文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、社名を「株式会社T.S.I(Terminalcare Support Institute)」=「終末期ケアの支援機関」としております。「愛ある日々のお手伝い」を当社グループの経営理念に掲げ、経営理念の浸透、コーポレート・ガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底を図り、これらを理解し実現できる管理者の育成、当社グループの経営理念に共感できる介護スタッフの育成を通じて、より質の高い介護サービスを提供するため取り組んでおります。また、長期的なビジョンとしては、全国47都道府県に事業を展開することも視野に入れ、さらなる事業規模の拡大を目指してまいります。
当社グループは、経営理念を最も重視し、以下の経営理念及び指針のもと、介護を必要とする方々やその家族が安心・安全に生活できるよう運営を行っております。
① 経営理念
「愛ある日々のお手伝い」
私たちは、いつもお客様とその家族や友人のやすらぎと幸福を願います。
老いて、病にあっても、他の人を思いやり、関心をむけられる愛ある日々を過ごせるようにお手伝いをします。
② 指針
・ 私はお客様の幸福を願います。お客様の立場に立ち、お客様を理解しようと努力します。
・ 私はより良いケアが出来る様に学習をします。お客様から学び続ける姿勢を持ち続けます。
・ 私は多くの人々に喜ばれる仕事が出来たかどうか、日々自分の行動や言動を振り返ります。
常に心のコントロールを心がけ、愛をもって仕事をします。
・ 私はお客様の心に寄り添い、真のニーズを発見し幸福を広げていきます。
常に心と身体のバランスを意識して、お客様の幸福に繋がる介護を目指します。
(2)経営戦略等
当社グループは、介護運営会社である当社と、サービス付き高齢者向け住宅の建築を行う連結子会社(株式会社北山住宅販売)による、設計・建築から運営までの一気通貫したサービス提供によって、各地域でのドミナント展開を進めてまいりました。
また、当社は自社の営業部隊を持ち、新規拠点開設時には各地で経験を積んだ営業部隊を投入し、紹介会社等の力を借りず自社で顧客を獲得できるよう、地域との関係性づくりに注力しております。また、当社は拠点開設当初から積極的に告知活動を行い、顧客の紹介元であるケアマネージャーやソーシャルワーカーとの関係づくりに努めております。具体的には、紹介を受けた入居者の様子を定期的に報告することによって、ケアマネージャーやソーシャルワーカー等、協力者への情報共有を続けております。また、当社が運営する施設以外のサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム、介護老人保健施設などでの受け入れ困難な方についても相談を受け、可能な限り受け入れを行っております。これらの活動の結果、現在は開設後1年以上経過した拠点の平均稼働率は96.7%(第12期連結会計年度末時点)であります。
従来は、当社の信用力で当社が一括借上げを行うことに不安を感じるオーナーや、オーナー又は当社の信用力の問題でオーナーにファイナンスがつかないという事情で新規開設案件が頓挫したこともありますが、新規上場による資金調達力と信用力の向上で、開設予定候補地域で土地を買い付け、サービス付き高齢者向け住宅を建築し、事業運営することや、他の事業者に売却することが可能となっております。自社保有する「アンジェス」の売却については、当社に介護運営を残した状態で所有権を外部オーナーへと売却し、当社グループではその売却資金を使って新規に「アンジェス」を自社建築して運営棟数を増やしていくことで、財務健全性を維持しながら新規開業資金を確保しております。
2020年11月には初の神奈川県での開設をしており、今後も関東エリアの開設を進めていく方針であります。また2021年には9月に愛知県にアンジェスみよし、滋賀県にアンジェス神照を、11月に滋賀県にアンジェス瀬田、静岡県にアンジェス浜松佐鳴台を新規開設し、計4棟の新規開設となり、既存の拠点があるエリア展開の深耕が進みました。2022年は3棟87室の新規開設を予定しております。2023年以降は、毎年5棟もしくは150室の開設を目標に設定しております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、持続的な成長による企業価値の向上を目的として、業績の拡大に向けて重要な指標となる毎年の新規開設居室数、並びに収益力の向上及び経営の効率化において重要な指標となる売上高経常利益率を経営上の目標の達成状況を判断するための重要な指標と位置づけ、各経営課題の改善に取り組んでおります。新規開設居室数は、年間5棟又は150室の増床を目標としています。
