文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「クリエイティブの最前線で共に未来を描く」をビジョンとして、エンターテイメント業界におけるものづくりの最前線を支えるクリエイターの皆様が自らの夢を実現させ、携わった作品の価値が向上し、所属した組織および業界がさらに発展するような未来を共に描きたいと考え、その実現のためにクリエイター・取引先企業・社会を「信頼」という絆で結ぶことで当社の企業価値の向上と社会への貢献を目指しております。具体的には、クリエイターにはエンターテイメント業界での就業機会を、取引先企業にはクリエイターの労働サービスを提供し、取引先企業がより良い作品を制作することで社会への貢献を果たすという循環を作り、その循環を作り出すための適正な対価を受け取ることで、当社の企業価値の向上を図りたいと考えております。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループでは、人材事業・メディア事業の成長による安定的な収益の獲得を実現しながら、両事業のシナジーを活かした新たな価値を提供するサービス・事業を創出し、高い成長率と収益力を継続する方針でおります。具体的には、当社の主力事業となっている人材派遣事業についてゲーム業界のクライアントをより深耕するとともに、周辺のWeb・エンターテイメント領域(*1)にターゲットを拡大しようと考えております。また、人材派遣事業で既にサービスを提供している取引先企業を対象に、クロスセル営業を推進することで人材紹介事業及び受託事業を成長させ、拡大することを目指しております。加えて、フリーランス・マッチング(*2)等の新たなサービスに参入することによって、クライアントの人材ニーズに合わせたサービスの提供を行っていく予定です。
メディア事業では、メディア運営によって蓄積した検索エンジン最適化(SEO)やSNSによる集客ノウハウを利用し、クライアントのプロモーション活動を支援するサービスの提供を検討しております。さらに、人材事業とメディア事業のシナジー効果を発揮するため、メディア事業の集客ノウハウを利用して、潜在的に転職を希望する人材を集めるためのオウンドメディアを立ち上げることを検討しております。
(*1)当社は、周辺のWeb・エンターテイメント領域として、Eコマース、Web広告、映像、アニメーション、テレビ及びe-スポーツに関連する事業を対象にしております。
(*2)フリーランス・マッチングは、「案件を発注したい企業」と「案件を受注したいフリーランス」を繋ぎ合わせ、その対価として、手数料を頂くサービスのことを指しております。
(3)経営環境
人材事業においては、人材派遣業の全体の市場規模は8.6兆円(出典:2020年度厚生労働省による労働者派遣事業報告書の集計結果)まで拡大しておりますが、いわゆる働き方改革や派遣法改正による同一労働同一賃金などの影響から、派遣社員の時給は年々増加傾向にあるとともに、派遣社員への教育訓練の機会提供及びその充実化が求められることで、規制への対応を迫られております。また、新型コロナウイルスの影響により、小売業やサービス業における人材ニーズが減少しているため、人材派遣業の市場規模は短期的には縮小することが想定されます。一方、当社が主にサービスの提供を行っているゲーム業界においては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う巣籠もり需要によって、国内家庭用ゲームのハード・ソフトともに市場規模は拡大している状況にあり、ハードは2,028.7億円で前年対比109.3%増、ソフトは1,585.2億円で前年対比87.2%増(出典:ファミ通ゲームソフト・ハード売上ランキング 2021年年報)となっております。加えて、2021年の世界のモバイルゲーム市場規模は9兆1,697億円で前年対比118.7%増、その中でも日本の市場規模は1兆3,060億円となっております(出典:ファミ通モバイルゲーム白書2022)。そのため、人材派遣業の市場規模が短期的に縮小する中、当社がターゲットとしているゲーム業界向けの人材派遣業の市場は堅調に推移するものと考えております。当社では、2019年3月に経済産業省から発表された「IT人材需給に関する調査報告書」に記載されているとおり、2030年には最大79万人のIT人材の需給ギャップが生じるとされ、ゲーム業界もIT人材に対する需要があることから、中期的なトレンドとして、ゲーム業界は慢性的な人材不足となっており、人材を確保することが困難な状況が継続すると考えております。