課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

ミッション   :働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。

サービスポリシー:「寄り添うように」 お客さまのこころの声を感じ、そのご要望に丁寧に応えるサービス

「慈しむように」 愛情と敬意に満ち、優しく包み込むようなサービス

「信頼に足るように」 他に換えることのできない確かなサービス

「妥協しないように」 果てしなき質の向上に挑み続けるサービス

 

 当社グループは上記のミッションの下、創業以来、35年以上前から働く女性の支援を続けてまいりました。

昨今、国連が定める「持続可能な開発目標(SDGs)」に代表されるように、社会課題の解決が企業にも求められる時代となり、当社グループの経営方針及び提供するサービスが社会において重要な価値をもたらすものである事を改めて認識しております。

 そこで、当社グループでは、2020年11月に株式会社日本総合研究所からセカンドパーティ・オピニオンを取得し、当社グループの社会課題解決に向けた対応状況を第三者の目から客観的に評価いただくとともに、今後の(経済的価値のみならず社会的価値を含めた)企業価値向上の契機としております。

 

 また、SDGsは当社のミッションにも通ずる目標であると考えており、当社グループの提供するサービスにより、以下のそれぞれの目標達成に貢献してまいります。

目標

ターゲット

左記ターゲットに貢献する

当社グループのサービス・施策

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 5.5「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する」

・働く女性を支援することにより、女性の社会参画を増大

・子育て経験をキャリアとして評価し、女性とシニアをナニー及びベビーシッターやケアスタッフとして活用。その他、年齢・性別・国籍・ハンディキャップにかかわらず多様な就業の場を提供

・自社においても、全社員の91.2%、管理職の78.4%、取締役の38.5%を女性が占める(2021年12月末時点)など、女性活躍を自ら実践

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 4.2「すべての女児及び男児が、質の高い乳幼児の発達支援、ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする」

・「保育」から「エデュケア」へ保育理論、非認知能力の向上ノウハウを深化・体系化

・将来グローバル社会で生きる子どもたちのために「0歳からのエデュケア」を実践

・「最高水準」のサービス提供に向け、乳幼児教育において、ハーバード大学、スタンフォード大学、ノーランドカレッジ、東京大学、お茶の水女子大学など国内外の教育機関やその研究者との共同研究や研修を実施し、世界最先端の教育科学を保育に取り入れる

・国や自治体からの委託を受け、保育士再就職支援事業(厚生労働省)や、サービス産業生産性向上調査事業(経済産業省)、子育て支援方策に関する調査研究(文部科学省)等の調査やコンサルティング、研修事業(年間1,700回以上、53,000人以上参加(2021年度))を実施

 

 

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 8.1「各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる」

 

 8.5「2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する」

 

・保育/学童施設327ヵ所(2021年12月31日時点)の運営、ベビーシッターサービス提供を通じ女性の社会参画を支援

・お茶の水女子大学大学院に「ポピンズ保育マネジメント講座」を開設(2021年4月開講)し、保育士の地位向上を図る

・地方採用も積極化し、地方から三大都市圏(東京都・大阪・名古屋)に転居して働く人に向けて借上げ社宅などのサポート施策を準備(2021年12月末現在257件)

・保育士の処遇改善(大卒保育士の初任給業界最高水準)や福利厚生(自社サービスの割引利用他)の充実

・残業時間の軽減(目標月平均7時間)

・人材育成を重要な経営課題と捉え様々な教育機会を提供(海外研修に自社社員派遣含めのべ約500名参加(英ノーランドカレッジ海外研修(1994年~)、米スタンフォード海外研修(2006年~)、米ハーバード海外研修(2007年~)の累計参加者数)、オンライン開催となった2020年度及び2021年度分を除く)

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、事業の収益性を評価し、グループ全体の経済価値向上に寄与することから、経営指標として売上高と営業利益率を重視して経営しております。

 

(3)経営環境

 日本では、少子高齢化に伴い労働者不足の加速化が予想されるとともに、産業構造の変化により多様な人材を活用していくことが必要不可欠となったことから、女性の活躍促進が一層求められております。

 安倍政権が「女性が輝く社会」政策を打ち出した2013年時点で2,411万人だった女性の雇用者数は、以降拡大を続け、2021年には2,717万人まで306万人も増加しております。(注1)

