(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度の当社グループを取り巻く経済環境は、日本においては昨年秋に4回目の緊急事態宣言が解除されたことにより、企業活動や経済活動は緩やかに持ち直し、製造業では設備投資が回復基調となり、海外においても、欧米や中国で経済活動の回復が見られ、特に米国の景気回復は高水準となりました。しかしながら、半導体不足等を背景とするサプライチェーンの混乱や材料価格高騰、コンテナ不足による物流停滞や輸送費用の高騰は十分に改善されておらず、さらに、ロシア・ウクライナ情勢が悪化したことも加わり、経済環境は引き続き予断を許さない状況が継続しております。
このような状況の中、当社グループは、感染症拡大防止を目的に開始したテレワークやWeb会議、Webを活用したマーケティング活動を継続し、材料費価格や輸送費用高騰等が見込まれる中、製品のコストダウン活動を推進するとともに、固定費の抑制に努めて参りました。
この結果、当連結会計年度の売上高は51,736百万円(前連結会計年度比6.8%増)、営業利益は5,496百万円(前連結会計年度比24.8%増)、経常利益は5,604百万円(前連結会計年度比22.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,573百万円(前連結会計年度比7.0%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)(以下「収益認識会計基準」という)等の適用により、当連結会計年度の経営成績は従来の会計処理方法に比べ、売上高は402百万円増加し、営業利益、経常利益はそれぞれ97百万円増加しております。主な変更内容は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)及び(セグメント情報等) セグメント情報2.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額の算定方法」をご参照ください。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動によるキャッシュ・フローが1,782百万円、投資活動によるキャッシュ・フローが△2,395百万円、財務活動によるキャッシュ・フローが△741百万円、現金及び現金同等物に係る換算差額が237百万円発生した結果、11,012百万円(前連結会計年度比9.2%減)となりました。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は販売価格によっております。
2.実績には商品仕入を含んでおります。
当社グループは、原則として見込生産を行っておりますが、製品の一部(半導体関連製品におけるA/D・D/A変換器等)には受注生産を行っているものがあります。
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は販売価格によっております。なお、セグメント間の取引は、相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは、計測・計量機器事業において、旺盛な半導体業界の需要を背景に、半導体関連装置の受注が増加したことや、コロナ禍からの回復基調による設備投資需要の拡大に伴い、計測・制御・シミュレーションシステム(DSPシステム)の受注が回復したことによるものであります。
3.前期比が1000%を超えている箇所については「―」で表示しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引は、相殺消去しております。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
当連結会計年度の当社グループの売上高は、前連結会計年度に比べ6.8%増収の51,736百万円となりました。
計測・計量機器事業につきましては、日本においては、経済活動が再開され設備投資の回復が見られる中、計測・制御・シミュレーションシステム(DSPシステム)において前年比で受注は増加しておりますが、売上は減少しております。一方で、計量機器及び半導体関連装置においては、設備投資需要の回復・促進に伴い売上を大きく伸ばしました。これらに加え経費抑制に努めた結果、利益も前年に比べ大きく増加しました。米州においては、計測・制御・シミュレーションシステム(DSPシステム)において、日本と同様受注は回復しましたが、材料の供給遅延等により売上への寄与が遅れ、売上は減少しております。一方主力の計量機器の需要回復や新規市場参入による伸長の他、金属検出機・ウェイトチェッカも伸長し、売上、利益ともに増加しております。欧州においては、計量機器の販売地域の拡大および販売網の整備が進み、売上は堅調、利益は大きく伸長しております。アジア・オセアニアにおいては、インドのジュエリー市場の特需に加え、豪州、韓国でも経済活動が回復し、売上、利益ともに増加しました。その結果、計測・計量機器事業の売上高は、前連結会計年度に比べ13.3%増収の30,201百万円となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、日本においては売上高が422百万円増加しております。
医療・健康機器事業につきましては、日本においては、新型コロナウイルス感染症の拡大により特需となった非接触型体温計に落ち着きがみられ、さらに一部製品ではサプライチェーンの混乱の影響を受けたことにより、売上、利益ともに減少しております。米州においては、米国において大口案件の出荷が継続している他、遠隔医療の需要に伴う通信機能付き血圧計及び体重計の売上は堅調で売上は増加したものの、輸送費高騰の影響を大きく受けたことにより利益は減少しております。欧州においては、英国でのeコマースが引き続き好調を維持したことに加え、24時間携帯型血圧計の大型案件があり、ロシアにおいては血圧計の他、体温計も好調に推移したことにより、売上、利益ともに増加しております。アジア・オセアニアにおいては、規模は小さいながらも、売上、利益ともに堅調な結果となっています。その結果、医療・健康機器事業の売上高は、前連結会計年度に比べ1.0%減収の21,534百万円となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、日本においては売上高が19百万円減少しております。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価率については、生産工場の効率化及び材料費のコストダウン等の原価低減活動を継続して行った一方、特に海外事業において、サプライチェーンの混乱に伴う運送コストの増加が大きく影響しました。この結果、前連結会計年度に比べ0.5%増加し、55.8%となりました。
販売費及び一般管理費は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により前連結会計年度に引き続き営業活動費が抑制された一方、売上原価同様、運送コストが増加したこと等により、前連結会計年度と比べ 0.9%増加の17,386百万円となりました。研究開発費は高水準にありますが、これは当社グループの継続的な発展に不可欠な将来を見据えた投資と考えております。グループ全体の方針としては、開発効率の向上に努め、研究開発費の伸び率を売上高の伸び率以下に抑えつつ売上高を毎年伸ばしていくことにより、中長期的に対売上高比率での抑制を図ってまいります。
(営業利益)
