(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度末における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
新3ヶ年中期経営計画の初年度となる2022年3月期につきましては、主力である純国産の「ワンデーピュアシリーズ」を中心に、日本国内での安定した成長を軸に、海外各国での需要回復を図ることにより同事業規模の拡大と収益基盤の強化を図ってまいりました。当社初となるシリコーンハイドロゲル素材ワンデーコンタクトレンズ「シード 1day Silfa(シルファ)」については、2021年2月から欧州の一部地域で販売を開始し、既に国内での承認を取得し、2022年夏の国内販売に向けて準備をすすめております。また、新しい流行を取り入れたカラーコンタクトレンズ「Belleme(ベルミー)」ブランドを新しく立ち上げ、2022年春の発売開始に向けてマーケティング活動を進めました。
2022年4月4日に実施された東京証券取引所の市場再編において、当社はプライム市場に移行いたしました。現時点ではプライム市場の上場維持基準項目のうち「流通株式時価総額」についてのみ、未達となっております。今後、早期のプライム市場上場維持基準の達成に向けて、企業価値を高める施策に注力しております。具体的には、市場競争力・収益力の強化を進めるとともに、信頼されるモノづくり、SDGsの推進、株主還元施策等の各種取組を進めてまいります。
また、社会の持続可能な発展に貢献することを経営の重要課題の1つと捉え、その実現に向けた行動を企業の行動指針として掲げ、会社運営の全てにわたり、環境と調和した企業活動を遂行していくことを基本とした『環境方針』を策定し、推進体制の整備及び環境経営マネジメントシステムを構築したことを2022年2月に公表いたしました。2022年3月31日には株式会社日本政策投資銀行から「環境への配慮に対する取り組みが十分」であると評価され、格付を取得し、「DBJ環境格付」に基づく融資を受けました。
これらの事業活動の結果、当連結会計年度の業績について、主に国内のコンタクトレンズ販売が前年対比で回復し、売上高は28,835百万円(前年同期比0.8%増)となりました。
利益につきましては、本社建替え計画による現本社社屋の償却年数を短縮したこと等に伴う減価償却費に加え、広告宣伝費・営業経費・人件費等が増加となったこと等により、営業利益1,177百万円(前年同期比1.6%減)、経常利益1,138百万円(前年同期比6.0%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、2021年11月に子会社の事業譲渡に関連する特別利益を計上したこと等により、1,153百万円(前年同期比2.1%増)となりました。尚、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用しているため、上記文章中に記載している前年同期比は参考値となっております。
また、2021年3月期と同様の算出方法とした場合、売上高前年同期比は3.4%増、販売費及び一般管理費については前年同期比3.2%増となります。営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益への影響はありません。
セグメントの業績は次のとおりであります。
(コンタクトレンズ・ケア用品)
国内のコンタクトレンズにつきましては、コロナ禍においてWEB等を併用した営業活動を展開しました。同時にSNS、雑誌タイアップを通じた広告宣伝を行う等、消費者への直接の需要喚起も行いました。引き続き主力である純国産の「ワンデーピュアシリーズ」を中心とし、特に市場の伸長が最も見込まれる遠近両用コンタクトレンズ及びオルソケラトロジーレンズ等の高付加価値商品の拡販に注力してまいりました。その結果、新型コロナウイルス感染症の影響によりサークル・カラーコンタクトレンズの伸びは鈍いものの、高付加価値の遠近両用レンズは需要増により前年同期比9.9%増、オルソケラトロジーレンズにつきましては、同感染症拡大の状況下においても市場が着実な進展を示し、前年同期比32.4%増と大きく伸長いたしました。オルソケラトロジーレンズについては、製品開発に迅速に対応できる体制を構築することを目的として、同レンズの製造販売業者であり、100%出資子会社である株式会社ユニバーサルビューを2022年3月31日に吸収合併いたしました。
ケア用品につきましては、オルソケラトロジーレンズ関連のケア用品は増加したものの、コンタクトレンズの使用機会が減少した影響を受け、前年同期を下回る結果となりました。
海外へのコンタクトレンズ輸出等につきましては、感染症の影響により欧州諸国・東南アジア諸国・台湾・インド等の市場が引き続き厳しい状況で推移している一方、中国市場はいち早い景気回復を示しました。
その結果、セグメント全体の売上高は28,602百万円(前年同期 28,089百万円)、営業利益2,275百万円(前年同期 2,186百万円)となりました。
(眼鏡)
眼鏡につきましては、主力フレームの「ビビッドムーン」や「プラスミックス」を中心として、主に既存在庫の圧縮とアフターサービスの営業活動を行ってまいりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により市場の低迷は続き、売上高は145百万円(前年同期 391百万円)、営業損失は88百万円(前年同期営業損失36百万円)となりました。
なお、眼鏡事業につきましては、2022年3月31日をもちまして同事業から撤退いたしました。連結子会社である株式会社シードアイサービスの一部店舗における眼鏡の小売り事業は継続しております。
(その他)
その他につきましては、眼内レンズの売上が減少した結果、売上高は87百万円(前年同期 137百万円)、営業損失は10百万円(前年同期営業損失13百万円)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、3,877百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は、3,266百万円(前年同期3,690百万円の収入)となりました。税金等調整前当期純利益の計上1,447百万円や減価償却費の計上2,763百万円により、資金が増加しております。また、資金減少の要因は法人税等の支払い373百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は、881百万円(前年同期1,663百万円の支出)となりました。これは主に、鴻巣研究所の製造エリア拡大工事と設備導入等に伴う有形固定資産の取得による支出1,097百万円が要因となっています。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果減少した資金は、2,423百万円(前年同期1,726百万円の支出)となりました。資金減少の主な要因は長期借入金の返済1,971百万円やリース債務の返済994百万円です。
(2)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
コンタクトレンズ・ケア用品(千円) |
9,505,840 |
98.8 |
合計(千円) |
9,505,840 |
98.8 |
(注)金額は製造原価によっております。
② 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
コンタクトレンズ・ケア用品(千円) |
8,231,242 |
131.6 |
眼鏡(千円) |
22,660 |
13.6 |
その他(千円) |
50,573 |
78.2 |
合計(千円) |
8,304,476 |
128.0 |
(注)金額は仕入価額によっております。
