課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

この経営方針、経営環境、対処すべき課題等には、将来に関する記述が含まれています。こうした記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた仮定、予期及び見解に基づくものであり、既知及び未知のリスクや不確実性及びその他の要素を内包するものです。2「事業等のリスク」などに記載された事項及びその他の要素によって、当社の実際の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況が、こうした将来に関する記述とは大きく異なる可能性があります。

 

(1)中期経営計画の進捗状況

2020年5月に公表した中期経営計画「変革と成長」の2年目となる2022年3月期においては、新型コロナウイルス感染拡大や地政学リスクの顕在化などにより、ビジネス環境に大きな変化が生じる中、収益基盤のさらなる強化、金属資源・エネルギーの安定供給、成長戦略の打ち手の実行などを着実に進めました。主な進捗は以下のとおりです。

 

①収益基盤の強化継続

新型コロナウイルスの感染拡大や地政学的情勢変化とこれらに起因するサプライチェーンの混乱がありましたが、当社がグローバルに培ってきたトレーディング機能と顧客基盤を活かし、LNG・化学品・鉄鋼製品・食料など社会を支える素材・サービスの販路拡大、サプライソースの多角化などに取り組み、収益力を強化しました。加えて、モビリティ事業、病院事業、化学品・鉄鋼製品分野での徹底したコスト削減・プロセス改善、構造改革による競争力強化や、機械・インフラ分野での複数案件の操業開始に伴う収益貢献開始など、基礎収益力の底上げを実現しました。課題事業に粘り強く対応し再建を実現したことも収益基盤の強化につながりました。また、より複雑化する事業環境と中長期展望を踏まえ、既存事業の事業性を随時検証し、火力発電から再生可能エネルギーへのシフトや英国・豪州の油・ガス田権益売却等を実行するとともに、三井物産アイ・ファッションと日鉄物産の繊維事業統合、三井石油開発の100%子会社化など、事業・投資の再編も行いました。

これら基礎収益力の強化・拡大と、競争力ある事業ポートフォリオへの組替えや事業再編により、収益基盤の強化を実現しました。全セグメントを通じて日常生活に不可欠な資源・素材・食料・サービスを安定的に供給し、定性・定量面で貢献しました。

 

②金属資源・エネルギーの安定供給

人々の豊かな暮らしと経済・社会の発展に不可欠な金属資源及びエネルギーの安定供給は、当社がMissionとして掲げる「世界中の未来をつくる」を実現するためにも重要な課題です。サプライチェーンの混乱や、地政学的情勢変化による市場変化はありましたが、トレーディングや物流機能を含めた総合力を駆使し、金属資源・エネルギーの安定供給を支えました。

金属資源においては、新型コロナウイルスの感染拡大による労働環境の制約に対処しつつも安定操業・安定供給に努めるとともに、後継鉱床開発や周辺鉱区取得による鉱量拡充を行い、中長期的な安定供給に向けた施策も実行しました。また、次世代エネルギーへの取組みを進めつつも、世界の脱炭素化が進む中、移行期に重要な役割を果たすLNG事業は中長期的視点での拡充を図り、長年築いたグローバルトレーディング機能を発揮し、継続的な安定供給を実現しました。

 

③財務戦略・ポートフォリオ経営の進化

堅調な鉄鉱石事業や化学品、鉄鋼製品を中心としたトレーディング事業の貢献により、2022年3月期の基礎営業キャッシュ・フローは過去最高となる1兆1,590億円の獲得となり、これに資産リサイクルにより獲得した2,570億円を合わせて1兆4,160億円のキャッシュ・インとなりました。投融資によるキャッシュ・アウトは5,110億円となりました。強靭なキャッシュ創出力と資本効率の向上を意識し、1株当たり105円(前連結会計年度比20円増配)の年間配当と自己株式取得を通じた総額3,450億円の株主還元となりました。

 

④成長戦略の打ち手の着実な実行・Strategic Focus

中期経営計画で注力する3つの事業領域における進捗は次のとおりです。

◇重点施策(a) エネルギーソリューション

エネルギー分野では既存事業の低炭素化への取組みや、クリーン燃料アンモニア製造事業推進に向けた複数パートナーとの合意や協議の深化などの進捗がありました。電力事業分野では、英国・中南米・アフリカ・アジア等に展開する複数の大型再生可能エネルギー事業への参画や、本邦におけるCO2排出量可視化・削減クラウドサービスe-dashの設立など電力バリューチェーンでの取組強化を推し進めました。また、フランスの電池システム製造会社Forsee Powerとの資本関係強化を通じ、モビリティ電動化推進等の社会のGHG(温室効果ガス)削減につながる事業形成に進捗がありました。加えて、当社が長年の歴史をもつ森林資源事業で得た知見を活かして豪州の森林カーボンクレジット事業に参画し、カーボンリサイクルにおける取組みを進展させました。

