業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の金額並びに開示に影響を与える見積りを行っています。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断をしていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、経営者が行う見積りや判断のうち、特に次の重要な会計方針及び見積りが財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があると考えています。

(a) たな卸資産の評価

「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

(b) 固定資産の減損

当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討し、固定資産に減損が見込まれる場合は、将来キャッシュ・フローの現在価値又は正味売却価額に基づいて減損損失を計上しています。将来の事業計画の変更や経営環境等の悪化により将来キャッシュ・フローの見積りが著しく減少する場合は、減損損失を計上する可能性があります。

 

(c) 投資の減損

当社グループは、時価のある有価証券について、市場価格等が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。また、下落率が30%以上50%未満の有価証券については、過去2年間の平均下落率においても概ね30%以上に該当した場合に減損処理を行っています。時価のない有価証券については、その発行会社の財政状態の悪化により実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合に、原則として減損処理を行っています。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、評価損を計上する可能性があります。

 

(d) 繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産の算定にあたって、将来の業績予測やタックス・プランニングを基に将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。経営環境等の悪化により、その見積りに変更が生じた場合は、繰延税金資産が取り崩されることにより税金費用を計上する可能性があります。

 

(e) 退職給付債務の算定

当社は確定給付企業年金制度(キャッシュバランスプラン)を採用しており、従業員の退職給付費用及び退職給付債務について、数理計算に使用される前提条件に基づいて算定しています。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率及び昇給率、年金選択率、年金資産の期待運用収益率等の重要な見積りが含まれており、特に損益に重要な影響を与えると思われる割引率については、期末における日本の長期国債の利回りを基礎として設定しています。また、長期期待運用収益率については、運用方針等に基づき設定しています。実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件が変更された場合、その影響は累計され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来の会計期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

 

(2) 経営成績等の状況の概要並びに経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループでは「世界中の人々をワクワクさせる」というビジョンのもと、「生み出す」、「伝える」、「届ける」、「支える」という重点戦略を掲げ、中期経営計画の2年目として、「当社にしかできない高付加価値な製品・サービスの開発」、「顧客創造と熱狂ファンの絆づくりによる市場開拓」、「欠品/過剰在庫のない商品供給を止めない世界一のSCMの実現」、「成長を支える人づくり 、徹底した見える化とガバナンス強化」に取り組みました。

「当社にしかできない高付加価値な製品・サービスの開発」においては、市場競争力強化を目指した主要製品群のリニューアル及びラインアップの追加に加え、シンセサイザー・サウンドを搭載したギターである「エレクトロニック・ギター」といった新規顧客の獲得を目指した製品開発に引き続き取り組みました。開発プロセスにおいては、中長期的な成長を視野に様々な製品カテゴリーにおいて共通プラットフォームの活用を進め、より効率的に素早くアイデアを製品化できる体制を整えました。加えて、ハードウエアプロバイダーからソリューションプロバイダーに進化するという中長期目標に向け、様々なソフトウエア音源やサウンドをクラウド経由で提供するサービス“Roland Cloud”のコンテンツ拡充、及び更に魅力を高める新サービスの開発に注力しました。11月には、Roland Cloudと当社シンセサイザーをワイヤレスで接続し、Roland Cloudの多彩なコンテンツをシームレスに楽しめるサービス「Roland Cloud Connect」を発売しました。

「顧客創造と熱狂ファンの絆づくりによる市場開拓」においては、引き続きデジタルマーケティングの活用を推進しました。Withコロナによる新しいLifestyleの定着により、お客様とのオンラインでの接点の重要性が増す中で、販売店様との協業によりお客様にとって魅力的なデジタルコンテンツを提供し、購買につなげていく「コンバージョン・パートナー・プログラム」を各国で促進しました。一方で、当社ではお客様が実際に楽器に触れて納得して購入いただける場も、当社製品の価値を知っていただくうえで非常に重要と考えており、専門スタッフを配置したStore in Store(販売店様店舗における当社専用の販売スペース)を世界各地の主要都市に設置する活動も行いました。Store in Storeでは、自宅にいながらオンラインで専門スタッフによる接客を受けることができる新サービス「Roland Live」を、Withコロナにおける新たな取り組みとして欧州で開始しました。また10月には、国内において、オンラインでのユーザー参加型イベント「ROLAND/BOSS プレイヤーズ・サミット2021」を開催するなど、お客様との絆づくりにも引き続き取り組みました。

