当連結会計年度におけるDNPグループの状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の影響が続きましたが、ワクチンの普及などもあり、徐々に経済活動再開の動きも見られました。国内では働き方や生活様式の変化も続き、遠隔教育やオンライン診療、第5世代移動通信システム(5G)関連の需要が一層拡大しました。また、地球温暖化防止や環境負荷低減の取り組みが世界で広がるなか、脱炭素社会や循環経済の構築につながる環境配慮型の製品・サービスのニーズが高まりました。一方、期の後半には、ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスク、原材料価格の一段の上昇、半導体不足の長期化など、2022年度にかけて影響が強まりました。
こうした状況のなか、DNPグループは、持続可能なより良い社会、より快適な暮らしの実現に向けて、社会の課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値の創出に努めました。DNPグループは常に、社会に貢献していくこと、人々の暮らしを豊かにしていくことを「志」として持ち続けており、「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントにその思いを込めています。独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多くのパートナーとの連携も深めて、人々や社会に必要とされる価値を提供することで、欠かせない会社としての「存在意義」の発揮に努めています。
当期は、高い市場成長性と収益性を見込む「注力事業」として、「IoT・次世代通信」「データ流通」「モビリティ」「環境」関連のビジネスを設定し、経営資源を重点的かつ最適に配分して事業の拡大に取り組みました。
「IoT・次世代通信」関連では、5G向けにナノインプリントリソグラフィによる次世代半導体製品の開発・供給を進めました。この技術は、半導体製造時の省電力化やコスト低減を実現し、脱炭素社会の実現にも貢献しています。
「データ流通」関連では、2021年10月に、高等教育の高度化への取り組みを目的として、NTT西日本及びNTT東日本との共同出資で株式会社NTT EDXを設立しました。電子教科書・教材事業を軸に、高等教育の課題解決に向けた各種サービスの提供や、出版社・書店の業務の電子化・効率化の支援に取り組みました。また証明写真機「Ki-Re-i」を活用したマイナンバーカードの電子申請サービスも提供し、行政サービスのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進して、新しい生活様式に対応した非接触での申請を可能にしました。
「モビリティ」関連では、環境負荷の低減やエネルギー効率の向上、より高い情報セキュリティや安全性・快適性が求められる「次世代のモビリティ社会」に向けた製品・サービスの開発に努めました。例えば、電気自動車(EV)等に使用するリチウムイオン電池用のバッテリーパウチや、内外装材のデザインと機能をともに高める加飾フィルムやパネルなどを開発・提供しました。
「環境」関連では、単一素材(モノマテリアル)のプラスチックで構成することでリサイクル性を高めた「モノマテリアル包材」の開発を強化しました。DNPグループの独自技術によって、酸素や水蒸気に対する高いバリア性に加えて、メタリック調の意匠・デザインを実現し、液体の内容物にも対応可能なポリプロピレン(PP)のフィルムパッケージを開発しました。この製品が2021年6月に世界的な消費財メーカーに採用され、東南アジア市場での販売がスタートしました。
そのほか、競争力強化のための構造改革にも取り組み、強い事業ポートフォリオの構築を推進しています。長期的成長を支える経営基盤の強化に向けて、DXなどの大きな潮流(メガトレンド)を捉え、ICT活用による生産性の向上や情報基盤の強化のほか、環境及び人財・人権の取り組みを加速させました。
これらの結果、当連結会計年度のDNPグループの売上高は1兆3,441億円(前期比0.7%増)、営業利益は667億円(前期比34.8%増)、経常利益は812億円(前期比35.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、退職給付制度の改定をはじめ、補修対策引当金の見直し及び投資有価証券の売却に伴う特別利益の計上もあり、971億円(前期比287.4%増)となりました。また、DNPグループが収益性指標の1つとしている自己資本利益率(ROE)は9.1%となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
情報イノベーション事業は、BPO(Business Process Outsourcing)の大型案件が減少したほか、ICカードもマイナンバーカードの需要拡大が一段落し、当事業全体で減収となりました。
イメージングコミュニケーション事業は、主力の米国市場や国内において、写真の撮影・プリント用の部材とサービスの需要が大幅に回復したほか、その他の地域での事業も順調に推移し、当事業全体で増収となりました。
出版関連事業は、電子書籍の販売が引き続き堅調に推移し、紙と電子の両方に対応したハイブリッド型総合書店「honto」の売上が増加したほか、電子図書館サービスや図書館運営業務が順調に推移しました。一方、雑誌の印刷が伸び悩むなどの影響も大きく、当事業全体で減収となりました。
その結果、政策関連大型BPOが昨年実績から減少したことなどにより、部門全体の売上高は6,989億円(前期比3.2%減)となりましたが、営業利益はコスト構造改革の効果もあり276億円(前期比43.9%増)となりました。
包装関連事業は、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING」の開発・販売に努めたほか、製造プロセスや業務の効率化などの構造改革が一定の成果を挙げました。紙器、軟包装がわずかに減少したものの、無菌充填システムの販売増加もあり、当事業全体で増収となりました。