 

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◇重点施策(b) ヘルスケア・ニュートリション

当社が出資参画するIHHヘルスケア事業では、病院事業ポートフォリオの見直し、購買合理化によるコスト削減を含むオペレーション改善、非接触化ニーズに応じたオンライン診療サービスの提供など、withコロナ、afterコロナに対応した体制を整備し、グループ経営基盤を強化しました。また、ヘルスケアデータを活用したDXソリューションの提供や、企業人事・健保向けサービス強化に向けたヒューマン・アソシエイツ・ホールディングスの買収、当社出資先のThorneとのアジアにおける未病対策事業会社設立、畜水産種苗事業会社Hendrixへのファンドを通じた出資など、人の「治療」から「未病・予防」、アニマルヘルス・畜水産種苗分野に対象を広げ、世界の人々・動物の健康を支える事業群の形成に進捗がありました。

 

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◇重点施策(c) マーケット・アジア

「伸びゆく・変わりゆくアジア消費者市場」の成長を取り込むべく、ヘルスケア・ニュートリション、インフラ等での新規取組みを進めました。新型コロナウイルスの影響が継続する中でも、当社が強みをもつ鉄鋼製品・化学品などを中心とした関係会社の業績や物流事業が堅調に推移しました。また、インドネシアで金融、リテール、メディア、不動産、ホスピタリティー、エンターテインメント、ライフスタイルを含む消費者関連事業を担う大手企業グループCT Corpの転換社債引受けを2022年3月期第1四半期に完了しました。同社との取組みをマーケット・アジアにおける「消費者プラットフォーム」構築の中心に据え、当社の事業ネットワーク・機能を活かした協業案件の推進と、同社の企業価値向上に向けた取組みを加速します。

 

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⑤人材戦略

人材戦略については、当社国内・海外拠点及び関係会社で活躍する多様な人材は当社競争力の源泉であり、一人ひとりの「挑戦と創造」を通じて価値創造につなげていくことで持続的な成長を実現していきます。2022年3月期は、次世代リーダーの早期育成を狙いとしたキャリアチャレンジ制度や高度な専門人材のためのキャリアパス制度を新たに導入しました。また、多様な人材の活躍促進を加速すべく、女性リーダー育成プログラムや海外拠点より選抜された次世代リーダーの育成プログラムにも継続的に取り組んでいます。加えて、新しい働き方を加速させる取組みとしてリモートワークや個人単位の時差出勤制度等も引き続き促進しており、多様な価値観を認め新しい価値を生み出す取組みを進めていきます。

 

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⑥サステナビリティ経営の実践/ESGの進化

中期経営計画期間では、「気候変動」、「サーキュラーエコノミー」、「ビジネスと人権」の3つを重要課題とし、一層のサステナビリティ経営の実践を継続的に進めています。

 

「気候変動」については2030年GHGインパクト半減目標達成に向けたロードマップを策定し、一部火力発電事業の売却合意や、既存事業におけるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)/CCUS(Carbon dioxide Capture Utilization and Storage)の事業化調査の実施など、目標達成に向けた着実な活動を進めています。エネルギーの安定供給と並行し、Strategic Focusの「エネルギーソリューション」の取組みを通じクリーンでサステナブルなエネルギー・電源の開発を進め、社会全体でのGHG排出量削減に貢献していきます。

なお、当社のサステナビリティ経営については、(5)「サステナビリティ経営」をご参照ください。

 

ガバナンスの強化については、取締役会付議・報告基準の見直しや書面決議の活用によって、事業戦略、事業ポートフォリオ、サステナビリティ、労働安全衛生などの重要テーマについての審議時間を充分に確保することで、更なる取締役会の実効性向上を図るとともに、当社における最適な機関設計についても社外役員の視点を交えてガバナンス委員会で議論しました。なお、当社は、昨年改訂されたコーポレートガバナンス・コードの各原則について、全てを実施しています。詳細については、第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等をご参照ください。

 

(2)経営環境

①全般

注:本項目は、2022年5月の決算公表時点の経営環境認識を掲載したものであり、当社の現在の経営環境認識と異なる記載が含まれている場合があります。

当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響や、半導体の不足、物流のボトルネックなど供給面の制約が景気の下押し要因となり、さらにロシア・ウクライナ情勢が悪化要因として加わり、景気回復テンポが鈍化しましたが、全体としては持ち直しました。

