(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要、及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
尚、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。これに伴い、当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度と比較して大きく減少しております。そのため、当連結会計年度における経営成績に関する説明は、売上高については前連結会計年度と比較しての増減額及び前年同期比(%)を記載せずに説明しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
尚、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況及び分析
当連結会計年度における世界経済は、各国の行動規制の緩和等に伴い、国・地域により差はあるものの総じて回復基調で推移した一方、部品供給不足や物流の逼迫により、製造業で生産活動が停滞するなどの影響がありました。
当連結会計年度の国内のトラック市場につきましては、世界的な半導体不足、および新型コロナウイルス影響等に起因する部品供給不足による生産影響により、大中型トラックの総需要は77.3千台と前期に比べ8.6千台(10.0%)の減少、小型トラックの総需要は74.5千台と前期に比べ11.5千台(13.4%)減少となりました。
国内売上台数につきましては、堅実な販売活動を続けた結果、トラック・バスの合計で57.8千台と、前期に比べ1.9千台(3.1%)の減少に留まりました。
海外市場につきましては、アセアンを中心とした市場の回復基調を背景として、海外売上台数はトラック・バスの合計で100.4千台と前期に比べ26.8千台(36.4%)増加いたしました。
以上により、日野ブランド事業のトラック・バスの総売上台数は158.1千台と前期に比べ24.9千台(18.7%)増加いたしました。
また、トヨタ向け車両台数につきましては、SUV及び小型トラックともに台数が増加し、総売上台数は141.7千台と前期に比べ33.0千台(30.3%)増加いたしました。
このような経営環境の中、外部変化に影響を受けにくい企業体質を構築するため、既存事業の競争力強化並びにソリューションビジネス確立に向けた取り組みを継続しています。既存事業においては、小型トラックに積載量1.5トンクラスを投入しラインナップを拡充し、中型トラックには日野のトラックで初となる「ドライバー異常時対応システム(EDSS)」を搭載するなど、お客様のニーズにお応えする商品を提供してまいりました。トータルサポートに関しては、南関東日野自動車株式会社が営業を開始し関東圏の広域ユーザーをよりサポートしていく体制を整えるとともに、販売会社の拠点更新も継続的に実施しており、整備生産性の向上を通じてお客様の稼働を支えています。ソリューションビジネスについては、お客様の課題を解決する新たな価値提供に向けてパートナーとの協業を進めてまいりました。
世界的に動きが加速しているカーボンニュートラルの実現に向けては、2030年までの中間マイルストーンとして、『日野環境マイルストーン2030』を策定し、素材から製品の廃棄までのライフサイクル全体の視点で実用的かつ持続可能な方策を追求していきます。2022年度に市場導入を予定している小型BEVトラック並びに電動車の最適な稼働をサポートするソリューションについては、お客様と共同で実証を行い、実用化に向け着実に歩みを進めてまいりました。トヨタ自動車株式会社やいすゞ自動車株式会社との商用事業の協業プロジェクト(Commercial Japan Partnership)においても、自治体やお客様など様々なパートナーとカーボンニュートラルの実現・人流物流の課題解決に向けた取り組みを開始しました。
また、今般の東京証券取引所の再編に際し、新市場区分における「プライム市場」を選択しました。引き続き、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、取り組んでまいります。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
ⅰ)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ268億54百万円増加し、1兆2,583億50百万円となりました。これは、当連結会計年度末の売上債権が125億25百万円減少した一方で、棚卸資産が254億73百万円、有形固定資産が92億6百万円増加したこと等によります。
(負債合計)
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ1,157億19百万円増加し、7,423億42百万円となりました。これは、買掛債務が214億51百万円、認証関連損失引当金が299億70百万円、繰延税金負債が250億78百万円増加したこと等によります。
(純資産合計)
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ888億64百万円減少し、5,160億7百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純損失を847億32百万円計上し、剰余金の配当を97億60百万円行ったこと等によります。
セグメントごとの財政状態は次のとおりであります。
(日本)
当連結会計年度末の貸付金が301億97百万円増加した一方、当連結会計年度末の売掛債権が321億52百万円減少したこと等により、セグメント資産は9,419億57百万円と前連結会計年度末に比べ、125億76百万円減少しました。
(アジア)