「欠品/過剰在庫のない商品供給を止めない世界一のSCMの実現」においては、新型コロナウイルス感染症に端を発した、調達、生産、輸送面での様々な困難に対応しました。半導体を中心とした世界的な原材料需給のひっ迫に対しては、市場在庫の早期確保や長期での購買計画の立案、代替部品対応に向けた設計変更等を行いました。生産面では、感染対策の徹底によりマレーシア工場の操業停止影響の最小化に努めました。また需要増への対応としては、中国工場でのピアノ生産を開始しました。輸送面では、世界的な物流増加によりリードタイムが長期化しましたが、地域配分の最適化や現地在庫の販売強化により、当期業績への影響を最小限に留めました。中期的に進めている機種数の削減に関しては、計画に沿って進捗しました。

「成長を支える人づくり 、徹底した見える化とガバナンス強化」においては、7月に女性活躍推進法に基づく優良企業として「えるぼし」の最高位である3つ星の認定を取得しました。また人事制度面では、Withコロナを契機として、昨年度よりフレックス、テレワークの制度作りに取り組んでいましたが、今年度より本格的に導入しました。

 

(a) 売上高

当連結会計年度の売上高は80,032百万円(前期比25.0%増)となりました。主要カテゴリーの状況は次のとおりです。

 

(鍵盤楽器)
 主要カテゴリーでは、電子ピアノは新たなLifestyleの定着による需要増により、ポータブルタイプの新製品や、スタイリッシュなデザインの新製品が好調に推移しました。また北米での販路開拓も奏功し、販売は大きく伸長しましたが、供給不足により全地域で受注残が増加しました。

以上により、鍵盤楽器の売上高は24,792百万円(前期比39.0%増)となりました。

 

(管打楽器)

主要カテゴリーでは、電子ドラムはVドラム・アコースティック・デザイン・シリーズや、既存製品のバリエーションモデルが好調に推移し、販売は大きく伸長しました。

電子管楽器は、今期発売したエアロフォン・シリーズの最上位モデルや、地域限定モデル等が大変好調に推移しました。また電子管楽器市場全体の盛り上がりもあり、販売は伸長しました。

以上により、管打楽器の売上高は19,053百万円(前期比30.3%増)となりました。

 

(ギター関連機器)

主要カテゴリーでは、ギターエフェクトは供給不足があるものの前期発売した新製品群や、今期発売したコンパクト・エフェクターのアニバーサリーモデル等を活用したプロモーションが奏功し、販売は伸長しました。

楽器用アンプは、北米を中心にKATANAアンプシリーズの販売が伸長しました。また屋外使用を想定したタイプのアンプに加え、キーボードや電子ドラム向けのアンプも大変好調に推移しました。

以上により、ギター関連機器の売上高は19,093百万円(前期比14.2%増)となりました。

 

クリエーション関連機器&サービス
  主要カテゴリーでは、シンセサイザーは電子ピアノと同様に88鍵盤を搭載したシンセサイザーやステージピアノに加え、新興国向けのキーボードも好調に推移しました。

ダンス&DJ関連製品は、ステイホームを契機に音楽制作への関心が高まり、前期及び当期発売の新製品群が好調に推移し、販売は大きく伸長しました。

ソフトウエア/サービス分野では、Roland Cloudにおいてソフトウエア音源の新製品に加え、既存電子ドラム製品の機能を拡張するアップデートソフトの販売や、当社ハードウエア用エディターの提供を行いました。また、当社シンセサイザーとRoland Cloudをワイヤレスで接続し、多彩なコンテンツをシームレスに楽しめるサービス「Roland Cloud Connect」を発売しました。

