(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及び
キャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
世界情勢は、コロナによって大きく景気が後退した前年度から、回復の兆しが見えましたが、オミクロン株
などコロナの再拡大、原油価格高騰などが主因となり、年度後半に回復ペースが鈍化しました。
日本経済は、年度前半のほとんどの期間で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されていたことを背景に低迷し、年度後半は成長と分配の好循環を目指す岸田政権の発足やワクチン接種率の向上により回復が期待
されましたが、オミクロン株などコロナの再拡大や物価高による個人消費の伸び悩みもあり、足踏み状態と
なりました。
自動車業界は、年初時点は回復が期待されましたが、半導体不足や、コロナの再拡大による部品供給の停滞により、グローバル生産台数は伸び悩みました。また、樹脂材料不足の継続、物流網の混乱によりコストにも
大きく影響を与えました。一方で、国内外の自動車メーカー各社より「EV」を主軸とする計画が発表され、
トヨタ自動車株式会社も2030年にBEVのグローバル生産台数を350万台とする計画を発表されるなど、自動車市場
が「EV」普及に本格的に始動した年となりました。
このような情勢の下、当社グループは自動車生産台数の伸び悩み、材料市況、物流費の高騰等に伴い前年度比で増収となるも減益となりました。加えて、外部環境の変化による影響が大きく、自動車の生産量変動に柔軟に対応できないことによるコスト負担が大きくなっています。
このような厳しい状況ではありますが、足元の合理化や経費の抑制等を進めるとともに、中長期計画である「2025事業計画」の実現に向け「活動の3本柱」を軸とした成長戦略を遂行しています。
活動の柱Ⅰ「イノベーション・新モビリティへの挑戦」では、革新的な技術により従来と異なる新領域での
早期事業化、クルマの様変わりに対応した新技術・製品開発を進めています。
新領域では、ウイルスや細菌の除去に有効な深紫外(UV-C)LEDを用いて空気を浄化、脱臭しかつ手軽に
持ち運びができる「UV-Cパーソナル空間除菌脱臭装置」、除菌スピードを向上させた「UV-C高速表面除菌装置」を販売開始し、製品ラインナップを拡充し事業を拡大しました。
電気で動く次世代誘電ゴムe-Rubberでは、センサ機能を活かし、靴の中敷きに搭載することで運動時の足裏の圧力データを取得できるスマートインソール「FEELSOLE」を開発し、ミズノ株式会社が運営するゴルフスクールへのサンプル出荷を開始しました。また、省エネルギー社会の実現に寄与する新技術として窒化ガリウム(GaN)を用いた次世代パワー半導体の開発を進めており、世界最大級となる6インチを超える高品質なGaN基板(GaN種結晶)の作成(大口径化)に成功しました。社会全体でのカーボンニュートラル実現に向け、再生可能
エネルギーや電動車の大きな電力を制御する際の電力ロスを低減できる次世代パワー半導体の実用化・普及拡大が期待されており、大口径化は課題であった生産性向上(コスト低減)に大きく寄与できるものと考えて
おります。
自動車分野では、安心・安全なモビリティ社会の実現を目指し、新デバイスを市場投入しました。北米などで厳格化が見込まれる車両の衝突安全アセスメントに対応し、斜めからの衝突時に運転者の頭部・胸部を保護する「新構造運転席エアバッグ」は本田技研工業株式会社の新型「シビック」に、歩行者を保護する「歩行者保護
エアバッグ」は株式会社SUBARUの新型「レガシィ アウトバック」に搭載されました。また、多様化するお客様のデザインニーズに対応し、BEVならではの先進的なデザインに貢献できる製品として発光機能を持たせたLED
発光エンブレムが、日産自動車株式会社のクロスオーバーEV「アリア」に採用されました。
活動の柱Ⅱ「伸びる市場・伸ばせる分野へ重点戦略」では、重点事業であるセーフティシステム事業の拡大を図り、更なる自動車の安全性能の向上を図るべく、芦森工業株式会社と資本業務提携しました。今後は両社協業により相互の事業資産とノウハウを活用し、開発力および製品競争力を強化し、エアバッグとシートベルトの
システム開発、電動車、自動運転等に対応する次世代安全システムの開発を進めていきます。
活動の柱Ⅲ「生産現場のモノづくり革新」では、「誰でも活き活き働ける工場」、CO2や廃棄物を出さない「クリーンな工場」、災害ゼロやクレームゼロを目指す「誠実な工場」をTG先進工場コンセプトとして掲げ、
当社の持続的な成長を支えるべく、スマートな工場化を目指しています。多種多様な自動車が生産される中、
協働ロボット、生産工程を一元管理するIoTシステムなどの導入により生産性の向上を図るとともに従業員が
