業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度につきましては、個人向け事業においては、前年に引き続きスタディング講座の新規開発や既存講座の改訂、及びサービス内容や品質の向上等に注力してまいりました。講座ラインナップにつきましては、「応用情報技術者」、「登録販売者」、「看護師国家試験」、「メンタルヘルス・マネジメントⓇ」をリリースし、ITカテゴリの充実に加え、新たに「医療」カテゴリを展開しております。「TOEICⓇ LISTENING AND READING TEST完全攻略800点コース」、簿記の最上位資格である「日商簿記1級合格コース」をリリースするなど、既存のカテゴリにおいてもさらに充実をさせました。

 当期の新たな取り組みとしては、当社サービスのブランディング強化を目的として、年初より「スタディング」のテレビCMを首都圏キー局で放映を行いました。「あなたには、その資格がある」というメッセージをブランドタグラインとし「資格試験に挑むあらゆる人の努力や意思を肯定し、背中を押してあげたい」という思いを込めた内容で配信いたしました。続く第2弾のシリーズでは、約5,000人分の合格体験談から難関資格合格者のリアルを描く「夢を叶えた合格者たち篇」として放映を行いました。

 また、システム面においては、学習履歴データやAI(機械学習)を活用し受講者毎に最適化した学びを提供するサービスの企画・開発を進めてまいりました。主な内容としましては、AIを使ったサービスとして「AI実力スコア」機能を一部講座で提供しております。「AI実力スコア」機能は、AIを活用して、個人の学習データから現在の実力をリアルタイムで確認できる機能です。累計10万人を超える受講者が学ぶスタディングには、膨大な学習履歴データや問題・模擬試験等の得点データが蓄積されています。AI実力スコアでは、これらのデータのAIが分析し「あなたが今、試験を受けたとしたら何点取れるのか?」をAIを使って予測します。これにより日々学習を進める中で、現在の科目別・テーマ別の実力をリアルタイムで把握することができ、「この科目はあと何点取れば合格できるのか」「どこが苦手なテーマなのか」等が分かり、効率的な試験対策をすることが可能です。次いで「AI検索」サービスをリリースしました。本機能は、受講者が調べたいキーワードを入力するとスタディングの様々な学習コンテンツの中から最適なコンテンツを探して表示する機能であり、利用すればするほど進化する検索機能です。このように当社にはサービス開始時より蓄積された膨大な学習データがあり、それらをAIの活用により受講生に役に立つサービスの開発を進めております。今後も、サービス機能充実・新規講座のラインナップ拡充を通じ、難関資格に挑戦する人に合格まで伴走することができる、信頼されるサービスを目指してまいります。

 法人向け教育事業につきましては、社員教育クラウドサービス「エアコース」のコンテンツ強化や新機能のリリース、及び受注獲得に向けた営業活動を積極的に行ってまいりました。エアコースにおいては、「受け放題コース」の開発に注力し、2021年12月末で405コースまで拡充し、前年同期比254コース増となりました(2020年12月末は151コース)。追加した主なコースとしましては、ITスキル、ハラスメント、MBAシリーズ、人事、SDGsなど企業ニーズの高いコンテンツを充実させました。システム面においても、エアコースとビデオ会議ツール「Zoom」との公式連携によるオンライン研修機能や、企業管理者が受講者の学習状況を把握するのに便利なレポート機能の刷新、シングルサインオンによるセキュリティ強化機能をリリースするなど、より大企業での教育ニーズに沿ったプロダクトの強化を行いました。今後も、コンテンツのさらなる充実やシステム機能の拡充を通じ、社員教育を革新するサービスを目指してまいります。

 このような状況のなか、当事業年度の経営成績は、売上高は2,262,809千円(前年同期比48.6%増)となりましたが、主に当社ブランディング向上を目的とした積極的な広告宣伝費の投下等により、営業利益は148,451千円(前年同期比13.9%減)、経常利益は148,051千円(前年同期比6.7%減)、当期純利益は124,645千円(前年同期比24.7%減)となりました。

 

※TOEIC is a registered trademark of ETS.

 This product is not endorsed or approved by ETS.