当連結会計年度末の売上債権が182億16百万円増加したことに加え、当連結会計年度末の現預金が124億64百万円増加したこと等により、セグメント資産は2,927億67百万円と前連結会計年度末に比べ、382億47百万円増加しました。
(その他)
当連結会計年度末の棚卸資産が232億4百万円増加したこと等により、セグメント資産は1,553億64百万円と前連結会計年度末に比べ、307億55百万円増加しました。
ⅱ)経営成績
(売上高)
当連結会計年度の連結売上高は1兆4,597億6百万円となりました。
国内トラック市場につきましては、部品供給不足に伴う需要及び売上台数の減少により、売上高は4,219億67百万円となりました。
海外トラック・バスにつきましては、コロナ禍からの市場回復により売上台数が増加し、売上高は4,215億87百万円となりました。
トヨタ向け車両につきましては、SUVの台数が減少したこと等により、売上高は975億66百万円となりました。
その他の部門の売上高につきましては、米国、タイにおけるトヨタブランド車向けユニット事業の売上高が増加したこと等により、5,185億83百万円となりました。
(営業利益)
部品供給不足による影響、品質費用の増加、及びエンジン認証に関する不正行為に起因する生産・出荷停止影響により、連結営業利益は338億10百万円と前期に比べ215億60百万円の増益となったものの、コロナ禍前の2020年3月期(548億59百万円)に比べ減益となりました。尚、売上原価の売上高に対する比率は82.8%(前期は85.8%)、販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は14.9%(前期は13.4%)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度は、経常利益は379億86百万円と前期に比べ257億25百万円の増益、2020年3月期(495億96百万円)に比べ減益となりました。
(税金等調整前当期純損失)
当連結会計年度は、経常利益は379億86百万円の増益となりましたが、国内認証関連損失として特別損失400億円及び、北米認証関連損失として特別損失273億円を計上したこと等により、税金等調整前当期純損失は314億84百万円と前期と比べ296億円の減益となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損失)
当連結会計年度の税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、468億52百万円と前期に比べ424億38百万円の増加となりました。
また、非支配株主に帰属する当期純利益は、63億95百万円と前期に比べ52億4百万円増加しました。
以上により、親会社株主に帰属する当期純損失は847億32百万円と前期に比べ772億43百万円の減益となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(日本)
日野ブランド事業の国内向けトラック・バスの売上高は、大型トラックを中心とした売上台数の減少等により、減収となりました。海外向けについては、アジア・中南米向けを中心として売上台数が増加したこと等により、増収となりました。また、トヨタ向けについてはSUVを中心に台数が増加するも、「収益認識に関する会計基準」等の適用の影響により、減収となりました。
以上により、売上高は1兆1,279億87百万円となりました。損益面におきましては、セグメント利益(営業利益)は197億78百万円となりました。
尚、「収益認識に関する会計基準」等を当連結会計年度の期首から適用しており、従来の方法に比べて、当連結会計年度の日本の売上高は2,693億85百万円減少しております。
(アジア)
主にインドネシア・タイの売上台数が増加したこと等により、売上高は3,994億47百万円となりました。セグメント利益(営業利益)は、229億円となりました。
(その他)
北米は売上台数が減少したものの、中南米・アフリカ・オセアニアを中心として売上台数が増加したこと等により、売上高は1,762億42百万円となりました。セグメント損失(営業損失)は、67億69百万円となりました。
ⅲ)生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
区分 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
日本 |
トラック・バス(台) |
121,054 |
+13.3 |
トヨタ向け車両(台) |
141,376 |
+30.4 |
|
アジア |
トラック・バス(台) |
31,622 |
+139.3 |
トヨタ向け車両(台) |
296 |
+51.0 |
|
報告セグメント計 |
トラック・バス(台) |
152,676 |
+27.2 |
トヨタ向け車両(台) |
141,672 |
+30.4 |
|
その他 |
トラック・バス(台) |
3,149 |
- |
トヨタ向け車両(台) |
- |
- |
|
合計 |
トラック・バス(台) |
155,825 |
+29.8 |
トヨタ向け車両(台) |
141,672 |
+30.4 |
(b)受注実績
当社グループは国内及び海外の販売実績及び販売見込等の資料を基礎として見込生産を行っております。尚、トヨタ向け車両についてはトヨタ自動車株式会社からの受注に基づき生産しております。
(c)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
日本(百万円) |
1,127,987 |
― |
アジア(百万円) |
399,447 |
― |
報告セグメント計(百万円) |
1,527,434 |
― |
その他(百万円) |
176,242 |
― |
調整額(百万円) |
△243,970 |
― |
合計(百万円) |
1,459,706 |
― |