 こうしたなか、我が国は成長戦略の1つとして女性が輝く日本を念頭に「待機児童の解消」「職場復帰・再就職の支援」「介護離職ゼロ」に向けた対策が進められていることもあり、当社グループの展開する事業領域の各市場は以下のように拡大していくものと認識しております。

 

①子育て支援

ⅰ)チャイルドケアサービス(ベビーシッター)

 欧米等の海外ではベビーシッターは一般的なサービスであります。日本においても、待機児童対策として保育施設の整備が急ピッチで進められる一方、都市部における保育施設の不足が払拭されないため、ベビーシッターサービスへの需要が増え続けております。また、個別保育の長所を活かした様々なサービスとともに、保育所や学童施設では対応できない送迎や病児・病後児保育、妊娠中の産褥支援などの個別ニーズへの対応が可能であることから、子育て市場の成長とともにベビーシッター市場は堅実に伸長しております。矢野経済研究所によれば、ベビーシッター市場の年間売上高は、2013年度の257億円から2019年度は299億円へと拡大したもの後、2020年の同市場は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け229億円と一時的な縮小を余儀なくされていいますが、同感染症の収束を見越して、2021年には251億円、2022年には280億円まで回復することが見込まれております(注2)。

 当社グループのナニーサービスの会員数も過去10年で4倍以上に増えており、また、ベビーシッターサービスの2021年12月の月間売上高が、新型コロナウイルス感染症による事業への影響が生じる前の2020年1月比4倍超に増加するなど、利用拡大が急速に進んでおりますが、海外事情の浸透やベビーシッターの認知度の向上、マッチングサービスの発展等による使い勝手の向上等により、今後も日本におけるベビーシッター市場のさらなる拡大が期待されると考えております。

 

 

ⅱ)エデュケア事業(保育所)

 待機児童対策のため保育所の新規開設が拡大しており、保育所定員並びに保育所利用者数ともに2013年時点でそれぞれ229万人、222万人から2021年時点でそれぞれ302万人、274万人と大幅に伸びております(注3)。一方で、待機児童数は5,634人と、2020年時点に引き続き前年比6,805人の大幅な減少となりましたが、これは新型コロナウイルス感染症の影響により、保護者が自身の復職時期を先延ばしするなどして保育所への入園を控える問題を指す『預け控え』の影響が大きいと考えております。今後、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い、引き続き女性の就労率の上昇や、非正規雇用者の正規雇用化が進むことが想定されるため、保育所の整備が進んでも潜在的な待機児童数の高止まりは継続すると見込んでおります。

 待機児童解消と職場復帰支援に向けては、2018年6月に政府により決定された「女性活躍加速のための重点方針2018」により、女性活躍の場の拡大をさらに推進していくという方針のもと、保育の受け皿確保のため、2020年度末までに32万人分の保育の受け皿整備やその他待機児童の解消に向けた施策が行われる等、女性の就労を後押しする環境整備に強い関心が払われております。野村総合研究所の推計では、2022年度末での女性の就業率80%実現のためには360万人分の保育の受け皿が必要とされ、2021年末までに「子育て安心プラン」で予定されている整備量32万人分に加えて、あと27.9万人分の保育の受け皿が必要とされています(注4)。

 政府は2020年12月21日に「新子育て安心プラン」により、2021年度から2024年度末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備することを発表しました。

 矢野経済研究所によれば、保育施設等の市場規模は2014年の3.4兆円から2020年の4.7兆円まで拡大しており、2022年には4.9兆円まで引き続き拡大することが見込まれております(注2)。「新子育て安心プラン」に沿って、政府が掲げる25歳~44歳の女性就業率の目標値が82%(2025年)まで引き上げられていることも踏まえ、当面の間、同市場は緩やかな拡大が継続するものと考えております。

 保育の受け皿不足が解消した後もしばらくは保育需要が同程度続くとの意見はありますが、少子化の影響を受け、いずれは減少していくことになると考えております。仮に2025年~2028年あたりで保育需要の拡大がピークアウトした場合、その後は競合間での競争の時代に突入することになりますが、保護者向けのアンケートでも、保育所を選ぶ際に最も重視する点は保育の質という結果が出ており、当社の最大の差別化ポイントである質の高さが強みになってくると考えております。当社グループはミッションに掲げるように、創業からサービスのクオリティを常に意識し、研修・教育により日々研鑽を重ねてきたことやフルラインナップで働く女性を支えるサービスを提供している事業安定性から、保育所が選ばれる時代の到来は、当社グループにとって好機であると捉えております。

