文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針及び経営戦略
当社グループは、「革新と創造」という経営理念のもとで、「顧客満足度の追求」を徹底することにより業容を拡大し、併せて業務の効率化を推進することによって収益力の強化・企業価値の増大を図ることを経営の基本方針としております。
「顧客満足度の追求」につきましては、より多様化するユーザーニーズにきめ細かく対応するために、魅力ある幅広い品揃え、カタログやインターネット等による様々な情報の提供に加え、商品のクイックデリバリーやサポートサービス等、お客様の利便性向上が重要であると考えております。
<目標とする経営指標及び中長期的な会社の経営戦略>
中期経営計画「PROJECT ONE」の推進
当社グループは、2020年度よりスタートした5年間の中期経営計画「PROJECT ONE」を2022年度より残り3年を「PROJECT ONE ver.2.0」としてバージョンアップさせることとしました。この「PROJECT ONE ver.2.0」を基本方針とし、2024年度の達成すべき目標に向け活動していくとともに、その先の将来に向けても成長を継続することができるよう経営基盤の構築に邁進してまいります。
[中期経営計画 -Opportunity of Next Evolution-「PROJECT ONE ver.2.0」(2022年度~2024年度)]
① 経営ビジョン
「アズワンは、「科学」・「医療」を中心とした専門分野を主な事業領域とし、顧客が必要とする商品・サービス・情報を提供することで、社会に貢献する企業を目指します」
② 重点戦略
ⅰ.事業成長の加速化
ⅱ.経営基盤の構築
ⅲ.事業育成
ⅳ.資本の有効活用
③ 目標とする経営指標
2024年度において、連結売上高1,066億円、連結営業利益率11.7%、ROE(株主資本利益率)11.6%を実現することを目標としております。
(2) 経営環境
当社を取り巻く環境としては、以下のような変化が見られます。
ユーザーサイドの発注管理の効率化やコンプライアンスの観点から取引の電子化を求めるニーズが高まってきております。また、電子購買に移行するにあたっても、専門的でかつワンストップで購買ができる品揃えの豊富さやスピーディーに納品できる高度な物流機能が重視されております。さらに、研究開発或いは製造プロセスにおいて機器類の品質を担保するニーズが高まっており、点検・校正などのアフターメンテナンスサービスを求められるケースが増えてきております。一方、利用する様々な機器メーカー毎に、個々に点検や校正を依頼する煩雑さから、管理を一括化したいというニーズが生じております。
海外においては、日本の2~3倍の研究開発費を使う米国や中国、或いはそれに追随する欧州などの広大な研究開発市場があります。また、国内ユーザー企業のグローバル化は伸展し、工場進出先の中国から東南アジアへのシフトや、欧米企業とのアライアンスなど多方面への拡大が見られます。一方、経済安全保障等から保護主義的な経済のブロック化への動きや、新型コロナウイルスによるパンデミック発生により、グローバルなサプライチェーンの寸断を経験し、国内回帰の機運も高まっております。
医療業界においては、中長期的に医療費抑制という国を挙げての方向性があり病院の経営環境は引き続き厳しく、病院数、病床数は減少傾向にある一方、クリニックや介護施設は増加傾向にあります。一方、コロナ禍においては病床・医療器材・医療者の不足から医療崩壊の瀬戸際までの経験を経て、サプライチェーンの信頼性が重要度を増しました。今後の新型コロナウイルス感染症の動向は、収束の方向に進むのか、引き続き流行の波が繰り返されるのか、弱毒化していくのか予断を許しません。
社会構造の変化として、人口の高齢化に伴い労働力人口は減少に転じております。また、労働の質という面からは働き方改革という言葉に象徴される効率的な働き方が推奨されております。こうした変化は、例えば物流業界で、人材確保難や労働環境の改善等から配送費等の上昇という形で表出しております。当社グループにおいても、運賃や倉庫作業料の上昇という形で少なからず影響を受けております。
また、シェアリングエコノミーという言葉に代表される、所有から利用へという流れも、研究プロセスにおいて実験機器の所有にこだわるより、機器の利用或いは委託によりアウトプットのみを求めるという形で当業界においても変化していくことが予想されます。
