業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、当社グループは、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号  2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。これに伴い、当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度と比較して大きく減少しております。そのため、以下の経営成績に関する説明は、売上高については増減額を記載しておりません。収益認識会計基準等の適用の詳細については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表に関する注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.経営成績の概要

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出により経済・社会活動が制限される状況となりました。感染者数の減少した時期においては経済・社会活動の制限が緩和され、消費が回復に向かう動きもありました。しかし、変異株の出現等により感染者が増加に転じると、再び消費は減退しました。また第4四半期(1月~3月)においては、ウクライナ情勢の緊迫化に伴い原材料価格が高騰するなど、先行きは不透明な状況にあります。

当水産流通業界におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響が一時的に改善された時期もありましたが、外食関係の消費はコロナ禍以前には回復しておらず、また量販店を中心とした小売業も前期のような力強さを欠く状況となりました。天然水産資源の減少、物流コストの増大に加え、諸外国での個人消費の回復及び日米の金利差による円安の加速等もあり、魚価は高値圏が続き、大変厳しい経営環境となりました。

このような状況のもと、当社グループでは、安全・安心な水産物を安定供給するという社会的使命を果たすべく、産地出荷者とのネットワークの強化や海外との取引強化等に努めてまいりましたが、当連結会計年度の経営成績は、売上高は887億88百万円となりました。損益面では、営業損失は1億90百万円(前期は81百万円)、経常損失は1億19百万円(前期は経常利益46百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は18百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益6億53百万円)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用前の基準による当連結会計年度の売上高は1,140億36百万円で、前期比0.2%減となっております。

セグメントの経営成績は次のとおりであります。

(水産物販売事業)

水産物販売事業は、新型コロナウイルス感染症の影響により、巣ごもり需要などによる量販店を中心とする内食関係は底堅い需要があったものの、外食関係の需要が落ち込み、高価格帯商品が販売不振となりました。また、サバ、サンマ、イカ等大衆魚は漁獲量の低迷により、ブリ、タイ等養殖魚は在池量の減少により魚価が上昇しました。輸入魚も円安や海外加工場の稼働低下、海上運賃の高騰等により、主要魚種である鮭鱒、カニ、タコ、スリミ等の魚価は引き続き高値圏で推移しております。このような厳しい状況下、多様化する需要に応えるべく積極的な集荷、販売と粗利率の改善に取り組みましたが、売上高は886億円となり、セグメント損失は57百万円(前期はセグメント利益86百万円)となりました。

なお、収益認識会計基準等の適用前の基準による売上高は1,138億48百万円で、前期比0.2%減となっております。

(冷蔵倉庫等事業)

冷蔵倉庫等事業は、売上高は2億35百万円(前期比1.2%減)となりましたが、利益面では売上原価及び販売費及び一般管理費が減少したことにより、セグメント利益は4百万円(前期比30.9%増)となりました。

なお、収益認識会計基準等を適用したことによる売上高への影響はありません。

 

b.財政状態の概要

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は157億15百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億55百万円増加しました。これは主に商品及び製品が25億円増加した一方で、現金及び預金が12億92百万円減少したこと等によるものであります。なお、商品及び製品の増加の主な要因は、輸入品の販売の強化と仕入価格の高騰に備えた在庫の積み増しであります。固定資産は53億55百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億49百万円減少しました。これは主に投資有価証券が1億73百万円減少したこと等によるものであります。

 この結果、総資産は210億70百万円となり、前連結会計年度末に比べ9億5百万円増加しました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は97億47百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億18百万円増加しました。これは主に支払手形及び買掛金が7億53百万円増加した一方で、1年内償還予定の社債が5億円減少したこと等によるものであります。固定負債は37億69百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億7百万円増加しました。これは主に社債が6億円増加したこと等によるものであります。

 この結果、負債合計は135億16百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億25百万円増加しました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は75億54百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億19百万円減少しました。これは主に剰余金の配当等により利益剰余金が84百万円、その他有価証券評価差額金が85百万円減少したこと等によるものであります。