 

②シルバーケアサービス(高齢者在宅ケア)

 国内介護市場規模は、2014年の8.6兆円から2025年には18.7兆円程度まで拡大すると見込まれており、財政問題を背景に社会保障費を少しでも抑えるため、在宅サービスの充実が求められていることから、介護保険と介護保険外を含む在宅介護が約6兆円と一番大きく伸びると予測されております(注5)。

 また、総務省「就業構造基本調査」によれば、働きながら介護をしている人の数は約350万人にのぼり、企業で働く従業員の約10%が介護をしていることになります(注6)。一方、厚生労働省「雇用動向調査」によれば、介護を理由に離職している人は年間約10万人とされております。2025年には総人口に65歳以上が占める割合である高齢化率は30%を超え、現役世代の介護問題がさらに深刻化することで、経営パフォーマンスに大きな影響が出ると予想されており、介護サービスの拡充は日本経済においても喫緊の課題であると言えます。なかでも社会保障費の伸びを抑制する潮流のなかで、当社グループが行う介護保険外の在宅介護や介護予防となるアクティブシニア向けの生活支援への期待は一層高まっていくものと考えられます(注7)。

 さらに、年間250万人が生まれた団塊の世代が、現在70歳代半ばに差しかかっていることから、シルバーケアサービス市場の一層の拡大を見込んでおります。

 

(注)1 総務省「労働力調査(基本集計)2022年2月1日」

   2 矢野経済研究所「保育・幼児教育市場の実態と展望 2021年版(2021年6月30日)」

   3 厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(2021年8月27日)」

   4 野村総合研究所「「NRIメディアフォーラム資料(2018年6月26日)」」

   5 デロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー「ライフサイエンス・ヘルスケア 第5回 国内介護市場の動向について(2017年1月25日)」

   6 総務省「就業構造基本調査(2018年)」

   7 厚生労働省「雇用動向調査(2017年)」

 

 なお、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための政府による緊急事態宣言を受け、自治体からの要請により一部の施設(保育所・学童・児童館)が臨時休園・休室・休館や登園自粛となったほか、ナニーサービスやVIPケアサービスの利用自粛により売上が減少しましたが、新型コロナウイルス感染症が当社グループの経営環境に与える影響は、限定的であった一方、変異ウイルスの発生など先行きは不透明であり、継続して注意してまいります。

 

(4)経営戦略

 当社グループでは、ミッションの貫徹、及び今後の成長を目指して以下の3点を経営戦略として事業を進めております。

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①フルラインでの働く女性のサポート(サービスラインナップの拡充)

 当社グループは、ナニーサービスにより事業を開始して以降、事業所内託児サービス、イベント託児、高齢者在宅ケア、保育・学童施設、デイケア施設、外国人家事支援と子育て・介護・家事支援に関する様々なサービスで働く女性を支援してまいりました。今後も以下のようにサービスラインナップの拡充を図り、フルラインで働く女性をサポートするサービスを提供してまいります。

 

≪チャイルドケアサービス(ナニーサービス、ベビーシッターサービス)≫

 育児コンサルタントが企業や保育園を訪問し、保活・両立支援・育児相談のトータルサポートサービスで働く女性とご家族様の心に寄り添いながら専門的な知識と豊富な経験で個別にサポートいたします。

 

≪シルバーケアサービス(高齢者在宅ケア)≫

 ナースケアサービスにより、医療ケアを必要とするお客様が医療保険・介護保険のルールから制限を受けることなく、住み慣れたご自宅でご自身らしく生活していただけるよう、看護資格を有するポピンズナースが主治医やホームドクターと連携しながら、お客様にオーダーメイドの看護サービスを提供しております。

 また、35年以上に渡り、育児・介護の分野で働く女性を支援し、2021年12月末現在、700社以上の企業と法人契約を結んでいる経験・ノウハウを活かし、法人向けに介護コンサルティングサービスを提供いたします。