安全・安心に働け、環境にも配慮したモノづくりに取り組んでおり、この取り組みは新工場を皮切りに、順次
既存の工場にも適用拡大していきます。
当期の売上収益は、半導体不足等による顧客の対計画での減産はあったものの、前期のコロナによる減産から
の回復やLED関連ビジネスの拡販等により、8,302億円(前期比 15.1%増)と増収となりました。
利益については、増販効果はあったものの、原材料価格の高騰や自動車の生産量変動に柔軟に生産対応
できなかったコスト負担等により、営業利益は 341億円(前期比 6.3%減)、親会社の所有者に帰属する当期
利益は 233億円(前期比 33.7%減)となりました。
当期末における総資産は、主に営業債権及びその他の債権の増加に伴い、前期末に比べ 841億円増加し、8,593億円となりました。また、負債は主に営業債務及びその他の債務の増加により、前期末に比べ 418億円
増加し、3,965億円となりました。
資本については、主にその他の資本の構成要素の増加により、前期末に比べ 423億円増加し、4,627億円と
なりました。
セグメントの業績は次のとおりです。
a.日本
売上収益は、自動車の半導体不足等による顧客の減産はあったものの、LED関連ビジネスの拡販等により
3,995億円(前期比 11.6%増)となりました。
利益については、定年制度の変更に伴う一時的な退職給付費用の減少等により、セグメント利益は 158億円
(前期比 31.2%増)となりました。
b.米州
売上収益は、前期のコロナによる減産からの回復や為替影響等により 2,407億円(前期比 18.3%増)
となりました。
利益については、増販効果はあったものの、原材料価格の高騰や自動車の生産量変動に柔軟に生産対応
できなかったコスト負担、前期の政府補助金の反動等により、セグメント利益は 41億円(前期比 69.7%減)
となりました。
c.アジア
売上収益は、タイ、インド、インドネシア等の生産が回復したことにより、2,260億円(前期比 18.7%増)
となりました。
利益については、中国の減販影響やアジア全体で原材料価格の高騰はあったものの、その他の地域の増販効果
等により、セグメント利益は 152億円(前期比 5.6%増)となりました。
d.欧州・アフリカ
売上収益は、269億円(前期比 2.8%増)となりました。
利益については、前期の英国子会社のリストラクチャリング引当金計上の反動等により、セグメント損失は
9億円(前期損失 39億円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、前期末 1,340億円に比べ 248億円減少し、1,091億円
となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは 276億円の収入となり、前期に比べ 395億円収入が減少しました。
これは主に、営業債権及びその他の債権の増減額で 225億円、引当金の増減額で 61億円、それぞれ支出が
増加したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは 594億円の支出となり、前期に比べ 94億円支出が増加しました。
これは主に、定期預金の預入による支出が 40億円、有形固定資産及び無形資産の取得による支出が 21億円、
それぞれ支出が増加したことに加え、定期預金の払戻による収入が 23億円減少したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは 22億円の収入となり、前期に比べ 152億円収入が増加しました。
これは主に、長期借入金の返済による支出が 164億円増加したことに加え、長期借入れによる収入が 80億円
減少したものの、短期借入収入と支出のネットで 387億円の資金の流入となったこと等によるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
日本 |
382,565 |
10.0 |
米州 |
235,899 |
19.0 |
アジア |
195,982 |
21.3 |
欧州・アフリカ |
26,028 |
1.5 |
合計 |
840,475 |
14.6 |
(注)金額は販売価額によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
b.受注実績
当社グループ(以下「当社および連結子会社」)は、主にトヨタ自動車株式会社をはじめとして
各納入先より生産計画の提示をうけ、生産能力を勘案して生産計画を立て生産しています。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
日本 |
370,093 |
11.4 |
米州 |
237,100 |
18.8 |
アジア |
