課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

DNPグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

DNPグループは経営の基本方針として、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」という企業理念を掲げ、長期を見据えて、自らがより良い未来をつくり出すための事業活動を展開し、企業価値を安定的に拡大していくよう努めています。事業ビジョンには、「P&Iイノベーションにより、4つの成長領域を軸に事業を拡げていく。」ことを掲げ、独自の「P&I」(印刷と情報)の強みの掛け合わせとパートナーとの連携を通じた価値創出に努めています。

また、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値の創出に努め、それらの価値を生活者の身近に常に存在する「あたりまえ」のものにしていくように努めています。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けるDNPの取り組みを、「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで社内外に表明しています。そして、その実現のために、「価値の創造」「誠実な行動」「高い透明性(説明責任)」という3つの責任を果たし続けていきます。

 

例えば、近年特に地球環境に対する負荷の低減が強く求められるなか、DNPグループは従来から常に、事業活動と地球環境との共生を絶えず考え、行動規範のひとつに「環境保全と持続可能な社会の実現」を掲げてきました。サステナブルな地球の上で初めて、健全な社会と経済、快適で豊かな人々の暮らしが成り立つと捉え、環境関連の課題を解決するとともに、人々の期待に応える価値の創出に注力しています。

2020年3月には「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定し、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けた取り組みを加速させています。重要課題のひとつである気候変動対応については、事業に関するリスクと機会の抽出、シナリオ分析による財務への影響評価を実施しています。また、事業ポートフォリオの転換、省エネルギー活動の強化、再生可能エネルギーの導入などにより、自社拠点での事業活動にともなう温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすることを目指すとともに、製品・サービスを通じて脱炭素社会の構築などに貢献していきます。これらの取り組みについて、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に沿った情報開示を進めるとともに、「自然関連財務情報開示タスクフォース」(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)への対応も視野に入れていきます。

 

(2)目標とする経営指標

DNPグループは、環境・社会・経済の動向や人々の価値観などが大きく変化するなかでも、企業理念に基づき、自らが主体となって、持続可能なより良い社会、より快適な暮らしの実現に向けて、新しい価値の創出に取り組んでいます。グループの強みを活かすことで事業を拡大していく「4つの成長領域」を設定して、長期を見据えた戦略を展開し、いつまでに・何を・どの程度達成するかといった中間目標(マイルストーン)を具体的に設定しながら、成果を積み上げていきます。

現在は、2025年3月期の経営指標として「営業利益750億円、営業利益率5.2%、ROE5.0%以上」を設定した上で、2020年度から2022年度までの3か年の中期経営計画を推進しています。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

DNPグループは、2023年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画において、「P&Iイノベーションによる価値の創造」と「成長を支える経営基盤の強化」の2つを基本方針として、目標の達成に努めていきます。

 

 <基本方針1>P&Iイノベーションによる価値の創造
〔1-1:成長領域を中心とした価値の創出〕

DNPグループは、社会の課題や大きな潮流(メガトレンド)、人々の価値観の変化などを分析し、ステークホルダーの関心、DNPグループの事業との関連における影響度などを考慮して重要課題を設定しています。メガトレンドとしては、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」をはじめ、「データ経済化」「国内の人口減少と世界の人口増」「人類の長寿命化」「都市のスマート化」「脱炭素社会の構築」などが続いていくと捉えています。

こうした動向に対して、DNPだからこそ創出できる価値を設計し、収益性と市場成長性の軸でそれらの価値を適切に評価して、「注力事業」を設定しています。「IoT・次世代通信」「データ流通」「モビリティ」「環境」という「注力事業」を中心に経営資源を最適に配分することで、バランスの取れた強靭な事業ポートフォリオを構築していきます。

 

〔1-2:各国・地域への最適な価値の提供〕

DNPグループは、それぞれの国・地域の特性や、そこで暮らす人々の課題・ニーズを的確に捉え、最適な製品・サービスを開発・提供することで、グローバルに事業を展開しています。リチウムイオン電池用バッテリーパウチ、有機ELディスプレイ製造用メタルマスク、ディスプレイ用光学フィルム、写真プリント用昇華型熱転写記録材など、世界トップシェアを獲得している事業のさらなる拡大に努めるほか、新規事業の創出にも取り組み、グローバル市場に新しい価値を提供していきます。

 

〔1-3:あらゆる構造改革による価値の拡大〕

強い事業ポートフォリオの構築に向けて、DNPグループ全体で多種多様な構造改革を推進していきます。例えば、情報コミュニケーション部門での紙メディア製造拠点の縮小、生活・産業部門での低付加価値製品の見直しと拠点の再編のほか、エレクトロニクス部門では、データ解析やロボット・AI活用による生産性の大幅な向上などを進めていきます。こうした取り組みによって生み出した人的資源や土地・設備などのリソースを「注力事業」の開発・製造に振り向けることで、事業構造の転換を進め、事業競争力をさらに強化していきます。

 