 

≪エデュケア事業(保育・学童施設運営)≫

 利用者のさらなる利便性と満足度の向上のため、ポピンズプラスや夕食サービスなどの商品開発力の強化を推進します。また、当社グループの保育施設で働く保育士等にグループ会社が運営するベビーシッターへの登録を促し、保育士等が保育施設を退勤した後もベビーシッターとして保育施設に通う子どもの送迎や保護者が不在時の自宅での世話まで行うベビーシッター付保育園を展開してまいります。保護者はなじみの保育士等に、自宅と施設間の送迎や、帰宅が遅くなる際の子どもの世話などを依頼でき、スタッフもベビーシッターを経験することで、保育施設での保育の質向上につなげられます。

 

②クオリティ(最高水準のエデュケアと介護サービスの品質維持向上)

 当社グループは、ミッションとして「働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。」を掲げており、常に最高水準のサービスをお客様に提供することを意識し、これまで様々な施策を実行してまいりました。その結果として、あらゆる場面で評価を頂いてまいりました。

 当社グループの具体的な品質維持向上施策は以下のとおりであります。

・1999年に育児・介護サービス業界では全国初となる国際品質規格ISO9001(品質マネジメントシステム)の認証を取得いたしました。その過程で品質目標設定・実行・評価・改善というPDCAサイクルによる品質マネジメント体制が整備され、顧客満足度の視点からサービス品質の向上を実現する事に繋がりました。その結果、2021年度に実施した当社グループの保育施設のご利用者による満足度アンケートでは、全施設平均で98.0%の方から満足との評価をいただき、また全施設のうち7割において全員満足と回答されました。

 

・当社グループでは、お客様の緊急性・利便性・安心感にお応えするナニーサービスを提供するため以下4点の実現を心掛けております。

A) ICT(PC/スマホ)を活用した24時間365日対応の実現

B) 当日オーダー100%に応える最適なナニーとのマッチング

C) コーディネーターによる入会訪問

D) お子様が病気の時でも対応

・運営施設数が増加する状況でも、優秀な人材の採用や育成の強化、及び、諸施策を通じた長期雇用の促進により、保育士、ベビーシッター、介護スタッフ、家事支援スタッフの質の維持・向上を図っております。具体的な施策としては、ジョブディスクリプションによる各職位における職務内容や人事評価制度の精緻化、処遇改善等を行っております。

・2019年10月の幼児教育無償化において、ベビーシッターも対象となりますが、その質の向上は今後の課題となっております。国も資格や一定の研修受講などの基準をつくり、受講状況などを確認できるシステムを開発するとしておりますが、当社グループとしても30年間の経験を活かし、ベビーシッターに必要な知識や技能の見える化を実現するため「ポピンズナニースクール(教育ベビーシッター養成講座)」と、その修了者を認定する「ポピンズナニー検定」を2019年4月よりスタートいたしました。

 

 上記諸施策の結果、2016年6月には、約30年、働く女性の支援のために高品質のナニーサービスを提供し続けてきた功績が認められ、第一回日本サービス大賞(注9)厚生労働大臣賞を受賞いたしました。

 また、スマートシッター株式会社(現 株式会社ポピンズシッター)は、2017年12月、日経DUAL「マッチング型ベビーシッターサービス」ランキングにおいて「質・信頼性」や「料金」等が評価され、1位に選ばれました。2018年にはキッズデザイン賞(子ども達を産み育てやすいデザイン部門)を受賞しました。

 2020年には、子どもたちにとっての創造的な空間づくり(環境設定の質)等が評価され、ポピンズナーサリースクール恵比寿南がキッズデザイン賞(子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門)を受賞しました。

 さらに2021年4月からは、お茶の水女子大学の大学院に国内初の産学連携による保育マネジメント講座を開設し、主に現場で働く保育士が経営学を含む専門的な理論や知識なども学べるようにして、女性の社会進出に伴い、需要が高まるとともに保護者からの求めが多様化している保育サービスの質を底上げしてまいります。

