行、株式発行等による複数の資金調達手段を組み合わせ、最適な財務政策を検討してまいります。

⑥ 不動産の確保

当社グループが認可保育所を開設するにあたっては、不動産所有者から保育所建設予定の土地や建物を賃借し、自治体より許認可を得ることとなりますが、自治体、利用者、当社グループのそれぞれのニーズを満たす最適な物件の情報を適時に取得するためには、不動産関連事業者等との関係構築が不可欠となります。当社グループ経営陣は不動産業界での豊富な経験とネットワークを有しておりますが、引き続きこれらのネットワークの拡充に努めてまいります。

 

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