(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が長期化する中、政府による段階的な経済活動の再開や、全国的なワクチン接種の促進などにより経済水準が持ち直しの傾向にあるものの、世界的な新型コロナウイルスの変異株による感染症拡大やロシアによるウクライナへの軍事侵攻が開始されるなどの社会情勢不安もあり、国内外における経済の見通しは依然として不透明な状況が続いております。
当社が主にサービス提供を行っているゲーム業界においては、国内家庭用ゲームのハード市場の規模は拡大している一方で、ソフト市場は若干縮小しており、ハードは2,028.7億円で前年対比109.3%、ソフトは1,585.2億円で前年対比87.2%、ハード・ソフト合計では3,613.9億円と前年対比98.4%(出典:ファミ通ゲームソフト・ハード売上ランキング 2021年年報)となっており、合計ではほぼ前年並みの規模を維持しております。加えて、2021年の世界のモバイルゲーム市場規模は9兆1,697億円で前年比118.7%、その中でも日本の市場規模は1兆3,060億円で前年比107.8%となっております(出典:ファミ通モバイルゲーム白書2022)。これらのゲーム市場の規模拡大により、ゲーム会社各社の業績は堅調に推移しております。
このような環境の中、当社グループでは、人材事業については、主力のゲーム会社向け派遣事業において配属者数を拡大するため、新規取引先の開拓のみならず、既存取引先のさらなる深耕に取り組んだことにより、派遣事業の業績は堅調に推移しました。メディア事業については、当連結会計年度においてページビュー数に大きな変化はなく、ほぼ横ばいの結果となった一方で、ページビュー数当たりの単価は前連結会計年度と比較して下落しており、アドネットワーク事業による売上高は減少しております。アドネットワーク事業による売上高の減少を補うべく、SNSの運用代行やゲーム会社向けのプロモーション支援サービスの案件数の増加に努めております。
これらの結果、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、ゲーム会社向けの人材派遣の配属者数が増加したことから、売上高は4,425,005千円(前期比24.0%増)、営業利益745,482千円(前期比23.3%増)、経常利益737,809千円(前期比22.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益530,973千円(前期比32.9%増)となり、全ての項目において、過去最高の業績となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
<人材事業>
人材事業においては、主力のゲーム会社向け派遣事業に加え、ゲーム会社向け及びIT・Web業界向け人材紹介事業並びにゲーム会社を中心とした顧客からの受託業務を展開しております。
人材派遣事業においては、新型コロナウイルス感染症拡大が継続している中でもゲーム会社のクリエイター需要は継続しており、新規取引先の開拓に加え、既存取引先の部署別・タイトル別開拓を行うことにより、受注案件数を拡大しております。クリエイターの採用市場においては、採用媒体の選定や採用広告の出稿配分を最適化することにより、ゲーム会社からの需要に応えられるクリエイターを採用することが出来ております。その結果、配属者数は前連結会計年度末から順調に増加しており、クリエイターの稼働率は高い水準で推移しております。派遣先企業へのクリエイター配属数は以下の通りとなります。
|
2019年3月末 |
2020年3月末 |
2021年3月末 |
2022年3月末 |
クリエイター配属数 |
345名 |
494名 |
620名 |
740名 |
人材紹介事業においては、新型コロナウイルス感染症拡大による巣籠もり需要によって、ゲーム業界の人材需要は高まっており求人数は増加傾向にあります。しかしながら、我が国経済の先行きが不透明であることを懸念し、求職者の転職動向は消極的なものとなっており、また、リモートワーク中心の就業状況が続いているため、オンラインでのコミュニケーションによる就業が可能な人材を求める傾向にあり、求人企業が求める求職者に対するハードルが高まっております。これらを背景に、紹介人数の実績は伸び悩んでいる状況にあります。これらの対策として、人材派遣事業との連携による求人企業のチャネルや案件増加、求職者の募集強化及び求職者と求人のマッチング精度向上を図り、紹介人数の増加に取り組んでおります。
受託事業においては、主にゲームタイトルのデバッグ業務を受託しております。ゲームタイトルのデバッグ業務は守秘性が高いことから、2020年4月に新宿区に専用オフィスを立ち上げ業容拡大の準備を整えるとともに、営業・管理体制の強化を図りました。現在稼働中の案件は安定的に推移しており、人材派遣事業との連携を図り、新規案件のリード獲得数増加に努めております。
この結果、当セグメントの売上高は4,353,911千円(前期比24.5%増)、セグメント利益は1,166,027千円(前期比24.4%増)となりました。
<メディア事業>
メディア事業において、当社グループが運営する女性向けメディア「Lovely」は、ページビュー数は安定的に推移しているものの、前年から続く企業の広告宣伝費の縮小に伴い、ページビュー数当たりの単価が下落していることから、アドネットワーク広告による売上高が低迷しております。また、2021年3月に立ち上げを行った占いメディア「Plush」は、立ち上げ直後にも関わらずページビュー数は拡大しておりますが、規模が小さく売上への寄与度は限定的なものとなっております。現在は、SNSの運用代行やゲーム業界のチャネルを活かし、ゲームタイトルのプロモーション受託案件の増加を図り、ゲーム会社からの引き合いが増加しているため、「Lovely」の運営に加えて、プロモーション受託案件に注力することで売上拡大を図っております。
この結果、当セグメントの売上高は77,165千円(前期比6.6%増)、セグメント利益13,525千円(前期比3.1%増)となりました。
当社グループの当連結会計年度の財政状態につきましては以下のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて884,358千円増加し、2,437,559千円となりました。流動資産は、前連結会計年度末に比べて849,427千円増加し、2,268,262千円となりました。これは主に、公募増資及び営業債権回収の増加による現金及び預金の増加784,520千円及び売上高の増加に伴う売掛金の増加69,800千円によるものであります。固定資産は、前連結会計年度末に比べて34,930千円増加し、169,297千円となりました。これは主に、事務所移転に伴う差入保証金の増加40,406千円によるものであります。