働き方も多様化してきており、「期間や時間を選べる」「好きな職種や職場を選べる」「パートやアルバイトより給料水準が高い」などの嗜好に合わせて、派遣形態を利用するメリットがあることから、ゲーム業界を含むエンターテイメント業界における人材派遣事業の需要は今後も拡大していくものと推測しております。また、人材紹介事業においては、ゲーム業界の市場拡大に伴い、成長市場で就業したいという求職者が増加すると考えております。さらに、受託事業においては、国内外のゲーム会社の競争が激化しており、クライアント企業はコアとなるゲーム開発にリソースを集中していくことから、ノンコア業務についてはアウトソースの利用が増加するものと考えております。したがって、当社がターゲットとしているゲーム業界又はその周辺領域であるエンターテイメント業界向けの労働市場は益々拡大していくものと考えております。
メディア事業においては、インターネットの普及により世の中に出回る情報量が増えている一方で、個人が読み取ることのできる情報量には限界がきていると認識しており、このような課題を解決していく可能性を秘めているものとして、ユーザーが必要とする情報を取捨選択し、ユーザーにとって最適な情報発信を行うメディアサービスがあります。インターネット広告の国内市場規模は、2021年度は巣ごもり需要など景気回復を背景としたEC市場の成長やユーザーのネット通販利用の増加などにより、広告主企業のインターネット広告へのシフトにより、2021年度のインターネット広告市場は前年度比114.5%の2兆4,370億円まで拡大する見込みであり、2024年度までに3兆円2,740億円まで拡大すると予測されています(出典:矢野経済研究所調べ)。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、主要セグメントである人材事業において、成長性と収益性を評価する指標として、売上高及びその増加率、売上総利益、売上総利益率、セグメント利益を重視しております。特に、取引先企業との契約条件と派遣社員の賃金バランスが重要であると認識していることから、売上総利益率30%の維持を経営指標の数値的な目標として掲げております。また、売上高の大半を占める派遣事業における配属社員数、稼働率及び配属社員1人当たり売上高につきましても、重要な指標として管理しております。メディア事業において、成長性と収益性を評価する指標として、売上高及びその増加率、売上総利益、売上総利益率、セグメント利益を重視しておりますが、経営指標の数値的な目標は掲げておりません。これらを踏まえ、当社グループでは、連結全体における経営指標として売上高及びその増加率、売上総利益、売上総利益率、営業利益及びその増加率、営業利益率を重視し、売上総利益率30%の維持を経営指標の数値的な目標として掲げております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループにおいて収益基盤の更なる拡大及び経営安定化を図っていくうえで対処すべき課題は以下となります。
①人材事業
a.クリエイター人材の確保
2019年3月に経済産業省から発表された「IT人材需給に関する調査報告書」に記載されているとおり、2030年には最大79万人のIT人材の需給ギャップが生じるとされ、ゲーム業界もIT人材に対する需要があることから、中期的なトレンドとして、人材の売り手市場化が進み、慢性的な人材不足の状態となっているものと認識しており、このような状況は今後も継続するものと考えております。このため、当社では人材の確保及び社員定着率の向上を図ることが重要と考えており、今後、対策として福利厚生、研修制度、社員交流制度等を充実させ、社員のキャリアパスの多様化を実現することで人材の確保に努めてまいります。
b.サービス提供先の拡大
当社グループの人材事業では、ゲーム業界の企業を主要顧客としております。2020年のオンラインゲームの国内市場規模は1兆2,566億円であり、堅調に推移しております(「JOGAオンラインゲーム市場調査レポート2021(一般社団法人日本オンラインゲーム協会)」)。本業界におけるヒットタイトルの盛衰によりゲーム業界での人材需要も大きく変動することから、特定の取引先に依存せず常に取引先を確保し続けることが必要と考えております。当社グループにおいては、ゲーム業界を中心にクライアント企業を拡大し、各クライアントの人材需要の変動に対応できる体制の構築に努めてまいります。また、ゲーム業界の周辺領域分野であるエンターテイメント業界など、クリエイティブスキルを活かせる分野への参入を図ることで、サービス提供先を拡大し、経営の安定化を図ってまいります。