 この結果、自己資本比率は35.9%(前連結会計年度末は38.1%)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、20億83百万円(前連結会計年度末比12億92百万円減)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果支出した資金は20億円(前連結会計年度は2億85百万円の収入)となりました。これは主に棚卸資産が25億円、仕入債務が8億33百万円増加したこと等によるものであります。なお、棚卸資産の増加の主な要因は、輸入品の販売の強化と仕入価格の高騰に備えた在庫の積み増しであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果得られた資金は2億80百万円(前連結会計年度は3億38百万円の収入)となりました。これは主に投資有価証券の売却により2億40百万円獲得したこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は4億28百万円(前連結会計年度は1億94百万円の支出)となりました。これは主に短期借入金により3億円調達したこと等によるものであります。

 

また、キャッシュ・フローの指標のトレンドは以下のとおりであります。

(キャッシュ・フローの指標)

 

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

自己資本比率(%)

31.4

32.1

34.2

38.1

35.9

時価ベースの自己資本比率(%)

17.5

15.0

14.4

16.3

15.4

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

5.8

2.3

9.4

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

21.2

50.3

14.9

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

※各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

※営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

※2020年3月期及び2022年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオについては、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。

③仕入及び販売の実績

a.商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

水産物販売事業(百万円)

83,869

79.4

冷蔵倉庫等事業(百万円)

合計(百万円)

83,869

79.4

(注)当社グループは、収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しております。これに伴い、当連結会計年度における商品仕入実績は、前連結会計年度と比較して大きく減少しております。

 

b.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

水産物販売事業(百万円)

88,600

77.7

冷蔵倉庫等事業(百万円)

235

98.8

合計(百万円)

88,835

77.7

(注)1.当社グループは、収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用しております。これに伴い、当連結会計年度における販売実績は、前連結会計年度と比較して大きく減少しております。

2.セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する記述は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(経営成績)

当連結会計年度の経営成績は、売上高については887億88百万円となりました。当連結会計年度から収益認識会計基準等を適用していることから前期比較ができず、同基準等の適用前の基準による当連結会計年度の売上高は1,140億36百万円となり前期比0.2%減となっております。当連結会計年度におきましても、前期と同じく新型コロナウイルス感染症の影響による経済・社会活動の停滞で個人消費や企業収益が落ち込みました。特に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出された期間はその状況が顕著となり、外出・移動の自粛要請、飲食店への時短営業や休業要請により、飲食店・ホテル・旅館等の業務筋の需要が低迷しました。そのため、当社グループでは高価格帯の生鮮水産品を中心に販売が苦戦いたしました。

業務筋での消費が低迷する一方、前期に引き続き巣ごもり需要などにより消費者の家庭内での飲食は堅調に推移しましたが、前期の好調を上回るほどではなく、業務筋への販売減少分を取り戻すには至らず、売上はほぼ前期並みにとどまりました。

利益面では営業損失1億90百万円(前期は81百万円の営業損失)、経常損失1億19百万円(前期は46百万円の経常利益)となりました。前期は大口債権の回収懸念に対する個別引当およびそれに伴う貸倒実績率の上昇による引当金の増加2億29百万円を販売費及び一般管理費に計上した影響によるものでありましたが、当連結会計年度は売上総利益率が前期5.95%に対して当連結会計年度は5.68%(但し、収益認識会計基準等適用前の基準による)と約0.3ポイント低下したことによります。これは、鮮魚部門においては、サバ、サンマ、イカなどの大衆魚の漁獲量が低迷したことに加え、コロナ禍による外食需要の低迷で高級魚の販売が伸びなかったこと、また、タイ、ブリなどの養殖魚が在池量の減少により魚価が上昇したこと、塩冷部門においては輸入魚が円安や海外加工場の稼働低下、海上運賃の高騰等により、主要魚種である鮭鱒、カニ、タコ、スリミ等の魚価は引き続き高値圏で推移したこと、加えて、海上運賃の上昇による影響で輸入コストが上昇したことが挙げられます。営業利益を確保すべく固定費の削減に取り組んだものの、輸出取引における海上運賃の上昇の影響も大きく、売上総利益の減少をカバーするには至りませんでした。経常損失については、貸倒引当金繰入額を56百万円計上したことによります。前期の大口債権の貸倒引当金計上を踏まえて、当連結会計年度は債権回収リスクの低減に向けた取り組みに努めてまいりましたが、ウクライナ情勢の緊迫化の影響を受け、海外債権の回収懸念に対する個別引当75百万円(連結損益計算書上は戻入益と相殺)を計上いたしました。