さらに、Society5.0時代のAI(人工知能)やIoT、ロボットなどの新しいテクノロジーは、人の介在を減らし社会に大きなパラダイムシフトをもたらすものと期待されていますが、遠隔操作や非接触を旨とする新型コロナウイルス感染拡大への対応や気候変動や労働環境を含めたサステナビリティの観点からも、ますますこの変化を加速させております。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、「科学」・「医療」を中心とした専門分野を主な事業領域としており、研究の成果や医療の提供が持続可能な社会の創造につながると考えております。そのために、当社のプラットフォームを通じて人・モノ・情報・サービスを効率的に繋ぎ、研究者や医療者が様々な課題を乗り越え、目指すアウトプットにより早く到達できるようアシストすることで、社会に貢献してまいります。
ⅰ.事業成長の加速化
販売店チャネルの強化
当社は、研究や医療などの専門的な領域において、膨大な数のサプライヤー様から商品調達を行い、それらを掲載した紙カタログを販売店様の営業ツールとして提供してきました。また、在庫や配送といった物流機能を担い、安定供給や効率的な流通網の構築に貢献してまいりました。
昨今ではWEBサイトを通じた情報収集が当たり前になっていることから、当社においても、紙カタログには収容できない630万点を超える多数の商品をWEBサイトで検索・閲覧できるようにしております。これらカタログ非掲載品の売上は年々増加しており、幅広い品揃えがユーザー様に認知・評価され、購買に繋がっているものと考えております。このサイクルをさらに加速するのが、2019年にユーザー様と販売店様を結ぶECプラットフォームとして開設した「Wave」です。
販売店様は「Wave」 を導入することで、当社の幅広い品揃えや在庫情報と直結し、販売店様の独自商材も販売可能な実質的な自社ECサイトを簡単に手にすることが可能です。一方でユーザー様は、商品検索や発注を「Wave」 でワンストップで行うことができ、利便性が高まります。 「Wave」を通じて販売店チャネルの強化を図り、国内最大級の商品情報をユーザー様に直接お届けすることで売上の拡大に繋げてまいります。
集中購買事業の強化
大企業を中心にご利用いただいている集中購買「ocean」はユーザー企業の中でアナログ的に分散購買されていた間接資材をECで一括購買する仕組みです。研究用機器・消耗品において国内最大級の品揃えと在庫の確実性を強みに、現在249社にご利用いただいております。研究機材の集中購買に取り組めている大手ユーザーはまだほんの一部であり、顧客層の拡大を図ってまいります。
また、接続によりユーザー様との接点を持つことで、ユーザー様のご要望やお困りごとの相談をいただく機会が増えました。 「ocean」を応用した在庫管理や大学における無人店舗なども行っており、今後も様々なソリューションをデザインし、既存のお客様への深耕も図ってまいります。
ⅱ.経営基盤の構築
サプライチェーンの強化
当社は、卸売業としてグローバルに約4,000社のサプライヤー様とのお取引があり、このサプライチェーンは当社の強みの源泉でもあります。業界のデータベースとして推進しているSHARE-DBには現在630万点の仕様・画像・取扱説明書・荷姿情報等を取り揃えております。年々増える品揃えは、着実に当社の売上拡大に貢献しており、今後も効率的に拡充しつつ、情報の鮮度を維持していく必要があります。
新年度においては、サプライチェーン統括本部を設置し、マーケティング、在庫管理、商品データベース管理、物流企画等サプライヤー様との接点となる部門を一本化しました。当初の中期経営計画の目標は2025年3月期に700万点でありましたが、今般目標を1,000万点に引き上げました。組織的統一的に対応を進め、スピードアップと内容の充実を図ってまいります。
物流戦略
また、サプライチェーン統括本部にはデータ分析を行う機能を集約しております。強化すべき商品群や、在庫最適化をさらに進め機会ロスの削減に努めてまいります。
そして、機会ロスを回避するためには売れる商品の在庫スペースの拡大や入出荷能力の拡大が必要になってまいります。2年前に売上高の拡大に備えて千葉市にSmart DCを開設し、当時から5年程度の入出荷は賄える計画でありました。しかしながら、売上高は当初の中期経営計画を1年程度前倒しで推移しており、今後の継続的な成長を見据えて物流能力拡充の早期化も視野に入れる必要が生じてまいりました。
