当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号、以下、「連結財務諸表規則」)第93条の規定により、国際会計基準(以下、「IFRS」)に準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたって、採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
(2)経営成績の分析
(%表示は対前期増減率)
|
売上収益 |
営業利益 |
税引前利益 |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 |
||||
|
百万円 |
% |
百万円 |
% |
百万円 |
% |
百万円 |
% |
2022年3月期 |
2,150 |
14.7 |
△868 |
- |
△379 |
- |
△492 |
- |
2021年3月期 |
1,875 |
4.6 |
△700 |
- |
408 |
348.9 |
△59 |
- |
当社グループは、『人』+『サイバー・フィジカル空間』を一体的に扱う新領域「サイバニクス(人・ロボット・AI/情報系の融合)」を駆使して、誰ひとり取り残さないイノベーションによって人とテクノロジーが共生し相互に支援し合う「テクノピア・サポート社会」の実現、ロボット産業、IT産業につづく新産業「サイバニクス産業」の創出による社会変革・産業変革を目指しています。
サイバニクスを駆使した「健康未来社会」
当社グループは、サイバニクスを駆使し、IoH/IoT(ヒトとモノのインターネット)を介して取得されるヒューマンビッグデータ (人間に関わる生理・心理・生活・行動・環境情報など)を集積・解析・AI処理し、人間の機能改 善・再生・拡張・支援が可能な各種サイバニクス技術を好循環のスパイラルが構成できるよう社会実装していま す。また、サイバニクスで取り扱うデバイス・ソフトウェア等はすべて通信機能を有しており、IoH/IoTを介した クラウドによって病院、介護施設、自宅、職場までをデータやサービスの連携でシームレスに繋げ、人々の多様な 活動シーンに対応しています。当社グループは、廃用・疾患・障がいという身体状態であっても、高い自立度と健 康度を維持しながら社会参加を実現する「健康未来社会」、健康で持続可能な社会としての「Society5.0/5.1」の実現を進めてまいります。
事業推進の状況
《医療》
当社グループは、世界初の装着型サイボーグHAL®を利用した脳・神経・筋系の機能改善・機能再生を促進するサイバニクス治療を、グローバルな標準治療とする取り組みを進めています。医療用HAL®「下肢タイプ」(両 脚モデル)については、緩徐進行性の神経筋難病疾患に対する使用成績調査での極めて高い有効性と安全性を示す結果を踏まえ、「他に有効な治療方法が確立していない緩徐進行性の神経・筋難病疾患の患者に対して、既承認薬も含め前例のない顕著な機能改善効果が確認された」(日本神経治療学会提案の医療技術評価提案書より抜粋)として診療報酬の再評価を提案いただいた結果、令和4年度診療報酬改定において、難病医療拠点病院等の約8割を占める DPC対象病院の入院患者に対しても医療用HAL®の診療報酬の算定が認められ、さらに診療報酬点数が増点されました。今後、この使用成績調査結果を世界各国の保険収載などの手続きにも活用することで、有効な治療法が確立されていない進行性神経筋難病疾患にとっての標準治療化と、医療用HAL®のグローバル展開を加速してまいります。
医療用HAL®「下肢タイプ」(単脚モデル)の脳卒中片麻痺患者に対する医師主導治験については、本治験の評価ポイントとして最重要とされている臨床的な意義と主要評価項目の統計学的有意差について、治験調整医師や統計専門家を交えて当局と協議しております。なお、本治験の有効性と安全性の評価結果は、諸外国での脳卒中患者に対する医療保険の適用申請にも有用なデータになると考えています。また、2022年1月には新たに小児脳性麻痺 等に伴う運動姿勢障害を呈する患児の粗大運動能力の向上を目的とする医師主導治験が、筑波大学附属病院を中心に開始されました。
EMEA(欧州や中東)においては、新たに導入されたスペインやフランスに続いて、主要各国でのサイバニクス治療の普及を進めています。米国においては「医療サービス事業」強化のため、2021年12月にカリフォルニア州南部で事業展開するRISEフィジカルセラピー社を買収し、事業統括会社として新設したRISEヘルスケアグループ(RHG) 社を中心に現在の19拠点から更なる拠点拡大を進めるとともに、当社の革新的な医療技術との複合サービスの展開準備を進めています。
APAC(アジア太平洋)においては、2022年2月にAPACの事業推進拠点として、CYBERDYNE MALAYSIA社を設立し、サイバニクス治療の更なる普及を加速してまいります。
《介護・自立支援》