以上により、クリエーション関連機器&サービスの売上高は10,122百万円(前期比26.4%増)となりました。

 

(映像音響機器)

主要カテゴリーでは、ビデオ関連製品は中価格帯は好調が継続したものの、ステイホームを契機とした個人の配信需要が一巡し、また他社製品との競合影響もあり、低価格帯の販売が伸び悩みました。

以上により、映像音響機器の売上高は4,282百万円(前期比6.9%減)となりました。

 

(b) 営業利益

原材料費や海上輸送費の高騰に加え、人員増・利益増に伴う人件費の増加等により販売費及び一般管理費が増加しましたが、2回の価格適正化と増収効果により売上総利益が増加したことにより、当連結会計年度の営業利益は11,093百万円(前期比55.9%増)となりました。

 

(c) 経常利益

営業外収益は172百万円、営業外費用は1,163百万円となりました。営業外費用では売上割引770百万円及び為替差損259百万円が発生しました。

以上の結果、当連結会計年度の経常利益は10,102百万円(前期比60.9%増)となりました。

 

(d) 親会社株主に帰属する当期純利益

特別利益には固定資産売却益375百万円、特別損失239百万円には主に競争法関連損失149百万円及び固定資産の減損損失72百万円が計上されています。税金費用は、米国子会社再編に伴う繰延税金資産の計上などによる法人税等調整額△479百万円(△は益)が計上された結果、1,650百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は8,586百万円(前期比99.6%増)となりました。

「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」として位置付けているROE(自己資本利益率)及びROIC(投下資本利益率)について、ROEは上記のとおり親会社株主に帰属する当期純利益が増加し、また適切な株主還元を実施したことにより、35.6%(対前期比+12.9ポイント)となりました。ROICは、上記のとおり営業利益が増加したことにより、30.7%(対前期比+8.6ポイント)となりました。

 

 

(e) 生産、受注及び販売の実績

 当社グループは電子楽器事業の単一セグメントであるため、セグメントに関連付けては記載していません。

 

(イ)生産実績

品目

第50期連結会計年度

(自 2021年 1月 1日
  至 2021年12月31日)

前期比(%)

鍵盤楽器(百万円)

25,222

+31.0

管打楽器(百万円)

18,705

+6.9

ギター関連機器(百万円)

18,430

△0.6

クリエーション関連機器&

サービス(百万円)

9,084

+8.0

映像音響機器(百万円)

4,520

△4.6

その他(百万円)

1,966

+21.7

合計(百万円)

77,930

+11.3

 

(注)1.金額は、販売価格によっています。

   2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

(ロ)受注実績

当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

(ハ)販売実績

品目

第50期連結会計年度

(自 2021年 1月 1日
    至 2021年12月31日)

前期比(%)

鍵盤楽器(百万円)

24,792

+39.0

管打楽器(百万円)

19,053

+30.3

ギター関連機器(百万円)

19,093

+14.2

クリエーション関連機器&

サービス(百万円)

10,122

+26.4

映像音響機器(百万円)

4,282

△6.9

その他(百万円)

2,689

+18.9

合計(百万円)

80,032

+25.0

 

(注)上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

(3) 財政状態の分析

総資産は、前連結会計年度末と比較して6,710百万円増加し、52,807百万円となりました。その主な要因は、次項に詳述するキャッシュ・フローの状況により現金及び預金が2,051百万円減少した一方、売上債権が1,514百万円、たな卸資産が7,165百万円それぞれ増加したことによるものです。

負債は、前連結会計年度末と比較して1,794百万円減少し、24,150百万円となりました。その主な要因は、仕入債務が1,162百万円増加した一方、借入金が2,761百万円、競争法関連損失引当金が562百万円減少したことによるものです。

純資産は、前連結会計年度末と比較して8,505百万円増加し、28,656百万円となりました。その主な要因は、剰余金の配当が2,922百万円あった一方、主要国通貨に対する円安進行により為替換算調整勘定が2,024百万円増加し、また親会社株主に帰属する当期純利益が8,586百万円あったことによるものです。

