文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、企業理念「Technology × Human = Future Creation(ITと人財(※注)で未来を創造する)」に基づき、主に人財を育成し、拡充することによってシステムソリューションサービス事業を拡大させ、発展し続けていくことを目指しております。また、その過程においては、安定的な利益の確保と持続的な成長の維持との均衡を重視しており、これらを通して企業価値を高め、長期にわたって顧客企業、株主、従業員を含むステークホルダーの期待に応えることを基本方針としております。
長期ビジョン(10年後のありたい姿)としては、「技術力・規模ともにシステムソリューションサービス業界の首位グループ」を掲げております。それを実現するためには、「業界有数の人財数」、「業界有数の技術力」、「オリジナルの制度に基づく人財育成力」のすべてを充足させることが必要と考えており、今後もこれらの指標の向上に努めてまいります。
※注:当社グループは1974年に創業して以来、約半世紀に渡ってITというツールを通じて、人としてのあり方を追求してきたグループです。
ひとりの人間がひとりで成し遂げられることにはおのずと限界があります。
ひとりの人間が何かを思い、共感する仲間を集め、お互いを高めあうことで、成し遂げられることには無限の可能性が広がってきます。
また、成し遂げたことを自分ひとりで喜ぶのではなく仲間と分かち合うことでその喜びは何倍にも膨らむもの、と考えております。
そのため当社グループでは、何よりも「人」を一番の財産と考え『人財』と表現しております。
一人一人が力を合わせ、人を育てることに喜びを感じ、成果を分かち合うことに喜びを感じ、また人のために自分が頑張る・頑張れる…そんな考え方・活力を持った企業グループに成長していると考えております。
上記の考えに基づき、当社グループにおける正式な表記とさせていただいておりますことから、対外的に発信する情報の中でも、同表記を統一的に用いております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、サービスの競争力を維持し、財務活動を含めた全事業の業績を向上させていくことが重要であると認識していることから、中期利益計画策定にあたり重視している経営指標は当社グループのエンジニアの保有人数と稼働率と平均契約単価としており、前連結会計年度より向上させることを目安としております。
エンジニアの保有人数については、新型コロナウイルス感染症の拡大等に伴い一時的に採用を抑制したものの、緊急事態宣言の解除以降、経済活動が徐々に再開したことから、概ね計画通りの水準となりました。
稼働率については、新型コロナウイルス感染症の拡大等に伴い、技術者派遣需要が停滞したことから一時的に低下しました。
平均契約単価についても同様に、新型コロナウイルス感染症の拡大等に伴い案件の延期等が発生したものの、経済活動が再開したことから概ね計画通りの水準となりました。
(保有人数と稼働率推移)
回次 |
第2期 |
第3期 |
第4期 |
第5期 |
第6期 |
|
決算年月 |
2018年9月 |
2019年9月 |
2020年9月 |
2021年9月 |
2022年9月 |
|
保有人数 |
(人) |
607 |
677 |
709 |
721 |
762 |
稼働率 |
(%) |
98.2 |
99.1 |
96.1 |
97.7 |
98.8 |
(保有人数は、各連結会計年度末におけるグループ全体のエンジニア数。稼働率は、株式会社ブレーンナレッジシステムズ、株式会社シー・エル・エスおよび株式会社セイリング、株式会社ヒューマンベースの月中稼働者(在籍者のうち顧客企業の業務に就業中のエンジニア)の人件費合計を同4社の月末時点総人件費で除した値の通年平均)
(平均契約単価推移)
回次 |
第2期 |
第3期 |
第4期 |
第5期 |
第6期 |
|
決算年月 |
2018年9月 |
2019年9月 |
2020年9月 |
2021年9月 |
2022年9月 |
|
(株)ブレーンナレッジシステムズ |
(千円) |
467 |
504 |
527 |
546 |
564 |
(株)シー・エル・エス |
(千円) |
592 |
624 |
663 |
700 |
702 |
(株)セイリング |
(千円) |
- |
- |
514 |
541 |
544 |
(平均契約単価は、エンジニア一人当たり月単位の単価を指しております。なお、(株)セイリングは2019年10月にグループ化したため第4期・2020年9月期以降の数値を記載しております。)
(3)経営戦略等