 また、2021年8月には、東京都より、当社グループのナニー/ベビーシッター向け自社研修が、民間企業として初めて国認定研修(注10)として認定を受けました。

 これにより、当社グループの自社研修を受講すれば、いち早く「認定ナニー/ベビーシッター」として活躍いただけるようになりました。さらに、当該自社研修の、当社グループ外のベビーシッターへの外販も進めることで、ベビーシッター業界全体のクオリティの向上にも貢献してまいります。

 これからも、当社グループの最高水準のサービス品質をさらに向上させてまいります。

 

(注)9 日本サービス大賞とは、日本生産性本部が主催し、総務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省が後援する「革新的な優れたサービス」を表彰する日本初の制度です。最優秀賞である内閣総理大臣賞をはじめ、サービスを管轄する各省の大臣賞、地方創生大臣賞などの各賞により、日本国内の”きらり”と光る優れたサービスを幅広く表彰します。ナニーサービスの授賞理由としては、「30年近く、働く女性の支援のため高品質のシッターサービスを提供し続けており、女性の活躍に大きく貢献するサービス。ナニー(教育ベビーシッター)の採用、教育、動機づけ、顧客との関係づくりなど、高品質サービスをつくりとどける工夫に加え、ICTを利活用した24時間365日の受付、最適なシッターとのマッチングなど利用者の利便性向上を追求している。顧客の状況に応じてサービスを提案するなど、個別ニーズにも応える高信頼のサービスである。」とされています。

   10 内閣府ベビーシッター割引券などの国の助成に対応するベビーシッターは、保育士または看護師の資格を保有しているか、または厚生労働省が指定する研修を修了することが必須とされています。

 

③利益成長

ⅰ)事業領域の拡大(新規事業への取り組み)

 当社グループは、子育て支援と介護支援という働く女性にとり必要不可欠なサービスを提供してきたことにより、創業から継続して売上高成長を実現し、特に、新型コロナウイルスの影響を受けた2021年12月期を含む直近5年間においてもCAGR(年平均成長率)13.9%成長を果たしてまいりました。

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(注)2017年12月期まで株式会社ポピンズ単体、2018年12月期から連結ベース。

 

 当社グループは、これまで働く女性をフルラインでサポートするため、スマートシッター株式会社(現 株式会社ポピンズシッター)の買収によるベビーシッターとお客様との直接オンラインマッチングサービスの導入や、株式会社ウィッシュの買収による学童事業・人材派遣業への進出等、事業の拡大を図ってまいりました。

 また、保育業界の人手不足問題を解決すべく、株式会社保育士GOを設立し、保育士を中心とする人材紹介事業を開始しておりましたが、今後は人材紹介事業と人材派遣事業によるトータルな人材サービスを提供いたします。

 加えて、「ポピンズプラス」というこれまでより付加価値の高いプログラムも2020年7月より提供を開始致しました。具体的には、元オリンピック選手やダンサー等のアスリートによる運動・ダンスプログラムやネイティブによる英語レッスン、そして、受験相談等のサービスをオンラインも活用して提供しております。

 さらに、2021年6月には新たに不妊予防に関するポータルサイトと企業研修の新規事業を立ち上げました。これによりライフステージに応じて変化する、働く・働きたい女性の課題に切れ目なく対応する当社グループの事業形態の一層の充実を図り、他社のサービススコープには見られないユニークなビジネスモデルを追及してまいります。

 

ⅱ)デジタルトランスフォーメーション(注11)(ICT、AIの活用による生産性向上とビジネスの拡大)

 当社グループではQRコードによる入退室管理、園と保護者をつなぐ連絡帳の電子化といったICTによる保育現場の生産性向上の取り組みも2015年からスタートしております。

 2019年3月には、ベビーシッターをWebから予約できるオンライン型派遣サービス「ポピンズシステム」のアプリ対応版「ポピンズアプリ」を自社開発いたしました。「ポピンズアプリ」は当社グループが提供するサービス全体の窓口となる機能を有しており、保育・育児・介護サービスをワンストップサービスでご利用いただけます。さらに、豊富な顧客データベースを活用することにより、育児や介護をしながら働く女性のために、ライフステージにより変化するご利用ニーズに応じたご提案やマーケティングを行うことでシナジー効果を創出しております。

