課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は創業以来「学びを革新し、誰もが持っている無限の力を引き出す」というミッションのもと、人間が本来持っている能力を最大限に引き出す支援をするのが私たちの使命と考えております。

 世の中の変化のスピードは早く、個人、組織に求められているのは、学習を通じて変化に適応し、変化をチャンスとしてとらえ、活かすことです。学習は、単なる「勉強」ではなく、人や組織が今までできなかったことをできるようにする手段であると考えております。そのために「学び」という人間にとって必要不可欠なことをテクノロジーによって革新し、人や組織の成長を支援してまいります。

また、「世界一『学びやすく、わかりやすく、続けやすい』学習手段を提供する」というビジョンのもと、これからの時代に求められる「学び」についての各種サービスを展開し、人材育成の新たなスタンダードになるべく事業展開をしていきます。

 

(2)目標とする経営指標等

 当社は、持続的な成長と企業価値向上を目指しており、全社的な主要な経営指標として売上高、営業利益を重視しております。

個人向け資格取得事業(スタディング事業)では、資格取得に興味がある個人が主なターゲット顧客であり、無料講座をお試し頂いた上でコースを購入して頂く販売形態になっております。売上の計上方法については、コースを購入した際の受講料(現金ベース売上高)を、コースの受講期間で按分し、受講期間中に毎月均等額の売上を計上する形になっております。

そのため、事業運営上重視する経営指標としては、会員による受講料の支払い額の総額となる現金ベース売上高及び新規有料登録会員数(ユニーク数)をKPI(Key Performance Indicators)としております。

法人向け教育事業では、企業を取り巻く環境変化により、従来の集合研修を中心にした階層型の社員教育から、より実践的なスキルを効率的に身に着けるオンライン教育の必要性が高まっております。

法人向け事業で展開するエアコースでは「最も社員教育を効率化できるサービス」になるために、学習管理システム(LMS)やコンテンツを強化し、社員教育のデジタルトランスフォーメーションができるプロダクト力を高め、マーケティング、販売力を強化し、パートナーモデルを確立することを目標にしております。

そのため、事業運営上重視する経営指標としては、法人事業における売上高、エアコースの契約企業数及び平均解約率をKPIとしております。

 

(3)経営環境

 当社をとりまく経営環境については、矢野経済研究所「教育産業白書2021年版」によれば、2020年度の教育産業全体の市場規模(15分野の合計)(注1)は前年度比2.7%減の2兆6,997億円(注2)となり、前年度の市場規模から微減となりました。当該市場は緩やかな拡大を継続してきましたが、2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりマイナス成長に転じております。2021年度につきましては、新型コロナウイルスの感染終息は不透明なものの、各企業では在宅勤務などのテレワークの活用や、一定のコロナ対策を講じた上での事業運営およびサービス提供体制の確立を進めています。またサービスの利用者もオンラインシフトに慣れつつあり、コロナ禍で需要が拡大したサービスの需要継続などに加え、休校措置などの活動制限の影響がほとんど見られないことから、多くの市場分野で回復または再成長するものと予想されています。教育産業全体は再び拡大成長するものと予測されており、市場規模は2兆8,333億円と2020年度比で5.0%程度の拡大推移が予測されております。少子高齢化が進む我が国においても、生涯にわたる教育の重要性や企業向けの人材育成のニーズなど、リスキリング(学び直し)の需要は高く、引き続き教育産業は堅調に推移する傾向が予想されています。

 

個人向け資格取得市場

 当社のスタディング事業が主な事業領域とするのは、矢野経済研究所が定義する教育産業のうち「資格取得学校市場」です。同研究所「教育産業白書2021年版」によれば、資格取得学校市場の2020年度の市場規模は、新型コロナウイルスの影響により、前年度比1.6%減の1,830億円と微減しております。通学を前提とした資格スクールでは受講者の募集がままならず、また教室講義の中止や休校措置、営業時間の短縮など、事業活動が停滞したことでマイナスの影響がありました。しかしながら、緊急事態宣言解除後は、資格スクール事業者では校舎・教室での受講を再開させ、Web広告に力をいれる、またはオンラインでの受講の体制を整備するなどして集客手段を強化するなどに注力しました。それに伴い、集客及び売上は回復基調となり、新型コロナウイルスのマイナス影響を最小限に留めたことで通年では微減の推移となりました。