当社グループは、2019年7月に設立した株式会社アセットコンサルティングフォース、および2019年10月にシステム開発後の保守運用を主とする株式会社セイリング、2021年10月にERP(エンタープライズ・リソース・プランニング、統合基幹業務システム)領域におけるシステムコンサルティング・開発を主とする株式会社ヒューマンベース、2022年4月にシステムサポートデスクの運営受託等を主とする株式会社コスモピアがグループ入りしたことにより、上流工程から最終工程まで全工程において派遣を通じたソフトウエア開発における技術の提供が可能になりました。この独自のグループ体制を活かし、幅広い業界に対する上流工程の開拓と、システム開発全行程への人材サービス提供を目標として、以下の経営戦略に取り組んでおります。
①システム開発の各工程に派遣可能なエンジニア集団の保有
子会社6社を通して当社グループ内で、コンサルティングから運用保守までシステム開発全工程に必要なエンジニアを保有しております。上流から下流まで、それぞれ各工程に対して人材派遣を通したフレキシブルなエンジニアの提供が可能となっております。現在主力とする派遣業における、エンジニアの技術力底上げを通じたより上流の工程の案件参画拡大に加え、今後は子会社の株式会社アセットコンサルティングフォースを中心に、コンサルティング業など利益率の高いシステム開発の上流工程領域の獲得拡大も目指します。
②案件参画を通じた人材の教育効果・単価向上・受注拡大の好循環
独自のグループ体制により、案件を通した人材の技術力を底上げ・それに伴う契約単価向上を目指します。案件参画と教育効果の好循環により、当社グループエンジニアの成長を促進させます。
以下a~dの好循環により、売上・利益の継続的な成長を目指します。
a 案件参画
システム開発のより上流工程から案件に参画します。
b エンジニアの効率配置/教育体制と質の同時確保
参画した案件について、全国6拠点の営業拠点を活用し、人員が必要な工程にフレキシブルにエンジニアをアサインすることが可能な体制となっております。また、経験値の低いエンジニアを、上流エンジニアと一緒により上の工程に派遣する育成体制をとっております。
また、独自の教育プログラム(=スキルアッププロジェクト。初級・中級・上級編に分かれており、スキマ時間での学習が可能であり、専任トレーナーが個々人に就くことで学習効率を向上)も保有しております。
c エンジニアのスキルアップ
bでより上流の工程に挑戦したエンジニアは、システム開発の流れを俯瞰して経験でき、自身のスキルアップにもつなげることができます。各種研修やグループオリジナルのeラーニング、研究会・勉強会によるマネジメントや最新技術を研究する機会の提供など、独自の教育プログラムも拡充しております。
d 各エンジニアの業務範囲拡大による量と質の拡大とそれによる単価向上
cを通したエンジニアのスキルアップにより、上流工程に対応可能なエンジニアが増加します。これによりエンジニアの単価が上昇するとともに、より収益性の高い案件への参画が可能となります。
③幅広い業種・案件に対応できる独立系の強みと、保守運用による継続的な収益計上
特定の業界や取引先、開発領域に依存せず、幅広い案件に対応可能な体制を構築することで、不測の経済環境の変化にも強い企業体質を醸成しております。長い業界経験に基づく実績・マーケティングによりクライアントから高い信頼を獲得することで、継続的な新規取引先の拡大にも努めております。
また、単発の開発受注だけではなく、開発後の保守運用を当社グループとして一貫で受注し、その後の改修・更新案件を継続的に獲得することで、安定収益を積み上げることを目指しております。
(4)経営環境
当社グループを取り巻く環境としては、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により一時的な受注の減少は見込まれるものの、働き方改革を契機に業務効率化を目的とした新規システムの受注が堅調であり、ソフトウエアやIaaS(*1)がIT市場の拡大を牽引し、国内企業のIT投資額は2022年には12兆4,000億円の市場規模になると予想されています(「国内企業のIT投資実態と予測2020(株式会社矢野経済研究所)」)。一方で、ITエンジニアの供給不足数は今後も増加傾向にあり、IT人材の不足人数は2030年には2020年比で約1.5倍となる見通しです(「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(2019年度版)(経済産業省)」)。新型コロナウイルス感染症の拡大によるテレワークへのシフト本格化、経済産業省によるデジタルトランスフォーメーション(*2)の推進、菅内閣によるデジタル庁新設、2025年問題もIT需要の拡大に拍車をかけており、エンジニアの教育・派遣、SES(*3)等によるIT人材サービス拡充の必要性が一層高まっております。
さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、顧客のニーズ多様化やシステム開発予算縮小に伴って案件が細分化し、大手SIerだけでは契約単価・人材確保の面から対応しきれないケースが増加しており、顧客の現場に常駐し、顧客のニーズに沿ったシステムを設計・開発するマイクロサービス(*4)の需要が高まっていると考えております。
