文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは「世界を虜にする」をビジョンに掲げ「世界に“楽しみ”を増やす」というミッションを実現するために、「漫画全巻ドットコム」をはじめとするマンガビジネスを展開しております。
また、上記理念のもと、当社グループの役員及び従業員全員の共通価値観として以下5つを定め日々の活動を行っております。
当社グループの経営環境の認識は、以下の通りであります。
2021年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進んだことに伴い徐々に経済活動の正常化への動きがみられましたが、2022年1月以降のオミクロン株による感染の再拡大など感染者数は増減を繰り返しており、いまだ収束は見通せていない状況にあります。またウクライナ情勢により国内外において経済活動への影響が懸念され、物価の上昇や円安の進行など、先行きは不透明な状況にあります。
一方で当社グループが主に事業を行う出版流通業界におけるコミック市場の概況は、公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2021年のコミック市場(紙と電子合計)は推計6,759億円と発表されており、2018年の1.9%増から、2019年は12.7%増、2020年は23.0%増、2021年は10.3%増と前年をピークに増加率は下がったものの2年連続で過去最高を更新しております。当社グループの主力サービスが属する紙コミックス市場(コミック誌を除く)も、2018年の△4.6%と中長期的な減少傾向にあった市場が、2019年は「鬼滅の刃」のブームの発生により4.8%と増加傾向に転じ、2020年は巣ごもり需要と「鬼滅の刃」のブームの双方の後押しもあり24.9%と増加率はピークを迎えたものの、2021年も「呪術廻戦」「東京卍リベンジャーズ」等の継続的なヒットの発生もあり、0.4%増の2,087億円と、増加の勢いを持続しております。
2021年度の経営環境については、前2020年度の当社グループの大幅な売上・利益の拡大要因になった新型コロナウイルス感染症拡大防止のための在宅勤務や外出自粛に伴って生じた、巣ごもり需要はゆるやかに減速しているものと思われますが、そのような条件下においても引き続き前年を上回る需要を持続しております。
このような当社グループのサービス成長持続の要因としては、巣ごもり需要が一時的な現象ではなくコロナの長期化に伴い人々のライフスタイルの変容として定着している事、また漫画を原作とするアニメ、テレビドラマ、映画等の各種メディアコンテンツ展開の継続的な活性化が原作漫画の全巻買い需要を強く支えている事、近年の当社グループのサービス認知度の向上が世の中の漫画作品の認知の仕方、買い方の変化と相まって当社グループのサービスへの需要拡大に繋がっている事、の3点が要因となったと当社は考えております。
当社グループは、マンガ事業の単一セグメントでありますが、主要サービスごとの中期経営戦略は以下のとおりであります。
当社グループの主力サービスであるECサービスについては、まず近年見られる現象として、マンガ作品のメディア化(TVアニメ、TVドラマ、映画、動画配信サービス、ゲーム、演劇等)が老若男女幅広い層への認知を生み出し、強いブーム性のある新たなコミック需要を喚起するという傾向が続いており、今後もメディア作品の原作としてのコミックのニーズは高まっていくと思われます。
また、足元では新型コロナウイルス感染症対策における、在宅での可処分時間の増加やいわゆる「巣ごもり消費」の長期持続が想定される中で、自宅におけるエンターテイメントの選択肢として、マンガが存在感を増していることが、マンガ全巻買いへの需要の拡大の要因となっていると見込んでおります。
そのような、経営環境を背景に、当社グループは現時点でコミックを全巻セットで販売するサービスにおいては優位な販売シェアを獲得できていると想定しており、以下に掲げる強みを武器に、サービス競争力をさらに高めてゆくことを基本戦略としております。
当社グループは「コミックのまとめ買い」サービス事業者のパイオニアとして、事業開始以来15年にわたりデータを蓄積、更新し続けることで独自のデータベースを構築してまいりました。このデータベースと全巻セットに特化した倉庫運営によって、漫画全巻ドットコム内での2022年4月末時点の購入可能コミック全巻セット数は29,194セットと、競合他社を引き離し優位なポジションを築いていると考えております。
