(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における住宅関連業界は、通年の新設住宅着工戸数が、感染症拡大前の水準に近づいた一方で、住宅の引き渡しについては、一部でウッドショック・原油価格の高騰による建築資材不足、住宅設備機器の欠品・遅延が発生したことによる影響が見られました。また、仲介成約件数も通年では感染症拡大前の水準となりましたが、年央から中古物件の在庫不足、給湯器等の調達遅延の影響を受けるなど、新築・中古ともに、テレワークの普及による在宅時間の増加などから、より快適な住環境への住み替えニーズを背景とした住宅需要が底堅く推移したものの、住宅供給面で感染症による影響がありました。
住宅ローン市場において、預金増を背景とした銀行による積極的な貸出が行われた一方で、フラット35市場については、感染症の長期化による就業不安や物件価格の高騰などから利用顧客層の購入見送りなどの影響が見られました。
このような状況のもと、当社グループは、「中期経営計画2021」の初年度となる当連結会計年度において、「住み替えカンパニー」への進化のため、「住み替えを希望するお客さまを街・家探し~住宅購入~住宅ローンに繋げる基盤」の構築を進めてまいりました。
住宅ローン事業では、関西・中部・南関東で地域支社を設立し、FC店舗と連携した大手不動産事業者開拓及びFC店舗へのきめ細かいサポートなど、地域密着型マーケティングを開始しました。また、FC店舗でも多様な商品ラインアップの中からお客さまに合った商品を選択していただけるよう、直営店のみで取り扱っていたauじぶん銀行の住宅ローンの紹介業務を開始しました。
新規事業については、アルヒ不動産テクノロジーズ株式会社において不動産の買取再販事業をスタートし、仕入・販売ネットワークなどの事業基盤を確立しました。さらに、住宅ローンや物件購入・売却など住み替えについてのコンサルティング業務を行うアルヒ住み替えコンシェルジュ株式会社においても、相談受付から物件紹介までのビジネスプロセスを確立しました。また、一人ひとりのライフスタイルや価値観に合った本当に住みやすい街を提案するWebサービス「TownU(タウニュー)」の提供を開始し、お客さまの住み替え需要の喚起に取り組んでまいりました。
しかしながら、フラット35市場の低迷、当社の得意とする中古物件を取り扱う中小規模事業者における物件不足や、三大都市圏における住宅ローン市場の競争激化などにより、当社の融資実行件数(借換含む)は、前年同期比17.5%減少となりました。
当連結会計年度の営業収益は、債権管理回収業務が前年同期比14.0%増加、保険関連業務が前年同期比25.2%増加とリカーリング収益が好調に推移したことに加え、新規事業などのその他業務が前年同期比71.1%増加した一方、融資実行業務が前年同期比14.5%減少、ファイナンス業務が前年同期比10.7%減少したことで、前年同期比1,632百万円減となる25,189百万円(前年同期比6.1%減)となりました。営業費用は、中長期的な成長に向けた人員採用やテクノロジー活用のための投資などの戦略的な投資を行った一方、その他固定費の抑制に努め前年と同水準となったことで、税引前利益については前年同期比1,594百万円減となる6,151百万円(同20.6%減)、当期利益は4,225百万円(同18.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は4,239百万円(同18.1%減)となりました。
なお、当社グループは住宅ローン事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」)は22,232百万円となり、前連結会計年度末に比べ15,171百万円の減少となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは3,716百万円の収入(前連結会計年度は4,750百万円の収入)となりました。これは主に、税引前利益が6,151百万円となり、営業貸付金の減少額6,442百万円などのキャッシュの増加要因があった一方で、預り金の減少額3,355百万円、法人所得税の支払による支出2,672百万円などのキャッシュ減少要因があったことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは698百万円の支出(前連結会計年度は777百万円の支出)となりました。これは主に、無形資産の取得による支出522百万円によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは18,189百万円の支出(前連結会計年度は18,620百万円の収入)となりました。これは主に、長期借入による収入14,000百万円などのキャッシュ増加要因があった一方、短期借入金の減少額23,300百万円などのキャッシュの減少要因があったことによるものであります。
③販売の実績
1)販売実績
当連結会計年度における販売実績の内訳は次のとおりであります。なお、当社グループは住宅ローン事業の単一セグメントであるため、業務別に記載を行っております。
(単位:百万円(前年同期比を除く。))
業務 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比 |
融資実行業務 |
12,192 |
85.5% |
ファイナンス業務 |
6,574 |
89.3% |
債権管理回収業務 |