※「メンタルヘルス・マネジメントⓇ」は大阪商工会議所の登録商標です。

 

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における資産合計は2,770,939千円となり、前事業年度末に比べ576,069千円増加いたしました。これは主に現金ベース売上増による現金及び預金の増加443,363千円、本社移転に伴う有形固定資産の増加52,524千円、敷金及び保証金の減少28,096千円、及び譲渡制限付株式発行に伴う前払費用及び長期前払費用の増加26,129千円によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債合計は1,587,460千円となり、前事業年度末に比べ371,680千円増加いたしました。これは主に現金ベース売上増に伴う前受金の増加341,040千円によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は1,183,478千円となり、前事業年度末に比べ204,389千円増加いたしました。これは主に、譲渡制限付株式の発行及びストックオプションの行使に伴う新株発行による資本金及び資本準備金の増加79,852千円、及び当期純利益124,645千円によるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前事業年度末に比べて443,363千円増加し、2,273,554千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は440,409千円(前年同期比39.2%減)となりました。これは主に、税引前当期純利益148,051千円、現金ベース売上増に伴う前受金の増加額341,040千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は91,699千円(前事業年度は130,038千円の資金の使用)となりました。これは、本社移転に伴う有形固定資産の取得による支出63,697千円、システム開発に伴う無形固定資産の取得による支出58,604千円、本社移転に伴う敷金の回収30,602千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は94,653千円(前年同期比86.9%減)となりました。これは主に、借入金実行による収入100,000千円、長期借入返済による支出49,292千円、及びストックオプションの行使による収入45,012千円等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

  当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

  当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

  当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。

当事業年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

前年同期比(%)

2,262,809千円

148.6

 (注)1.当社は、e-learning・教育事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

    2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。

    3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当事業年度の経営成績については、個人向け資格取得事業(スタディング事業)は、2021年1月に「応用情報技術者」講座、同4月に「登録販売者」講座、同7月に「看護師国家試験」講座、同12月に「メンタルヘルス・マネジメントⓇ」講座をリリースし、ITカテゴリの充実に加え、新たに「医療」カテゴリを展開し、全30講座のラインナップとなりました。2021年12月期の新規有料会員数は48,697人となり、前年同期比で26.6%増、現金ベース売上高についても前年同期比6億4,300万円増加し、同35.7%増となり、昨年に引き続き高成長を実現しました。

当社にはサービス開始時より蓄積された、講座受講者の膨大な学習履歴データや問題、模試試験等の得点データが蓄積されています。これらデータにAI(機械学習)を活用することで、受講者ごとに最適化した学習方法を提供するサービスの開発を引き続き進めました。また、受講者同士で情報等をやりとりすることができる「勉強仲間機能」も好評です。オンライン学習においてデメリットになりがちな孤独感を排除すべく、よりコミュニケーションがとりやすく、お互いの進捗状況の共有や励ましあいを行えるような環境を提供しています。このように、今後もより受講者目線に立った利便性や学習効率の高いシステムを開発してまいります。

スタディング事業においては、先行投資となるWeb広告やマス広告へ出稿による認知拡大により、無料会員を獲得し、その中から講座を購入(有料会員へ移行)していただくことが重要です。受講料の支払額の総額である現金ベース売上が積み上がり、その後、発生ベース売上として売上按分されることになるため、現金ベース売上の推移(貸借対照表上は前受金計上)はそのまま収益に影響を及ぼすことになります。

Web広告はGoogleやYahoo!等が提供する検索連動型広告(リスティング広告)への出稿が主でありますが、リスティング広告はオークション形式であり、検索キーワードの入札価格や広告としての品質によって順位付けられて表示されるため、適切な運用が重要です。Web広告では、広告が表示された回数、クリックされた回数、かかった費用、費用対効果などのデータ収集や効果測定が可能であるため、データを分析しながらより効果的な運用が可能となります。一方で広告効果を高めるには、効果測定の結果分析や、きめ細やかな運用が不可欠となるため、当社では日時でデータをチェックし対応するための人的リソースの確保や、運用ノウハウの獲得を重視しております。また、集客をリスティング広告のみに依存した場合、競合との関係から費用が増大するリスクがあるため、検索での流入を増やすSEO対策や、動画広告への出稿など様々な手法を取り入れ集客の増加を図ることを重視しております。また当期の新たな取り組みとして、スタディングのテレビCMを放映いたしました。こちらは、短期的な集客効果に加えて、人々が資格を取ろうとしたとき、スタディングが第一想起となるよう中長期のブランディング強化をはかることで収益性を高めていくことが目的です。