*1. Infrastructure as a Serviceの略。インターネットを経由して、CPUやメモリなどのハードウェア、サーバーやネットワークなどのITインフラを提供するサービス。
*2. 企業がデータやデジタル技術を活用し、業務やビジネスを変革すること。業務プロセスをデジタル化するデジタイゼーションと、ビジネスモデルそのものをデジタル化するデジタライゼーションに分類される。
*3.System Engineering Service の略。顧客先に、技術的な支援を行うサービス。
*4. アプリケーション開発の手法またはアーキテクチャ。アプリケーションの構成要素を独立したサービス群へと分け、連携させる手法。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの主力事業であるシステムソリューションサービス事業は、現段階においては派遣契約に基づく技術者派遣によるサービス提供が中心でありますが、コンサルタントやエンジニアが持つ経営課題解決能力・システム開発能力を顧客企業に提供することによって成り立つ人財価値提供型のビジネスモデルです。そのため、高いスキルや生産性を持つ人財シェアを高め、かつ総量を確保することが事業拡大のために重要となります。そこで、当社グループでは人財数・技術力・人財育成力を課題とし、主に下記の取り組みを行っております。
① 業界有数の人財数:中途採用市場が活性化しており、近年は競争激化の影響で採用数が鈍化していることを踏まえ、媒体広告や宣伝等に投下する費用を増加して候補者へのアプローチを広く、深くしていくとともに、成果報酬型採用等のエージェントを活用した採用活動も積極的に行ってまいります。
② 業界有数の技術力:当社グループ全体で注力している人脈活用による新規取引先の拡大と、取引先峻別によりコンサルタントやエンジニアの付加価値提供先の選択肢が増加し、かつ参画するプロジェクトの内容の高度化が進んでおります。高度なプロジェクトにおける現場経験を積むことに伴って、当社グループに帰属するコンサルタントやエンジニアの技術力が向上し、当社グループの人財のうちコンサルタント、プロジェクトマネージャー及びプロジェクトリーダーが占める割合を向上させていくことにより、業界有数の技術力を実現できるものと考えております。
③ オリジナルの制度に基づく人財育成力:成果ではなく成果を生み出す行動を重視した人事制度の制定・改善や管理監督者を対象としたマネジメント研修の継続実施、24時間・場所を選ばずスキマ時間での学習が可能な当社グループオリジナルの階層別eラーニングカリキュラムや対話を重視した研究会・勉強会の補助等社内教育プログラムの拡充等により順調に進捗しているため、こうした取り組みを今後も継続してまいります。
また、当社グループの今後の更なる成長のために、下記の取り組みを推進してまいります。
① 「マーケティング×機動力×エンジニアスキル」を活かしたグループ体制の確立:当社グループは、自社内でコンサルティングから保守運用までシステム開発の全工程に対応可能な、独自のグループ体制を構築しています。大手SIerとともに上流工程を担当しクライアントの真のニーズに応えるマーケティング、グループ内の豊富なエンジニア人財を活用し開発実行を支援できるエンジニアスキル、これらの人財を案件に応じて迅速に揃えることができる機動力を活かし、大手SIerの案件獲得から開発実行フェーズまでフレキシブルにサポート可能な「パートナー」として、システムソリューションサービス業界におけるポジショニングの確立を目指しております。
② グループ内の全国拠点を活用した受注力・収益力向上:主力とする派遣事業以外にも、首都圏のPM/PLクラスを中心とするチームが案件を獲得し、準委任契約で担当しております。開発工程以降については請負契約にて実施し、グループ内の地方拠点のエンジニアも活用します。全国の稼働状況を見ながら適宜適切にエンジニアをアサインすることで、グループ全体の受注力・収益力の向上を目指します。
③ M&Aを活用したインオーガニック成長:システムソリューションサービス業界では、中小企業を中心に企業再編が進んでおり、買収機会が豊富にあります。当社グループはこれまで十分な検討の上、慎重に投資判断を行い、PMI(*)を早期に実現する戦略的なM&Aによる非連続の成長に取り組んでまいりました。今後もそのノウハウを活かし、グループ全体として高稼働率・高収益率を維持しつつも成長に資することが可能な企業を選別して、非連続の成長も目指してまいります。
*. Post Merger Integrationの略。M&A成立後の経営統合を実行するプロセス。
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