c.収益確保のためのプロセス確立
当社グループにおける人材事業は、業界内の価格抑制圧力と慢性的な人材確保の困難さという側面から収益率停滞のリスクが高まっていると認識しております。その状況に対応するため当社グループにおいては、クリエイター人材の評価、育成、配置転換等のタレントマネジメント機能の強化と営業のゲーム開発プロセスの理解を通じた人材要件定義の精緻化及び交渉能力の向上により、売上総利益率30%の維持に努めてまいります。
②メディア事業
a.メディア運営の人材確保及び組織構築
当社子会社におけるメディア事業は、スマートフォンの普及による情報メディアへの検索ニーズの高まりに対して、検索時に上位に表示される記事作成ノウハウを社内に蓄積し、検索される回数の多いキーワードを選定することによって女性向けメディア「Lovely」や占いメディア「Plush」のページビュー数を安定的に獲得することで、広告収入を得ております。また、現在はSNSの運用代行やゲーム業界のチャネルを活かし、ゲームタイトルのプロモーション受託案件を提供しており、売上拡大を目指しております。しかしながら、変化の速いインターネットメディア業界において持続的成長を目指すにあたり、メディア運営やプロモーションサービスの受託を推進するマネジメント人材が不足すると考えられます。したがって、当社グループではメディア事業の運営を推進するマネジメント人材の育成・採用の強化を図ってまいります。
b.収益構造の転換及び拡大
メディア事業の収益拡大には、当社子会社が運営しているサイトにおけるページビュー数増加に加えて、ページビュー数当たりの単価増加、優良な広告主の獲得、SNSを活用した固定ユーザーの増加が必要であると認識しております。また、SNSの運営代行やゲームタイトルのプロモーション受託案件を増加させるために、既存顧客の維持に加え、新規顧客の開拓が必要となります。これらの課題を解決するために、記事の質を向上する情報収集・記事作成体制の構築、広告単価の最適化を図るとともに、SNS運用代行やプロモーション受託案件のリード獲得の増加を図ることで、メディア事業全体の収益拡大を図ってまいります。
c.検索エンジンのアルゴリズム変更への対処
グーグル検索エンジンの大型アップデートは年に2回から3回実施されており、同アップデートにより検索結果の表示順位が大きく変動する可能性があります。これらの検索結果の表示順位の変動に依存しないサイトへの流入経路を確保するとともに、作成する記事の質を向上することによって、安定的にページビュー数を確保する必要があります。また、アップデートにより影響を受けて一時的にページビュー数が減少した場合においても、早期に既存の記事をリライトし、アップデートの内容に沿った記事に変更できるよう情報収集体制及び記事作成体制の構築を進めてまいります。
③グループ共通
a.内部管理体制の強化
当社グループが急速な事業環境の変化に適応しながら持続的な成長を維持していくためには、各種業務の標準化と効率化を図ることが重要と認識しております。そのためには、全従業員が業務フロー・マニュアル・規程を遵守することを一層徹底させると共に内部管理体制の強化を図って参ります。
e.新型コロナウイルスへの対応
当社グループにおける人材事業は、派遣先の多くをゲーム会社が占めているため、コロナ禍においても在宅勤務によって継続して業務を行うことが出来ることから、当社の派遣社員は就業先で業務を遂行できる状態であり、派遣契約が終了するという状況には陥っておりません。しかしながら、在宅勤務ではゲーム業界の未経験者とコミュニケーションを取りながら業務を進めていくことが難しいことから、ゲーム会社各社の人材の採用基準は厳しくなっており、新たにクリエイターを配属することが以前よりも難しい状況となっております。そのため、ゲーム業界経験者の採用を強化することで、クライアントとクリエイター人材のマッチング精度を上げ、継続してクリエイターを配属できるように努めてまいります。
また、メディア事業においては、当社が運営するサイト「Lovely」を通じたアドネットワーク広告によって収益を得ており、新型コロナウイルスの影響により実体経済が冷え込んだ結果、広告市場が縮小する可能性があります。その結果、アドネットワーク広告における収入が減少する可能性があるため、同広告収入に依存しないようアフィリエイト収入の獲得、SNS運用代行及びプロモーション受託案件によって収益の多角化を目指してまいります。
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