文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
アイシングループ経営理念
(2)目標とする経営指標
当社グループは、「アイシングループビジョン2030」において、2030年度の経営目標を営業利益率8%、ROIC(投下資本利益率)13%としています。
※ROIC(投下資本利益率):税引後営業利益÷(棚卸資産+有形固定資産+無形資産)
(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
相次ぐ新型コロナウイルスの感染拡大や地政学的リスクの高まりなどにより、世界経済の見通しは依然不透明なままであり、自動車業界においても部品・半導体不足や原材料価格・輸送費の高騰が続き、足元の事業環境は厳しさを増しています。また昨年開催されたCOP26に代表されるように、国際的な環境規制の枠組みは年々強化され、日本においても温室効果ガスの削減目標が引き上げられるなど、企業による社会課題の解決に一層の貢献が期待されています。
こうした変化が速く大きく、先行きが不透明だからこそ、生き残りをかけて社員一人ひとりが一歩踏み出し「アイシングループのフルモデルチェンジ」を成し遂げていきたいと考えています。そして、これからのアイシングループの成長には「電動化」「カーボンニュートラル」「成長市場での拡大」が最重要だと考えています。
電動化では、2025年電動ユニット450万基の生産体制構築に向け、2022年に機電一体eAxleの第1世代を市場投入し、将来の第2・第3世代では更なる高効率・小型化・低コストの実現を目指します。また幅広い商品群を持つ強みを活かし、電動化領域を車両全体に拡大する当社グループならではのシステム開発・提案を進めます。
カーボンニュートラルでは、「2030年に2013年比生産CO₂排出量50%削減」という目標に向けて、「省エネ」「発電・燃焼」「CO₂回収・再利用」「エネルギーマネージメント」という4つのテーマをキーとして取り組んでいきます。また、これらの活動で得られた技術・知見を当社の取引先にも展開・普及させることで、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現へ寄与していきます。
成長市場での拡大では、お客様の課題解決に貢献することを目指して、海外拠点との連携をより強め、お客様に寄り添える営業組織へと変革していきます。また、各地域のベンチマークを徹底して行い、最適な品質・コストを実現できるよう開発・調達・生産のあり方を見直していきます。これらの活動を通して、当社が充分に入り込めていない地域・お客様での事業拡大を図ります。
以上の重要テーマに取り組む中で、新たな価値の創造を促すために自前にこだわらず社外との連携を強化し、社会課題の解決に貢献していきます。
当社グループは、「“移動”に感動を、未来に笑顔を。」の経営理念のもと、誰もが安心・快適な未来を創るために、次の経営方針を全力をあげて取り組んでいきます。
≪すべての基本≫ 事業活動の前提となる優先すべき事項の徹底
①安全・健康・コンプライアンスの最優先と品質の早期立て直し
③カーボンニュートラルに向けた技術・商品開発と外部提携の加速、ものづくり力強化〔CN〕
②持続可能な社会の実現に貢献する企業行動の実践〔SDGs・ESG〕
≪未来への挑戦≫ フルモデルチェンジに向けた将来戦略の加速
①電動化・ソフトウェアファーストを軸に、コア技術を活かしたソリューション型商品の開発加速と市場投入
②成長市場・新規顧客獲得に向けた4軸※連携の加速
③お客様の期待を超える新しい価値を届ける、新技術・ビジネスモデルの創出と推進
※4軸:カンパニー、機能、地域、グループ会社
≪持続的成長≫ 既存事業の競争力向上
①各地域の成長領域・成長商品での収益最大化を目指した構造改革と、大胆なリソーセスシフトの実行
②リスクに強いBCP・サプライチェーン構築と固定費の適正化・収益体質の強化
③徹底的なベンチマークにより、競合に打ち勝つ商品競争力・コスト競争力の強化(生産性向上・原単位改善等)
≪足元固め≫ 持続的成長を支える経営基盤の強化
①デジタルトランスフォーメーション推進による業務プロセス革新と統合効果の最大化・シナジー発揮による競争
力ある経営基盤の構築
②組織の壁を越えたコミュニケーションの促進と、自ら考え、スピーディーにチャレンジできる風土醸成・人材育
成
③グループ資産(ヒト・モノ・カネ・情報)の有効活用による資本効率の向上
(4)TCFD