 当社の売上高は、現状ではスタディング事業が大半を占めておりますが、中長期の経営戦略を考えたとき、収益源の多様化は重要な経営課題であると認識しております。スタディング事業における資格ごとの減衰や季節要因等のリスクを低減し、安定した収益を確保するためには、法人企業との取引が不可欠であると考えております。

そのため、2018年7月に法人事業部を立ち上げ、法人向け事業を推進しております。法人事業では、企業にニーズの高い社員教育クラウドサービス(エアコース)の販売や、社員教育動画制作サービス、スタディング事業で展開している資格講座を法人向けに販売するなど売上増にむけて積極的に展開しております。主力のエアコースでは、大企業向けに、セキュリティの強化など新機能のリリースや、受け放題となっている社員教育研修コースの開発に注力しました。2020年12月末で151コースだったコース数は、2021年12月末で405コースまで拡充させ、前年同期比254コース増となっております。法人事業部の運営基盤の強化を進めることにより、中長期的には法人事業の成長により収益源を多様化させていく方針です。

 当社は、個人向け、法人向けサービス双方でITを駆使しております。スマートフォンやタブレット、PCなどの情報端末を活用した学習方法を提供しておりますが、それら情報端末の進化は著しく、また通信環境の改善により、ユーザーは動画を始めとするリッチコンテンツの閲覧や多様な情報の取得が可能となっております。したがってそれら技術革新を正しく理解し、品質の高いサービスの提供に向け高い技術力の確保が重要であると考えております。その実現のため、優秀な技術者の確保を加速するとともに、AIを含む最新の技術知識の獲得を加速させる方針です。

 今後の新型コロナウイルスの対応と業績への影響につきましては、感染拡大による影響が長期化することに伴い、不透明な事業環境が継続することが予想されております。当社の業績に与える影響としましては、前期に顕著であった新型コロナウイルス感染拡大に伴う一時的な需要増は収まってきておりますが、学習や教育におけるオンライン化は加速しております。テレワークの一般化、デジタル化によるデジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透や、個人、法人ともにリスキリング(学び直し)の意識が高まってきており、当社にとってはビジネスチャンスが到来していると捉えております。当社としましては、スタディング事業については新規講座の開発、既存講座の強化、認知度向上のためのマス広告(テレビCM)等への投資、AIのさらなる活用やシステム開発によるサービス力の強化等、売上拡大につながるための施策を引き続き積極的に展開してまいります。法人向け教育事業については、社員教育クラウドサービス「エアコース」のコンテンツのさらなる充実や、より利便性の高い新機能を開発しリリースしていくなど、より大企業での教育ニーズに沿ったプロダクトの強化を行う方針であり、これらを通じ、社員教育を革新するサービスを目指してまいります。

事業運営については、中長期の持続的な成長を実現させるため、優秀な人材の採用や、社員の育成など人材の強化に努めてまいります。また、さらなる成長の鍵となるマーケティング強化、システム・AI開発における特許戦略(知財戦略)の展開、コンテンツ開発といった分野に投資し、競争優位性を高めるとともに高い成長を実現し、企業価値を高めていく方針です。常に顧客目線を心掛け、「世界一『学びやすく、わかりやすく、続けやすい』学習手段を提供する」というビジョンのもと、顧客への提供価値および企業価値を高める方法を追求してまいります。そしてそれこそが、私たちのミッションである「学びを革新し、誰もが持っている無限の力を引き出す」を達成することにつながると考えております。

 

② 資本の財源及び資金の流動性

 当社の運転資金需要のうち主なものは、人件費、広告宣伝費等の営業費用であり、これらに必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて最適な方法による資金調達を行う予定であります。

なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は2,273,554千円であり、有利子負債の残高は180,345千円であります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり経営者の判断に基づく会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものにつきましては、第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得