生活空間関連事業は、住宅や自動車市場の需要回復により、住宅用内外装材や自動車内装用の加飾フィルムなどが増加しました。また、感染防止対策に有効な抗菌・抗ウイルス製品の需要も拡大し、当事業全体で増収となりました。
産業用高機能材関連事業は、世界的な半導体不足による、サプライチェーンにおける一時的な減産の影響を受けたものの、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが、電気自動車の世界的な需要拡大により車載向けは増加、テレワークの広がり等によりタブレット端末やスマートフォン向け需要は堅調に推移し、当事業全体で増収となりました。
その結果、部門全体の売上高は3,870億円(前期比5.2%増)となりました。営業利益は、産業用高機能材関連事業の拡大や、製造体制の最適化等によるコストダウンを進めましたが、原材料高の影響によって、136億円(前期比2.4%減)となりました。
ディスプレイ関連製品事業は、光学フィルム関連が巣ごもり消費需要の一巡による影響を受けたものの、全体では増加しました。また、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクは、スマートフォン用のディスプレイ需要が堅調に推移し、当事業全体で増収となりました。
電子デバイス事業は、企業や自治体等のDXの加速などによって半導体需要が拡大し、通信や車載、データセンター向けの半導体製品の製造用フォトマスクが増加しました。また、半導体パッケージ用部材であるリードフレームなど各種関連製品も好調に推移し、当事業全体で増収となりました。
その結果、部門全体の売上高は2,110億円(前期比7.1%増)となり、営業利益は売上の増加によって、464億円(前期比26.7%増)となりました。
コロナ禍での生活様式の変化や環境負荷低減のニーズの拡大に対応して、商品名等のラベルを付けないPETボトル飲料のオンライン及び店頭での販売に注力しました。
部門全体の売上高は、家庭内消費が主力のスーパーやウェブサイトでの販売は増加したものの、外出自粛や行動制限の影響を受けて飲食店での販売が伸び悩んだことにより、497億円(前期比3.4%減)となりました。営業利益は、シェア拡大に向けた販売促進費の増加や原材料・資材費の高騰の影響などにより、6億円(前期比17.8%減)となりました。
当連結会計年度末の資産、負債、純資産については、総資産は、退職給付に係る資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ516億円増加し、1兆8,766億円となりました。
負債は、退職給付に係る負債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ18億円増加し、7,282億円となりました。
純資産は、利益剰余金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ497億円増加し、1兆1,484億円となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ108億円減少し、2,933億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,268億円、減価償却費511億円などにより820億円の収入(前連結会計年度は616億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出536億円などにより392億円の支出(前連結会計年度は562億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出300億円、配当金の支払額176億円などにより577億円の支出(前連結会計年度は782億円の支出)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、飲料部門においては、受注を主体とした生産を行っていないため、受注状況の記載を省略しております。
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)セグメント間取引については相殺消去しております。
経営者の視点によるDNPグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
DNPグループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度(以下「前期」)に比べて87億円増加し、1兆3,441億円(前期比0.7%増)となりました。
売上原価は、前期に比べて73億円減少して1兆512億円(前期比0.7%減)となり、売上高に対する比率は前期の79.3%から78.2%となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べて12億円減少して2,261億円(前期比0.5%減)となり、この結果、営業利益は前期に比べて172億円増加して667億円(前期比34.8%増)となりました。
営業外収益は、持分法による投資利益の増加等により前期に比べて29億円増加して185億円(前期比18.7%増)となり、営業外費用は、寄付金の減少等により前期に比べて11億円減少して40億円(前期比22.0%減)となりました。この結果、経常利益は前期に比べて213億円増加して812億円(前期比35.6%増)となりました。
特別利益は、退職給付制度改定益の計上等により、前期に比べて516億円増加して545億円(前期比1,747.1%増)となり、特別損失は、投資有価証券売却損の減少等により前期に比べて75億円減少して89億円(前期比45.7%減)となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は971億円(前期比287.4%増)となりました。
DNPグループの経営成績に重要な影響を与えた要因は以下のとおりです。