 将来的には自社システムを拡張していくほか、さまざまな情報を集約し、データ分析による予測サービスなどを提供していくなど、デジタルトランスフォーメーションによる生産性向上に取り組む方針であり、この活動を全社的かつ戦略的に推進し、ビジネス拡大に繋げる目的で2020年1月にはデジタルトランスフォーメーション部(DX部)を新設致しました。

 同部の推進により、以前から準備を進めていたオンライン保育のスタートが、新型コロナウイルスの影響で休園や登園自粛となった施設の利用者からのニーズにより早まり、2020年3月よりオンラインによる読み聞かせやダンス等の通常の保育サービスだけでなく、英会話や運動クラス等の有料プログラムも随時提供を開始しており、オンライン保育とリアルな保育の組み合わせによるハイブリッド型保育をいち早く導入し、いつでもどこでもポピンズのエデュケアを提供することが可能です。また、保護者向けオンライン育児相談により保護者に寄り添うサービスも提供しております。これらに加えて、今後、新技術にも積極的に投資してまいります。まずIoTの活用策として、保育施設において午睡チェックシステムや検温システムを導入して業務効率化を推進しております。

 また、2021年7月には、子会社を含めた事業横断で当社グループの擁する人財情報をデータベースで一元化する「人財データベース(人財DB)」を、2021年11月には「お客様データベース(顧客DB)」をそれぞれ自社構築し、運用を開始いたしました。人財DBは、保育業界に先駆けて、DXにより従来事業部ごとに管理していた総勢1万人規模(ナニー、ベビーシッター、ケアスタッフ等の業務委託契約者を含む)におよぶ当社グループの保育人財のさらなる高度化、採用・配置・育成・再配置等の最適化、「安い・きつい・長い」保育業界の3重苦解決を図るものです。また、顧客DBは、従来サービス毎に保有していたお客様情報を、当該DB構築により情報管理を一元化し、働く女性の支援のために、ナニーサービス、ベビーシッターサービス、保育所・学童サービス、教育研修サービスなど当社の有する様々なサービスのクロスセル、強化を加速するものです。

 当社グループでは、人財DBと顧客DBを掛け合わせて活用し、ナニーサービスとシルバーケアサービス間のクロスセル、ナニー/シッターとお子様・保護者様とのマッチングロジック進化、ナーサリーでのお子様の特徴に応じたカリキュラムや働きかけの提供、ポピンズプラスのメニュー開発(お客様ニーズを捉えて適切な保育人財をアサイン)などに取り組んでおり、今後、さらなる活用を推進してまいります。

 さらにデジタルトランスフォーメーションへの取り組みとして、自動マッチングAIの開発により、ベビーシッターのマッチング精度を向上させるとともに、音声自動予約による生産性向上を実現します。その次のステップとしては、情報共有AIの導入により、AIが情報解析のうえコーディネーターや保育士に当社のエデュケアノウハウに基づく推薦案を提示することで専門的かつ臨機応変な対応を可能とし、近い将来には、お客様とコンシェルジュの双方向のコミュニケーションを支援するAIコンシェルジェの開発を目指すことで、お客様の期待を超えるサービスを提供してまいります。

 

(注)11 “デジタルトランスフォーメーション”は2018年経済産業省で以下のように定義されております。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 保育事業や介護事業に対する国や社会の関心が高まる中で、当社グループとしてさらなる事業拡大に向けた重要課題として以下の点に取り組んでまいります。

 

①人材の確保

i)子育て支援事業(在宅サービス事業(チャイルドケアサービス)・エデュケア事業)

 子育て支援業界では、昨今の保育施設の増加により人材不足状態が続いております。しかしながら、子育て支援業界のパイオニアを自負する当社グループとしての地位の維持のためには、高品質を維持するのは絶対条件であり、また子育て支援事業を引き続き拡大させるためには、優秀な人材の確保が必要であります。

 

 チャイルドケアサービス(ナニーサービス)においては、子育て経験をキャリアとして評価し、女性とシニアの活用に積極的に取り組み、当社グループが、東京都から株式会社として初の国指定研修として認定を受けたベビーシッター自社研修を通じて、新たなナニー、ベビーシッターを養成しております。2021年12月現在、約2,600名が当社のナニー基礎研修を受講し、当社グループのナニー(教育ベビーシッター)として登録しております(注12)。また、直近1年間で約500名の新たなナニーを養成しております。