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて133,667千円減少し、782,152千円となりました。流動負債は、前連結会計年度末に比べて42,635千円減少し、759,652千円となりました。これは主に、前連結会計年度において、事業拡大等により中間納付を控除した期末法人税納付額が一時的に増加したことによる未払法人税等の減少56,133千円、派遣先企業へのクリエイター配属数の増加に伴う人件費の増加による未払費用の増加33,747千円、未払消費税等の減少16,229千円によるものであります。固定負債は、前連結会計年度末に比べて91,031千円減少し、22,500千円となりました。これは主に、銀行借入の返済に伴う借入金の減少90,000千円によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて1,018,026千円増加し、1,655,407千円となりました。これは主に公募増資及び新株予約権の権利行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ239,884千円増加したものと親会社株主に帰属する当期純利益530,973千円によるものであります。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の41.0%から67.6%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて784,520千円増加し、1,724,844千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は、前連結会計年度に比べて24,729千円減少し、461,587千円となりました。主な増加要因として、税金等調整前当期純利益733,074千円(前年同期は税金等調整前当期純利益601,429千円で131,645千円増加)、主な減少要因として、法人税等の支払額267,749千円(前年同期は176,412千円で91,337千円増加)によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、前連結会計年度に比べて55,302千円増加し、64,879千円となりました。これは主な増加要因として、前連結会計年度は発生がなかった敷金及び保証金の差入による支出が47,342千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は、前連結会計年度に比べて533,811千円増加し、387,811千円の収入となりました。この主な増加要因は、株式発行による収入473,759千円及び前連結会計年度において連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出56,000千円であったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
最近2連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:千円)
セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
人材事業 |
3,496,812 |
4,347,840 |
24.3 |
メディア事業 |
72,395 |
77,165 |
6.6 |
合計 |
3,569,208 |
4,425,005 |
24.0 |
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
株式会社バンダイナムコスタジオ |
364,450 |
10.2 |
476,054 |
10.8 |
株式会社セガ |
339,494 |
9.5 |
466,104 |
10.5 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における財政状態、経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り・予測を実施しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なることがあります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えております。
繰延税金資産
当社グループでは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は各社、各納税主体で十分な課税所得を計上するか否かによって判断されるため、その評価には、実績情報とともに将来に関する情報が考慮されております。
経営者は、当該計上額が適切なものであると判断しておりますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化に伴う各社、各納税主体の経営悪化により、繰延税金資産に対する評価性引当額を追加で設定する可能性があります。
②経営成績の状況に関する分析・検討内容
(目標とする経営指標の達成状況)
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載の経営指標の達成状況は以下のとおりです。
当連結会計年度におきましては、連結及び人材事業における経営指標である売上総利益率30%の維持を達成しております。これは、主力の人材派遣事業において、採用部門が求職者を、営業部門が求人数を最大化して相互に連携することで短期間のうちにクリエイターのレベルに応じた配属先を選定し、クライアントに対する請求単価を維持することが出来る社内体制を構築したことにより、現在の収益性の高さを維持することが出来ていると評価しております。
<連結>
|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
売上高(千円) |
3,569,208 |
4,425,005 |
売上高の増加率(%) |
37.0 |
24.0 |
売上総利益(千円) |
1,236,368 |
1,528,528 |
売上総利益率(%) |
34.6 |
34.5 |
営業利益(千円) |
604,578 |
745,482 |
営業利益の増加率(%) |
80.2 |
23.3 |
営業利益率(%) |
16.9 |
16.8 |
<人材事業>
|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