以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末と比較して10.7ポイント上昇し、53.7%となりました。

 

 

(4) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前期より2,051百万円減少し、8,781百万円となりました。
 営業活動によるキャッシュ・フローは、主として税金等調整前当期純利益により、4,929百万円の収入(前期より1,972百万円の収入減)となりました。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、主として有形固定資産の取得による支出により、803百万円の支出(前期より98百万円の支出減)となりました。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、主として配当金の支払及び借入金の返済により、6,071百万円の支出(前期より2,401百万円の支出増)となりました。

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

(6) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの主な資金需要は、当社グループ製品を製造するための原材料の仕入、労務費、外部委託にて製造された当社グループ商品の仕入、研究開発費や広告販促費等の営業費用の運転資金及び製造設備の刷新、拡充です。

当社グループは、必要な運転資金及び設備投資資金について、自己資金又は外部借入で対応しています。効率的な資金調達を行うため、取引金融機関とコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクを管理しています。当連結会計年度末において、これらの契約に基づく当社グループの借入未実行残高は5,000百万円です。

当社グループは、今後とも営業活動によって得る自己資金を基本的な資金源としながら、資金繰りの見通しや市場金利の状況を考慮し、必要に応じて銀行借入を活用することで資金調達コストを抑制し、資本効率の最適化を図ります。

 

 

 

[参考情報]

当社グループは、投資家が当社グループの業績評価を行い、当社グループの企業価値を把握するうえで有用な情報を提供することを目的として、連結財務諸表に記載された売上高以外に、当社グループの主要な市場ごとの外部顧客への売上高及び製品カテゴリーごとの外部顧客への売上高の推移を下表のとおり把握しています。

 

(1) 地域ごとの売上高

 

(単位:百万円)

 

2017年

2018年

2019年

2020年

2021年

日本

8,807

15.4%

8,683

14.2%

9,237

14.6%

9,066

14.2%

9,666

12.1%

北米 (注) 1

17,056

29.8%

18,169

29.7%

18,914

29.9%

19,963

31.2%

25,959

32.4%

欧州 (注) 2

18,810

32.8%

19,751

32.3%

19,518

30.9%

21,027

32.8%

24,958

31.2%

中国 (注) 3

4,267

7.4%

6,005

9.8%

7,194

11.4%

6,304

9.8%

8,673

10.8%

アジア・オセアニア・その他の地域

8,379

14.6%

8,543

14.0%

8,381

13.2%

7,682

12.0%

10,775

13.5%

合計

57,320

100.0%

61,153

100.0%

63,247

100.0%

64,044

100.0%

80,032

100.0%

 

 

(注)1.アメリカ及びカナダでの売上高になります。

  2.オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、

オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ及び英国での売上高

を含みます。

3.中国本土での売上高になります。

 

(2) 製品カテゴリーごとの売上高

 

(単位:百万円)

 

2017年

2018年

2019年

2020年

2021年

鍵盤楽器

14,126

24.6%

15,551

25.4%

17,104

27.0%

17,842

27.9%

24,792

31.0%

管打楽器

12,363

21.6%

14,351

23.5%

14,205

22.4%

14,620

22.8%

19,053

23.8%

ギター関連機器

14,596

25.5%

16,411

26.8%

16,744

26.5%

16,712

26.1%

19,093

23.9%

クリエーション関連

機器&サービス

8,693

15.2%

7,647

12.5%

8,267

13.1%

8,010

12.5%

10,122

12.6%

映像音響機器

5,173

9.0%

4,624

7.6%

4,289

6.8%

4,597

7.2%

4,282

5.3%

その他

2,366

4.1%

2,566

4.2%

2,634

4.2%

2,261

3.5%

2,689

3.4%

合計

57,320

100.0%

61,153

100.0%

63,247

100.0%

64,044

100.0%

80,032

100.0%

 

 

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得