米国では、供給制約の長期化などが成長ペースを抑制したものの、経済再開が進んだことや多額の現金給付策が個人消費を促進し、大勢としては堅調な景気回復傾向を辿りました。先行きも、インフレ高進や金融引き締めの加速等の懸念材料はあるものの、感染の影響緩和や供給制約の改善、良好な雇用・所得環境を背景に景気の回復が続くと期待されます。欧州では、年度前半は経済活動制限の緩和などにより高成長となりましたが、ロシア・ウクライナ情勢を受けたエネルギー等の供給制約の悪化、消費者物価の更なる高騰、消費者マインドの悪化が回復の重しになり、成長率が低下しました。当面はロシア・ウクライナ情勢に起因する経済の下押し圧力は強く、経済再開に伴う景気の持ち直しは先に延びると見込まれます。日本では、昨年秋に4回目の緊急事態宣言が解除され、回復が進んだ消費が年初来のオミクロン株感染拡大の影響により再び停滞し、自動車等の生産も制約されたことから、横ばい圏の動きとなりました。先行きは、感染の影響が徐々に緩和していくことにより、消費が活発化し、景気回復を主導することが期待されます。中国では、昨年夏以降、地域的な感染拡大を強力に封じ込めようとするゼロコロナ政策による生産・消費活動の停滞、政府による不動産投資の抑制策などにより、景気回復がスローダウンしました。先行きは、ゼロコロナ政策の継続が景気回復の重しとなる一方、インフラ投資の増加や金融緩和策などが景気を下支えし、緩やかな回復が続くと見込まれます。ブラジルやロシアでは、インフレの高進と政策金利引き上げが回復の重しとなっていたところ、特にロシアでは国際社会から課された経済制裁により経済活動の急速な収縮が予想されます。

先行きは、ロシア・ウクライナ情勢を受けた世界的な供給制約の更なる悪化、長期化とインフレ高進、米国の金融引き締め、コロナ禍から回復が遅れていた新興国の成長鈍化等の懸念要因はあるものの、感染拡大の影響が緩和し、経済活動が活発化することにより、世界経済全体としてはプラス成長を維持するとみられます。

 

②金属資源セグメント

新型コロナウイルスの中国における感染再拡大などの懸念材料も見られるものの、主要国の堅調な景気回復による需要拡大に加え、地政学的リスクや世界的なインフレ高進の影響も有り、金属資源価格は高止まりしています。鉄鋼や非鉄金属は産業の基幹素材であり、世界経済の成長及び低・脱炭素社会の形成にあたり、その原料に対する需要は長期的な伸びが見込まれます。一方、開発・生産コストの上昇や既存鉱山の枯渇や品位悪化に加え、優良未開発案件には限りがあるため、供給が追いつかず、長期的には需給は逼迫していく見込みであり、引き続きコスト競争力のある原料の安定供給が求められます。また、環境負荷低減ニーズが加速する中、原料のリサイクル、グリーン素材、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量削減などへの要請が高まっています。

 

③エネルギーセグメント

新型コロナウイルス感染症の推移や消費者の行動様式の変化、主要産油国の協調減産体制や地政学的リスク等の需給動向への影響について慎重に見極めていく必要がありますが、中長期的には世界的な人口増加・世界経済の成長に伴い、エネルギー需要は今後も増加する見込みです。一方、気候変動対応への必要性は不可逆的と言えますが、政策導入等に伴う将来的なエネルギー構成については様々な見方があります。斯かる状況下、エネルギーの安定供給・調達と、気候変動対応を高い次元で両立させていく必要性が益々高まっており、低・脱炭素社会実現に向け、エネルギートランジションを支える世界各地での取組が求められています。

原油の中長期的な見通しとして、特に供給面で新規上流投資抑制による開発鈍化や、より高コストの油田開発への移行が考えられています。一方で、消費者の行動様式の変化や、EVの急速な普及、環境規制の強化などによる原油需要の減少可能性も考えられ、これらの影響を見極めていく必要があります。

LNGについては、新興輸入国の市場拡大や、大気汚染物質や温室効果ガスの排出係数が相対的に低い特性から需要が堅調に伸長すると見込まれ、新型コロナウイルス感染拡大の影響等により新規プロジェクトの開発計画や最終投資決断が軒並み遅延していることから、2025~2026年頃迄は需給がタイトな期間が続く見込みです。

また、各国政府が新型コロナウイルス感染症からの経済復興策としてのグリーンエネルギーの導入促進を打ち出し、再生可能エネルギーの更なる普及、よりクリーンな燃料への転換、モビリティの電動化や水素燃料電池自動車の普及等、気候変動対応事業が新たな成長領域へと変貌する中、総合エネルギーサービス事業と次世代燃料事業を柱としたエネルギーソリューション分野における取組ニーズが拡大、加速すると見ています。

 

④機械・インフラセグメント

電力分野では、電力需要は回復基調にあり、特に脱炭素化の加速により再生可能エネルギーへの需要増加が加速しています。また電力エネルギー分野の分散化・サービス化や、複数分野に跨るNew Downstream領域、クリーン化(水素・燃料アンモニア・CCS)は将来的に高成長分野となる可能性があります。