 <基本方針2>成長を支える経営基盤の強化
〔2-1:財務・非財務資本の強化〕

DNPグループは、中長期的な成長に向けて、財務資本と非財務資本を統合的に活かすことで経営基盤を強化していきます。事業の成長を支える資本政策を進めるほか、非財務資本(人的/知的/製造/自然/社会・関係の各資本)の強化・拡大に努め、具体的な行動計画を策定・実行していきます。

資本政策については、<基本方針1>と連動させて、「注力事業」を中心とした投資を進めています。これらの事業投資の財源として、自己資金だけでなく、他人資本の活用による成長資金の調達や、遊休資産の圧縮、政策保有株式の売却などを進めていきます。そのほか、資本効率の向上、財務基盤の安定化と株主還元の実施など、さまざまな資本政策を総合的に勘案して推進していきます。

非財務資本のうち、近年特に重要性を増している人的資本に関しては、行動規範のひとつに「人類の尊厳と多様性の尊重」を掲げるなど、従来から人財・人権を重視した企業活動を行っています。国連の「国際人権章典」「グローバル・コンパクト」「ビジネスと人権に関する指導原則」や国際労働機関(ILO)の「労働の基本原則および権利に関する宣言」等に基づいた活動を継続しており、2020年には「DNPグループ人権方針」を策定しています。

また、DNPグループは社員一人ひとりのあらゆる違いを尊重し、お互いの強みを掛け合わせ、新たな価値の創出につなげています。多様な人材の育成と働き方の実現、社員が活躍できる組織風土の醸成に向けて、「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂:D&I)」の取り組みを推進し、特に意思決定層の多様性を高めるためにも、あらゆるジェンダーギャップの解消に努めているほか、職場の心理的安全性の向上に努め、障がいを持つ社員や各国・地域の社員、あらゆる年齢の社員やLGBTQ+の社員を含む全社員の活躍を支援する施策・制度の増強などに取り組んでいます。

例えば、「D&I」に関する全社員の当事者意識を醸成していく社内イベント「ダイバーシティウィーク」を2021年から開催しています。また、「働き方の変革」には2009年度から、「人事諸制度の再構築」には2019年度から集中的に取り組んでいます。社員一人ひとりの状況に合わせて選択できる多様な働き方の制度を構築し、コロナ禍前からテレワークを推進してきたほか、短時間勤務・短日勤務、ワーケーション、社外での副業や、社内の他の部署の仕事に携わる社内複業、人材公募制度を利用した他企業への出向など、さまざまな取り組みを全社に広げています。

女性社員に対しては、2000年代の初めからその活躍推進に力を入れており、研修等によるキャリア形成と管理職登用を促進しています。その結果、2021年度末に女性の管理職比率が7.4%となり、管理職層・リーダークラスの人数も2016年2月の2.2倍に増加して、2019年の設定目標を達成しました。また、2025年度末までに部長クラス以上を2021年度末の1.5倍に、課長クラスの割合を15%以上に、リーダークラスの割合を25%以上にする目標を新たに掲げ、その達成に努めていきます。

そのほか、社員の健康管理を経営の重要課題のひとつと捉え、2021年4月に策定した「DNPグループ健康宣言」に基づき、戦略的に健康づくりを推進し、活力の向上や組織の活性化につなげる「健康経営」を実践しています。

・外部評価

なでしこ銘柄選定、PRIDE指標GOLD、D&I award、健康経営ホワイト500選定。

 

 

〔2-2:コーポレート・ガバナンスの強化〕

DNPグループは経営の重要課題のひとつとして、コーポレート・ガバナンスの強化に努めています。迅速かつ的確な経営の意思決定や業務執行、及びそれらを監督・監査する強固な体制を構築して運用しています。

取締役は12名のうち1名が女性であり、また全体の3分の1となる4名が社外取締役です。監査役は5名のうち1名が女性であり、また全体の過半となる3名が社外監査役です。取締役会の実効性の分析・評価は年1回実施しており、分析結果を社外役員で議論するとともに、取締役会で共有しています。

2022年4月には、環境・社会・経済の持続可能性を高め、DNP自身の持続的な成長をさらに推進していくため、代表取締役社長を委員長、代表取締役専務を副委員長とし、本社の各部門を担当する取締役・執行役員を委員として構成した「サステナビリティ推進委員会」の体制を再編しました。当委員会は「企業倫理行動委員会」や「BCM推進委員会」とも連携し、環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視した中長期的な企業活動のもとで、全社リスクを分析・管理していきます。また、リスクとして把握した変動要因は、同時に事業拡大の機会でもあるという認識に立って、多様な社会の多くの人々が期待し、「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも貢献する新しい価値の創出につなげていきます。

社員に対しても、一人ひとりが企業としての社会的責任を果たしていくため、「DNPグループ行動規範」に基づいた行動を促すとともに、さまざまな研修・教育を実施してコンプライアンス意識の醸成をさらに図っていきます。

 

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