売上高(千円) |
3,496,812 |
4,353,911 |
売上高の増加率(%) |
42.3 |
24.5 |
売上総利益(千円) |
1,186,059 |
1,481,882 |
売上総利益率(%) |
33.9 |
34.0 |
セグメント利益 |
937,526 |
1,166,027 |
配属社員数(人) |
620 |
740 |
稼働率(%) |
98.8 |
99.7 |
配属社員1人当たり売上高(千円) |
5,640 |
5,883 |
<メディア事業>
|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
売上高(千円) |
72,395 |
77,165 |
売上高の増減率(%) |
△51.1 |
6.6 |
売上総利益(千円) |
50,309 |
46,646 |
売上総利益率(%) |
69.5 |
60.4 |
セグメント利益 |
13,118 |
13,525 |
(売上高)
当連結会計年度における売上高は4,425,005千円(前年同期比24.0%増)となり、前連結会計年度と比べて855,797千円増加いたしました。これは、配属社員数が620人から740人に増加したことが主な要因となります。配属社員数増加の要因は、取引先社数が102社から121社に増加したこと及び1社当たりの平均配属数が5.77人から6.11人に増加したことによります。これは、新規取引先を開拓するとともに、顧客ニーズを識別し、顧客深耕を行うことで1社あたり配属数を増加させる施策の結果であります。
セグメント別の変動要因につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(売上原価・売上総利益)
当連結会計年度における売上原価は2,896,477千円(前年同期比24.2%増)となり、前連結会計年度と比べて563,637千円増加いたしました。これは、配属社員数が620人から740人に増加したことが主な要因となります。
この結果、売上総利益は292,159千円増加し、1,528,528千円(前年同期比23.6%増)となりました。
(販売費及び一般管理費・営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は783,046千円(前年同期比23.9%増)となり、前連結会計年度と比べて151,255千円増加いたしました。これは、本社スタッフの増員による給与手当の増加46,778千円、外部業者への支払手数料の増加34,689千円及び事務所移転による減価償却費、保証金償却額の見直しによる増加20,433千円等が主な要因であります。上場費用および事務移転関連費用等の増加があったものの、人材派遣事業において、従前からのオンラインゲーム市場の旺盛な人材ニーズを背景に、クリエイターの人材募集に係る採用広告費が従前と同水準を維持したことから、販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は17.7%と、前連結会計年度と同水準となっております。
この結果、営業利益は140,903千円増加し、745,482千円(前年同期比23.3%増)となりました。
(営業外損益・営業外費用・経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は14千円(前年同期は1,680千円)となり、前連結会計年度と比べて1,666千円減少いたしました。これは前連結会計年度において、助成金収入1,663千円が発生していることよるものです。
当連結会計年度における営業外費用は7,687千円(前年同期比152.8%増)となり、前連結会計年度と比べて4,647千円増加いたしました。これは主に株式交付費6,008千円によるものであります。
この結果、経常利益は134,590千円増加し、737,809千円(前年同期比22.3%増)となりました。
(特別損益・税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度における特別損失は4,734千円(前年同期は1,789千円)となり、前連結会計年度と比べて2,944
千円増加いたしました。本社移転に係る事務所移転関連費用4,734千円が生じていることによるものであります。
この結果、税金等調整前当期純利益は131,645千円増加し、733,074千円(前年同期比21.9%増)となりました。
(法人税等(法人税等調整額を含む)・親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における法人税等(法人税等調整額を含む)は202,101千円(前年同期比0.3%増)となり、前連結会計年度と比べて538千円増加いたしました。これは、主に剰余金の配当を決議したことにより留保金課税額が減少したことにより、前連結会計年度と比べて法人税、住民税及び事業税が7,886千円減少し、税務上の一時差異の増加により法人税等調整額が8,424千円減少したことによるものであります。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は131,437千円増加し、530,973千円(前年同期比32.9%増)となりました。
③財政状態の分析
財政状態の状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
④キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(3)資本の財源及び資金の流動性
①資金需要
当社グループの主な資金需要は、事業活動の維持・拡大を図っていく運転資金や法人税及び配当金の支払いであります。また、一時的な資金需要として、本社事務所の移転や営業拠点の新設等に係る設備投資資金、自社メディア運営の初期投資資金等を想定しております。
②財務政策
当社グループは、運転資金の資金調達については自己資金による充当を基本としておりますが、事業規模の変動等に伴い運転資金が必要となる場合や新規事業に係る資金需要が生じた場合には、銀行借入や新株発行により調達する方針であります。また、新型コロナウイルスの影響による足元の資金不足は発生しておらず、引き続き、運転資金は自己資金による充当を基本としております。なお、当社の成長に必要な人材採用関連投資や設備投資は引き続き行っていく予定でございますが、手元資金に余剰感があり、株主の期待収益率を上回る投資が見つからない場合には、配当や自己株式の取得により株主への還元を行っていく予定であります。
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