資源インフラ分野では、環境意識の高まりに伴い地域差はありますが、新興輸入国の市場拡大や、大気汚染物質や温室効果ガスの排出係数が相対的に低い特性からLNG・ガス需要が堅調に伸長しています。中長期的には水素・アンモニア等代替燃料の検討が進む見込みです。

物流分野では、概ね回復傾向にあり、中長期的には新興国を中心とする中間層の増大により内需・消費の増大が見込まれ、物流インフラニーズは底堅いと見られています。

モビリティ領域では、昨年は半導体供給不足等サプライチェーン問題が深刻化、これに起因する自動車供給不足が続いたものの、今後正常化が見込まれます。新車需要は2023年迄に新型コロナウイルス感染拡大前の水準に回復する見通し、また中古車市場は新車供給不足により需要が急増、かかる状況は当面続くことが見込まれます。建機・産機需要も回復基調ではありますが、生産納期長期化の傾向が顕著に見られます。また、マストランジット・公共交通の需要減少、パーソナルモビリティの需要増加が進むと考えられ、生産性向上や労働力不足解消に向けた「デジタル化」や「自動化」など技術革新の動きもこれまで以上に活発化する見通しです。加えて、環境規制の強化やESG意識の高まり等を受けて、省エネ・新燃料・電動化等の需要はさらに拡大すると見られます。

船舶領域では、ばら積み船市況は、総じて前連結会計年度レベルを超えた水準で推移しました。2022年も新造船供給圧力は限定的とみられ、当面ばら積み船市況は比較的安定して推移する見通しです。また環境対応意識の高まりで新燃料対応船や電動化の議論が活発化しており、徐々に実用化されています。

鉄道及び航空領域は2020年を底に徐々に回復傾向にあり、欧州における貨物鉄道輸送量は昨年末に新型コロナウイルス感染拡大前の水準まで回復し、機関車及び中短距離路線を中心とした旅客航空需要は今年後半~2023年にかけて新型コロナウイルス感染拡大前の同水準への回復を期待しています。宇宙領域では、宇宙空間を活用した事業機会や衛星データの地上産業向け利活用の拡大が見込まれます。

 

⑤化学品セグメント

2022年3月期は、化学品事業全体として、新型コロナウイルスからの力強い回復需要による好調な各種商品価格を主因に堅調に推移しました。ロシア・ウクライナ情勢によるサプライチェーンの更なる混乱、エネルギー・原料価格上昇もあり、事業を取り巻く環境変化には注視が必要ですが、引き続き、当社のグローバルに広がるネットワークを活かした素材の安定供給への期待は高まっていくものと見ています。

また、気候変動含むサステナビリティへの対応はより一層重要な社会課題となっており、サーキュラーエコノミーの確立やカーボンマネージメント実現に向けた具体的な取組の要請が高まっています。

ベーシックマテリアルズ領域では、各国・各企業がカーボンニュートラルに移行していく中、トレードフロー含む市場構造の一層の変化が予想されています。その1つの方向性として、化石燃料の需要が頭打ちとなる一方、ケミカル需要は引き続き伸長していくことが見込まれ、製油所が化学品製造にシフトする「Oil to Chemical」の動きがさらに加速化し、リサイクルやクリーンアンモニア等のニーズがより一層高まるものと見ています。

パフォーマンスマテリアルズ領域では、循環型・低炭素社会の実現に向けた環境配慮型事業への投資や取組みが加速すると共に、地政学的な変化に応じてサプライチェーン再構築の要請が高まると見ています。また、健康・生活の質の向上に対するニーズの拡大と多様化に着目しています。

農業化学やウェルネス・栄養科学の領域では、世界的な人口増加・経済成長に伴う食料増産ニーズ、中間所得者層の増加や健康意識の高まりに伴う食の高付加価値ニーズが増大し、市場は引き続き拡大することが見込まれます。また、デジタル化の進展や新型コロナウイルス感染症を奇貨とした生活様式の変化にも注目しています。エッセンシャルビジネスとしての食料、農業関連事業は、ロシア・ウクライナ情勢により一部原料や燃料コストの高騰といった影響が発生していますが、引き続き堅調に推移すると見ています。

⑥鉄鋼製品セグメント

温室効果ガス排出抑制を目的とした生産規制により中国での粗鋼生産は鈍化したものの、世界経済復調による力強い需要拡大により、2021年暦年の世界の粗鋼生産は前年比4%増の約20億トンとなり、鋼材市況は大きく改善しました。然しながら、半導体・部品不足による自動車生産の減少、ロシア・ウクライナ情勢に伴うサプライチェーンの混乱等、足元の事業環境の変化による鋼材需要への影響は注視が必要です。また、国内を中心に製鉄業再編が進展し、鋼材流通分野でも更なる業界再編が生じる可能性があります。

中長期的には、国内の鉄鋼市場は人口減少などにより縮小する一方で、アジアを牽引役として海外では鉄鋼需要は増加していく見通し、また地産地消化や脱炭素社会へ向けた動きが加速する中で、今後もさまざまなビジネスチャンスが期待できます。