 エデュケア事業においては運営する保育施設数の増加に伴い、保育士やスタッフの確保が急務となるため、新卒採用及び中途採用の強化に取り組んでおります。

 2021年度は年間を通して約600人の保育スタッフ(約350人の保育士を含む)を採用いたしました。保育士確保は依然として厳しい状況が続いておりますが、就職フェアの出展などを通じて就職希望者との接点を増やしているほか、近年は地方採用も積極化しており、地方から首都圏に上京して働く人に向けて借上げ社宅などのサポート施策を準備する等、様々な方法を駆使し、保育施設運営上の必要数を充足しております。

 保育士の処遇改善については、2013年度の「安心こども基金」を活用した「保育士等処遇改善」以降、国からの補助金は年々増えており、2017年度には「保育士等処遇改善Ⅱ」によりキャリアアップによる給与改善の財源が確保されてきております。加えて、当社グループでは独自での処遇改善として2019年4月以降入社の新入社員の初任給を26万円(大学卒、東京・神奈川・埼玉・千葉の認可・認証保育園)に引き上げ、それに合わせ、現状の保育士の処遇改善にも取り組んでおります。また、保育士の給与については、岸田政権が、2022年2月から教育・保育の現場で働く方々の収入の引上げを目的として開始した「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」を活用して、改善に取り組みます。

 福利厚生の充実については、育児休暇明けに職場復帰しやすい環境を整えているほか、当社を退職した保育士の再就職も受け入れるなど、門戸を広げており、この再就職制度を利用し2021年に12名の保育士が復職しております。

 

(注)12 2021年12月期より、休職中及び一定期間以上にわたり稼働実績のないナニーについて、登録数にカウントしない処理に変更しております。

 

ⅱ)在宅サービス事業(シルバーケアサービス)

 介護サービス業界ではホームヘルパー2級保有者など有資格者に対する求人需要が高く、今後高齢者在宅ケア事業が拡張される中で、人材の確保が何よりも重要になります。なかでもVIPケアサービスはオーダーメイドの在宅ケアサービスであるため、介護だけではなく調理、茶道・華道等、幅広いサービスを提供していくため、そのサービスを提供するにふさわしい、素養のある人材の確保に力を入れております。

 

②人材の育成

 人材サービス業である当社グループは、人材こそが宝であり、お客様に最高水準のサービスを約束するオンリーワン企業となる事を目指して、人材育成が重要な経営課題であると捉えております。そのため、下記のような様々な人材育成システムを通じて教育の機会を提供しております。

 社員には、社内講師や専門家による階層別研修、専門研修、任意研修、e-learning研修のほか、ポピンズ蓼科研修センターでの合宿研修や海外研修を通じ、常に質の高いサービスを提供するために、人材への継続的な教育投資を実施しております。また、ナニー及びベビーシッターやケアスタッフ向けには採用時及び更新時の研修を定期的に実施しております。

 さらに、ナニー及びベビーシッター向けにナニー検定やナニースクールによるキャリア開発支援を行うとともに、ケアスタッフ向けに高齢者の健康に配慮しつつも満足していただける食事のレシピについての講習会を定期開催するなど、その人材の養成とサービスレベルの強化に努めております。

 

③新規事業への取り組み

 当社グループでは、有望な新規事業として、全国の保育事業者等に向けた経営支援コンサルティング事業の拡大に注力してまいります。認可保育所だけでなく様々な形態の施設の運営実績が多くノウハウがあるのは当社グループならではの強みであり、このような強みを活かせるコンサルティング事業を拡大してまいります。

 今後保育所は、自治体、企業、利用者から選ばれる時代になっていき、いずれは供給過多になると見ており、そのような中、「選ばれる」保育サービスに成長するために、既存の保育施設運営事業やベビーシッター事業に加え、こうした新しい事業も積極的に広げていきたいと考えております。

 また2021年6月には、新規事業として不妊予防事業をスタートしております。これまで当社グループは、出産後の女性のライフステージに寄り添ってまいりました。しかし日本では、不妊治療とキャリアを両立できず悩んでいる女性が数多くいるという現実があります。この現実を踏まえ、出産前の女性が抱える「不妊」という問題に向き合い、働く女性が切れ目なく活躍できるように、支援の領域を広げ、当社グループ独自の不妊予防ポータルサイトの機能拡充や、企業研修の提供等を通じて、不妊予防におけるプラットフォームサービスを提供してまいります。加えて、福利厚生制度(卵子凍結などを含む)として導入していただけるよう、行政・企業への働きかけを進めてまいります。

