業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

①経営環境

 当連結会計年度の世界経済を概観しますと、世界的な新型コロナウイルス感染症の相次ぐ変異株の感染再拡大による経済活動の停滞や、物流停滞による供給制約により、サプライチェーンの混乱が生じました。一方、先進国を中心にワクチン接種が進展し、経済活動が本格再開する中、ウクライナ危機の発生により、市況価格の更なる高騰等、先行き不透明な状況が深刻化しました。

 米国経済は、ワクチン接種の進展と大規模な経済対策を背景に景気は回復し、経済正常化へ進捗しました。一方、供給制約等による物価高は継続しインフレ率が高まりました。欧州経済は、長期化した感染拡大がピークアウトし、製造業、サービス業が復調し、景気回復基調となったものの、ウクライナ危機によるロシアへの経済・金融制裁の影響等により景気は一転減速となりました。中国経済は、輸出入の拡大により世界経済を牽引する回復を遂げる中、感染再拡大に伴うゼロコロナ政策や不動産販売の急減、及び個人消費の伸び悩み等により、景気は減速基調となりました。新興国経済は、ワクチン接種遅れによる経済活動制限の長期化や、半導体不足等を背景とするサプライチェーンの混乱等、景気低迷が継続しました。

 こうした中、わが国経済は、度重なる緊急事態宣言による経済活動制限や、インバウンド需要低迷等により、景気停滞が継続しました。製造業及びサービス業の回復や、個人消費等も一時回復基調となったものの、限定的な改善に留まりました。

 

 なお、新型コロナウイルス感染症の収束の見通しは未だ不透明であるものの、当社グループは引き続き「Global Vision」の達成を目指し、さまざまな社会課題の解決に貢献する事業活動を推進してまいります。

 

②セグメント別の事業活動

 当社グループは「Global Vision」において、あるべき姿として「Be the Right ONE」を掲げ、Mobility分野、Life & Community分野、Resources & Environment分野の3つの事業領域で当社グループならではの強みである「Toyotsu Core Values」を発揮し、当社グループらしい事業を広げてまいります。

(Ⅰ)金属

 インドでの使用済み車両の不法投棄削減と適正処理等を目的に、2019年10月に設立した使用済み車両の解体とリサイクルを行う合弁会社Maruti Suzuki Toyotsu India Private Limitedが、2021年11月に稼働を開始しました。同国におけるカーボンニュートラル及び循環型社会の実現に貢献していきます。

(Mobility分野・Resources & Environment分野)

(Ⅱ)グローバル部品・ロジスティクス

 デジタル変革推進やカーボンニュートラル実現への貢献を目的に、2021年8月に立ち上げたオンラインプラットフォーム「Streams」(ストリームス)に、新機能として豊田通商グループのネットワークを通じてお客様のビジネスモデル開発を支援する「Streams Capital」を、2022年3月に搭載しました。お客様と共に、持続可能な社会を実現する事業開発を加速させていきます。(Mobility分野・Resources & Environment分野)

(Ⅲ)自動車

 途上国等におけるワクチン輸送の改善による接種率向上を目的に、世界保健機関が定める医療機材品質認証を取得したワクチン保冷輸送車10台を、初めてガーナ共和国の保健省に2021年11月に納車しました。ワクチン保冷輸送車の供給事業を通じて、グローバルヘルスに貢献していきます。(Mobility分野・Life & Community分野)

(Ⅳ)機械・エネルギー・プラントプロジェクト

 インドネシアの輸出力向上や物流コストの低減を目的に、同国の国営企業が暫定的に行ってきたパティンバン新国際港の自動車ターミナル運営事業を引き継ぎ、2021年12月より運営を開始しました。国際競争力のある港湾運営を図り、インドネシア経済の更なる発展に貢献していきます。

(Mobility分野・Resources & Environment分野)

(Ⅴ)化学品・エレクトロニクス

 脱炭素社会移行への貢献を目的に、2021年11月、車載用リチウム電池の生産を行う合弁会社Toyota Battery Manufacturing, North Carolinaの設立に参画しました。同社の2025年の稼働開始に向けて準備を進めていきます。(Mobility分野・Resources & Environment分野)