当社グループは、2019年11月にTCFD(気候関連財務情報タスクフォース)へ賛同し、TCFDの提言に基づきシナリオ分析を実施しています。気候変動がもたらす事業活動へのリスクと機会を明確にしてその対応を経営戦略に盛り込むとともに、関連情報を開示しています。
ガバナンス |
当社は、気候変動への対応を重要な経営戦略と位置付け、「地球温暖化防止への取り組み」を経営会議・取締役会での議論を経て、グループとして注力する優先課題(マテリアリティ)に選定 取締役会において、各気候関連会議である「サステナビリティ会議」、「環境委員会」、「カーボンニュートラル推進会議」を通じて提案・報告される気候関連の重要事項の審議を行い、必要に応じて事業戦略・計画を変更 |
戦略 |
・脱炭素社会への移行に向けて、カーボンニュートラル推進センターを設立 ・TCFD提言が推奨する定義を踏まえた気候変動に伴う移行・物理的リスク、機会を分析 及び対応を検討(下図参照) |
リスク管理 |
・気候変動に起因する移行・物理的リスクを特定し、リスク評価と管理の枠組みを構築 ・当社グループに影響を与える重大なリスクを特定し、サステナビリティ会議等で定期に モニタリング ・投資家との対話やCDPなどの外部評価を受け、必要に応じ変更 |
指標と目標 |
2030年度目標 ・生産CO₂排出量(スコープ1,2) 2013年度比50%以上削減 ・ライフサイクルCO₂排出量 2019年度比25%以上削減 指標(2020年度実績※) ・生産CO₂排出量:248.4万t-CO₂ (2013年度比10%削減) ・ライフサイクルCO₂排出量:1460.4万t-CO₂ (2019年度比16%削減) ※2021年度実績は、第三者検証後に当社サステナビリティサイト(https://www.aisin.com/jp/sustainability/)にて公開予定 |
(気候変動のリスクと機会、当社グループの対応)
区分 |
影響段階 |
当社グループへの影響 |
時間的視点 短・中・長 |
事業/財務影響 大・中・小 |
対応 |
移行リスク |
調達 |
サプライヤーによる環境配慮型への切り替えや炭素税等で増加したコストの価格転嫁による調達コストの増加 |
中 |
中 |
・製品設計時点での軽量化による購入原材料削減 ・サプライヤーへの脱炭素教育と活動の支援 |
直接操業 |
炭素税等の政策導入によるコストの増加及び省エネ・再エネ推進によるエネルギーコストの増加 |
中 |
中 |
・グループ全体の再生可能エネルギー導入を一括で管理し戦略の立案・推進 |
|
製品需要 |
電動化の推進で、電動車向け製品需要が拡大する一方で、ガソリン車向け製品需要が減少 |
中 |
大 |
・2030年までに電動化商品売上高比率50%に上げる目標を設定し、製品構成を電動車向けへシフト ・高効率の電動ユニット、回生協調ブレーキ、熱マネジメントや空力など、幅広い製品によるモビリティの電動化とエネルギーソリューションでカーボンニュートラルへ貢献する製品の拡販を強化 |
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物理的リスク |
直接操業 |
気象災害(大雨、台風、洪水等)の発生頻度の増加や規模の拡大による被災時のサプライチェーン寸断の発生や一時的操業の停止 |
短 |
小 |
・調達物流のBCP高度化 ・リスクのある拠点を抽出して定期的にモニタリング ・浸水対策計画の策定・実施 |
機会 |
製品需要 |
電動化の推進によるアイシン製電動ユニット関連商品の需要拡大 |
中 |
大 |
・関連製品の生産能力拡大 |
カーボンニュートラルを目指すため、排出したCO2を吸収するニーズ増加 |
中 |
中 |
・アイシンが保有する技術を活用したカーボンリサイクル・コンクリートの実用化に向けた活動 ・CO2の回収・利活用技術の開発 |
||
再生可能エネルギービジネスの拡大 |
中 |
中 |
・軽量かつ設置場所を選ばないペロブスカイト型太陽電池の開発 |
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省エネルギーかつ低炭素排出の製品需要の拡大 |
中 |
中 |
・電気とお湯を生み出す家庭用燃料電池「エネファーム(SOFC)」のさらなる高効率化と拡販 |
(5)人的資本
アイシングループでは、働く仲間一人ひとりが主役であり、働く仲間こそが強みであるとの考えから、意思を持って経営理念の提供価値の最初に「働く仲間」を位置づけ、以下のとおり定めています。