③ 受注実績
当社グループは見込生産を行っているため、該当事項はありません。
④ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
コンタクトレンズ・ケア用品(千円) |
28,602,015 |
101.8 |
眼鏡(千円) |
145,731 |
37.3 |
その他(千円) |
87,591 |
63.9 |
合計(千円) |
28,835,337 |
100.8 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合につきましては、次のとおりであります。なお、前連結会計年度については、外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。
相手先 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
金額(千円) |
割合(%) |
|
株式会社パレンテ |
3,402,595 |
11.8 |
HOYA株式会社 |
2,900,606 |
10.1 |
(3)経営者の視点による財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況及びの分析
当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑴ 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行っており、そのうち主なものは以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響等、不確実性が大きく将来事業計画等の見込数値に反映させることが難しい要素もありますが、期末時点で入手可能な情報を基に検証等を行っております。
(棚卸資産の評価)
当社グループの保有する棚卸資産については、「棚卸資産の評価に関する会計基準」に基づき、厳格な処理を実施しております。棚卸資産は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により評価しており、取得原価と当連結会計年度末における正味売却価額のいずれか低い方の金額で評価しております。また、収益性の低下に基づき簿価を切り下げた金額は原則として売上原価に含めております。製品及び商品に含まれる長期滞留の棚卸資産に対しては、過去の販売実績を基礎に商品の有効期限内での販売可能性を検討したうえで、現時点において販売が見込まれない棚卸資産の取得価額を切り下げております。
当連結会計年度末において収益性の低下が認められた棚卸資産に対して、上記方法に基づく簿価切下げによる評価損を計上しております。
当該見積りは、景気動向や顧客ニーズの変化等の将来の経済環境の変動等によって影響を受ける可能性があり、実際の将来販売予測が見積りと異なった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において売上原価の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(債権の評価)
当社グループの保有する債権(売上債権、貸付金等)については、回収可能性を検討の上、貸倒引当金を計上しております。なお今後、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、債務者の財務内容、将来業績が低下する場合においては、貸倒引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについては、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産については、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
② 財政状態の分析
資産、負債及び純資産の状況
当連結会計年度末における資産の残高は、41,785百万円となり、前連結会計年度末から523百万円増加いたしました。主な要因としては、株式会社ユニバーサルビューの子会社化及び吸収合併に伴いのれん及び無形資産が増加したことが挙げられます。
負債につきましては、29,253百万円となり、前連結会計年度末から353百万円減少しております。主な要因としては短期借入金及び長期借入金の返済による減少が挙げられます。
純資産につきましては、12,532百万円となり、前連結会計年度末から877百万円増加しております。主な要因としては、当期の利益積み上げにより利益剰余金が増加したことが挙げられます。
③ キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析に関しては、第2[事業の状況]3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)[経営成績等の状況の概要]の②を参照ください。
指標
|
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
自己資本比率(%) |
25.5 |
27.9 |
29.3 |
時価ベースの自己資本比率(%) |
53.5 |
47.9 |
31.2 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
24.1 |
21.8 |
19.0 |
※時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数により算出
※インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
④ 資本の財源及び資金の流動性の分析
当社グループの資金需要のうち主なものは、製品製造のための費用や商品仕入代金等の運転資金、中長期的に安定した成長を遂げるためのコンタクトレンズ事業における製造設備投資及び研究開発への継続的な投資であります。設備投資につきましては、「第3 設備の状況」、研究開発投資につきましては、「5 研究開発活動」に記載のとおりであります。また、海外市場への進出も積極的に行っており、買収・出資等の資金確保も重点課題であります。
必要資金につきましては、主に手元資金及び金融機関からの借入金にて賄っており、当連結会計年度末の当社グループの短期及び長期借入金の残高は18,239百万円であります。当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローを中心に財務の健全性に取り組みながら、外部からの借入金も活用し資金需要を賄ってまいります。
⑤ 経営成績の分析
売上高・売上総利益
当連結会計年度における売上高は28,835百万円となり、前連結会計年度に比べ217百万円増加いたしました。これは、純国産の「ワンデーピュアシリーズ」を中心とし、特に市場の伸長が最も見込まれる遠近両用コンタクトレンズ及びオルソケラトロジーレンズ等の高付加価値商品の拡販に注力した結果、主に国内のコンタクトレンズ販売が前年対比で回復したためであります。
売上総利益は12,010百万円(売上総利益率41.7%)となり、前連結会計年度に比べ400百万円減少(売上総利益率1.7ポイントダウン)いたしました。これは、主に円安の進行及びエネルギー価格の高騰による製造原価の増加によるものです。
販売費及び一般管理費
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は10,833百万円となり、前連結会計年度に比べ381百万円減少いたしました。これは、広告宣伝費(前期対比493百万円減)等が減少したためであります。
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