業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、前年同期に比べ企業業績は総じて改善がみられました。一方、年明けからの新型コロナウイルス変異株の感染拡大により、個人消費は持ち直しの勢いが鈍化しました。さらにロシアがウクライナに侵攻したことで、依然先行き不透明な状況が続いています。当社事業と関連性が強い国内証券市場においては、国内企業の業績回復に伴い、日経平均株価が28,000円台(前年同期は24,000円台)を中心に推移しました。ただし、米国の金融政策やウクライナ情勢などリスク要因への警戒感が強い状況にありました。

こうした経済環境・証券市況を受けて、当連結会計年度は、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードを背景として、投資家への情報提供をさらに強化する動きが高まりました。また、前年同期に比べて国内証券市場・J-REIT市場が回復したことや投資信託への資金流入が続いたこと等から、関連製品の受注が増加しました。これらの結果、当連結会計年度の連結売上収益は、前年同期比1,145百万円増(同4.6%増)の26,142百万円となりました。

売上原価は、サービス体制の強化による労務費の増加や、受注増に対応する外注費の増加を主因として641百万円増加しました。売上原価率につきましては、増収効果により前年同期比0.3ポイント減の61.4%となりました。この結果、売上総利益は前年同期比504百万円増(同5.3%増)の10,087百万円となりました。販売費及び一般管理費は、営業体制強化に伴う人件費増加等により、前年同期比412百万円増(同5.8%増)の7,574百万円となり、販売費及び一般管理費率は前年同期比0.3ポイント増の29.0%となりました。この結果、営業利益は前年同期比353百万円増(同16.6%増)の2,483百万円となりました。

また、金融収益を68百万円、金融費用を6百万円、持分法による投資利益を79百万円それぞれ計上し、税引前利益は前年同期比120百万円増(同4.8%増)の2,624百万円となりました。これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は前年同期比72百万円増(同4.2%増)の1,763百万円となり、連結業績予想を全て上回る結果となりました。なお、前年同期の営業利益は、新型コロナウイルス感染症の影響等により、その他の費用として連結子会社の減損損失351百万円を計上しております。また、前年同期の税引前利益は、持分法適用関連会社の株式を追加取得し、完全子会社化したことに伴う段階取得に係る差益139百万円を計上しております。

当社グループの事業セグメントは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表  連結財務諸表注記 6.セグメント情報」に記載のとおり、ディスクロージャー関連事業の単一セグメントでありますが、取扱製品を区分した売上収益の概況は、次のとおりであります。

<上場会社ディスクロージャー関連>

主力製品である株主総会招集通知については、従来からのカラー化・情報拡充に加え、個人株主数の増加により受注単価が上昇しました。また、業務効率化ニーズの高まりを受け、開示書類作成アウトソーシングサービスの増収が寄与しました。これらの結果、上場会社ディスクロージャー関連の売上収益は、前年同期比388百万円増(同3.6%増)の11,267百万円となりました。

<上場会社IR関連等>

改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応を背景として、英文翻訳サービスの受注が順調に推移しました。また、前年同期はコロナ禍により規模を縮小していた株主総会のビジュアル化サービスや、バーチャル株主総会支援サービスの受注が増加しました。これらの結果、上場会社IR関連等の売上収益は、前年同期比514百万円増(同8.0%増)の6,914百万円となりました。

<金融商品ディスクロージャー関連>

国内の投資信託市場は、前年同期に比べ国内外の株式市場の回復等を背景に資金流入が続き、各種販売用ツールの受注が拡大しました。また、J-REIT市場の回復に伴うファイナンス・IPOの増加や、外国債券の発行が前年同期に比べて改善したことで、関連製品の受注が増加しました。これらの結果、金融商品ディスクロージャー関連の売上収益は、前年同期比261百万円増(同3.9%増)の6,890百万円となりました。

<データベース関連>

データベース関連では新規顧客の受注があったものの、既存顧客との契約更改に際し、一部解約や単価ダウンがありました。その結果、データベース関連の売上収益は、前年同期比18百万円減(同1.6%減)の1,071百万円となりました。

なお、グループシナジーを最大化すべく、当社のデータベース事業を簡易吸収分割により連結子会社である株式会社アイ・エヌ情報センターに承継(2021年5月)させ、データベース事業の再編を実施いたしました。

 

   (製品区分別売上収益)

区分

   前連結会計年度

(自 2020年4月1日

 至 2021年3月31日)

   当連結会計年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

増減

(△印減)

金額

(千円)

構成比

(%)

金額

(千円)

構成比

(%)

金額

(千円)

増減率

(%)