 

⑦生活産業セグメント

食料領域では、世界的な人口増加を背景に食料需要が持続的に増加すると見込んでいます。新興国では、人口増・所得増により引き続きたんぱく質や嗜好品の消費拡大が見込まれます。先進国では、精神的な豊かさを重視した消費が加速し、健康志向の高まりから生じる機能性食材や食の安心など消費者の需要の多様化・高度化が進むと見ています。また気候変動による生産減少や生産適地の変化、新型コロナウイルス感染症・自然災害による物流混乱やサプライチェーンの分断等による食の安全保障・安定供給への危機意識も高まっています。

リテール領域では、国内市場は少子高齢化・人口減少の環境下、新型コロナウイルス感染拡大で冷え込んだ消費の回復には時間を要する見通しである一方、アジア・北米を中心とする海外市場は成長が見込まれます。また、新型コロナウイルス感染拡大を契機とする消費行動の変化やDX化の加速を受け、世界的にファッションや食を含むライフスタイル領域のEC市場が急拡大しています。消費者の価値観及び消費行動の多様化と共に、ESGへの意識の高まりから、将来の消費市場を牽引するY・Z世代を中心に「健康・環境・サステナビリティ」等の価値観を重視する傾向も強まっており、商品・サービスに求められる質や価値が大きく変化しています。

ウェルネス領域においては、アジア新興国の人口増加と成熟国の高齢化、経済発展に伴う慢性疾患の増加による疾病構造の変化に伴い、医療費支出の増加が継続しています。また、中間所得層の増加や新型コロナウイルス感染拡大を契機に、生活者のヘルスリテラシーは一層高まるとともに、治療から未病・予防、そして心身ともに健康な状態を志向する「ウェルネス」の拡がり等、行動様式や価値観が大きく変化しています。今後はヘルスケアデータやAI等デジタル技術の活用による更なる変革を通じ、患者に提供される医療の価値の最大化とコスト最適化を図る考え方への移行、未病・予防を含むウェルネス分野へのサービスの拡がりがより加速していくものと見ています。

 

⑧次世代・機能推進セグメント

ICT事業分野においては、IoT・AI・クラウドの普及、消費者サービスの変革など、社会のデジタル化によって多種多様なデータが生み出され、それを価値あるサービスに結び付ける取組みが求められています。また、新型コロナウイルスの影響によりライフスタイルや働き方が大きく変化する中、人々の非接触化による新たなサービスが生まれてくると共に、サイバーセキュリティリスクの高まりに対し、より高度な対策が求められています。

コーポレートディベロップメント分野においては、インフレ高進に伴う資金調達コスト上昇、足元の地政学、環境との調和に対する意識の高まりなどによる投資環境の変化の中で、株式市場、コモディティ市況、投資家ニーズの変化を適切に捉えた投資判断の重要性が増大しています。また、消費活動のEC化の加速に伴い、フルフィルメント機能の需要拡大が見込まれます。

 

(3)2023年3月期事業計画

中期経営計画の最終年度である2023年3月期は、基礎営業キャッシュ・フロー9,500億円、当期利益(親会社の所有者に帰属)8,000億円を計画します。これは、いずれも中期経営計画2023における最終年度の目標を上回るものです。「変革と成長」に向けた重点施策の推進を通じ、引き続き力強い収益力の実現を目指します。

 

①環境認識と事業計画への影響

世界経済の不確実性は高まっており、中でも地政学リスクの顕在化、サプライチェーン混乱、インフレ高進といった事業を取り巻く大きな環境変化は、当社にとりポジティブな影響と、ネガティブな影響の双方をもたらします。こうした環境下、危機管理対応と複数シナリオへの備えを強化します。また、時間軸・優先順位の機動的な見直し、供給・納入責任の着実な履行等の取組みを強化します。

 

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②2023年3月期重点施策

(a)収益基盤の強化継続

本中期経営計画期間より社内管理指標としてROIC(Return On Invested Capital)を導入しましたが、これをさらに活用し、成長性と収益性の2つの軸で事業ポートフォリオのあり姿とその実現に向けたプロセスを可視化することで、規律とメリハリのあるリソース配分をさらに進め、各事業の競争力強化と事業ポートフォリオの入替えを実行し、骨太な事業群形成を加速させます。

 

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また、顧客ニーズに基づく販路・サプライソース多角化といったトレーディング機能強化、事業会社における着実な経営改善を通じた損益分岐点の引下げ等の取組みが、直近の収益拡大につながりましたが、今後もこうした取組みを加速させ、強靭な事業ポートフォリオの形成を進めます。

 