当社グループは、主に高齢者の自立度の改善や重度化防止及び加齢により身体機能が低下するフレイル予防や自立維持に向けて、歩行運動に対応した「下肢タイプ」、肘・膝・足首の関節運動に対応した「単関節タイプ」、体幹運動に対応した「腰タイプ」など様々な種類のHAL®自立支援用を展開しています。
(施設型サービスの展開)
HAL®を使用した脳・神経・筋系の機能改善を促すプログラム「Neuro HALFIT」を提供するロボケア事業は、 個人向けの医療ヘルスケアサービス事業のハブ拠点として、当社グループ並びに各地域の事業パートナーとの協働 により全国16箇所で展開し、今後、更なる拠点拡大を計画しています。
(個人向けサービス「自宅でNeuro HALFIT」の展開)
個人向けレンタルとして非接触型の在宅サービス「自宅でNeuro HALFIT」は、サイバーダインのクラウドとデータ連動し、身体動作を指令する生体電位信号や姿勢情報等を可視化するHALモニターによって、装着者自身が視覚的にフィードバックを得ることができるだけでなく、セラピストやトレーナーなどの専門スタッフによる遠隔でのオンラインサポートを提供しています。
≪予防・早期発見≫
心活動、脳活動、体温、SpO2、活動量など様々なヘルスケアデータを日常的に集積・解析・AI処理することで、 不整脈や心房細動などのリスクを管理し、心筋梗塞や脳梗塞などを予防することを目的とした超小型バイタルセンサー「Cyvis(サイビス)」シリーズの製品化を進めています。また、「Cyvis」は、睡眠時の呼吸状態の計測というオプション機能も備えており、SAS(睡眠時無呼吸症候群)のリスクを簡便に高精度スクリーニングすることが可能となります。また、2021年8月に睡眠を見える化するヘルスケア・アプリ「熟睡アラーム」を開発・運営するC2社を買収し、当社グループとしてヘルスケア事業の強化を進めています。なお、Cyvisシリーズの初モデル「Cyvis-1」は2022年4月に医療機器届出を行い、同年5月よりユーザー向けに試験提供を開始しています。
《生活・職場分野》
(介護支援用途)
2021年10月より英国ハンプシャー州の介護施設向けに「HAL®腰タイプ介護自立支援用」の出荷が開始し、今後はハンプシャー州との契約をモデルケースとして、同州と協力して英国の他のエリアや欧州各国への展開を進めてまいります。
(作業支援用途)
防塵・防水対応の「HAL®腰タイプ作業支援用」は、空港、建設現場、物流倉庫などの大口ユーザーへの導入を進めるとともに、労働者の作業負荷や身体状態を可視化して労務管理と作業効率を統合した生産管理の実用化を進めています。
(除菌・清掃用途)
世界最高水準のSLAM技術による高速自律走行を実現した次世代型清掃ロボット「CL02」は、空港、公共施設、 オフィスビル等で導入を進めています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に対応して除菌剤噴霧機能や紫外線照射機能による非対面・非接触での除菌作業が実現するとともに、マルチベンダー型エレベータ連動ユニットにより、人を介さずにエレベータ自動昇降も可能となっており、ポストコロナ社会での次世代技術の実用化を進めています。
研究・製品開発の状況
微細血管情報のリアルタイム解析のための光音響イメージングは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED)の「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)」に採択され、新しいイメージングモダリティの画像診断装置の事業化に向けた研究開発を進めています。
また、当社グループは、高齢者や障がい者向けの自立支援ロボットとして、歩行機能を維持向上するための衣服型HAL、バイタル・環境情報を取得しつつ会話機能を備えてADL(日常生活動作)を維持向上するための見守り・コミュニケーションロボット、歩行困難な方のためのパーソナルモビリティロボットなどの研究開発を進めています。
なお、川崎市の殿町国際戦略拠点(キングスカイフロント)において、HAL®等のサイバニクス治療の臨床研究に加えて再生医療や創薬などのバイオ系の研究を推進するサイバニクス・メディカル・イノベーションベースA棟の本体建屋が2022年3月に完成し、追加の内装工事を進めています(2022年度中に稼働予定)
製品稼働状況について