 上場会社ディスクロージャー

 関連

10,879,556

43.5

11,267,332

43.1

387,775

3.6

 上場会社IR関連等

6,399,854

25.6

6,913,985

26.4

514,131

8.0

 金融商品ディスクロージャー

 関連

6,629,012

26.5

6,889,936

26.4

260,923

3.9

 データベース関連

1,088,152

4.4

1,070,596

4.1

△17,556

△1.6

合計

24,996,575

100.0

26,141,848

100.0

1,145,273

4.6

  (注)金額は販売価格によっております。

 

② 資産、負債及び資本の状況

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ777百万円減少し、35,560百万円となりました。

流動資産は496百万円減少し、17,529百万円となりました。主な要因は、現金及び現金同等物の減少637百万円と、棚卸資産の増加135百万円等であります。非流動資産は281百万円減少し、18,031百万円となりました。主な要因は、使用権資産の減少799百万円と、その他の金融資産の増加528百万円等であります。

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ778百万円減少し、12,107百万円となりました。

流動負債は12百万円減少し、6,292百万円となりました。主な要因は、営業債務及びその他の債務の増加109百万円と、その他の流動負債の減少110百万円等であります。非流動負債は766百万円減少し、5,815百万円となりました。主な要因は、リース負債の減少788百万円等であります。

当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ1百万円増加し、23,453百万円となりました。主な要因は、親会社の所有者に帰属する当期利益1,763百万円の計上による増加と自己株式の取得による減少1,215百万円等であります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ637百万円減少(前年同期比5.0%減)し、当連結会計年度末には12,208百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は3,843百万円(前年同期は3,917百万円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、税引前利益2,624百万円に対し、非資金損益項目等の調整を加減した営業取引による収入4,695百万円、利息及び配当金の受取額46百万円であり、支出の主な内訳は、法人所得税の支払額893百万円等であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は1,609百万円(前年同期は1,339百万円の使用)となりました。支出の主な内訳は、無形資産の取得による支出1,229百万円、投資の取得による支出323百万円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は2,894百万円(前年同期は1,660百万円の使用)となりました。支出の主な内訳は、自己株式の取得による支出1,215百万円、リース負債の返済による支出837百万円等であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

当社グループ(当社及び連結子会社7社)の事業セグメントは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表  連結財務諸表注記 6.セグメント情報」に記載のとおり、ディスクロージャー関連事業の単一セグメントでありますが、生産、受注及び販売の実績については、上場会社ディスクロージャー関連、上場会社IR関連等、金融商品ディスクロージャー関連、データベース関連の4製品区分で示しております。

 

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績を製品区分別に示すと、次のとおりであります。

 製品区分別の名称

 当連結会計年度

(自  2021年4月1日

  至  2022年3月31日)

 前年同期比(%)

上場会社ディスクロージャー関連

(千円)

11,267,332

103.6

上場会社IR関連等

(千円)

6,913,985

108.0

金融商品ディスクロージャー関連

(千円)

6,889,936

103.9

データベース関連

(千円)

1,070,596

98.4

合計

(千円)

26,141,848

104.6

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績を製品区分別に示すと、次のとおりであります。

製品区分別の名称

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

上場会社ディスクロージャー関連

11,561,170

104.7

2,661,847

112.4

上場会社IR関連等

7,378,859

114.8

1,562,120

142.4

金融商品ディスクロージャー関連

7,060,355

104.3

1,638,892

111.6

データベース関連

1,122,184

107.6

184,505

138.8

合計

27,122,568

107.3

6,047,364

119.4

(注)金額は販売価格によっております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績を製品区分別に示すと、次のとおりであります。

 製品区分別の名称

 当連結会計年度

(自  2021年4月1日

  至  2022年3月31日)

 前年同期比(%)

上場会社ディスクロージャー関連

(千円)

11,267,332

103.6

上場会社IR関連等

(千円)

6,913,985

108.0

金融商品ディスクロージャー関連

(千円)

6,889,936

103.9

データベース関連

(千円)

1,070,596

98.4

合計

(千円)

26,141,848

104.6

(注)主要な販売顧客については、該当するものはありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 経営成績等の分析

当社グループの当連結会計年度の売上収益は前年同期比1,145百万円増(同4.6%増)の26,142百万円となりました。その要因や市場背景を含めた各製品分野の特記事項についてご説明いたします。

<上場会社ディスクロージャー関連>

当分野の売上収益は、前年同期比388百万円増(同3.6%増)の11,267百万円となりました。主たる増収要因は、上場会社による情報開示の充実の動きが継続し、株主総会招集通知のカラー化が進展したことや、個人株主数の増加に伴い印刷部数が増加したこと、また議案の分量増加等によりページ数が増加したことにあります。また、コロナ禍によって業務効率化やアウトソースニーズが高まる等、働き方改革が一段と推進されたことで、開示書類作成アウトソーシングサービスが拡大しました。加えて、国内証券市場が前年同期に比べて回復したことから、IPO関連製品の受注も増加しました。