特別損益には、政策保有株式(過年度に政策保有株式から純投資へ振替済の銘柄を含む)等の売却益を計上したことにより税金等調整前当期純利益は確保できたものの、法人税等を計上したことにより親会社株主に帰属する当期純損失を計上することになりました。

当社グループでは、成長性と収益性を確保するという観点から、企業収益の基本的な指標となる「売上高(収益認識基準適用前の基準による)」及び「経常利益」を収益性判断の重要な指標として位置づけております。当連結会計年度を最終年度とする3カ年中期経営計画(数値目標(連結ベース)は、収益認識会計基準等適用前の基準による売上高1,350億円、経常利益7億円)を達成すべく取り組んでまいりましたが、前期(同計画2期目)からの新型コロナウイルス感染症拡大により経済・社会活動が停滞し、経営成績は大きく影響を受けました。感染の収束に向けては回復の兆しは見えつつあるものの予測不可能な状況です。しかし、当社グループの営業拠点である卸売市場が、いかなる環境下でも食の安定供給を果たすべく食品流通の中核を担うという使命は変わりません。マーケットの変化に対応しつつ、当社グループは水産物の安定した調達と供給の使命を果たしていきたいと考えます。また、前期の反省として環境の変化に対応した利益率の確保にも努め、安定した利益確保を図ってまいります。そのような方針のもと2023年3月期は、連結ベースで売上高908億円、経常利益3億30百万円を業績予想(2022年5月10日付「2022年3月期決算短信」にて開示)といたしました。厳しい環境が続きますが、数値目標達成に向け取り組んでまいります。

(財政状態)

当連結会計年度末の財政状態は、資産合計が210億70百万円(前期比9億5百万円増)、負債合計については、135億16百万円(前期比10億25百万円増)となりました。資産合計が増加した要因は「商品及び製品」が25億円増加したことによります。これは輸入品の販売の強化と仕入価格の高騰に備えた在庫の積み増しであります。これにより「現金及び預金」が12億92百万円減少し、負債では有利子負債(短期、長期借入金および社債)が5億円増加しております。

 

(セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討の内容)

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討については、当社グループの報告セグメントにおける水産物販売事業の比率が極めて高いため、上記の事業全体に係る記載内容と概ね同一と考えられます。よって、セグメントごとの記載を省略しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フロー)

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは20億円の支出(前期は2億85百万円の収入)となりました。当連結会計年度は来期の販売戦略に基づき、在庫を確保しております。よって一時的に営業キャッシュ・フローは大幅に悪化しておりますが、来期以降は安定した営業活動によるキャッシュ・フローの回復を見込んでおります。

また、財務活動によるキャッシュ・フローの収入は主に借入金等の増加によるものであり、在庫調達の資金の確保によるものであります。

(資本の財源及び資金の流動性)

当連結会計年度末の資金調達の総額は32億円(前期比5億円増)となりました。前連結会計年度末には流動負債であった社債5億円は償還となり、新たに6億円の社債を発行いたしました。現時点での償還に係る資金手当てについては未定であります。

資金調達の増加額5億円の内、2億円は長期資金で調達いたしました。資金調達の総額に占める流動・固定の比率は資産のバランスに見合った長期資金を調達する方針としております。

2023年3月期の資金支出については、重要な資本的支出は見込んでおりません。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されており、重要な会計方針につきましては、≪第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項≫ に記載しているとおりであります。この連結財務諸表の作成にあたっては、会計基準の範囲内で一定の見積りがなされ、引当金の計上等の数値に反映されております。これらの見積りについては、必要に応じて見直しを行っておりますが、不確実性があるため、実際の結果が見積りと異なる場合があります。

なお、当連結会計年度の固定資産の減損の要否における割引前将来キャッシュ・フローの見積り、及び繰延税金資産の計上(連結貸借対照表上では繰延税金負債に含む)における将来の課税所得の見積りにつきましては、≪第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項≫ に記載しているとおりであります。

ただし、その前提については経済・社会活動の回復ペースなど不確実性が高い内容を含んでおり、実際の結果が見積りと異なる場合があります。

 

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