(Ⅵ)食料・生活産業

 必要な医薬品をタイムリーに病院・薬局へ届ける仕組みを構築することを目的に、インド医薬品卸のSKITES PHARMA Private Limitedに、2021年3月に出資しました。当期は、インドで運営するSAKRA WORLD HOSPITALの医薬品調達効率化を進めるとともに、病院側ニーズを把握する知見を生かし、同社を通じて日本の医薬品・サプリメントのインド市場への供給を開始しています。(Life & Community分野)

(Ⅶ)アフリカ

 TOYOTA TSUSHO MANUFACTURING GHANA CO. LIMITEDは、自動車市場のニーズに合わせた現地生産を目的に、ガーナ共和国で日本企業初となる車両組立工場を新設し、トヨタ「ハイラックス」の組立生産を2021年6月に開始しました。また、スズキ株式会社の小型車「スイフト」の2022年内の生産開始に向けて準備を進めています。高品質なクルマづくりを推進し、同国の自動車産業・経済発展に貢献していきます。(Mobility分野)

 

③業績

 

 

 

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2021年3月期)

当連結会計年度

(2022年3月期)

増減

収益

63,093

80,280

17,187

売上総利益

6,076

7,592

1,516

営業活動に係る利益

2,130

2,941

811

当期利益(親会社所有者帰属)

1,346

2,222

876

総資産

52,280

61,431

9,151

 

(2)仕入、成約及び販売の実績

①仕入の実績

 仕入と販売との差額は僅少であるため、記載は省略しております。

 

②成約の実績

 成約と販売との差額は僅少であるため、記載は省略しております。

 

③販売の実績

 「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ③業績」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項4.セグメント情報」を参照してください。

 

(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表を作成するに当たり、重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項3.重要な会計方針」に記載しています。また、重要な見積り及び判断については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項2.作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。

 

②当連結会計年度の経営成績の分析

 当社グループの当連結会計年度の収益は、自動車生産関連の取り扱い及び自動車販売の増加等により、前連結

会計年度を1兆7,187億円(27.2%)上回る8兆280億円となりました。

 利益につきましては、営業活動に係る利益は販売費及び一般管理費、その他の費用の増加の一方で、売上総利

益の増加により、前連結会計年度を811億円(38.1%)上回る2,941億円となりました。当期利益(親会社の所有

者に帰属)は営業活動に係る利益の増加に加え、金属本部における関連会社の持分除外益及び持分法投資損益の

増加等により、前連結会計年度を876億円(65.1%)上回る2,222億円となりました。

 

 セグメントごとの業績は、次のとおりであります。

 

(Ⅰ)金属

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、自動車生産関連の取り扱い増加及び市況の上昇に加え関

連会社の持分除外益等により、前連結会計年度を504億円(223.7%)上回る729億円となりました。

(Ⅱ)グローバル部品・ロジスティクス

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、自動車部品の取り扱い増加等により、前連結会計年度を

56億円(27.5%)上回る256億円となりました。

(Ⅲ)自動車

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、海外自動車販売会社の取扱台数増加等により、前連結会

計年度を134億円(88.8%)上回る285億円となりました。

(Ⅳ)機械・エネルギー・プラントプロジェクト

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、持分法投資損益の増加及び子会社清算に伴う税金費用の

減少の一方で、エネルギー事業における一過性損失等により、前連結会計年度を18億円(7.9%)下回る212

億円となりました。

(Ⅴ)化学品・エレクトロニクス

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、エレクトロニクス事業及び化学品事業における取り扱い

増加等により、前連結会計年度を158億円(57.8%)上回る430億円となりました。

(Ⅵ)食料・生活産業

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、食料事業及びライフスタイル事業の取り扱い増加の一方

で、食料事業における持分法投資損益の減少等により、前連結会計年度を28億円(33.6%)下回る54億円と

なりました。

(Ⅶ)アフリカ

 当期利益(親会社の所有者に帰属)については、西アフリカ地域・南アフリカを中心とした自動車販売の

増加等により、前連結会計年度を107億円(69.2%)上回る260億円となりました。

 

