(1)経営成績等の状況の概要
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、度重なる新型コロナウイルスの感染症拡大と鎮静化に大きな影響を受けました。政府や中央銀行による追加政策支援や新型コロナウイルスワクチンへの期待感、巣篭り需要による一部業界の業績好調にも後押しされ、一時は日経平均株価もバブル崩壊後の高値を更新しましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大時には政府が緊急事態宣言の発出、延長や蔓延防止等重点措置の発出を行い、経済活動の制限が課されました。2021年に発生したオミクロン株により、先行き不透明な状況が続いております。
介護業界におきましては、高齢化がさらに進むことで介護サービスの需要は高まっております。2021年度は介護事業所の倒産件数は3年ぶりに減少はしたものの、サービスを担う人材の十分な確保が難しく、人材確保が介護事業者の大きな経営課題になっております。当社は「介護職員等特定処遇改善加算」を活用し、事業所の管理者を中心とした還元の強化と、職員からの紹介手当の拡充を実施し、人材確保と定着のための環境を整備することに努めてまいりました。
このような状況の下、当社グループは当連結会計年度においては、特に各拠点での新型コロナウイルス対策に注力してまいりました。また、年間4棟146室の新規開設を行い、着実な増床を図ってまいりました。
上半期は、新型コロナウイルスの影響で人員を多めに配置していたことと、新卒を計画以上の21名採用できたことから、計画以上の人件費が発生しましたが、下半期は人員配置の調整を行い、売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は予想を上回って着地しました。当連結会計年度末時点では28棟892室の運営となっており、全社稼働率は89.0%、開設後1年以上経過拠点に限っては稼働率が96.7%となっております。
以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
ⅰ.資産
当連結会計年度末における資産は、前連結会計年度末に比べ8億23百万円増加し、28億79百万円となりました。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べ8億60百万円増加し、17億92百万円となりました。これは主として、現金及び預金の増加4億62百万円、販売用不動産の増加2億73百万円、売掛金の増加98百万円、未収入金の増加30百万円があったことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は、前連結会計年度末に比べ37百万円減少し、10億86百万円となりました。これは主として、建物及び構築物(純額)を販売用不動産に振替えたこと等による減少1億40百万円に対し土地の増加27百万円、建設仮勘定の増加29百万円があったことによるものであります。
ⅱ.負債
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ1億33百万円増加し、19億51百万円となりました。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べ1億28百万円増加し、7億29百万円となりました。これは主として、工事未払金の増加15百万円、未払法人税の増加34百万円、未払費用の増加19百万円及び流動負債その他の増加44百万円があったことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は、前連結会計年度末に比べ4百万円増加し、12億22百万円となりました。これは主として、資産除去債務の増加5百万円があったことによるものであります。
ⅲ.純資産
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ6億90百万円増加し、9億27百万円となりました。これは、資本金が2億76百万円、資本剰余金が2億76百万円増加したこと、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加1億38百万円によるものであります。
b.経営成績
当連結会計年度における売上高は、34億円(前年同期比16.0%増)、営業利益は1億72百万円(同93.5%増)、経常利益は1億87百万円(同39.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1億38百万円(同34.9%増)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
ⅰ.介護事業
介護事業におきましては、当連結会計年度において、新たに4拠点を新規開設いたしました。9月に滋賀県長浜市に「アンジェス神照」を、愛知県みよし市に「アンジェスみよし」を、11月に浜松市中区に「アンジェス浜松佐鳴台」を、滋賀県大津市に「アンジェス瀬田」を新規開設しております。
その結果、当連結会計年度の売上高は28億61百万円(前年同期比4億25百万円増)、セグメント利益は1億14百万円(同11百万円減)となりました。
ⅱ.不動産事業
不動産事業におきましては、当連結会計年度において、2件の不動産売上と1棟の建築工事の進捗による売上を計上しております。
その結果、当連結会計年度の売上高は5億39百万円(前年同期比44百万円増)、セグメント利益は1億26百万円(同1億9百万円増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて4億61百万円増加し、8億65百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、4億62百万円(前年同期は1億24百万円の獲得)となりました。これは主として税金等調整前当期純利益1億87百万円、減価償却費75百万円、たな卸資産の減少額2億57百万円等の増加要因に対し、売上債権の増加額98百万円、法人税等の支払額39百万円等の減少要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、5億23百万円(前年同期は74百万円の使用)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出5億18百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果得られた資金は、5億23百万円(前年同期は56百万円の使用)となりました。これは主として、株式の発行による収入5億52百万円、長期借入による収入3億61百万円、長期借入金の返済による支出3億63百万円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループでは生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
b.受注実績
当連結会計年度の不動産事業の建築請負業務における受注実績は次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
|||
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
不動産事業 |
136,858 |
167.9 |
5,891 |
△31.9 |
合計 |
136,858 |
167.9 |
5,891 |
△31.9 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは、建築工事の受注件数の増加によるものであります。