当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の影響が続きましたが、ワクチンの普及などもあり、徐々に経済活動再開の動きも見られました。国内では働き方や生活様式の変化も続き、遠隔教育やオンライン診療、第5世代移動通信システム(5G)関連の需要が一層拡大しました。また、地球温暖化防止や環境負荷低減の取り組みが世界で広がるなか、脱炭素社会や循環経済の構築につながる環境配慮型の製品・サービスのニーズが高まりました。一方、期の後半には、ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスク、原材料価格の一段の上昇、半導体不足の長期化など、2022年度にかけて影響が強まりました。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
情報コミュニケーション部門については、イメージングコミュニケーション事業のほか、電子書籍の販売やハイブリッド型総合書店「honto」、電子図書館サービスや図書館運営業務が拡大したものの、BPOの大型案件やマイナンバーカード等のICカードが減少したことに加え、雑誌の印刷が伸び悩んだ結果、部門全体の売上高は前期比3.2%減の6,989億円となりました。営業利益は、コスト構造改革の効果などによって前期比43.9%増の276億円となりました。営業利益率は、前期の2.7%から1.3ポイント上昇し、4.0%となりました。
生活・産業部門については、包装関連事業は、紙器や軟包装がわずかに減少したものの、無菌充填システムの販売増加もあり、増収となりました。また、生活空間関連事業も、住宅用内外装材や自動車内装用の加飾フィルムなどが増加したほか、抗菌・抗ウイルス製品の需要も拡大し、増収となりました。さらに、産業用高機能材関連事業は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが車載用を中心に好調に推移し、増収となりました。その結果、部門全体の売上高は前期比5.2%増の3,870億円となりました。営業利益は、産業用高機能材関連事業の拡大や、製造体制の最適化等によるコストダウンを進めましたが、原材料高の影響によって、前期比2.4%減の136億円となりました。営業利益率は、前期の3.8%から0.3ポイント低下し、3.5%となりました。
エレクトロニクス部門については、ディスプレイ関連事業は光学フィルム関連が増加したほか、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクも堅調に推移し、増収となりました。また、電子デバイス事業も、フォトマスクや半導体パッケージ用部材であるリードフレームなど各種関連製品が好調に推移し、増収となった結果、部門全体の売上高は前期比7.1%増の2,110億円となりました。また、営業利益は、売上の増加により、前期比26.7%増の464億円となりました。営業利益率は、前期の18.6%から3.4ポイント上昇し、22.0%となりました。
飲料部門については、家庭内消費が主力のスーパーやウェブサイトでの販売は増加したものの、外出自粛や行動制限の影響を受けて飲食店での販売が伸び悩んだことにより、部門全体の売上高は前期比3.4%減の497億円となりました。また、営業利益は、シェア拡大に向けた販売促進費の増加や原材料・資材費の高騰の影響などにより、前期比17.8%減の6億円となりました。営業利益率は、前期の1.6%から0.2ポイント低下し、1.4%となりました。
セグメント資産の状況については、情報コミュニケーション部門は前期末に比べて、155億円減少して8,832億円(前期末比1.7%減)となりました。
生活・産業部門は前期末に比べて、153億円増加して4,586億円(前期末比3.5%増)となりました。
エレクトロニクス部門は前期末に比べて、230億円増加して2,355億円(前期末比10.9%増)となりました。
飲料部門は前期末に比べて、23百万円増加して490億円(前期末比0.0%増)となりました。
報告セグメント合計では前期末に比べて、228億円増加して1兆6,264億円(前期末比1.4%増)となりました。
DNPグループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期末に比べ108億円減少し、2,933億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,268億円、減価償却費511億円などにより820億円の収入(前期は616億円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出536億円などにより392億円の支出(前期は562億円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出300億円、配当金の支払額176億円などにより577億円の支出(前期は782億円の支出)となりました。
a.財務戦略の基本的な考え方
DNPグループは、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値の創出のため、成長領域を中心とした事業へ集中的に事業投資(研究開発投資、設備投資、戦略的提携やM&A投資)を行うとともに、それらを支える人財投資に経営資源を投入していきます。そのほか、資本効率の向上、財務基盤の安定化と株主還元の実施など、さまざまな資本政策を総合的に勘案して推進していきます。
b.DNPグループの資本の財源
DNPグループは、主に営業活動により確保されるキャッシュ・フローにより、成長を維持・発展させていくために必要な資金を確保しております。
設備投資資金などの資金需要については自己資金で賄うことを基本としておりますが、自己資金に加え、他人資本も活用し、成長投資資金を調達していきます。
c.DNPグループの経営資源の配分に関する考え方
DNPグループは、成長領域を中心とした注力事業への投資などを進めていきます。
重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源泉等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)新設等」に記載のとおりであります。
また、利益の配分については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。
DNPグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。
お知らせ