文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「個性と創造性溢れる豊かな社会作りに貢献します。」を経営理念として、ITを利活用したモノづくりの会社として社会へ貢献してまいります。
当社のビジョンは、次のとおりであります。
・お客様が簡単/便利にモノづくりができ、お手頃価格で欲しいタイミングでお手元に届くことを実現する
・工場のモノづくりのDX化をサポートし、オンデマンド生産市場拡大に貢献する
・オンデマンド生産できるアイテムを拡げ、世の中の無駄な在庫を減らして「つくる責任」を果たす
・世界中から最適なソリューションをマッシュアップし、信頼されるサービスをグローバルに提供していく
(2)経営戦略等
当社は、オンデマンドプリントサービス市場拡大に貢献するための様々なサービス提供や省力化・自動化を支援するシステム開発を行っております。システム化が遅れているプリント業界において、システムを利活用したモノづくりの会社としてITを取り入れた事業を展開しております。当社が在庫リスクの少ない受注生産による販売を行うだけではなく、当社の取引先にも在庫を持たずに販売することが可能なプラットフォームを提供しております。このプラットフォームをアパレル・雑貨業界に広げ、売れ残って捨てられる無駄を削減し、在庫の最適化を実現することでSDGs No.12の「つくる責任つかう責任」に積極的に取り組み持続可能なサービスの提供を目指して、次の戦略を実施してまいります。
・当社の取り扱う商品カテゴリーとしては、国内最大規模のインクジェット加工能力を強みとしたアパレル・雑貨を中心に幅広く取り扱っております。今後も取扱い商品を拡充し、新しい市場ニーズの開拓を進めてまいります。
・ECサービスについては、リアル店舗を展開しOMO施策(注1)を進めてまいります。また、UI/UX(注2)の改善に積極投資し、顧客の利便性を重視したWebサイト上での注文及びデザイン環境を提供してまいります。
・新規分野としては、アパレルへのインクジェットプリントの生産優位性をより強固に維持しながら、IT活用が可能な隣接分野について、積極的にR&Dに取り組み、既存事業とのシナジー効果が見込まれる分野へ参入してまいります。
・生産ラインについては、受注から出荷までの全工程をIoT化し、生産効率の大幅な向上を図ります。職人でなくても高い生産性を実現できるようハードウエアを開発し、特別なスキルのない未経験者でも簡単に操作ができるように機械及びシステムを整備してまいります。
・生産連携としては、当社の開発した生産管理システムを他社協力工場とネットワーク化し、導入企業との加工の分散を実現し、業界のデファクトスタンダードシステムとすることで、大ロットでも短納期で生産出荷を可能とするOPN(On demand Print Network)を構築してまいります。
(注)1.OMOとは、Online Merges with Offlineの略称で、オンラインとオフラインの情報を融合して、より良い顧客体験を提供しようとするデジタルマーケティング施策であります。
2.UI/UXとは、User Interface/User Experienceの略称で、UIとはユーザーがパソコンやスマートフォン等のデバイスを通じてデザイン、フォントや外観など視覚に触れる情報のことであり、UXとはユーザーがUIを実装したサービスを通じて得られる体験を指します。
これらの戦略を実行することで、プリントとITのシナジーによるオンデマンドプラットフォーマーとして成長するとともに、社会の課題解決に貢献し、中長期的には海外展開を実現し国際競争力のあるソリューションを提供してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、持続的な成長と企業価値向上を図るため、売上高成長率と売上高経常利益率を重要な経営指標と位置づけ、各経営課題に取り組んでおります。当社の目指すオンデマンドプリントサービス市場拡大のためには、継続的な成長が必要であり、積極的な投資の資金源泉となる安定した利益の確保のため、当該経営指標を重視し、経営判断に利用しております。
(4)経営環境
当社の属するアパレル・雑貨等を中心としたオンデマンドプリントサービス市場は、日本の各産業と比してもEC化が大幅に遅れており、BtoC-EC市場の伸びをベースとしながら、今後も市場の成長は加速するものと推察しております。また、新型コロナウィルス感染症の影響が収束したとしても、一度EC経由での手軽さやスピード、リアル店舗に比したコストパフォーマンスを体感した消費者は、従来のオフラインでの消費行動に戻る動きは少数に留まり、オンラインでの利便性の追求に向かうものと分析しております。
当社の事業領域は、幅広く多岐に亘っており、競合他社に比してユニークな地位を確立しているものと考えております。主要なサービスである自社フラッグシップサイト「オリジナルプリント.jp」をはじめとするオンデマンドプリントサービスは、プリントとITをかけあわせてDX化を推進し、オリジナル製品を制作したいユーザーへ利便性を提供しております。また、当社は製造部門を有しつつも、社内エンジニアによる開発部門において様々なシステムを開発し、自社工場で運用するにとどまらず外部へも提供、さらにはハードウエアの販売にいたるまで、オンデマンドプリントにかかるソリューションとして提供しております。当社のポジションと比較して、印刷会社、システム開発会社、ハードウエアメーカーなど当社の事業領域のうち各分野での競合は存在するものの、総合的に事業運営する競合は存在しないものと認識しており、競争優位性の源泉となっていると考えております。顧客基盤については、一般消費者に限らず、アパレル大手企業から小規模印刷事業者まで幅広く構成されており、パートナー企業との連携により益々拡大していくものと見込んでおります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 人材の育成と確保