なお、当社主力製品の顧客数に直結する重要な指標である国内上場会社数は、当連結会計年度末において約3,870社(前期末比約50社増)と8年連続で増加いたしました。お客様のニーズに対応するサービスの提供に取り組むことで、顧客数の増加と1社当たり売上収益の増加による成長力の向上を図っております。

 

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<上場会社IR関連等>

当分野の売上収益は、前年同期比514百万円増(同8.0%増)の6,914百万円となりました。主たる増収要因は、コーポレートガバナンス・コードの改訂等により国内外の投資家と上場会社の対話ニーズが高まり、これに対応するIR関連製品の受注が増加したことです。

当分野においては、主に英文翻訳サービスやWebサービスに加えて、バーチャル総会等の株主総会運営支援サービスの受注が増加いたしました。さらに「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」にも記載のとおり、ディスクロージャーの電子化の進展に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、Webでの情報開示充実ニーズが一層高まってきています。これに対応して、当社及び連結子会社である株式会社アスプコミュニケーションズ、株式会社レインボー・ジャパン並びに持分法適用関連会社の株式会社ミツエーリンクスの関係会社3社にて、Webサイトの企画・制作・運用体制を強化してまいりました。

一方、減収要因としては、株主総会招集通知のカラー化に伴い、株主通信の受注量の減少傾向が続いています。

コーポレートガバナンス・コードや東京証券取引所のプライム市場を対象とした開示強化を背景に、上場会社が投資家との対話充実や非財務情報開示の充実を図る傾向は、今後も継続すると想定されることから、当社では対応するサービスの提供体制強化に取り組んでおります。

 

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<金融商品ディスクロージャー関連>

当分野の売上収益は、前年同期比261百万円増(同3.9%増)の6,890百万円となりました。主たる増収要因は、国内の投資信託市場において前年同期に比べ国内外の株式市場の回復等を背景に資金流入が続き、各種販売用ツールの受注が拡大したことと、J-REIT市場の回復によりファイナンス・IPOが増加したこと、外国債券の発行が前年同期に比べ改善したことです。一方、ネット証券の拡大等により目論見書の印刷部数は近年減少傾向にあり、今後さらにペーパーレス化が進むことが想定されます。

このような市場環境の変化に対応し、金融商品の開示実務を効率化するシステムサービスの導入促進・機能拡張を進め、アウトソーシングサービスの拡大、金融商品関連の販売用資料やWebサイトの受注拡大等、中長期的な成長につながるサービス領域の拡張に引き続き取り組んでまいります。

 

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<データベース関連>

当分野の売上収益は、前年同期比18百万円減(同1.6%減)の1,071百万円となりました。これは、企業情報データベース「eol」及び経済統計・ファイナンスデータベース「INDB」ともに新規顧客の受注獲得に努めたものの、コロナ禍における経営環境の悪化も影響し、既存顧客との契約更改に際し、一部解約や単価ダウンが発生したことが要因となります。

このような状況の中、両データベースの販路の相互活用や、コンテンツを融合させた新たなサービスの企画・開発を進め、グループシナジーを最大化すべく、2021年5月には当社のデータベース事業を簡易吸収分割により連結子会社である株式会社アイ・エヌ情報センターに承継させ、データベース事業の再編を実施いたしました。

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当連結会計年度が4.6%の増収となったのに対し、営業利益が16.6%の増益になった要因についてご説明いたします。

当社では、中長期的な事業領域の拡張に対応する体制強化を進めております。当連結会計年度においても、成長分野を中心とした人財投資を継続したことで労務費・人件費が増加したことに加え、アフターコロナを見据えたDX投資を継続しました。こうしたコストの増加はあったものの、子会社の減損損失を中心としたその他の費用が前年同期に比べて減少しました。

これらの結果、営業利益は2,483百万円(前年同期比16.6%増)となり、営業利益率は前年同期比1.0ポイント増の9.5%となりました。

 

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② 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの当連結会計年度の営業キャッシュ・フローは3,843百万円であり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、12,208百万円保有しております。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、資金調達は自己資金を基本とし、必要に応じて金融機関からの借入を行っております。強固な財務基盤を維持しつつ営業キャッシュ・フローにより得られた資金を、開示実務支援システム等の開発投資や配当等の株主還元へと配分しております。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は借入金及びリース負債を含む3,467百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

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