(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の自動車業界を取り巻く事業環境は、需要は回復基調にあるものの、新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品・半導体不足などにより、カーメーカーの稼働が停止するなど引き続き厳しい環境となりました。さらに、原材料価格の高騰が産業全体の収益性に大きな影響を与えています。
このような中、当社グループは度重なる生産変動に対応しつつ、これまで取り組んできた構造改革による収益体質の強化を一層加速させました。また将来を見据え、カーボンニュートラルや電動化の更なる進展に対し「アイシングループのフルモデルチェンジ」を実現する体制の構築と戦略の策定を進めました。
売上収益については、半導体不足による車両減産影響があったものの、パワートレインユニット販売台数の増加や為替影響等により、前連結会計年度(3兆5,257億円)に比べ11.1%増の3兆9,174億円となりました。
利益については、原材料高騰などのマイナス要因があったものの、売上収益の回復に加え、新アイシンでの構造改革・原価低減活動の加速により、営業利益は前連結会計年度(1,453億円)に比べ25.2%増の1,820億円、税引前利益は前連結会計年度(1,675億円)に比べ31.3%増の2,199億円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度(1,056億円)に比べ34.4%増の1,419億円となりました。
また、当連結会計年度末の資産については、棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末(4兆271億円)に比べ4.4%増の4兆2,058億円となりました。負債については、借入金の減少等により、前連結会計年度末(2兆2,684億円)に比べ2.6%減の2兆2,092億円となりました。資本については、有価証券評価差額金の増加等により、前連結会計年度末(1兆7,586億円)に比べ13.5%増の1兆9,965億円となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりです。
(ⅰ)日本
売上収益については、パワートレインユニット販売台数の増加等により、前連結会計年度(2兆5,671億円)に比べ11.1%増の2兆8,524億円となりました。利益については、原材料価格高騰の影響を受けたものの、売上収益の回復や為替差益に加え、生産量変動への対応強化や構造改革の効果により、営業利益は前連結会計年度(1,048億円)に比べ11.1%増の1,165億円となりました。
(ⅱ)北米
売上収益については、得意先の生産台数の増加等により、前連結会計年度(5,198億円)に比べ15.1%増の5,981億円となりました。利益については、売上収益の回復があったものの、海外輸送コンテナ不足に加え、原材料価格高騰や電動化商品に係る生産準備費用等の影響により、営業損失は166億円(前連結会計年度営業損失42億円)となりました。
(ⅲ)欧州
売上収益については、パワートレインユニット販売台数の減少等により、前連結会計年度(3,518億円)に比べ2.8%減の3,420億円となりました。利益については、売上収益の減少等により、営業利益は前連結会計年度(51億円)に比べ0.6%減の51億円となりました。
(ⅳ)中国
売上収益については、為替影響等により、前連結会計年度(3,896億円)に比べ20.5%増の4,697億円となりました。利益については、減価償却費及び生産準備費用の増加等があったものの、売上収益の増加等により、営業利益は前連結会計年度(276億円)に比べ26.5%増の349億円となりました。
(ⅴ)その他
売上収益については、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた前連結会計年度(2,839億円)に比べ40.4%増の3,986億円となり、利益については、売上収益の大幅な回復等により、営業利益は前連結会計年度(152億円)に比べ220.4%増の488億円となりました。
(注)当連結会計年度より、セグメント区分を会社の所属する国又は地域別に変更しています。
なお、各セグメントの売上収益の金額は、外部顧客への売上収益に加え、セグメント間の内部売上収益も含めた金額としています。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況について、現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、営業活動により1,933億円の増加、投資活動により2,049億円の減少、財務活動により1,358億円の減少、現金及び現金同等物に係る換算差額により143億円の増加の結果、当連結会計年度末には3,869億円となり、前連結会計年度末(5,200億円)に比べ1,331億円(25.6%)の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、前連結会計年度(3,433億円)に比べ1,499億円(43.7%)減少し、1,933億円となりました。