また、当社グループは、サービス付き高齢者向け住宅の運営においては、各部門の適正な運営の数値化を図って指導し、経営の安定化を図っております。そのため、訪問介護の利用単価(訪問介護の年間売上額÷年間の延べ賃貸借数)、稼働率(賃貸借契約数÷総提供可能居室数)、人件費率(労務費÷介護収入(介護保険関連収入+サービス付き高齢者向け住宅における生活支援関連収入))についても経営上の重要指標と認識しております。
(4)経営環境
当社グループが所属する国内の介護業界におきましては、高齢化がさらに進み、介護サービスの需要は高まっているもののサービスを担う人材の十分な確保が難しく、2021年度は介護事業者の倒産件数が3年ぶりに減少には転じたものの、依然として人材確保が介護事業者の大きな経営課題になっております。これら介護人材の不足に対しては、国の施策として「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月19日閣議決定)に基づき「介護職員処遇改善支援補助金」の制度が新たに創設されることとなり、介護スタッフを中心として3つ目の処遇改善制度が開始されることとなりました。当社も管理者を中心に還元の強化や賞与回数4回を維持し、人材確保と定着のための環境を整備することに努めております。
65歳以上の高齢者人口は2021年時点(9月15日時点推計)で3,640万人、75歳以上の後期高齢者人口は2025年には2,180万人となる見込みですが、65歳以上の高齢者のみの単独世帯、いわゆる独居老人の世帯数は736万9千世帯、要介護者と同居している全世帯のうち、要介護者と介護者の双方が65歳以上の世帯、いわゆる老老介護世帯の割合は59.7%となっております(出典:「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」(総務省統計局)令和3年9月20日、「令和3年版高齢社会白書」(内閣府)、「2019年 国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省))。また、要介護(要支援)認定者数は、2019年には669万人となっており、介護需要はますます高まる見込みです(出典:「令和1年度 介護保険事業状況報告」(厚生労働省))。そのような中でも、2018年の施設・住宅供給数は約172万人分と現時点でも不足感がある中で、今後、さらに需給ギャップが広がった場合、多くの独居高齢者が出てくることが予見されます(出典:「介護サービス基盤と高齢者向け住まい」(厚生労働省老健局)令和元年10月28日)。
上記のような環境が予想される中、当社は、「愛ある日々のお手伝い」を経営理念とし、高齢者が終末期まで暮らせる住居と介護サービスを提供してまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①新規拠点数の確保
当社グループでは、継続的に新規拠点を開設し、運営棟数を増加させていくことが業績拡大のための課題であると認識しております。新規拠点の開設が決まれば、当社の営業部隊を投入して稼働率を高めていくことは、過去実績からも可能であると考えており、まずは新規拠点開設を行っていくことが重要であると考えております。
株式会社北山住宅販売での毎年の安定的な受注に加え、他社との提携も模索し、新規拠点の開設及び運営棟数の増加に努めてまいります。
②人材の確保と従業員育成
今後、さらなる事業規模拡大を図る上では、主任ケアマネージャー、サービス提供責任者等の責任者や、現場スタッフにおける有資格者の適時適切な採用及び配置が求められ、人材確保がますます重要な課題となってまいります。
現在、育成部門も兼ねた新規開拓部隊の創設、介護スタッフの待遇改善、資格取得の助成制度の導入や、全国転勤可能な社員の募集強化、拠点の統廃合の検討等を行っており、引き続き、全国規模での新規拠点開設を見据えた人員体制づくりに努めてまいります。
③リスク管理・コンプライアンスの徹底、スタッフ教育の強化
介護業界においては、リスク管理・コンプライアンスの徹底とスタッフ教育が最重要課題の一つであります。高齢者虐待という痛ましい事件や不祥事を絶対に起こさないために、「リスク・コンプライアンス委員会」におけるリスクの抽出や適切な対応策の検討、介護技術主任による虐待防止研修をはじめとした各種研修の実施等、リスク管理・コンプライアンスの徹底に向けた対策とスタッフ教育の強化は、引き続き実施してまいります。
④内部管理体制の強化
質の高いサービスを提供するためには社員・スタッフ1人1人の意識向上を図ること、また安定的に事業を拡大するためには内部管理体制のさらなる強化が必要不可欠であると考えております。今後も引き続き、内部通報制度の運用や、内部監査実施等によりコーポレート・ガバナンスを強化するとともに、情報セキュリティ、労務管理、事故防止をはじめとするコンプライアンスを含めた内部管理体制の強化に取り組んでまいります。
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