 次期の業績の見通しにつきましては、当期利益(親会社の所有者に帰属)は2,100億円となる見込みです。

 

③財政状態

 資産につきましては、営業債権及びその他の債権で3,974億円、棚卸資産で3,203億円増加したこと等により、

前連結会計年度末に比べ9,151億円増加の6兆1,431億円となりました。また、資本につきましては、その他の資

本の構成要素で814億円増加したこと及び当期利益(親会社の所有者に帰属)等により利益剰余金が1,750億円増

加したこと等により、前連結会計年度末に比べ2,848億円増加の1兆9,428億円となりました。

 その結果、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は28.2%、ネットDERは0.7倍となりました。

 

④資本の財源及び資金の流動性についての分析

(Ⅰ)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動及び財務活動による増加、投資活動による減少等により6,530億円となり、前連結会計年度末より244億円の減少となりました。資金の増減額は前連結会計年度と比べて2,291億円の減少となっており、この主な増加または減少要因は以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、営業活動による資金の増加は501億円となりました。これは税引前利益及び運転資本の増加等によるものです。前連結会計年度比では1,949億円の収入減少となりましたが、これは主に運転資本が2,570億円増加したこと等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、投資活動による資金の減少は1,573億円となりました。これは有形固定資産の取得による支出等によるものです。前連結会計年度比では552億円の支出増加となりましたが、これは主に無形資産の取得による支出が182億円増加したこと等によるものです。

 以上の結果、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは1,072億円の資金の減少となりました。前連結会計年度比では2,501億円の減少となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、財務活動による資金の増加は449億円となりました。これは借入金が増加したこと等によるものです。前連結会計年度比では209億円の収入増加となりました。

(Ⅱ)財務戦略

 当社グループでは、財務健全性を維持した安定的成長を目指して、「資産の効率化」と「資産の内容に見合った調達」を柱とする財務戦略を推進しております。

 「資産の効率化」については、“最小限の資金で最大限の利益確保”を目指し、売掛債権回収の早期化、在庫の削減等による運転資本の効率化や不稼動・非効率固定資産の削減など、資金の効率化を進めております。これらの活動により得られる資金を、より将来性の高い事業への投資や、有利子負債の圧縮に充当することにしており、“企業価値の向上”と“財務の健全性向上”の両立を目指しております。

 一方、「資産の内容に見合った調達」については、固定資産は長期借入金と株主資本でカバーし、運転資本は短期借入金でカバーすることを原則としておりますが、同時に運転資本の底溜り部分も長期資金でまかなうことを方針としております。また、連結ベースでの資金管理体制については、親会社からの国内グループファイナンスに一元化すると共に、海外子会社の資金調達についても、アジア及び欧米の海外現地法人などにおいて集中して資金調達を行い、子会社への資金供給をするというキャッシュマネジメントシステムを活用したグループファイナンスを行うことで、連結ベースでの資金の効率化に努め、資金管理体制の更なる充実を図っております。更には、当社グループの資金調達の安全のため、マルチカレンシー・リボルビング・ファシリティー(複数通貨協調融資枠)等を設定するなど、不測の事態にも対応できるように備えております。

 今後の資金調達について、当社グループの営業活動が生み出すキャッシュ・フロー、資産の内容、経済情勢、金融環境などを考慮し、資産の一層の効率化と安定的な資金調達に対応していきたいと考えております。

 当連結会計年度末の流動比率は連結ベースで145%となっており、流動性の点で当社の財務健全性を維持しております。また、当社及び連結子会社では、主として現預金及び上述コミットメントラインの設定により、十分な流動性を確保しております。

 

 当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりです。

 

長期

短期

格付投資情報センター(R&I)

AA-(安定的)

a-1+

スタンダード&プアーズ(S&P)

A(安定的)

A-1

ムーディーズ(Moody's)

A3(安定的)

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