これは、営業債権及びその他の債権の増減額が853億円減少したことや税引前利益が524億円増加したことによる資金の増加があったものの、棚卸資産の増減額が1,625億円増加し、営業債務及びその他の債務の増減額が454億円減少したことにより資金が減少したこと等によります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、前連結会計年度(1,381億円)に比べ667億円(48.3%)増加し、2,049億円となりました。これは、定期預金等の増減額が470億円増加したことにより使用した資金の増加があったこと等によります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、前連結会計年度(3,738億円)に比べ2,380億円(63.7%)減少し、1,358億円となりました。これは、借入金とその返済による収支が279億円減少したことにより使用した資金の増加があったものの、前期は子会社の自己株式取得に伴う支出2,969億円による資金の減少があったこと等によります。
③ 生産、受注及び販売の実績
(ⅰ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前期比増減率(%) |
日本 |
2,874,558 |
11.3 |
北米 |
625,259 |
19.4 |
欧州 |
371,470 |
8.3 |
中国 |
480,068 |
23.5 |
その他 |
403,132 |
41.6 |
合計 |
4,754,490 |
15.3 |
(注1) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部取引消去前の数値によっています。
(注2) 上記金額には、外部仕入先等からの仕入高が含まれています。
(注3) 当連結会計年度において、報告セグメントの区分を変更しております。前期比増減率は、前連結会計年度の数値を変更後のセグメントの区分に組み替えた数値に基づき算定しております。
(ⅱ)受注実績
主要な事業である自動車部品製造・販売について、当社グループのすべてのセグメントは、トヨタ自動車㈱をはじめとした大手自動車メーカーより、約3ヶ月前後の予約的発注指示を受け、生産能力を勘案し生産計画を立て、生産を行っています。
(ⅲ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前期比増減率(%) |
日本 |
2,852,410 |
11.1 |
北米 |
598,139 |
15.1 |
欧州 |
342,047 |
△2.8 |
中国 |
469,753 |
20.5 |
その他 |
398,690 |
40.4 |
合計 |
4,661,041 |
13.3 |
(注1) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部取引消去前の数値によっています。
(注2) 当連結会計年度において、報告セグメントの区分を変更しております。前期比増減率は、前連結会計年度の数値を変更後のセグメントの区分に組み替えた数値に基づき算定しております。
(注3) 主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
なお、割合はセグメント間の内部取引消去後の総販売実績に対して記載しています。
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
販売高(百万円) |
割合(%) |
販売高(百万円) |
割合(%) |
|
トヨタ自動車㈱ |
1,065,191 |
30.2 |
1,099,839 |
28.1 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRS(国際会計基準)に準拠して作成しています。連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。
見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直しています。会計上の見積りの見直しによる影響は、その見積りを見直した会計期間及び将来の会計期間において認識しています。
上記のうち、当社グループの連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積り及び仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
② 経営成績の分析
当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度に比べ11.1%増の3兆9,174億円、営業利益は25.2%増の1,820億円、税引前利益は31.3%増の2,199億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は34.4%増の1,419億円となりました。
以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析します。
(ⅰ)売上収益
当連結会計年度の売上収益3兆9,174億円を事業の種類ごとに見ると、自動車部品事業では前連結会計年度に比べ11.2%増の3兆7,988億円となりました。その事業ごとの内訳としては、パワートレイン関連では13.5%増の2兆2,343億円、走行安全関連では17.9%増の7,667億円、車体関連では3.2%増の7,145億円、CSS関連他では21.1%減の832億円となりました。また、エナジーソリューション関連他では8.5%増の1,185億円となりました。