2021年度の予測につきましては、コロナ禍での教室運営・受講体制が確立されたことで大きな影響は見られず、例年どおりの需要傾向に戻ることが予想されております。市場全体としては、前年度比1.1%増の1,850億円と予測されています。コロナ禍での受講スタイルの変化として、当社が提供するスタディングのように、学習におけるオンライン化は加速し、一般化してきております。このように、当社の強みであるオンラインに特化した講座は着実にその存在感を増してきております。また当社では、膨大な受講者の学習履歴データを蓄積しており、それらデータをAI(機械学習)を活用することで受講者ごとに学習を個別最適化する機能など機能を拡張しており、受講者はより効率的な学習が可能となります。このように学習のオンライン化の一般化は、当社主力事業であるスタディング事業の市場シェア拡大と成長を加速させる絶好の機会と捉えております。成長を優先した事業展開をすすめるため、テレビCMの活用や合格者の合格体験談のWebサイトでの公開等を通じ「資格を取るならスタディング」という、資格取得における第一想起のサービスになるよう努めてまいります。

 

法人向け社員教育市場

 当社の法人向け教育事業の主力サービスとなる社員教育クラウド(エアコース)が主な事業領域とするのは、矢野経済研究所が定義する教育産業のうち「eラーニング・映像教育市場(B2B向けネットワーク・ラーニング)」であり、同研究所「教育産業白書2021年版」によれば2020年度の市場規模は2019年度比23.6%増の845億円となっています。増加の主な要因としては、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、企業での集合研修や対面での教育などが制限され、あわせて在宅勤務などが日常的に併用されることとなったことから、オンライン及びリモートで実施できるeラーニング関連サービスの需要が急激に高まってきていることがあげられます。また企業の人材育成ニーズの活性化により、eラーニングや動画を使った教育関連サービスへの投資増もあって好調に推移しております。

 従来、社員教育の主軸とされてきた集合研修の市場は「企業向け研修サービス市場」に分類されますが、2020年度の市場規模は2019年度比8.5%減の4,820億円と、新型コロナウイルスの感染拡大によるマイナス影響を受ける形で企業業績が悪化、研修予算の削減圧力が高まり、マイナス成長に転じました。しかしながら、2021年度はオンライン主体で研修が実施され、大きな混乱はなく市場は回復する見込みであり、コロナ禍前もしくはそれ以上の水準までマーケットが回復している分野も散見されており、2021年度の市場全体として、前年度比8.9%増の5,250億円と予測されております。

 各企業のテレワークの推進等により、集合研修の代替・補完手段としてeラーニングを活用する動きが見られており、オンラインを活用した研修など、コロナ禍に対応した研修サービスへの移行が加速しております。また企業におけるテレワーク化、デジタル化によるデジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透、リスキリング(学び直し)の意識が高まってきております。

このように、今後も企業向けの社員研修や集合研修は、よりeラーニングへシフトしていくことが予想され、当社の法人向け教育事業には追い風となると考えております。当社では、この状況は成長に向けた絶好の機会と捉え、主に大企業向けのシステム開発やサービス開発を積極的にすすめるとともに、企業向け受け放題の研修コンテンツである標準コースを、2020年12月末の151コースから2021年12月末には405コースまで一気に拡充するなど、企業ニーズを捉えた施策を推進しています。今後もeラーニングでの企業研修におけるトップシェアを獲得すべく、事業を拡大する方針です。

注1 15分野とは学習塾・予備校、家庭教師派遣、幼児向け通信教育、学生向け通信教育、社会人向け通信教育、幼児向け英会話教材、資格取得学校、資格・検定試験、語学スクール・教室、幼児受験教育、知育主体型教育、幼児体育指導、企業向け研修サービス、eラーニング、学習参考書・問題集を指します。
注2 事業者の売上高ベース

