課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループでは、企業理念を創業以来、経営の根底にある不変の価値観を表した「暮らしを創る」と定め、経営方針として「BRAND INNOVATION(ブランド革新)~家庭用品ブランドの深化と「食」と「暮らし」のソリューションブランドへの進化~」を掲げております。

その背景には、国内における人口・世帯数の減少や少子高齢化の進行、海外新興国における生活水準の向上、デジタル化の急速な進展等、人々の暮らしが変化・多様化していくなかで、従来の家庭用品メーカーとしてのブランドを継続するだけでは持続的な成長が難しくなりつつあることが挙げられます。

将来にわたりお客様に支持され、持続的成長を実現するためには、こうした環境の変化に適応し、生活者の食や暮らしに関する不満や負担を、商品やサービスを通じて解決(ソリューション)していく必要があり、ZOJIRUSHIブランドの革新が不可欠であると考えております。

 

(2) 収益計画や資本政策の基本的な方針

当社グループは、中長期的な企業価値の向上を目指し、持続的な成長を図るため、将来の成長に繋がる研究開発投資や新規事業展開のための投資を可能とする強固な財務基盤を確保することを基本方針としております。

収益力・資本効率等につきましては、営業利益率8%以上、資本コストを上回る正のエクイティスプレッドを目指します。

事業ポートフォリオにつきましては、当社グループは主に家庭用品を製造販売する単一事業会社ですが、地域別・製品群別等での収益力を精査し、設備投資・人的資本への投資管理を行ってまいります。

 

(3) 中期経営計画の進捗状況

当社グループは2020年11月21日より、新しい日常における新たな中期2ヵ年計画『ADAPT PhaseⅡ』を推進しております。『ADAPT』は、「Adaptation to Diversity of Area,People and Technology」の各単語の頭文字をとり「多様性への適応」という意味を込めており、多様化する事業領域や販売地域、お客様や株主、テクノロジー等に適応し、持続的に成長することを目指しております。

『ADAPT PhaseⅡ』では、象印ブランドを現状の家庭用品ブランドから「食」と「暮らし」のソリューションブランドへ進化させるため、「領域の水平的拡大」、「領域の垂直的拡大」、「経営基盤の強化」に取り組んでまいりました。

「領域の水平的拡大」では、既存の事業領域を深掘りするために、商品ラインアップの拡大や、新市場・新規チャネルの開拓をはかりました。国内では、かまどの炎のゆらぎを再現した最高級モデルの圧力IH炊飯ジャー『炎舞炊き』シリーズの商品力強化や、“せん”と“パッキン”がひとつになった『シームレスせん』を採用したステンレスマグのラインアップ拡大、共働き世代や子育て世代に向けて、利便性を高めた『自動調理なべ』を「STAN.」シリーズとして発売いたしました。海外では、主要地域におけるEC市場の拡販や成長市場の開拓に適した販売体制の再構築、中国ベビー用品市場の開拓を目的に、乳幼児向け製品の製造・販売にノウハウを持つ企業と『ベビー用ステンレス製保温カップ』を共同開発し、発売いたしました。

「領域の垂直的拡大」では、おいしいごはんを軸とした事業展開として、2018年にオープンしたごはんレストラン「象印食堂」に続き、弁当専門店『象印銀白弁当』を大阪に出店いたしました。また当社製品を取り扱う直販ECサイト『象印ダイレクト』をオープンするとともに、商品を購入前に試せる「お試しレンタル」と必要な時期だけ使って返せる「シーズンレンタル」ができる『象印レンタルサービス』を開始いたしました。

「経営基盤の強化」では、業務効率化による生産性の向上や価格競争力の強化、『ADAPT PhaseⅡ』の実行を促進する組織体制の構築やESG課題への取り組みを推進いたしました。また、当社製品のご愛用者を対象とした「ZOJIRUSHIオーナーサービス」やSNSを通して、お客様とのコミュニケーション強化を図りました。

その結果、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが再燃するなかにおいても、前年同期比で増収増益を達成することができました。

 

(4) 経営環境及び対処すべき課題

ワクチン接種の進展とともに、経済活動への制約が徐々に薄らぐと期待され、景気の持ち直しは続くと見られます。その一方で、景気の回復に伴う需要増加による部品の供給不足や商品供給網の混乱、原材料コストの上昇が懸念されるなど、今後も不透明な経営環境が続くと推測されます。また、新型コロナウイルスについても、新たな変異型が世界で拡がりをみせるなど、収束の見通しは立っておらず、各国で感染抑制と経済活動継続を両立するための試行錯誤が続く見込みです。

人々の暮らしにおいては、コロナ禍を通して、健康・衛生意識の高まりや、安心・安全な暮らしへの欲求、デジタル消費の加速、内食への回帰と中食の増加などが見られました。また、働き方については、テレワークの増加やウェブ会議の普及、電子承認やペーパーレス化が進み、都市部集中への緩和の動きが見られます。このような環境変化のなか、今後はさらに多様な価値観や多様な社会の広がりが進むと考えられます。

このような状況下、当社グループを再び持続的な成長軌道に乗せるため、対処すべき7つの重点課題を設定いたしました。

 