197,067 |
20.1 |
欧州・アフリカ |
25,982 |
1.8 |
合計 |
830,243 |
15.1 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.主な相手先への販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
トヨタ自動車㈱ |
208,509 |
28.9 |
197,869 |
23.8 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年3月31日)現在において当社グループが判断したものです。
①重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に
当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等について、売上収益は、8,302億円(前期比 15.1%増)と
半導体不足等による顧客の対計画での減産はあったものの、前期のコロナによる減産からの回復やLED関連
ビジネスの拡販等により、増収となりました。
利益について、営業利益は 341億円(前期比 6.3%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は
233億円(前期比 33.7%減)と減益となりました。利益の減少は、増販効果はあったものの、原材料価格の
高騰や自動車の生産量変動に柔軟に生産対応できなかったコスト負担等によるものです。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」
に記載しています。
当社グループの資本の財源および資金の流動性については、以下のとおりです。
a.当社グループの財務方針
当社グループは2018年5月に公表した「2025事業計画」でROE10%を目標として掲げました。これは、
株主資本コストを安定的に上回るROEを達成することで株主価値を向上させていくこと、加えて現在の
資本市場において当社グループが選ばれるために必要な資本効率を達成することを目的として設定したもの
です。
当社グループは、これまでの安定的な利益の積み重ねの結果、自己資本比率は50%前後で推移しており、
安全性の観点からは十分な財務体質を有していると認識していますが、一定のコントロールが必要であると
考え、2018年11月に以下の3点からなる財務方針を公表しました。
まず「株主還元」ですが、足元はコロナショックの影響で急激に事業環境が悪化していますが、成長の
ための投資資金を確保した上で、「連結配当性向30%以上を基本」とし、「様々な観点からトータルとして
株主に報いる」との株主還元の方針を定めました。
次に「設備投資」については、成長のための投資資金として年500億円程度を確保する考えです。年500億
円は高水準の設備投資額ですが、変革期にある自動車産業の中にあっても持続的な成長を実現していくため
に必要なものと考えています。
最後に「手許資金」については、金融危機や自然災害などが発生した際に当面の事業運営が行える水準と
してのリスク対応資金も含め、「連結月商+300億円程度の現預金((一年以内の)短期借入金は除外)」を
確保する考えです。
b.資金需要
当社グループでは、当連結会計年度において、497億円の設備投資を実施しています。
今後も、市場のグローバル化や成長市場における事業強化などへの対応を含め、国内外における
設備投資、出資などについて長期的な視野で資金需要を認識していきます。
c.資金調達方法
当社グループは、円滑な事業活動に必要な資金の流動性確保と財務の安定性・健全性維持を資金調達の
基本としており、金融機関からの借入や社債の起債など資金効率を考えた多様な資金調達を行っています。
また一部の地域のグループ子会社では、キャッシュ・マネジメント・システムの導入により域内の資金効率
も図っています。
なお、当連結会計年度末における社債および借入金を含む有利子負債の残高は 1,736億円となって
います。
d.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期末 1,340億円に比べ 248億円減少し、1,091億円と
なりました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要
②キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
セグメント別の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、
「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」に記載しています。
お知らせ