課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1)経営方針

当社グループの経営方針は、以下の方針に基づいております。

 

1)健全な財務体質により、事業継続を長期にコミットします。

長期的視野での経営を可能にするためには財務的な独立が不可欠です。弊社は企業収益及びステークホルダーへの利益還元を重視するのと同様に、高い自己資本比率の維持を目指します。

公的援助や他人資本を当てにした経営では事業を長期にコミットすることは不可能です。

これはリーマン級経済危機、伝染病流行、大規模自然災害等に備えるという点においても例外ではありません。予期せぬ事情で市場規模が急に冷え込んだ場合、生産能力が落ち込んだ場合でも、ブランドを棄損することなく終息まで耐え抜くだけの体力を備えておくことが重要です。又、M&Aや新事業への展開においても、好機に迅速な決定、対応が可能となるよう、ある程度潤沢な現預金を常時持ち合わせておく必要があります。

健全な財務体質はESG(環境・地域社会・企業統治)経営を持続的に継続する意味でも重要です。ESGを疎かにしてはいずれそのツケを払う時が来ます。環境対応については、形だけ整えてお茶を濁したり、いたずらに調査や議論を重ねるのではなく、弊社の身の丈に合った範囲でスピード感をもって実現して参ります。

弊社は30年先、50年先も現在同様自主独立を貫く健全な企業であり続けたいと思います。

 

2)Made in Japanで勝負します。

弊社の最大の資産は過去60年間で築き上げたブランドです。

そのブランドは「かっこいい」「安全」「機能的」「かぶり心地がいい」というお客様の声によって支えられております。弊社のヘルメットは「造形(デザイン)・製品開発」「品質保証」「生産」という相互にトレードオフするミッションを全うして初めて市場に送り出されますが、ここが弊社の競争力の源泉であり、いずれのミッションが海外に移転しても現在のブランドを維持できないと考えています。他社ではコストダウンを目的として生産部門を海外に移転するケースが散見されますが、弊社は海外移転によるメリットよりデメリットの方が圧倒的に大きいと判断致します。Made in Japanで勝負し続けることこそが、ブランド力を高く維持し、競争力を保ち続ける為に弊社が取るべき唯一の選択肢であると確信しております。

 

3)お客様の声に耳を傾けます。

2022年9月期において、弊社が製造した二輪用ヘルメットのうち、サンバイザー付かつインターコム対応モデルは販売個数において全体の約43%となりました。

これらの機能はいずれもかつては存在していなかった機能ですが、今では「SHOEIといえばこれ」というくらい弊社にとってなくてはならない商品となっています。これはほんの一例ですが、お客様がご希望される製品を供給することが、企業としての使命であり、存在意義であると確信致します。

現在はヘルメットとエレクトロニクスの融合、レトロブームへの対応といった市場ニーズに対応すべく、業界を率先して新しいチャレンジを続けているところです。弊社は2020年3月東京に、2021年12月大阪に直営ショールームをオープンしました。2022年11月には横浜店もオープンしました。かかるショールームもお客様のニーズを直接確認する重要な拠点になると確信しています。

 

(2)経営戦略

当社グループの経営戦略は、上記方針を踏まえ、以下5つの戦略としております。

 

1)生産戦略

国内2工場での自社一貫生産体制を確立、生産モデルを区分するも常時どちらの工場でも生産可能な体制を構築します。また、高度な技術やノウハウをブラックボックス化する情報管理を強化し、優位性を盤石なものにします。

 

2)商品戦略

高品質・高付加価値商品に特化し、集中的に経営資源を投下して参ります。多様化するライダーの嗜好に対応し、「お客様のニーズに沿った付加価値機能」を備えた、クラシックモデルや利便性の高いモデルを展開します。また、研究開発体制を拡充し、エレクトロニクス対応を促進、時代の最先端を走る製品開発によりブランド力アップを図ります。

 

3)ブランド戦略

SHOEIのブランド力を一層強化するため、パーソナル・フィッティング・システム(PFS)サービス(個別フィッティング調整)の普及に引き続き努めて参ります。また、マルク・マルケスを中心とするスポンサー活動によるプロモーションを維持・拡大してまいります。

 

4)市場戦略

欧米日市場の深堀りと顧客密着の販売体制を構築し、世界中の全ての国々でトップシェアを維持します。また、今後の若年層を中心にライダー人口、バイクブームの拡大が期待されるアジア、中国を中心とした新興国での販売を強化します。

 

5)ESG経営

ESG(環境・地域社会・企業統治)、サステナビリティを意識した経営を行います。特に、環境問題への取り組みが企業に求められた重要な社会的責務のひとつであると認識し、気候変動の緩和・適応など環境問題に配慮して行動することについて可能な範囲で積極的に対応し、持続可能な循環型経済社会の実現に貢献致します。

 

(3)経営環境

当連結会計年度(2021年10月1日から2022年9月30日まで)における世界経済は、新型コロナに関しては、ワクチン接種の進展による行動制限の緩和や各種経済対策の効果がみられる一方、ウクライナ等地政学リスクの高まりやそれに伴う化石燃料を始めとする諸物価の高騰が問題となりました。又、半導体等の供給制約や欧米におけるインフレ抑止策の影響で、景気の下振れリスクが残る状況が続いております。