①在宅勤務経験を通して見えた課題

   ・ICT環境の整備と業務の効率化

 ・働き方の変化に即した人事・評価制度の見直し

 

②新しい日常における生活者の多様な価値観への適応

 ・中食・内食シフトや衛生・健康意識の高まりに即したモノづくり

 ・ECやオンライン化に対応したデジタルマーケティングの強化

 

③新型コロナウイルス感染症の影響等、景気・需要動向への対応

 ・主力商品の収益力強化、ステンレスボトルのシェア回復

 ・景気後退に伴う価格志向への対応

 

④事業多様化の推進による成長とリスク分散

 ・新規事業・新規商品の開発、新市場・新チャネル開拓の加速

 ・基幹商品・基幹部品の調達リスク対策

 

⑤海外事業の成長軌道回帰

 ・アジア市場における急速なECシフトへの対応

 ・ASEAN重点国(ベトナム・タイ・インドネシア)での成長加速

 

⑥生活者接点の強化と新たなファン層の開拓

 ・アフターサービス(ZOJIRUSHIオーナーサービス含む)を通じた強固なファンづくり

 ・「STAN.」を活用した20-30歳代の開拓・ファン化促進

 

⑦ステークホルダーとの関係強化

 ・ESG視点での課題整理と実行促進

 ・IR・SR活動の強化

 

『ADAPT PhaseⅡ』の最終年度にあたる2022年11月期は、経営方針である「BRAND INNOVATION(ブランド革新)~家庭用品ブランドの深化と「食」と「暮らし」のソリューションブランドへの進化~」を実現するため、新たな成長に向けた基礎固めの期間と位置づけ、設定した重点課題の解決に取り組んでまいります。

 

 

中期2ヵ年計画『ADAPT  PhaseⅡ』の概要 (2021年11月期~2022年11月期)

中期2ヵ年計画『ADAPT  PhaseⅡ』では、象印ブランドを現状の家庭用品ブランドから、「食」や「暮らし」に関する不満や課題を、商品やサービスを通じて解決できるソリューションブランドへ進化していくために、引き続き「領域の水平的拡大」と「領域の垂直的拡大」、「経営基盤の強化」に取り組んでまいります。

国内事業では「利益とシェア」の最適バランスを追求した提案営業の強化や新規チャネルの開拓に取り組むとともに、社会や生活の変化に合わせた新製品の投入や、「おいしいごはん」を軸とした新規事業の創出をはかります。海外事業では成長軌道への回帰をはかるため、海外特有のニーズに対応した商品の投入や、EC市場の開拓・拡販、成長地域における販路の拡充を行います。また並行して、業務効率・開発効率の向上、サプライチェーンの再整備、人材・組織体制などの強化を行うとともに、ESG課題への取り組みを推進し社会的価値の向上をはかります。


 

1. 領域の水平的拡大

  ◆国内事業

  ・アフターコロナの需要停滞を想定し、「利益とシェア」の最適バランスを追求した

    提案 営業の強化により、利益額の最大化をはかります。

 ・ステンレスボトルと親和性のある売り場をもつ販売チャネルの新規開拓を推進し、

    リビング 事業の回復を行います。

 ・社会や生活の変化に合わせた商品のモデルチェンジやラインアップ拡大を行い、

    既存 カテゴリの活性化をはかります。

  ◆海外事業

  ・主要地域における EC 市場の徹底攻略と新規チャネルの開拓を強化します。

 ・成長地域(ベトナム・タイ・インドネシア)における販路の拡充と

    最適な販売体制の再構築 を行います。

 

 

 

 

2. 領域の垂直的拡大

  ◆新規カテゴリ商品の投入

  ・社内公募や協業による商品展開や、既存技術を応用した商品開発により、

   新しい売上を創造 するとともに、海外特有のニーズ対応した商品を投入します。

  新規事業の創出

  ・象印らしい「おいしいごはん」を軸とした新規事業の創出をはかります。

 

 

 

 

3. 経営基盤の強化

◆生産性の向上

・業務効率・開発効率を向上させるため、社内リソース(経営資源)の

  拡充をはかるとともに、 社外への業務委託などを積極的に活用します。

◆供給体制の整備

・日本、中国、東南アジアを主軸に生産体制を段階的に見直し、

  品質・コスト・納期とリスク 分散の両立をはかります。

 ・部品調達リスクの分散や価格競争力強化に向けた取り組みを推進します。

◆お客様との接点強化

・時代に即したコミュニケーション手段を活用し、充実したサービスの提供により

  更なる お客様満足度の向上をはかります。

・若年層へのコミュニケーションを強化し、新たなファン層を獲得します。

人材・組織体制の強化

・多様な価値観に適応し、イノベーションによって持続的成長を可能にする

  人的基盤の強化と 組織の活性化を行います。

ESG 課題への取り組み推進

ESG 課題の解決に向け、具体的な施策や目標を設定し推進することで

  社会的価値の向上 をはかります。

 

 

 

 

   中期業績目標

   業績目標は以下の通りです。

                                                    (単位:百万円)

 

2021年実績

2022年計画

連結売上高

77,673

79,300

連結営業利益

6,399

4,400

(営業利益率)

(8.2%)

(5.5%)

 

 

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