 

④SDGsの当社グループ経営へのさらなる取り入れ

 2020年12月21日に東京証券取引所市場第一部に上場した際に、調達資金の使途に関し、当社グループのこれまでの取組みによるSDGsへの貢献についてセカンドパーティ・オピニオンによる第三者評価を取得いたしました。当社グループがおかれている経営環境や当社グループの経営戦略を踏まえ、社会課題対応に向けた取組み状況の開示や、目指すべき目標等の当社グループの経営目標への組入れ等により、引き続きSDGsを当社グループの経営の中核に位置付けてまいります。

 具体的には、待機児童のさらなる解消やベビーシッターサービスの浸透による保育の受け皿の確保、介護離職回避やアクティブシニアの活用、DXの活用による保育士等の労働環境のさらなる改善等、経営戦略として達成すべき事項をSDGsの観点を交えて設定してまいります。

 

⑤グローバル対応力の強化

 アジアには日本の企業が数多く進出しており、そこに事業所内保育所のニーズがあると考えております。

 現在、ハワイで託児施設を一か所運営しておりますが、今後は海外の事業者との戦略的提携によるグローバル展開や、海外での保育施設運営を目指してまいります。

 

⑥多様な人材の活用(外国人材、アクティブシニア等)

 少子高齢化による人材不足の解消は、女性とシニア、そして外国人材にいかに活躍いただくかにかかっております。

 当社グループには、70歳を越えて働く人材が保育園で2021年12月現在106名、ナニーでは159名おり、現役ナニーとして80歳代の女性が活躍しております。当社グループの事業分野においては、年齢、性別を問わず多様な人材が持てる技能・経験・語学を活かして貢献いただけると考えております。

 

⑦事業成長戦略とDX戦略の推進

 「規模及び範囲」の拡大、つまり当社グループの事業成長戦略としては、1つめに既存事業である在宅サービス事業、エデュケア事業、研修事業の規模拡大、2つめに新規事業である、不妊予防、家事支援、外部向けコンサルティングなど事業範囲の拡大に取り組んでまいります。そのいずれについてもM&A及び戦略的提携を掛け算することにより、更なる成長を目指します。

 そして当社グループが一番の強みとする「クオリティ」を向上させる事業戦略としては、これまで35年間にわたり当社グループが培ってきた有形/無形資産を活用した、人財確保・育成、R&D、SDGsの推進に取り組んでまいります。

 そのうえで「生産性」を向上させるため業務改革、働き方改革、ICTやIoTの活用により業務効率化及び付加価値向上に注力してまいります。

 それら全てに対して、常に、当社グループの「DX戦略」が掛け算となります。2021年度に運用開始した「顧客DB」「人財DB」の活用に加え、今後はAIの活用やプラットフォーム化を通じ、「人のぬくもりや優しさに価値を置くDX戦略」を実現してまいります。

 

⑧コンプライアンスへの取組み

 児童福祉法や介護保険法及び労働者派遣法や職業安定法をはじめとする各種関連法令の遵守を厳格に実施しております。また、お客様の個人情報についても、法律に則った取扱いを徹底しております。そのために、内部監査、法務、財務経理、人事等、それぞれの分野で高い専門性や豊富な経験を有している人材を採用することに加え、社内規程の拡充整備に取り組んでおります。加えて、社員研修等により日常的にコンプライアンスへの意識を高めることで、さらなる内部管理体制の強化を図るとともに、コンプライアンスの徹底に努めてまいります。

 

⑨安定的な資金調達の確保と財務基盤の強化

 引き続き保育施設の開設を進めるとともに、DX(デジタル・トランスフォーメーション)への投資や新規事業及びM&Aによる事業拡大を図っていくためには、必要な資金を安定的に調達することが重要となります。当社グループでは、複数の金融機関と親密な取引関係を維持し、資金調達の安定性と財務基盤の安全性を高めるよう努めております。

 

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