(注)1.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29 号 2020 年3月31 日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。当連結会計年度の各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、前期比は記載しておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額 (百万円) |
割合 (%) |
金額 (百万円) |
割合 (%) |
|
トヨタ自動車㈱ |
288,831 |
19.3 |
121,126 |
8.3 |
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
①キャッシュ・フローの状況及び分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、有形固定資産の取得等による資金の減少があった一方、売上債権の減少等による資金の増加により、前期末に比べ80億11百万円増加(前期は148億58百万円増加)し、626億62百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は1,067億11百万円(前期は1,084億29百万円の増加)となりました。これは減価償却費の計上が549億56百万円(前期は547億54百万円)あったこと、売上債権が222億91百万円減少(前期は84億91百万円の増加)したこと、認証関連損失引当金が299億70百万円増加したこと等によります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は621億81百万円(前期は562億11百万円の減少)となりました。これは生産設備を中心とした有形固定資産の取得による支出が494億32百万円(前期は504億10百万円)あったこと等によります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は391億47百万円(前期は384億8百万円の減少)となりました。これは、短期借入金の純減少額が227億78百万円(前期は200億88百万円)、配当金の支払額が97億60百万円(前期は68億89百万円)あったこと等によります。
②資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資などの長期資金需要と製品製造のための材料及び部品購入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要であります。
③契約債務
2022年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
短期借入金 |
144,568 |
144,568 |
― |
― |
― |
1年内返済予定の長期借入金 |
8,400 |
8,400 |
― |
― |
― |
長期借入金 |
8,279 |
― |
7,527 |
333 |
417 |
④財務政策
当社グループは、事業活動のための適切な資金調達、適切な流動性の維持及び財務構造の安定化を図ることを財務方針としております。設備投資、投融資などの長期資金需要に対しては、内部留保、長期借入債務及び社債の発行により、また、運転資金需要には短期借入債務により対応しております。借入債務については、主にトヨタ自動車株式会社、金融機関からの借入れによって調達しております。
また資金マネジメントについては、当社と子会社の資金管理の一元化を図るなかで、緊密な連携をとることにより、グローバルな資金効率の向上を図っております。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、各種の見積りと仮定を行っております。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりです。
尚、新型コロナウイルス感染症拡大の影響については、翌連結会計年度中も依然として続くとの仮定のもと会計上の見積りを行っております。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮し、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、親会社株主に係る当期純損益額が変動する可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しております。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しております。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
③ 製品保証引当金
当社は、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款及び法令等に従い、過去の実績等を基礎にして計上しております。
引当金の見積り時において想定していなかった製品の不具合による保証義務の発生や、引当の額を超えて保証費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
④ 認証関連損失引当金
当社は、認証関連課題に関連した損失に備えるため、合理的に見積もることが可能な金額を計上しております。認証問題を起因とする税制優遇追加納付費用が含まれています。
引当金の見積り時において想定していなかった認証関連の損失の発生した場合、税制優遇追加納付費用の見積り前提が変化した場合には、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
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