責任ある流通のハブとして、業容の拡大や入出荷量拡大の状況を見ながら、より安全で効率的な物流を目指して能力拡充の準備を進めてまいりたいと存じます。
ⅲ.事業育成
海外事業の強化
海外事業については、2年以上にわたってコロナ禍が世界を覆い、渡航制限やロックダウンなどにより日本国内以上に制約の多い環境が続いております。こうした中でも、中国現地法人においての在庫を持つ優位性やリモート技術の活用、そして取扱商品点数195万点の多言語サイト「AXEL_GLOBAL」等の活用で成長してきました。
今後について、中国においては、先行する日本での取扱いアイテムを中国サイトであるasonlineへの中国語での展開を進め、同時に現地オリジナル商品の開発を強化し、現地ECプレイヤーや企業集中購買への連携を強化してまいります。
海外への輸出についても、海外市場向け商品の開発を促進し、現地で当社商品を在庫する現地パートナーの育成、ECプレイヤーとの協業等により、売上の拡大を図ってまいります。
提供価値の向上
新年度より、お客様にアズワンを通じてモノやサービスをご利用された際にどう感じていただくか、会社の提供価値をどう体験していただくかをデザインする部署としてUX(User eXperience)デザイン部を設置しました。AXELをはじめとしたWEBショップや、研究者のための情報サイト「Lab BRAINS」等においてもお客様との接点が増えており、より支持される提供価値を創出してまいります。
長期的な取り組み
当社は、大阪中之島に再生医療をはじめとした未来医療の国際拠点を推進する一般財団法人未来医療推進機構の設立に参画しており、2024年に開設予定の医療機関と企業、スタートアップ、支援機関等が一つ屋根の下に集積する未来医療国際拠点に入居する予定です。ここでは、再生医療向けに高度な品質管理に則った資材調達が必要であり、当社の強みを活かして特徴あるソリューションを提供していきたいと考えております。
ⅳ.資本の有効活用
保有資産の効率化
当社グループは自社在庫に加えて、サプライヤー様在庫の見える化を推進しております。このようにキャッシュコントロールしながらお客様満足度の追求を推進しております。また、当連結会計年度で遊休不動産の売却を行いましたように、今後も継続して保有資産の効率化を進め、資産効率の向上を目指してまいります。
収益性の向上
当社グループは、卸でありながら10%以上の営業利益率を確保してきており、高い収益性を維持しつつ売上を拡大させていく「成長と収益のバランス」を重視しております。今後も成長への投資を続けながらも高い収益の確保・拡大に努めてまいります。具体的には、データドリブンを活用した機動的で最適なプライシング、最適ロット調達、調達送料などを加味した原価の最適化にも取り組んでまいります。加えて、オリジナル商品の収益性の向上、付加価値の高い自社サービス事業の拡大等により粗利率の向上を目指してまいります。
また、DX推進部による社内オペレーションのデジタル化の強化、運営効率の高いeコマースの拡大、物流オペレーションの効率化などにより、間接コストの低減にも努めてまいります。
これらにより、高い水準を維持しつつ、中長期的な収益性の向上を目指してまいります。
企業価値の向上
当社グループは、資本効率を意識して資金配分・株主還元を検討し、効率的かつ積極的な成長投資を行い、一株当たりの利益を高めてまいります。また、資本コストを意識し、ROE(株主資本利益率)を高めることで、株主価値の向上に努めてまいります。
また当社は、社会への貢献度が高く当社に関わった方々がその大切な人に薦めたくなるような働き甲斐のある「良い会社」になることを目指して事業運営を行っております。こうした、ESGに関わる非財務情報もさらに開示を充実させ、ご評価いただけるよう努めてまいります。
コロナ禍や世界情勢の目まぐるしい変化により、今後の見通しが難しい今日でありますが、「革新と創造」という企業理念のもと、変化をチャンスと捉えて新しいことにチャレンジし、新しい仕組みを作り出すことにより、社会に価値を提供し続ける会社として発展させてまいります。
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