(b)成長戦略の打ち手の着実な実行・Strategic Focus

引き続き、中期経営計画でStrategic Focusとして定めたエネルギーソリューション、ヘルスケア・ニュートリション、マーケット・アジアの各領域の取組みを進めていきます。厚みを増した良質なパイプライン案件を基に、Strategic Focus領域に加え、強いコア事業に隣接する収益機会もボルトオン投資等で確りと取り込むべく、成長投資の実行に取り組んでいきます。

 

(c)更なる成長実現に向けて~“D”s & “I”s~

不確実性の高い事業環境にある今こそ、環境変化に対応し、新たな潮流を捉え、先手を打つための取組みが必要であり、以下DとIで始まるKey Wordを標語として掲げ、社員一人ひとりが意識することで、当社の持続的な成長へとつなげていきます。

 

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(d)キャッシュ・フロー・アロケーションの最新見通し(中期経営計画3年間累計)

過去2年間の実績と2023年3月期の計画を踏まえて、中期経営計画3年間累計のキャッシュ・フロー・アロケーションをアップデートしました。

主に基礎営業キャッシュ・フローの増加を反映しキャッシュ・インは拡大する見込みであり、追加還元の継続的な実行とともに成長投資を進めます。

中期経営計画期間中、マネジメント・アロケーションとして2022年5月2日に公表済みの1,000億円を上限とする新たな自己株式取得を含め、既に3,400億円の自己株式取得への配分を決定しました。さらに、増配には1,000億円(中期経営計画3年間累計の配当総額につき、中期経営計画公表時点で見込んでいた4,000億円と、最新見通し5,000億円の差額)を配分し、成長投資には4,000億円以上配分することを見込みます。

引き続き、投資機会と事業環境を総合的に勘案し、成長投資と追加還元へ柔軟で戦略的な資金配分を実行します。

 

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(e)利益配分に関する基本方針

株主還元策については第4 提出会社の状況 3 配当政策をご参照ください。

 

(4)人材戦略(ダイバーシティ&インクルージョン)

①基本的な考え方

当社グループでは、多様なバックグラウンドを持つ人材がグローバルで活躍しています。

採用地や性別によらず、社員一人ひとりがお互いを認め合い、刺激を受け合いながら能力を最大限に発揮し、ビジネスに新たな価値をもたらすことを目指しており、特に以下の観点を重視し、ダイバーシティ経営を推進しています。

 

(1)多様性を力にする組織づくり

多様な個の「違い」を力に変える組織風土や働き方により、一人ひとりが活躍できる環境づくり

(2)多様な人材の活躍促進

採用地や性別等に関係なく、多様なバックグラウンドのプロ人材の活躍を推進している。特に、国内においては女性の活躍推進に注力する一方、女性活躍が相対的に進んでいる海外拠点では、それぞれの拠点で採用された人材の活躍推進に注力している

(3)弛まぬ「挑戦と創造」

「多様性を力に」を当社グローバルで共通のValuesのひとつとして、持続的な競争力の源泉と位置づけ、事業活動における先見性に繋げ、変革を生み続ける

 

②ダイバーシティ経営推進体制

当社では、ダイバーシティ経営の推進にあたり、経営会議の諮問委員会としてダイバーシティ推進委員会を設置しています。委員会は人事管掌役員(CHRO)を委員長とし、人事総務部長、経営企画部長に加え、委員長が別途指名する委員から構成されています。当連結会計年度は「別途指名する委員」として、海外現地法人役員(現地採用Executive Vice President)や事業本部長を含む5名(内、女性3名、外国籍1名)が指名され、計8名の多様なバックグラウンドを有するメンバーで推進しました。

 

当連結会計年度においてダイバーシティ委員会は、以下の通り3回開催され、各委員会の出席率は全て100%でした。委員会においては、当社における女性活躍推進、また、海外の現地法人・各拠点で採用された社員の活躍推進に向けた指標管理やアクションプランのモニタリングを行いました。また、「多様性を力にする組織」の実現に向けたMitsui Engagement Survey(当社及び当社グループ社員を対象としたEngagementに関するアンケート、以下「MES」)の結果概要を確認し、全社施策の討議を行いました。なお、MESの概要は「⑥社員エンゲージメント」をご参照ください。各委員会の議事録はイントラネットを通じて当社社員、並びに現地法人社員に広く公開しています。

 

(2022年3月期ダイバーシティ推進委員会概要)

 

日程

主要なテーマ

第1回

2021年6月16日

年間活動計画、各指標の確認、女性活躍推進(経営会議メンバーによるスポンサーシップ)

第2回

2021年11月19日

多様な人材(海外拠点の採用社員・本社に於ける女性社員)の活躍推進に向けた施策協議、改正育児・介護休業法の対応、D&I Week 2021総括

第3回

2022年2月8日

D&I推進に向けた委員による講演と討議、年間アクションプランと指標のモニタリング、Mitsui Engagement Survey結果確認

 