3.上記の業務以外については、受注実績の記載になじまないため、記載をしておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
介護事業 |
2,861,428 |
17.5 |
不動産事業 |
539,529 |
9.0 |
合計 |
3,400,957 |
16.0 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
滋賀県国民健康保険団体連合会 |
399,786 |
13.6 |
419,524 |
12.3 |
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。この連結財務諸表の作成に当たりまして、経営者の判断に基づく会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りが必要であり、これらの見積りは、合理的な基準に基づいて実施しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態に関する認識及び分析・検討内容
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
当連結会計年度における売上高は34億円(前連結会計年度は29億30百万円)となりました。介護事業においては、前連結会計年度中に開設した4拠点の稼働率アップに加え、当連結会計年度においても、アンジェス神照、アンジェスみよし、アンジェス浜松佐鳴台、アンジェス瀬田の4棟を新規開設したことによるものであります。不動産事業においては、自社保有物件アンジェス彦根及びアンジェス守山のオーナーチェンジのための不動産販売を実施しております。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度における売上原価は28億1百万円(前連結会計年度は24億66百万円)となりました。これは主に、入居者数の増加に伴う労務費の増加等によるものであります。この結果、売上総利益は5億99百万円(前連結会計年度は4億64百万円)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は4億27百万円(前連結会計年度は3億75百万円)となりました。これは主に、管理部門の強化による人件費の増加、外形標準課税の適用開始による租税公課の増加等によるものであります。この結果、営業利益は1億72百万円(前連結会計年度は89百万円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は64百万円(前連結会計年度は69百万円)となりました。これは主に、一定の要件を満たすサービス付き高齢者向け住宅の建設・改修に対して交付される補助金、助成金収入の減少等によるものであります。営業外費用は49百万円(前連結会計年度は24百万円)となりました。これは主に、上場関連費用の発生19百万円及び借入金の繰上返済に伴う支払手数料7百万円の計上によるものであります。この結果、経常利益は1億87百万円(前連結会計年度は1億34百万円)となりました。
(特別利益、特別損失)
当連結会計年度において特別利益及び特別損失の計上はありませんでした。(前連結会計年度は特別利益の計上はなく、特別損失は0百万円)
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における法人税等は49百万円(前連結会計年度は32百万円)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1億38百万円(前連結会計年度は1億2百万円)となりました。
c.キャッシュ・フローに関する認識及び分析・検討内容
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照下さい。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要の主なものは、運転資金、拠点開設の際の初期費用及び設備資金であります。運転資金のうち主なものは、売上原価に計上している拠点従業員の労務費等であります。運転資金及び拠点開設の際の初期費用は自己資金で、新規拠点の土地・建物取得のための設備資金については長期借入金で調達することを基本としております。なお、当社グループは当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は8億65百万円であり十分な資金流動性を有していると判断しております。
⑤経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析
当社グループは、新規開設居室数、売上高経常利益率、訪問介護の利用単価、稼働率及び人件費率を経営成績に影響を与える重要な経営指標として捉えております。
a.新規開設居室数
当連結会計年度における新規開設居室数は146室(前連結会計年度は116室)となりました。
新規拠点を開設し運営居室数を増やすことが当社グループの業績拡大に重要であることから、新規開設居室数を重要な経営指標として捉えており、毎年5棟もしくは150室の開設を目標としております。
b.売上高経常利益率
当連結会計年度における売上高経常利益率は5.5%(前連結会計年度は4.6%)となりました。2019年12月期に新規開設した大型拠点であるアンジェス加古川の収益向上に加え、2020年12月期に新規開設した4棟の稼働率が向上したことで、4棟の新規開設費用をカバーし、不動産事業の2件の不動産販売もあり、当社グループ全体として売上高経常利益率が向上しました。
当社の事業は労働集約型であり、助成金等を活用した営業外収益が上がることや、連結子会社が賃貸物件を保有しており営業外費用として利息が発生していることを踏まえ、売上高経常利益率を重要な経営指標として捉えております。
c.訪問介護の利用単価
当連結会計年度における訪問介護の利用単価は172,247円(前連結会計年度は167,961円)となりました。2019年以降に新規開設した拠点の稼働が軌道に乗り、平均単価が若干上昇したことが主な要因であります。訪問介護の利用単価は、訪問介護の年間売上額÷年間の延べ賃貸借数で計算しております。
介護事業の売上の約52%が訪問介護収入であり、この売上額について、年度毎や拠点毎の単価の推移を見ていくことが当社グループにとって重要であると考えていることから、訪問介護の利用単価を重要な経営指標として捉えております。
d.稼働率
当連結会計年度における開設後1年経過した拠点の平均稼働率は96.7%(前連結会計年度末は97.1%)と、前年比で0.4ポイント悪化しておりますが、僅かな差であります。理念に基づき看取りまで行う介護運営を続け、入居者の紹介元に対して継続的にご挨拶回りを行っており、当社の特徴である営業活動の成果を図る上で重視しております。稼働率は、「賃貸借契約数÷総提供可能居室数」で算出しております。
稼働率が売上に直結し、利益を上げるための重要なポイントであることから、稼働率を重要な経営指標として捉えております。
e.人件費率
当連結会計年度における人件費率は67.6%(前連結会計は64.7%)と、前年比で2.9ポイント悪化しております。これは、上半期の新型コロナウイルス対応のために人員配置を手厚くしたこと、また新卒採用の注力により計画以上の21名の採用ができたことによる教育資金の増加によるものです。人件費率は、労務費÷介護収入(介護保険収入+サービス付き高齢者向け住宅事業の生活支援費売上)で算出しております。
当社の事業は労働集約型であり、効率的に人件費が売上を生んでいることが経営上重要であることから、人件費率を重要な経営指標として捉えております。
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