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 高成長を継続することによる業界におけるリーダーシップの確立

当社では、教育や学習におけるデジタルシフトが急速に進行している現在の状況は、当社にとって大きなビジネスチャンスが到来していると捉えており、このような環境下で持続的な成長を実現し、業界におけるリーダーシップの地位を確立するため、当社事業の更なる強化が必須であると考えております。

主力の個人向け資格取得事業(スタディング事業)の基本戦略としては、「最も合格できる講座」になるために、AI(機械学習)・ITの活用や、コンテンツの強化を行い「学びやすく、わかりやすく、続けやすい」を追求していくことに加え、有望な資格への講座ラインナップ展開、認知度やブランディングを向上させ、マジョリティ層におけるシェアを拡大する方針です。具体的には、既存講座の改良や、収益性の高い新たな講座の開発、AIを活用した学習システムの強化等を行い、継続的な収益を確保しつつ、マーケティングを強化し、販売効率の改善等による収益力の強化を進めてまいります。また長期的視点に基づき、マスマーケティングによるブランディングの強化、プロダクト、サービス強化のための投資を増やすなどにより、持続的な成長を実現し、事業基盤の確立を目指します。

 法人向け教育事業の基本戦略としては、「最も社員教育を効率化できるサービス」になるために、学習管理システム(LMS)やコンテンツを強化し、社員教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)ができるプロダクト力を高めることを目指します。具体的には、マーケティング、販売力を高め、パートナーモデルを確立することや、プロダクト強化、販売力強化によって顧客増を実現し、クラウドLMSでのシェアNo1を達成することで競争優位性を高める方針です。また、受け放題コースのラインナップ充実、エアコースの各種機能開発に伴う大企業向けのプロダクトの強化、Webによる集客やWeb商談を中心とした販売力の強化等を引き続き進めてまいります。

② 収益源の多様化

 当社の売上高は、現在はスタディング事業が大半を占めております。スタディング事業は順調に伸長しており、また今後も資格取得市場がWeb講座にシフトする構造変化に伴い、当社サービスの優位性を明確にした差別化戦略を実行していくことで十分な成長余力があると考えております。一方で、中長期の経営戦略として考えると、スタディング事業における資格ごとの減衰や季節要因等のリスクを低減する必要があります。そのため、2018年12月期に法人事業部を立ち上げ、法人向け教育事業を本格的に開始し、順調に拡大してきております。法人向け教育事業では、大企業にニーズの高い社員教育クラウドサービスの開発による販売強化を軸に、動画制作サービスやスタディング事業との連携も推進してまいります。さらに、社員教育クラウドサービスの競争力を高めた上で、将来的には日本国内だけではなく、現地法人の利用実績を基にした改善や競争力の強化をした上で世界中に事業展開をしていきたいと考えております。

 また、スタディング事業、法人向け教育事業を強化し自社による展開(オーガニック成長)を推進するとともに、新たな収益源の確保に向け、事業提携、資本提携(出資)、M&A等の方法も検討してまいります。これら提携等から生まれるシナジーを通じ、より一層の企業価値向上を目指してまいります。

③ 技術革新への投資
 当社は「世界一『学びやすく、わかりやすく、続けやすい』学習方法を提供する」というビジョンの実現のため、AI(機械学習)や、IT技術を駆使した教育サービスを展開してまいります。そのため、最新の技術を取り込んだサービスの機能強化、機械学習を使い個別最適化した学習方法の提案など、人や組織がより効率的に学習できるようなサービスや機能の開発に投資を行い、競争優位性を高めることで長期的な成長を目指します。

④ 優秀な人材の確保及び育成
 「学びを革新し、誰もが持っている無限の力を引き出す」というミッションに共鳴する優秀な人材を適時採用するとともに、持続的な成長を支える人材の育成を強化していく方針です。また、当社の事業領域において市場リーダーシップを構築していくため、新しい顧客価値を創造できる次世代を担うリーダーの育成にも注力してまいります。

 

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