当社の持続的な成長のためには、人材の育成と確保が重要な課題と考えております。また、当社はシステム開発による効率化を強みとした企業でありますが、優秀なシステムエンジニアの確保はIT人材の不足する労働市場において特に難易度を増しております。また、ソリューションサービスの推進のため、機械エンジニアの獲得も重要な課題と認識しております。今後とも積極的な採用活動を行うとともに、体系的な研修制度の導入や、公正な人事評価制度などを整備し、人材の育成や定着に努めてまいります。
② 当社サービスの認知度の向上
当社が事業を展開するオンデマンドプリントサービスは、認知度がまだ低く、認知していても自分でデザインし購入するのが難しい、不安である等の理由により購入に踏み切れない顧客が多く存在すると認識しております。以前より、インターネットを活用したマーケティング活動、大手企業との提携等により認知度向上に向けた取り組みを行ってまいりましたが、今後、これらの活動をより一層強化してまいります。
③ 情報セキュリティとシステムの安定性の強化
当社は、インターネットを介してサービス提供を行っているため、情報セキュリティ対策は当社の重要な課題と認識しております。システムの安定性確保に継続的に取り組むほか、個人情報保護対策としてプライバシーマークの運用定着活動等も活用し、情報セキュリティを確保する仕組み作りや教育を引き続き強化してまいります。
④ 加工・印刷の徹底した自動化及び半自動化
当社では、IT技術により加工・印刷の作業を効率化し、原価の低減に努めてまいりましたが、世界中で自動化や省力化の勢いは加速しており、産業ロボット技術を持つ企業などとの連携やハードウエアメーカーと連携をとり、自動化や半自動化を更に進めてまいります。
⑤ プラットフォームサイトのユーザビリティ強化
当社は「オリジナルプリント.jp」(https://originalprint.jp/)を主として、インターネットを介して注文を受け付けております。Web上でのデザインの作成のしやすさも同サイトの特長の1つになります。今後も継続的にサイトの機能向上を行ってまいります。
⑥ コーポレート・ガバナンスの強化
当社は、継続的な企業価値向上を具現化していくためには、コーポレート・ガバナンスの更なる強化が重要であると認識しております。経営の効率性、健全性を確保すべく、業務執行機能と、業務執行に対する監督機能を明確化し、経営における透明性を高めるため内部統制システムの整備によりその強化を図ってまいります。
⑦ 内部管理体制の強化
当社は、今後も事業拡大を見込んでおり、内部管理体制の強化が不可欠であると認識しております。また、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実を実現していくためにも、財務、経理、人事、総務等の管理部門のそれぞれの分野での人材の確保及び育成に努めてまいります。
なお、当事業年度の特別利益の項目にある受取補填金47,021千円の取引経緯については以下のとおりであります。
当社が2017年12月28日に行った自己株式2,696株(B種優先株式287株、C種優先株式1,709株、D種優先株式700株)の取得については、いわゆる財源規制を定めた会社法第461条第1項に抵触して分配可能額を超えて行われておりました。このことについて、当社では、事後的に違法な自己株式の取得を認識いたしました。この違法な取引であったことが発覚した後、当社では、当社の法的安定性に瑕疵が生じた状態を解消するために、当時の業務執行取締役が、当社に対して会社法第462条第1項で定められた交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する額から、同条第3項で定められた総株主の同意を得られた分配可能額を限度とした当該義務の免除額を除いた金銭47,021千円を支払うことにより、当該瑕疵が治癒したものと考えております(なお、当社が取得した自己株式2,696株については、その後消却されているため、返還しないこととして処理しております)。上記自己株式を取得した当時においては、当社の管理部門における人員不足等により内部管理体制に不備が存在しておりましたが、現在においては人員体制も充実し、一層の内部管理体制強化に努めております。
⑧ 財務レバレッジの最適化
当社は、財務基盤の安定性を維持しながら事業拡大の投資資金を確保し、財務体質の強化に取り組んでおります。今後も継続的な設備投資を要するため、新たな投資を実行できるよう内部留保の確保と株主還元の適切なバランスを検討し、財務レバレッジの最適化に努めてまいります。
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