営業利益は、5,496百万円(前連結会計年度比24.8%増)となりました。計測・計量機器事業の営業利益は、コロナ禍からの回復基調により売上高が大きく増加したことに加え、経費抑制に努めた結果、前連結会計年度比108.9%増益の3,536百万円となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、日本においては営業利益が98百万円増加しております。医療・健康機器事業の営業利益は、欧州、米州を中心に売上が堅調だった一方、日本における売上の減少、及びサプライチェーンの混乱に伴う運送コストの増加を主要因として、前連結会計年度比15.1%減益の3,911百万円となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、日本においては営業利益が0百万円減少しております。また、上記のセグメント別の営業損益の他、全社費用等として1,951百万円が発生しております。
売上高営業利益率は10.6%となり、前連結会計年度より1.5%上昇しました。引き続き新技術や顧客のニーズを踏まえた高付加価値製品の投入、原価低減、経費削減等、利益率の上昇につながる施策に努めてまいります。
(経常利益)
営業外収益は前連結会計年度同様、新型コロナウイルス感染拡大に伴う補助金の受給があった一方、円に対する露ルーブルの価値が一時的に下落したことにより為替差益が前年同期に比べて減少したことを主要因とし、前連結会計年度比89百万円減少の358百万円となりました。営業外費用は、主に支払利息が減少した結果、前連結会計年度比37百万円減少の250百万円となりました。これらの結果、経常利益は5,604百万円(前連結会計年度比22.8%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度において、多額の特別利益や特別損失の発生はなく、税金等調整前当期純利益は5,532百万円になりました。また法人税、住民税及び事業税を1,475百万円、法人税等調整額を81百万円、非支配株主に帰属する当期純利益を401百万円計上したことから、親会社株主に帰属する当期純利益は3,573百万円(前連結会計年度比7.0%増)となりました。
(包括利益)
当期純利益は3,975百万円となった他、為替換算調整勘定を中心にその他の包括利益が518百万円となったことにより、包括利益は4,493百万円(前連結会計年度比5.3%増)となりました。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、43,946百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,918百万円増加いたしました。これは、主にサプライチェーンの混乱に伴う部材供給状況の逼迫に対応するため、材料の先行手配を行ったこと等により、棚卸資産が大幅に増加したこと等によるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は15,292百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,201百万円増加いたしました。個々の要因は以下のとおりであります。
有形固定資産については株式会社ホロン及びA&D SCALES CO., LTD.における新本社工場建設による建物および構築物の増加を中心に、前連結会計年度末に比べ1,196百万円増加いたしました。
無形固定資産についてはソフトウエアの償却額が新規投資額を上回ったこと、過去の投資に伴うのれんや商標権の償却が進んだため、前連結会計年度末に比べ161百万円減少いたしました。
投資その他の資産については棚卸資産の未実現利益に係る繰延税金資産の増加を主要因として、前連結会計年度末に比べ166百万円増加いたしました。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は26,202百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,614百万円増加いたしました。これは主に、材料の先行手配を行ったことにより、支払手形及び買掛金、短期借入金がそれぞれ増加したことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は5,995百万円となり、前連結会計年度末に比べ148百万円減少いたしました。これは、主にリース債務の返済が進んだことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産の残高は27,041百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,653百万円増加いたしました。これは主に当期純利益等により利益剰余金が2,860百万円増加したこと、為替換算調整勘定の増加によりその他の包括利益累計額が510百万円増加したこと、及び非支配株主持分が270百万円増加したことによるものであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,782百万円(前連結会計年度比65.7%減)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が5,532百万円、減価償却費が1,604百万円、仕入債務の増加額が458百万円あった一方で、部材供給状況の逼迫に対応するため、材料の先行手配を行い、棚卸資産の増加額が3,154百万円あったことに加え、法人税等の支払額が1,597百万円、売上債権の増加額が1,397百万円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は2,395百万円(前連結会計年度比7.8%増)となりました。これは主に株式会社ホロン及びA&D SCALES CO., LTD.における新本社工場の建設等により有形固定資産の取得による支出が2,071百万円、無形固定資産の取得による支出が493百万円あったことによるものであります。
フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除したもの)は613百万円のマイナスとなっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は741百万円(前連結会計年度比188.2%増)となりました。これは主に長期借入れによる収入が2,823百万円、長期借入金の返済による支出が3,081百万円、配当金の支払額が524百万円あったことによるものであります。
必要運転資金及び設備投資を含む投資資金は、基本的には内部資金又は金融機関からの借入金により対応しております。外部資金は、その使途の実態に合わせ、長期及び短期での調達となっております。当連結会計年度末では、社債500百万円、長期借入金6,357百万円(1年内返済予定分含む)、短期借入金12,029百万円の構成となっており、合わせて18,886百万円を計上しております。当連結会計年度末の社債及び借入金残高の売上高に対する比率は36.5%(前連結会計年度末は38.3%)となっております。また、緊急時の資金調達手段の確保を目的として、一部の取引銀行と当座貸越契約および貸出コミットメント契約を締結しており、資金流動性を確保しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たって、当社経営陣は決算日における資産・負債の数値及び偶発債務の開示並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行っております。また、経営陣は過去の実績や状況に応じ、合理的妥当性を有する要因に基づき見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収入・費用の報告数値についての判断の基礎としております。実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これら見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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