2,840 |
114.0% |
保険関連業務 |
2,843 |
125.2% |
その他業務 |
737 |
171.1% |
合計 |
25,189 |
93.9% |
(注)販売実績の内訳には、消費税等は含まれておりません。
2)融資実行業務売上及び件数
当連結会計年度における融資実行業務売上の内訳は、次のとおりであります。
(単位:百万円(前年同期比を除く。))
区分 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比 |
新規借入 |
11,869 |
85.5% |
借換 |
323 |
84.9% |
合計 |
12,192 |
85.5% |
(注)融資実行業務売上の内訳には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における融資実行件数は、次のとおりであります。
(単位:件(前年同期比を除く。))
区分 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比 |
新規借入 |
20,061 |
82.3% |
借換 |
883 |
86.0% |
合計 |
20,944 |
82.5% |
(参考情報)
投資情報としての有用性の観点から、参考情報として2018年3月期から2022年3月期に係る四半期ごとの実行件数を以下に記載しております。
1)新規借入
(単位:件)
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
合計 |
2018年3月期 |
4,455 |
4,630 |
5,042 |
5,490 |
19,617 |
2019年3月期 |
5,262 |
5,517 |
6,134 |
6,573 |
23,486 |
2020年3月期 |
5,761 |
6,756 |
6,202 |
6,568 |
25,287 |
2021年3月期 |
5,644 |
6,199 |
6,393 |
6,133 |
24,369 |
2022年3月期 |
5,699 |
5,107 |
4,795 |
4,460 |
20,061 |
2)借換
(単位:件)
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
合計 |
2018年3月期 |
699 |
441 |
367 |
290 |
1,797 |
2019年3月期 |
230 |
328 |
288 |
295 |
1,141 |
2020年3月期 |
300 |
440 |
441 |
214 |
1,395 |
2021年3月期 |
166 |
255 |
306 |
300 |
1,027 |
2022年3月期 |
233 |
211 |
208 |
231 |
883 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
当連結会計年度末における資産は150,713百万円となり、前連結会計年度末に比べ14,049百万円減少いたしました。これは主に現金及び現金同等物が15,171百万円、営業貸付金が2,945百万円とそれぞれ減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における負債は118,835百万円となり、前連結会計年度末に比べ15,832百万円減少いたしました。これは主に、借入債務が14,776百万円、預り金が3,355百万円とそれぞれ減少したことによるものであります。
当連結会計年度末における資本は31,877百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,783百万円増加いたしました。これは主に当期利益を4,225百万円計上した一方、剰余金の配当2,124百万円により減少したことによるものであります。
2)経営成績
当連結会計年度の営業収益は、債権管理回収業務が前年同期比14.0%増加、保険関連業務が前年同期比25.2%増加とリカーリング収益が好調に推移したことに加え、新規事業などのその他業務が前年同期比71.1%増加した一方、融資実行業務が前年同期比14.5%減少、ファイナンス業務が前年同期比10.7%減少したことで、前年同期比1,632百万円減となる25,189百万円(前年同期比6.1%減)となりました。
営業費用は、中長期的な成長に向けた人員採用やテクノロジー活用のための投資などの戦略的な投資を行った一方、その他固定費の抑制に努め前年と同水準となったことで、税引前利益については前年同期比1,594百万円減となる6,151百万円(同20.6%減)、当期利益は4,225百万円(同18.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は4,239百万円(同18.1%減)となりました。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
経営成績に重要な影響を与える要因についての分析は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
2)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
今後の方針につきましては、「中期経営計画2021」に基づき、取組みを推進します。
