(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
イ.経営成績
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響から脱け出すことができず、景気の回復は緩慢なものとなりました。企業物価の上昇が企業業績に重い負担となり、消費者物価の上昇が消費マインドの悪化を招きかねません。また、世界的な金利上昇による経済の減速が輸出に悪影響を与えております。このような中、ウクライナ情勢の緊迫化・長期化による資源価格高騰や金融市場の動揺、オミクロン株の感染拡大懸念といった下振れ要因が景気の先行きに関する不透明感を濃くしております。
水産業界におきましては、地球的規模で地上からの供給に代わるタンパク質の供給源として、また、国内外において拡がる健康志向などから、養殖業を含む水産業、また、水産物に対する注目度は高まっております。しかしながら、海外で高まる水産物需要・わが国では地球温暖化が原因とも言われる不漁による魚価高騰、原油価格上昇に起因する諸コスト増大、更に、ウクライナ情勢の緊迫化・長期化により強まるロシア産海産物に関する供給懸念など、当社を取り巻く経営環境は厳しさを増しております。
このような経営環境の中、当社グループにおきましては、新たに策定した中期経営計画(2021-2023年度)の下、チャレンジ(SDGsへの取り組み、日本の食文化の世界への普及など)、仕入・販売、人材、財務といった各事業分野における基本戦略に取り組んでまいりました。新型コロナウイルス感染症拡大への対応については、引き続き、店舗において運営の一層の効率化、本社におけるリモートワークの一部導入などの取り組みを行い、感染症拡大の防止に十分配慮しながら営業の継続・強化に努力してまいりました。
このような中、通期の既存店売上高が第4四半期における感染「第6波」の影響などのため巣ごもり需要が大きかった前年を下回ったものの、新型コロナウイルス感染症の影響が無かった前々年並みとなるなど、当社業績は日常生活に不可欠な食料品を取り扱っていることなどから底堅く推移しております。
この間、小売事業で5店舗、飲食事業で1店舗を出店し、当連結会計年度末の営業店舗数は96店舗となりました。
この結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は341億27百万円(前年同期比6.4%増)、営業利益は14億52百万円(前年同期比6.2%増)、経常利益は20億56百万円(前年同期比23.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は10億9百万円(前年同期比9.7%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用により、売上高は1億64百万円減少し、営業利益、経常利益はそれぞれ8百万円減少しております。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
<小売事業>
小売事業では、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける中、店舗ごとの新たな繁閑状況に応じた人員配置の下で運営の一層の効率化、コスト削減に取り組みながら、旬を重視し活気ある売り場をつくることに努力いたしました。また、仕入・物流コストの増加に対応しつつ、「旬の生」商品の割合を高め品質で差別化することをめざし、よりよい商品をより安く仕入れることに努力いたしました。
新店は、2021年5月に京王線府中駅に隣接する「MitteN府中」内に「府中店」(東京都府中市)、埼玉県川口市内県道332号線に沿った「イオンモール川口」内に「川口店」(埼玉県川口市)、7月に渋谷駅に隣接する「渋谷東急フードショー」内に「かげん渋谷店」(東京都渋谷区)、12月にJR各線品川駅構内の商業施設「エキュート品川」に「魚力海鮮寿司品川店」(東京都港区)、各線船橋駅に隣接する「東武百貨店船橋店」内に「船橋店」(千葉県船橋市)を開店しております。
この結果、売上高は296億49百万円(前年同期比3.5%増)、営業利益は17億38百万円(前年同期比0.8%増)となりました。
<飲食事業>
飲食事業では、2021年3月期において3億円を超える営業損失を計上したことから、各店について店舗運営を担当する店舗管理者とメニュー・調理を担当するシェフとの役割分担を明確化するなど店舗オペレーションの見直しや物流の合理化を含む構造改革に着手しております。このような中、売上高は前年に比べ増加しているものの、居酒屋業態を中心に飲食店を敬遠する消費者動向などのため効率的なオペレーションが可能となる水準まで回復しておらず、利益面では厳しい状況が続いています。
新店は、アフターコロナを見据え競争力のある立地、条件を得られる物件に出店する方針から、2021年5月に小売店と同じ「イオンモール川口」内に「魚力食堂川口店」(埼玉県川口市)を開店しております。
この結果、売上高は8億44百万円(前年同期比56.1%増)、営業損失は2億60百万円(前年同期は営業損失3億19百万円)となりました。
<卸売事業>
卸売事業では、子会社の魚力商事株式会社が、新型コロナウイルス感染症の影響から脱しつつある米国への輸出、また、スーパーマーケット、地方荷受、株式会社最上鮮魚(持分法適用関連会社)など国内向けの売上を伸ばしております。
この結果、グループ全体の卸売事業の売上高は35億68百万円(前年同期比26.2%増)、営業利益は1億1百万円(前年同期比11.7%減)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は1億64百万円減少し、営業利益は8百万円減少しております。
ロ.財政状態