③女性の活躍推進

当社グループの使命である「挑戦と創造」を強化し、イノベーションを通じたビジネスの推進には多様性が不可欠です。さまざまな事業領域において多くの女性が活躍していますが、当社(単体)における女性社員の活躍推進をさらに加速する必要があります。この為、2025年3月期までに女性管理職比率10%を達成することを目標として掲げています。同目標を達成する中で管理職以上の女性の活躍を後押しすべく、2020年からWomen Leadership Initiativeプログラムを通じたライン長候補の育成を強化しています。加えて、2021年からは経営会議メンバーがスポンサーとなり1年間かけてシニアリーダー候補の女性社員に対しキャリアに関する助言や指導を行い、ストレッチアサイメント(一段目線の高いチャレンジとなる業務機会の提供)に繋げるSponsorship Programを実施しています。当連結会計年度に当社(単体)へ入社した担当職社員172名(新卒・キャリア採用合計)の内、女性は58名(33.7%)となります。

 

(当社(単体)における女性管理職数・比率推移)

 

2020年3月末

2021年3月末

2022年3月末

目標
(2025年3月末)

女性管理職数(名)

234

250

267

-

管理職比率(%)

7.0%

7.5%

8.0%

10.0%

 

2022年3月期の当社(単体)採用人員数)

 

男性(名)

女性(名)

女性比率

新卒入社

71

43

37.7%

キャリア入社

42

13

23.6%

配偶者転勤による再雇用入社

0

2

100%

キャリア入社(元当社社員)

1

0

-

 

114

58

33.7%

 

④男性社員による育児目的休暇の取得

2022年3月期は、当社(単体)における男性社員の育児休業等、育児目的休暇の取得率は54.3%となりました(前期比+8.7%)。

 

(男性社員による育児休業等、育児目的休暇の取得率)

 

2021年3月期

2022年3月期

男性育児休業取得者数(名)

82

102

取得比率(%)

45.6%

54.3%

 

⑤海外拠点における人材の活躍

各国、地域に根を深く張ったビジネスを展開していくため、当社グループの海外拠点(現地法人・支社支店・事務所)において人材の活躍推進に力を入れています。2018年より、変革を積極的に推し進める先導者を育成することを目的としたChange Leader Program(CLP)を実施しています。世界各国から選抜された社員が、経営幹部との対話やリーダーシップなどをテーマにした集中討議を行っています。新型コロナウイルス感染症の影響で2020年はオンラインでChange Leader Business Meetupを開催し、日本を含む世界各国の次世代リーダー候補が参加し、中期経営計画2023で定めたStrategic Focusをテーマにグループで討議し新規事業の提案を行いました。今後は、日本を含む他国拠点での勤務経験を提供し、グループでの適材適所の配置・活躍を加速していきます。また、三井物産人材開発(株)では、当社グループの海外拠点だけではなく、グループ各社で働く世界中の社員を対象とした教育・研修の企画運営の提供も行っています。

 

⑥多様なキャリアの提供

当社の多様なプロ人材が自らの強みを発揮し、その成果と貢献が適切に評価され、誰もが成長を実感しながら自ら果敢にキャリアを切り開くことにより、「個」の成長と会社の成長がつながる正のスパイラルを実現することを目指して中期経営計画期間において人事制度の一部を改定しました。具体的には、①事業経営者インセンティブプランや、関係会社の主要ポジションのサクセッションマネジメント(後継者育成)強化、②所定の任用・昇格要件や年齢に関わらず、適任者が上位ポジションでより大きな役割・職務にチャレンジできるキャリアチャレンジ制度、③従業員向け株式報酬制度が挙げられます。また、2023年3月期からは、複線型人事制度であるExpertバンドを導入し、従来のラインマネージャーを前提とした職群に加えて、高度な専門性を蓄えた人材のためのキャリアパスを備えることにしました。また、HR Strategy Meetingとして社長と人事管掌役員(CHRO)、人事総務部長、各事業本部長・コーポレート各部部長は、重要ポジションのサクセッション管理を議論するための会議をそれぞれ年に一回行っています。この会議では、バックグラウンドの多様な任用候補者(女性、海外拠点で採用された社員など)の活躍状況と育成方針が確認されています。

 

 

⑦社員エンゲージメント

社員一人ひとりの意欲を高め、組織としての力につなげていくことを企図し、2018年からMitsui Engagement Survey (MES)を実施しています。3回目となる2021年には当社(単体)・海外現地法人に加え国内外の主要な連結子会社22社が参加し、総勢約13,000名の社員による調査を実行しました。調査では「社員エンゲージメント」と「社員を活かす環境」の二軸が測定され、各現場に於いてよりよい組織づくりに向け活用されていると共に、「多様性を力に」する為の重要な経営データとして経営会議や取締役会にも報告し、人事戦略の策定に活用されています。なお、MES2021の結果は、「社員エンゲージメント」が71%(前年比+1%)、「社員を活かす環境」が69%(前年比横ばい)でした。