高級二輪乗車用ヘルメット市場、特に先進国市場においては、二輪乗用車が三密を避ける移動手段・レジャーとして人気が高まり、コロナ禍でもむしろ需要が維持・拡大した為、同市場の需要は堅調に推移しました。尚、現在上述した景気の下振れリスクが弊社製品の需要に及ぼす影響につき、鋭意情報を集めているところですが、今のところは、特筆すべき需要の低下は認められておりません。

このような状況下、当社が推し進めているお客様のニーズに沿った新モデルの開発・製造及びお客様の安全をサポートする販売・サービス体制の構築により、競合他社との優位性を発揮し、殆ど全ての国の高級二輪乗車用ヘルメット市場でシェアNo.1を堅持するなど、引き続き成功裏に推移しました。

 

(4)優先的に対処すべき課題

  当社グループは、以下の5点を重要課題として取り組むとともに、コーポレートガバナンスの強化を実行してまいります。

1.生産戦略

 ①生産体制の拡充

    新型コロナウイルス感染拡大を契機として、密にならないレジャーとしてのバイク人気から高級ヘルメット需要が高まった結果、国内外から多くの受注を頂き、生産が需要に追い付かない状況が続いております。このような状況のなか、当社では生産能力の増強に向け、以下の対策を進めて参ります。

    ・生産設備投資の前倒しと人材の積極採用

    ・岩手工場内駐車場を近隣の新規購入用地へ移転し生産スペースを拡張

    ・茨城工場に隣接し、現在茨城県が所有する江戸崎工業団地内の一区画(7.2ha)取得による工場スペースの

    拡張※

    ※茨城県所有の江戸崎工業団地の土地については、2022年1月に茨城県企業局との間で土地売買契約を締結

    し、2023年半ば頃を目途に造成が完了する予定ですが、その使用内容(生産ライン、倉庫、駐車場等)につ

    いては、今後の受注状況等を見極めながら適切なタイミングで判断して参ります。

 ②改善活動等を通じた製造現場の競争力強化

  当社は、Made in Japanが望ましい生産戦略であるとして、これを経営方針として掲げております。ジャストインタイムシステムによる改善活動等を通じ、国内両工場の競争力を持続的に強化して参ります。

2.商品戦略

  ①商品の高付加価値化、多種多様化するニーズの取り込み

   引き続き日々刻々変化するお客様のニーズ(機能、デザイン、かぶり心地等)を重視した製品の設計、開発

   に注力致します。欧州における新安全規格(ECE06)に適合したモデルを順次上市して参ります。又、スマー

   トヘルメット(いわゆるナビゲーション機能付ヘルメット)につきましては、いよいよ2022年末までの上市を予定しております。

 

  ②次期モデル開発力の強化

   当社はSHOEIと価値を分かち合える販売店様との協業で製品の販売を進めて参ります。一方で、自社EC(ネッ

   ト通販サイト)を通じお近くに販売店がないお客様のフォロー体制を整え、自社ショールームでの販売を通

   じ、お客様から頂戴した生のご意見を次のモデル開発に活用させて頂きます。

3.ブランド戦略

 ①PFSサービスの普及

   パーソナル・フィッティング・システム(PFS)サービス(個別フィッティング調整)の普及に引き続き努めて参ります。現状の国内中心から欧米市場等へ普及を拡大していくことで、いつの日か、ヘルメットは自分の頭の形状に合ったフィッティングをして購入するのが当たり前という時代が来るものと確信しております。

 ②広告宣伝

   引き続きMoto GPの代表選手であるマルク・マルケス、アレックス・マルケス兄弟とのレーサー契約を中心に、限られた経営資源を効率的に投資する一方で、今までにない新しい切り口の広告宣伝も検討して参ります。

4.市場戦略

  重点新興国での販売強化

  新興国(特にアジア)における需要の伸びは目覚ましいものがあります。当社はこの需要をしっかりと取り込む為、これらの国で市場調査、マーケティングを強化して参ります。タイ市場においては、2019年8月に現地販売子会社を設立しましたが、新型コロナの影響を受け、日本からの輸入が困難な状態が続いておりましたが、今般その制約もようやく解除され、本格的に販売を開始して参ります。中国市場においては、2021年6月に子会社(SHOEI上海)を設立しました。上海におけるロックダウンは終了しましたが、自由な移動はまだ困難な状況が続いており、本格稼働は2023年1月以降になる見込みです。現在の現地代理店経由の販売は堅調に推移しており、SHOEI上海の活動開始に伴い、市場調査やマーケティング活動を本格スタートさせます。

5.その他の中長期戦略

 ①環境問題への取り組み

 当社は、環境問題への取り組みが企業に求められた重要な社会的責務のひとつであると認識します。当社の企業規模として可能なことは限られておりますが、形だけ整えてお茶を濁したり、いたずらに調査や議論を重ねるのではなく、弊社の身の丈に合った範囲でスピード感をもって実現することにより、持続可能な循環型経済社会の実現に貢献致します。

 ②新事業の検討

  当社は今日まで二輪用ヘルメット専業メーカーとして業容を拡大して参りました。今後ともこの祖業を強化していく方針に変更はありません。一方、世界中でライダーの高齢化や若者の趣味の多様化が進んでいることも歴然とした事実であり、当社の間尺にあった、当社らしい新事業があるのかについて議論は開始しております。一方で、昨今の順調な受注状況を鑑み、お客様の期待に応えることを優先する意味で、限られた経営資源を祖業に集中しているのも事実であります。

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