最新の人気コミックから他社では取り扱いが無いような往年の名作コミックまで幅広い品揃えを持つことによって、今後も「コミックのまとめ買い」という購入方法、ライフスタイルを広げていき、紙コミックの市場規模拡大に貢献し、拡大した市場成長を享受できる立場にあると自負しております。
15年にわたる出版社との強いネットワーク、独自データベースと経験値がもたらす低返本率により、出版社は返本リスクの低減、出版取次は返本物流コスト負担の軽減に繋がっています。また、出版取次からの配本数は返本率・販売量が反映されており、当社の安定的な仕入力 は他社がすぐに到達し得ない参入障壁であると自負しております。
この仕入力に、既存購入会員(469,379名/2022年4月末)のリピート購入、既存データを活かした新規顧客の獲得による販売力が加わることで、「返本することなく大量に販売する」ことが「在庫を切らさない安定的な仕入れ」につながるという好循環を継続的に生み出しています。
③ マンガを軸足としたサービス横断による相乗効果
当社グループは、紙コミック、電子コミック、マンガ関連イベント運営とフォーマットに囚われない多面的なサービスを提供しているため、様々なマンガファンとのコンタクトポイントを有しております。単一サービスでは成し得ない各サービス間のユーザーの循環によって、ユーザーに対し継続的に価値を提供し、長期的な収益を目指してまいります。
具体的な戦略、施策としては以下を推進していく予定です。
TV、ラジオ、ネットニュース、ネット広告等メディアでの露出を通じて「漫画全巻ドットコム」の認知度は徐々に広がりつつありますが、「コミックのまとめ買い」の手軽さ、楽しさの認知を一層広げていくことが売上拡大を図るにあたり重要であると認識しております。特に45歳以上の中高年層はマンガ世代であるにも関わらず現状アクセス数が少なく、今後の売上拡大の余地として考えております。
データベースを最大限活用することによって、サービスの利便性向上、顧客満足度の向上、欠品/過剰在庫の回避、効果的な新規サービスの開発等を実行することが、今後の売上拡大・コスト削減への大きな要素であると考えます。また、更なるデータ活用の精度向上は当社グループの成長余地であると認識しています。
ブーム性のあるコミックから年に数回しか注文のないコミックまで幅広い顧客需要へ対応すべく、随時、倉庫オペレーションの効率化・自動化、必要に応じて増床していくことによって機会損失を最大限回避して参ります。また、欠品の減少、注文から出荷までの時間短縮を更新し続ける組織体制の構築を推進して参ります。
2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で店舗における売上計画の見直しを行う一方でグッズの自社企画力、製造力を高めてEC販売での売上増加と収益性の改善を図る戦略を進めております。2021年度以降は、イベントビジネスの環境改善が予測される中で、当社イベントサービスの特徴である、アニメ化される人気作品から熱量の高いファンを抱えるニッチ作品までを幅広く企画実施できる事と、自社でのグッズ企画・製造能力が向上する事で、イベントサービスの潜在的な成長性は高いと考えており、特に店舗物件の空室率が上昇する中で新規出店できるビジネスモデルを持つ優位性を最大限発揮することで売上成長を加速して参ります。また、同ビジネスにおいては海外マンガファンのニーズも高く、強く支持されていることから海外市場への進出も積極的に推進していく予定です。
マンガがアニメ化されネット動画で拡散されることで、マンガ作品の認知度は世界的に高いものの紙コミック、電子コミックは言語の違い、海賊版等の障壁でビジネスを拡大出来ていない一方で、グッズに関してはどの地域であっても手軽に購入出来る非言語商材であるため世界的なニーズが存在していると考えます。
また、現在、当社グループの店舗は国内に限られますが、国内店舗でのイベントにおいて中国の電子決済サービスであるWeChatPay(微信支付)による決済が百回を超える月が複数発生しており、渡航が制限されている期間であることを考慮すると中国経済圏現地での可能性はかなり高いと考えております。