「成長と幸せを働く仲間へ」多様な個性を尊重し、挑戦する企業風土の中で、社会貢献を胸に自ら考えて行動し、自己の成長と働きがい、人生の幸せを感じられる会社にします。
この理念実現に向けて、「チャレンジに向けて一歩踏み出す人・職場づくり」をキーワードとして風土そのものの変革に取り組んでいます。社員一人ひとりが当事者意識を持って変革に取り組めるよう、労使協議会等を通じて目指す人・職場を描いたうえで、そこに至る課題は何かを職場ごとに明らかにしてアクションしています。
チャレンジの促進に向けては、チャレンジする人材が適正に評価される評価・昇格制度や、チャレンジに対してメリハリある処遇ができる昇給・賞与のしくみなど、人事諸制度の見直しを行っています。そのうえで、メンバー一人ひとりが主体的に新しい価値を生み出せるよう、個人の夢・志と、組織の課題・挑戦をすり合わせて業務テーマへ落とし込むことを徹底しています。
また、柔軟な発想で新たな価値創造に取り組めるよう、時間や場所に捉われない裁量労働制やテレワークなどの働き方拡充を進めるとともに、視野拡大に向けて社外で学ぶ機会を増やすため、自己啓発を補助する手当の支給や、異業種人材と交流し社会課題解決に取り組む越境体験プログラムの提供などを推し進めています。
イノベーション創出に向けては、ジェンダー、障がい、年齢、国籍、経験等を問わず、多様な人材一人ひとりが活躍できるよう、ダイバーシティ&インクルージョンと働きがい改革の取り組みを進めています。これらの活動が評価され、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施している「なでしこ銘柄」企業選定において、2020年度から2年連続で「なでしこ銘柄」企業に選定されています。今後もメンバー一人ひとりのチャレンジを応援し、意識を未来に向けていけるよう人事諸施策を展開していきます。
重点経営課題である「電動化」に向けては、アイシングループの強みを生かした車両全体でのEV向け商材の拡充をねらいに、トップ直下にEV推進センターを設置しました。最高責任者としてCESO(Chief Electric Strategy Officer)を任命し、カンパニー・グループ横断で先行開発を強化し、アイシンらしい魅力あるEV向け商品の開発を進めていきます。
電動化の重点技術であるモーター、熱マネジメント技術者の確保・育成に向けては、既存領域人材に対し、数カ月間技術習得に専念しスキルチェンジしたうえで即戦力として配置転換するプログラムを開始するなど、スキルチェンジ・リソーセスシフトを推し進めています。
「カーボンニュートラル」の実現に向けては、2021年8月にカーボンニュートラル推進センターを設置し、最高責任者としてCCNO(Chief Carbon Neutral Officer)を任命しました。タスクが明確な組織と顔の見えるリーダーでスピーディーに決断、実行していきます。人材確保に向けては、外部採用を強化するとともに社内オープンエントリー制度を活用しています。21年以降27名がカーボンニュートラル関連テーマ推進のため社内異動しました。またカーボンニュートラル活動は全社員が取り組むべき課題として、全社啓蒙・教育施策を展開しています。全社員への必須研修や広報活動に加えて、社員からのCO₂削減提案に対し賞金を授与する仕組みを展開予定です。カーボンニュートラルと日々の活動とのつながりを理解し、身近に感じてもらうことで全社的なカーボンニュートラル活動に繋げていきます。
「成長市場」である海外市場での競争力向上に向けては、まずグローバルでのアイシンウェイの体現を基盤としながら、現地でスピーディーな意思決定ができるよう現地スタッフの幹部層登用を進める施策を強化しています。重要ポストの特定・見える化と並行し、次世代を担う現地スタッフの育成を推進しています。
得意先からの生産拡大に向け、生産現場の弱点を要因解析し、「人:標準作業」「製品:加工点マネジメント」「設備:自主保全」の3本の柱に層別し、全員参加で改善/評価/標準化を繰り返す“職場運営の3本柱活動”をグローバル展開し、職場運営をレベルアップすることで、世界で戦える現場の構築と人材育成を進めています。
また、ものづくりの現場でリーダーとなる人材の育成のために、企業内訓練校「アイシン学園」を中国(蘇州)及びタイでグローバルに運営するなど、実践的な技能教育とリーダーに必要な心身教育を実施しています。
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