医療用HAL®下肢タイプは、主にAPAC向けレンタルの増台により、2022年3月末時点で臨床試験用も含め国内外あわせて368台(内、国内レンタル契約86台)が稼働中です。HAL®単関節タイプは、医療用の増加により、 2022年3月末時点で492台が稼働中です。HAL®福祉用等の下肢タイプは、2022年3月末時点の稼働台数は341台となっています。また、HAL®腰タイプ介護・自立支援用は、旧モデル廃棄により、2022年3月末時点で1,143台が稼働中です。HAL®腰タイプ作業支援用は、主に空港向けのレンタル減少により、2022年3月末時点の稼働台数は417台となっています。また、清掃ロボット及び搬送ロボットは、2022年3月末時点において147台が稼働中です。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上収益は、海外向けHAL等のレンタル売上及び新型コロナウイルス感染症の影響からの回復と米国拠点の獲得によるサービス売上の増加により、2,150百万円(前期比14.7%増加)を計上しました。売上総利益は1,462百万円(同13.9%増加)となりました。
研究開発費は前年度に引き続き新製品の自社開発及び受託研究事業の実施により713百万円(同3.4%増加)を計上、その他の販売費及び一般管理費はM&Aの影響により1,787百万円(同21.5%増加)を計上しました。
その他の収益は、受託研究事業収入などにより175百万円(同3.0%減少)を計上、その他の費用6百万円(同36.3%増加)を計上した結果、営業損失は868百万円(同23.9%増加)を計上しました。
また、金融収益は投資有価証券評価益などにより398百万円、CEJファンドに係る損益115百万円、法人所得税費用は繰延税金費用などにより136百万円等を計上した結果、親会社の所有者に帰属する当期損失は492百万円(同739.1%増加)を計上しています。
なお、当社は独自技術を持ったスタートアップ企業との業務提携や資本提携を行なっており、当該非上場株式については、IFRS第9号「金融商品」に基づき公正価値を算定しています。当連結会計年度末に公正価値を算定した結果として、投資有価証券評価益469百万円を「金融収益」及び「CEJファンドに係る損益」に含めて計上しています。なお、当該評価に関する繰延税金費用161百万円を「法人所得税費用」として計上、また、CEJファンドの外部投資家持分へ振替額41百万円を計上した結果、「当期利益」に与える影響額は267百万円となります。
(3)財政状態の分析
① 資産
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末比1,341百万円増加し、49,459百万円となりました。これは主として、その他の金融資産(流動)が3,856百万円、現金及び現金同等物が1,027百万円、オペレーティング・リース資産が45百万円減少したものの、その他の金融資産(非流動)が2,300百万円、のれんが2,047百万円、有形固定資産が1,210百万円増加したことによるものです。
② 負債
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末比1,670百万円増加し、6,002百万円となりました。これは主として、CEJファンドにおける外部投資家持分が1,201百万円、繰延税金負債が179百万円、その他の流動負債が100百万円増加したことによるものです。
③ 資本
当連結会計年度末における資本は、前連結会計年度末比329百万円減少し、43,457百万円となりました。これは、親会社の所有者に帰属する当期損失の計上に伴い利益剰余金が492百万円減少したことによるものです。
(4)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,027百万円減少し5,677百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、564百万円の資金流出(前連結会計年度は775百万円の資金流出)となりました。これは主に、減価償却費及び償却費を473百万円計上したものの、金融収益を398百万円、税引前損失を379百万円、棚卸資産の増加による資金流出281百万円を計上したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、1,788百万円の資金流出(前連結会計年度は2,794百万円の資金流出)となりました。これは主に、投資の償還による収入26,000百万円を計上したものの、投資の取得による支出19,499百万円、定期預金の預入による支出2,500百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出2,008百万円、投資有価証券の取得による支出1,848百万円、有形固定資産の取得による支出1,770百万円を計上したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、1,248百万円の資金流入(前連結会計年度は617百万円の資金流入)となりました。これは主に、CEJファンドにおける外部投資家からの払込による収入1,360百万円によるものです。
(5)生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりです。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