c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指数等
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指数等については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、住宅ローン事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
1)資金調達の基本方針
当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本方針としており、主として銀行等からの長期借入金やコミットメントラインにより資金調達を行っております。子会社についてはアルヒ株式会社から借入を行うことにより、資金調達の一元化と資金効率化を図っております。また、お客さまに対する貸付債権は、融資実行後遅滞なく債権譲渡・流動化を行うことでオフバランス化しており、貸付債権に関するリスクを最小化しております。
2)資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、大きく分けて運転資金需要と貸付資金需要の2つになります。運転資金需要は主に、人件費、販売費及び一般管理費、システム開発、証券化に係る準備金や未収債権などになります。一方、貸付資金需要は、お客さまへの住宅ローン融資実行のための資金需要になりますが、これらの貸付債権は、融資実行後遅滞なく債権譲渡・流動化を行い資金化するため、貸付資金需要は融資実行から資金化までの短期間のつなぎ資金となります。
3)資金調達手段
当社グループは、円滑な事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用を行うと共に、金融機関からの借入、住宅金融支援機構への貸付債権の譲渡及び貸付債権を裏付資産とする信託受益権の売却などを行っております。
このようなオペレーションを行うに当たっては、複数の金融機関から長期借入金やコミットメントラインを含む十分な借入枠の確保を行うと共に、安定的に貸付債権の証券化が実施できる環境整備を行うなど、円滑な事業活動に必要な資金調達が可能な状況を常に維持するよう努めております。
また、当社グループは、円滑な資金調達を行うため株式会社格付投資情報センター(R&I)、株式会社日本格付研究所(JCR)の2社から格付けを取得しております。2022年3月31日現在の格付けは次のとおりであります。当社グループとしては引き続き健全な財務基盤を維持し、格付けの維持・向上に尽力していく方針であります。
格付機関名 |
長期発行体格付 |
見通し |
コマーシャル・ ペーパー |
株式会社格付投資情報センター(R&I) |
BBB+ |
安定的 |
a-2 |
株式会社日本格付研究所(JCR) |
A- |
ポジティブ |
J-1 |
③重要な会計方針の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は国際会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しておりますが、特に以下の将来に関する主要な仮定及び報告期間末における見積りは、当社の連結財務諸表に大きな影響を及ぼします。
a.のれんの評価
当社グループは、旧アルヒ株式会社の株式を公開買付けした際の買収価額と純資産の公正価値との差額をのれんとして認識しております。のれんについては、減損の兆候の有無にかかわらず、年1回回収可能価額を見積っております。当該回収可能価額の算定においては、見積将来キャッシュ・フローを使用しております。
減損判定における資金生成単位の回収可能価額は、見積り・前提を使用するため、見積り・前提は減損が認識されるか否かの判定及び認識される減損金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
のれんの減損判定において、当社は独立した外部の評価機関を利用しております。見積将来キャッシュ・フローは社内で作成した3ヶ年事業計画を使用し、付随する財務資料、内部資料等を加え、一般に入手可能な市場情報も考慮に入れております。割引率に株主資本コストを使用しております。
2022年3月31日時点における評価の結果は、減損損失を認識することはありませんでした。
b.金融商品の公正価値
当社グループが保有する金融商品の公正価値の見積りにおいては、市場価値に基づく価額により見積っております。市場価格がない場合には、将来キャッシュ・フローを割り引く方法、又はその他の適切な評価技法により見積っております。
これら金融商品のうち住宅ローン債権の債権譲渡により生じた受益権(配当受領権)は、純損益を通じて公正価値で測定する金融資産に分類しており、公正価値の評価においては、繰上償還率(CPR)、デフォルト率(CDR)を将来キャッシュ・フローの見積りにおけるインプットとして使用し、割引率等についても一定の前提条件を設定しております。
将来キャッシュ・フローの見積りにおけるインプットとして使用するCPR、CDRについては、外部第三者機関の公表データを参照して見積っております。但し、一部のパッケージローンについては、CPRの見積りにおいて、外部第三者機関の公表データに、過去実績等を勘案して合理的に見積った調整を反映しております。
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