(ⅱ)売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は前連結会計年度(3兆1,212億円)に比べ11.1%増の3兆4,689億円となり、売上収益に対する割合は88.5%から88.6%に上昇しました。これは、材料費が増加したことなどによります。
販売費及び一般管理費は、運賃及び荷造費の増加などにより、前連結会計年度(2,707億円)に比べ8.0%増の2,924億円となり、売上収益に対する割合は7.7%から7.5%に低下しました。
(ⅲ)その他の収益、その他の費用
その他の収益は前連結会計年度(323億円)に比べ11.1%増の358億円となりました。
その他の費用は、前連結会計年度(207億円)に比べ52.3%減の98億円となりました。これは、固定資産除却損失が減少したことなどによります。
(ⅳ)法人所得税費用
当連結会計年度の法人所得税費用は、前連結会計年度(574億円)に比べ9.7%増加し、629億円となりました。
(ⅴ)非支配持分に帰属する当期利益
当連結会計年度の非支配持分に帰属する当期利益は、前連結会計年度(44億円)に比べ236.8%増加し、150億円となりました。
(ⅵ)親会社の所有者に帰属する当期利益
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度(1,056億円)に比べ34.4%増加し、1,419億円となり、基本的1株当たり当期利益も391円96銭から526円66銭に増加しました。
③ 資本の財源及び資金の流動性
(ⅰ)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
(ⅱ)資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、電動化商品の生産に向けた設備投資や社会課題の解決に貢献するソリューション型商品を中心とした新商品開発への研究開発投資です。
今後の持続的な成長のために必要な設備投資及び研究開発投資による資金需要が見込まれる場合には、長期資金の調達を実行する可能性があります。
(ⅲ)財務戦略
当社グループは、企業価値の最大化を目標として、すべてのステークホルダーとの良好な関係を築き、長期安定的な成長と発展をめざしています。
当社グループの資本政策は、「財務の安全性」と「資本の効率性」のバランスをとることで、常に低コストで資金調達をできる状態に保ち、企業価値の向上を目指すことを基本方針としています。具体的には、キャピタリゼーション比率(注1)を指標として用い、当該比率が概ね25%~30%となることが最適な資本構成であると考えています。
「財務の安全性」については、格付会社による評価をひとつの目安とし、高い信用格付を維持することにより、低コストでの資金調達がいつでも可能になるよう努めています。一方、「資本の効率性」については、格付が維持できる範囲で、負債による資金調達を優先し、資本の規模を抑制することで、全体の資本コストの低減をはかっています。また、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)(注2)を導入することで、連結ベースでの財務戦略や当社グループ内での資金の有効活用を実現しています。
(注1) 有利子負債と資本(純資産)のバランスを示す指標です。
(有利子負債 /(有利子負債+資本合計))
(注2) グループ企業の資金を親会社や中核会社が同一銀行内に専用口座を設置して集中管理することにより、効率的な連結運営や資金運用をする手法、又はその仕組みを指します。
(ⅳ)資金調達
当社は、安定的かつ低コストで資金を確保することを基本方針としています。
資金調達にあたっては、平均残存期間の維持及び返済年限の平準化に資する調達年限を設定し、市場動向等を勘案した最適な資金調達手段を選択・実行しています。また、当社は高い信用格付けを維持するとともに、金融機関や投資家等と幅広く良好な関係を構築しており、競争力のある調達コストの維持・追求に努めています。
当連結会計年度末の社債及び借入金残高8,826億円のうち、2,725億円はハイブリッド社債とハイブリッドローンで調達しており、格付会社より残高の50%である1,362億円について資本性の認定を受けています。
当社では、経営を取り巻く様々なリスクに対応できるよう、現預金だけでなく、コミットメントライン契約を締結するなど、十分な流動性の確保に努めています。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)目標とする経営指標」に記載のとおりです。当連結会計年度においては、原材料高騰などのマイナス要因があったものの、売上収益の回復に加え、新アイシンでの構造改革・原価低減活動の加速により、営業利益率は4.6%、ROIC(投下資本利益率)は6.6%となりました。
当目標の達成に向けた取り組みについては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題」に記載のとおりです。
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