当社は、持続的な成長と企業価値の拡大を図るために、事業規模の拡大を重視しており「売上高」を重要な指標と考えております。
また、当社は、紙コミックのECサービスを主としており、売上総利益率はある程度、固定化されているものの、倉庫物流業務の効率化などの企業努力と、各種マーケティング施策等で、顧客にどれだけ付加価値のある楽しみを提供できたかを測る指標として「売上高経常利益率」を重要な指標としております。売上高経常利益率は、営業活動が効率的に行われたかどうかを見るために有効な指標であることが当該指標を重視している理由であり、業界構造の観点から書店平均的数値は1%以下と推測されるなかで、当社では常に業界平均を上回る利益率の水準を実現する事を中期計画における経営目標の目安としております。
また当社の取締役会等でサービスの月次推移を報告するにあ たっては、販売者数や月間アクティブユーザー数、コンバージョンレート、顧客単価等をKPIとして使用しており、2023年3月期利益計画における各KPIは、販売者数(約61.5万人)や月間アクティブユーザー数(約355万MAU)、コンバージョンレート(約1.44%)、顧客単価(約8,500円)を計画に達成に必要な目安と定めその推移を確認しております。
当社は、これまで培ってきたビジネス基盤をさらに強化することで成長の持続を図ると共に、新規マンガビジネスの領域への積極的な取り組みを行うことで、高い成長率を維持することが重要と認識しております。また、コーポレート・ガバナンスの充実も重要な課題と認識しております。
当社のコミック全巻セットECサービスは、国内の紙のコミック書籍市場全体が近年減少し続けるトレンドの中で、大きな成長を継続しており、且つ「コミックのまとめ買い」サービス需要においては、当社は同様のサービスを専業的に供給する事業者として、2022年3月期においては、年間で約48億円規模のサービス売上を実現できている供給者となっております。当社はこのような販売実績のアドバンテージをさらに強化すべく「漫画全巻ドットコム」をはじめとする各サービスのブランド価値向上に努めて参ります。
当社は、日本国内で展開するマンガビジネスの需要が、世界のマンガファンにも同様に大きな潜在需要があることを、これまで国内に訪れた外国人顧客の消費行動や、海外からのアクセスで利用されたサービス実績から認識しています。コロナ禍で外国人の往来に制限が生じている状況も踏まえながら、当社のビジネスノウハウを活かして国内からの発信のみならず、海外拠点を通じたEC、イベントビジネスを積極的に進めることで収益機会の拡大を図っていく方針であります。まずは文化的に親和性の高いアジアを足掛かりとして、将来的には全世界への事業拡大を目指して参ります。
当社は、多くのサービスをインターネット上で提供しており、サービス提供にあたりシステム稼働の安定性を確保することが重要な課題と認識しております。そのため、各サービスへのアクセス増大時の負荷分散や顧客満足度の向上に向けた機能開発、設備投資等の継続的な実施を行って参ります。また、商品取扱量の増加に合わせた物流倉庫機能の強化が重要であり、安定性・安全性の向上に取り組んで参ります。
当社は、今後更なる事業拡大を推進するにあたり、従業員のモチベーションを高める人事施策や労働環境の構築に努めながら、当社のミッションやバリューに共感し、今後の事業展開に賛同し、積極的に活躍できる優秀な人材の採用に取り組んで参ります。また、内部統制及びコンプライアンス体制の充実・強化を図って参ります。
新規事業及び周辺事業の拡大の為には、M&Aも有効な手段であると考えております。M&Aを行うにあたっては、投資対効果はもちろん、対象企業の将来性や当社ビジネスとのシナジーの有無を十分に検討した上で、積極的に取り組んで参ります。
当社は、今後の企業活動が長期的な視点で社会に与える影響を考慮し、経済価値のみならず持続的に社会価値を創出する企業を目指し経営を進めていくことが必要だと考えております。特に全ての従業員に対して年齢、性別、国籍に関わらない公平な賃金の支払いに努めるとともに、ジェンダー・ペイ・ギャップの解消を目指していく事や、各自の能力を十分に発揮できる成長機会の提供と入社時の雇用形態に捉われない公平な評価を目指していく事を重視しております。
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