当連結会計年度末の当社グループの財政状態は次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は104億63百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億87百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が8億97百万円増加したことによるものであります。固定資産は90億43百万円となり、前連結会計年度末に比べ5億47百万円減少いたしました。これは主に有形固定資産が4億71百万円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は、195億6百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億39百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は30億31百万円となり、前連結会計年度末に比べ91百万円減少いたしました。これは主に支払手形及び買掛金が1億71百万円減少したことによるものであります。固定負債は2億94百万円となり、前連結会計年度末に比べ44百万円増加いたしました。これは主に資産除去債務が41百万円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は、33億26百万円となり、前連結会計年度末に比べ46百万円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は161億80百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億85百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が3億39百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は82.9%(前連結会計年度末は82.3%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ9億1百万円増加(前年同期比14.7%増)し、当連結会計年度末には70億22百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、17億59百万円の収入(前年同期は9億21百万円の収入)となりました。主なプラス要因は、税金等調整前当期純利益15億19百万円であり、主なマイナス要因は、法人税等の支払額5億55百万円であります。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、2億1百万円の支出(前年同期は1億60百万円の収入)となりました。主なプラス要因は、投資有価証券の償還による収入17億円、投資有価証券の売却による収入15億43百万円であり、主なマイナス要因は、投資有価証券の取得による支出29億15百万円であります。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、6億69百万円の支出(前年同期は5億7百万円の支出)となりました。主なマイナス要因は、配当金の支払額6億69百万円であります。
③仕入及び販売の実績
イ.商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
小売事業(千円) |
17,033,724 |
103.3 |
飲食事業(千円) |
294,847 |
153.3 |
卸売事業(千円) |
3,636,681 |
135.7 |
報告セグメント計(千円) |
20,965,252 |
108.2 |
その他(千円) |
- |
- |
合計(千円) |
20,965,252 |
108.2 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
ロ.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
小売事業(千円) |
29,649,305 |
103.5 |
飲食事業(千円) |
844,288 |
156.1 |
卸売事業(千円) |
3,568,344 |
126.2 |
報告セグメント計(千円) |
34,061,938 |
106.4 |
その他(千円) |
65,668 |
98.0 |
合計(千円) |
34,127,606 |
106.4 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
イ.経営成績
当社グループの当連結会計年度の売上高は、当社における新規出店を含む増収、卸売事業を手掛ける魚力商事㈱における大幅増収により、前年度実績を上回りました。売上総利益率は、当社において前年度実績を上回る一方、魚力商事株式会社においては前年度実績を下回ったことなどから、前年度実績を下回りましたが、両社における増収効果により、売上総利益額は前年度実績を上回りました。販売管理費の対売上高比率は、経費削減努力により前年度実績を下回りました。これらから、営業利益は前年度実績を上回りました。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う、いわゆる巣ごもり需要は前連結会計年度に比べ幾分か弱まりましたが、日常生活に不可欠な食料品を取り扱っていることなどから、当社グループの業績は底堅く推移したものと考えております。
当社では鮮魚等の小売事業が売上高、営業利益において重要な部分を占めておりますが、各店舗への集客が経営成績に重要な影響を与えます。供給量の減少、代替品(肉類)へのシフト、嗜好の変化などによる魚食の減少、魚資源の枯渇化の進行、海外における魚食普及に伴う魚価の高騰、原油価格上昇に起因する諸コストの増大など、経営環境は厳しさを増しております。このような中、食品スーパー、コンビニエンスストア、ネット販売など異業態を含む競争に打ち勝つため、これまで以上に、鮮魚専門店ならではのノウハウや知見を活かし、「旬の生」商品の強化など顧客のニーズに対応した商品開発や品揃えに注力し活気ある売り場を提供するとともに、サービスレベルの向上を図ることが重要であります。また、売上原価の削減も重要な課題でありますが、当社は豊洲市場を拠点にチルド物流及び冷凍物流を一本化した物流網を2019年度において完成させました。バイイングパワーに裏打ちされた仕入力、効率的な物流力がこの課題に対応するための力となっております。
他方、パート・アルバイト社員はじめ人手不足の深刻化から際限なく出店を行える環境ではないため、出店先との交渉、既存店舗からの退店を含め、限られた経営資源を効率的に活用できる最適な店舗ポートフォリオ(筋肉体質の店舗網)の構築が重要であります。当連結会計年度において退店はありませんでしたが、2022年5月に小売店2店舗を退店いたしました。不振店を退店することが利益の底上げにつながっておりますところ、次期においても引き続き筋肉体質の店舗網の構築に取り組んでまいります。
なお、次期につきましても引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大への対応が重要になると考えております。立地に応じ新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け変化する各店舗の繁閑状況に対応した人員の効率的配置など店舗運営経費削減のための努力、新たな需給環境下における仕入条件や物流体制の見直しなど原価低減のための努力により営業利益の確保を図ってまいります。併せて、各ディベロッパーの指導に従いつつ各店舗が安全に営業を継続できるよう努めてまいります。