ロボット関連事業 |
258 |
67.0 |
合計 |
258 |
67.0 |
(注)1.単一セグメントであるため、セグメント別の生産実績は記載していません。
2.金額は、製造原価及び自社製作資産により表示しています。
3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりです。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|||
受注高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比 (%) |
|
ロボット関連事業 |
2,485 |
101.6 |
274 |
539.7 |
合計 |
2,485 |
101.6 |
274 |
539.7 |
(注)1.単一セグメントであるため、セグメント別の受注実績は記載していません。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりです。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
ロボット関連事業 |
2,150 |
114.7 |
合計 |
2,150 |
114.7 |
(注)1.単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績は記載していません。
2.外部顧客への売上収益のうち、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しています。
(6)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 経営成績に重要な影響を与える要因について
本書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりです。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、現在、運転資金及び開発投資等の資金需要に対しましては、自己資金を充当することを基本としています。当連結会計年度末時点において、事業活動の維持に必要な手元資金を保有しており、充分な流動性を確保していると考えています。
③ 経営者の問題意識と今後の方針について
当社の経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案し、社会貢献を前提として企業価値を最大限に高めるべく努めています。具体的には本書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
④ 新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響について
新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響に関して、当社が会計上の見積りを行うにあたり置いた仮定については、本書「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
⑤ 経営上の重要な非財務指標
当社グループでは、経営上の重要な非財務指標として、HAL®等の稼働台数を活用しています。
当社グループの主たる収益源は、HAL®等のレンタル・保守に係る売上であり、レンタル・保守契約に係る売上は、レンタル期間にわたり収益が計上されるため、翌会計年度以降にわたる継続的な収益計上が見込まれます。
当社グループは、恒常的な業績や将来の見通しを把握することを目的として、HAL®等の稼働台数を取締役会へ報告しています。
(単位:台)
稼働台数 |
2018年3月末 |
|
2019年3月末 |
|
2020年3月末 |
|
2021年3月末 |
|
2022年3月末 |
HAL®医療用 (下肢タイプ) |
257 |
|
291 |
|
310 |
|
351 |
|
368 |
HAL®福祉用等 (下肢タイプ) |
398 |
|
357 |
|
357 |
|
342 |
|
341 |
HAL®単関節タイプ |
234 |
|
252 |
|
300 |
|
391 |
|
492 |
HAL®腰タイプ 自立支援用及び 介護支援用 |
847 |
|
919 |
|
951 |
|
1,074 |
|
1,143 |
HAL®腰タイプ 作業支援用 |
372 |
|
572 |
|
624 |
|
459 |
|
417 |
清掃ロボット及び 搬送ロボット |
27 |
|
44 |
|
75 |
|
141 |
|
147 |
合計 |
2,135 |
|
2,435 |
|
2,617 |
|
2,758 |
|
2,908 |
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