また、ウクライナ情勢の緊迫化・長期化により強まるロシア産海産物に関する供給懸念に対し、長年に亘り培ってきた豊洲市場の卸売業者、配送業者との強いリレーションを活かしサプライチェーンの維持、商品の調達に万全を期してまいります。
セグメントごとの分析・検討内容は次のとおりであります。
<小売事業>
小売事業に関する分析・検討内容は上述のとおりでありますが、これらの事業を円滑かつ効率的に推進するため、2018年10月に開場した豊洲市場を新たな物流拠点と定め、グループとして物流の効率化に取り組んでおります。従来は豊洲市場を拠点とするチルド物流及び神奈川県内の冷凍倉庫を拠点とする冷凍物流の2本の物流ルートを利用しておりましたが、2019年度において豊洲市場を拠点にこれらを一本化いたしました。更に、ルートや頻度を含む最適化のための工夫を行っております。これらにより物流オペレーションの効率化、物流コストの削減が実現しております。
また、併せてグループ情報システムのレベルアップを図ってまいります。
<飲食事業>
飲食事業では、前連結会計年度において居酒屋業態の2店を退店する一方、アフターコロナを見据え好適な立地へ競争力のある条件で寿司店3店を含む6店を出店いたしました。しかしながら、来店客数、売上高の回復は遅れており、販売管理費の削減、粗利益率の改善による営業利益の確保が喫緊の課題となっております。まずこれらの課題への対応を奏功させ、その後の「魚力鮨」「魚力寿司」といった寿司ブランドの浸透、確立へ繋げていきたいと考えております。
<卸売事業>
卸売事業では、魚力商事㈱に集約し国内外における販路の拡大に取り組んでおりますところ、前連結会計年度に比べ売上高を20%以上伸ばすなど業容を拡大しております。
次期につきましては、当社グループの事業の新たな柱とすべく更なる業容拡大を図ってまいります。国内において、オペレーションの合理化を含め食品スーパーや地方市場などとの取引の拡大、また、新規取引先の開拓に取り組んでまいります。海外卸売事業では、海外で高まる水産物需要に応え、米国既存取引先とのパートナーシップ強化・販売数量拡大、米国を中心に新たな販売先の開拓に注力したいと考えております。
ロ.財政状態
当連結会計年度末における当社グループの財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 ロ.財政状態」に記載のとおりであります。
当社グループにおける資産及び負債のうち主なものは以下のとおりであります。
(資産)
主として小売事業におきまして、商業施設にテナントとして出店する際に必要となる預け金等を敷金及び保証金に、店舗に関わる内装・空調・衛生厨房設備等を有形固定資産に、店舗において販売された当社の商品代金(売上返還金)を売掛金に計上しております。
この他、報告セグメントに属さない資産として、余資運用資金(預金及び投資有価証券)を保有しております。
(負債)
主として小売事業におきまして、商品の購入費用を支払手形及び買掛金に、店舗の運営経費・設備投資に係る費用を未払金に計上しております。
当連結会計年度末における当社グループの流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は345.1%となっております。売上返還金を含む現金による収入がその多くを占める当社グループの業種特性と照らした場合、流動比率100%を超える一定の健全な水準を維持しているものと判断しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループにおける資金需要は、運転資金需要および設備投資資金需要であります。
・運転資金需要のうち主なものは、販売商品の購入費用、人件費、店舗賃借料及び店舗運営に関わる費用(テナント経費・水道光熱費・販売促進費等)であります。
・設備投資資金需要のうち主なものは、小売事業、飲食事業の新規店舗、改装店舗に関わる店舗内装・空調・衛生厨房設備等の販売拠点の拡充・整備のための資本的支出と、全社的なIT活用推進を図るための、本社・店舗間のネットワーク構築やセキュリティ対策等のシステム投資であります。
当社グループは、現在運転資金および設備投資資金につきましては、内部資金でまかなう事を基本方針としております。
当社グループの出店は主にターミナル駅近隣の商業施設へのテナント出店であるため、設備投資資金需要においても、通常、営業キャッシュ・フローにより対応することが可能であります。また、更なる成長力獲得のためのM&Aや資本提携を行う場合などにおいても、同様に内部資金を活用する考えであります。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は70億22百万円である一方、有利子負債残高は有しておらず、無借金経営政策を継続しております。
資金の手元流動性は十分に確保している状況であり、財務状況は健全であると認識しておりますが、不測の事態に備えるため、借入枠につきましては、金融機関2行との間に合計6億円の当座貸越契約を締結しております。
当社グループは健全な財政状態を維持しつつ、営業活動により得られるキャッシュ・フローから、成長を維持するための将来必要な資金を調達することが可能と考えております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に際し、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下の通りです。
(固定資産の減損)
当社は、各店舗を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位とし、本社経費配賦後の店舗別営業損益等に基づき、営業損益等が継続してマイナスとなる場合等に減損の兆候があると判断しており、該当する各店舗の将来営業キャッシュ・フローを見積り、その合計額が固定資産の帳簿価額を下回る場合に、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。
当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に与える影響につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に、また、当期において計上した減損損失につきましては、「注記事項(連結損益計算書関係)」にそれぞれ記載しております。
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