 

(5)サステナビリティ経営

①三井物産のマテリアリティ

当社は、サステナビリティを重視した経営を行っており、さまざまなステークホルダーの期待と信頼に応え、当社Missionに掲げている「世界中の未来をつくる」に貢献すべく、社会と当社が持続的に成長するための重要な経営課題として以下の通り、5つのマテリアリティを特定しています。

また、国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の17目標に取り組んでいくために、三井物産のマテリアリティとSDGsを関連付けて事業・活動を推進しています。各マテリアリティと組織ごとの具体的な方針、目標、取組み、進捗状況に関してはマテリアリティアクションプランとして整理のうえ、進捗を管理し、開示しています。

 

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0102010_012.png

 

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②気候変動への対応

当社は中期経営計画2023において気候変動をサステナビリティ経営における重点課題の一つとして特定しました。2050年の「あり姿」としてネットゼロエミッションを掲げ、その道筋として2030年に2020年3月期比でGHG(*)インパクト半減を目指しています。

GHGインパクトは、自社のGHG排出量から事業を通じて実現した削減貢献量を差し引いたものを指します。当社は、自社の排出量削減のみならず、事業活動を通じて社会全体の脱炭素化への移行に貢献することを重視しています。

2020年3月期のGHGインパクト34百万トンを、2030年3月期には17百万トンまで半減させるべく、排出削減及び削減貢献への取り組みを加速していきます。また、2050年のネットゼロエミッションは、当社排出量から吸収除去・オフセット量のみを差し引いて実質ゼロにすることを目指します。

(*)温室効果ガス(Greenhouse gas)

 

 

(GHG削減目標達成イメージ)

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(2030年GHGインパクト半減への道筋)

0102010_015.png

 

(GHG排出量推移※)   単位:千t-CO2e

 

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

Scope1+2

3,776

3,868

4,336

Scope3(投資)

-

32,000

35,000

※2021年3月期のGHG排出量におけるScope1及び2、一部のScope3については、サステナビリティレポートにおいて第三者保証を受けています。保証範囲の詳細については当社サステナビリティレポート2021
https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/sustainabilityreport/2021/pdf/ja_sustainability_2021.pdf#page=121)をご参照ください。2022年3月期のGHG排出量関連データについては2022年8月に公表を予定しています。

 

 

③TCFD提言に基づく情報開示

また、当社は2018年12月に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同しており、TCFD提言に沿って、一層積極的な情報開示を進めていくとともに、責任あるグローバル企業として国際的な目標であるパリ協定や日本の中長期的なGHG削減目標に寄与する目標を掲げ、気候変動への対応に取り組んでいきます。

TCFD提言に基づく情報開示の要旨は以下の通りです。詳細は、当社サステナビリティWebページ内「TCFD提言に基づく情報開示」(https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/environment/climate_change/pdf/ja_20220622tcfd.pdf)をご参照ください。

 

 

項目

当社方針や各種取組みの概要

ガバナンス

・経営上の重要課題である気候変動対応に関する基本方針や重要事項は、経営会議の下部組
 織であるサステナビリティ委員会での審議を経て、定期的に経営会議および取締役会に付
 議・報告されます。

・また、外部有識者から構成されるサステナビリティアドバイザリーボード(旧:環境・社
 会諮問委員会)を設置し、メンバーからの情報や助言をサステナビリティ委員会の審議に
 活用しています。

戦略

 

・当社では、短期、中期、長期の時間軸に分けて、最長2050年までのシナリオ分析を実施し
 ています。シナリオ分析に際しては、IEA(国際エネルギー機関)が発行するWorld Energy
 Outlook(WEO)に記載のあるシナリオ等を参照して、移行リスク・機会の分析を行ってい
 ます。

・事業規模と気候変動インパクト(GHG排出量または削減・吸収量)を勘案し、シナリオ分
 析の対象として、石油・ガス開発事業およびLNG事業、原料炭事業、火力発電事業、鉄鉱石
 事業、海洋油・ガス田生産設備事業、ガス配給事業、LNG船事業、再生可能エネルギー事
 業、次世代エネルギー事業、森林資源事業を優先度の高い事業としてシナリオ分析の対象
 事業に選定しています。

・シナリオ分析は2023年3月期連結業績予想策定を含む事業計画プロセスにおいて実施してお
 り、分析結果は事業ポートフォリオ戦略にも反映しています。

・一方、物理的リスクに関しては、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)に採用され
 ているRCP(代表的濃度経路)も参考にしつつ、一定額以上の投資性資産を有する事業に関
 して、過去5年間に発生した気候災害の状況を基に調査し、影響の分析を行いました。

リスク管理

・当社では、全社一元的にリスクを管理する統合リスク管理体制を構築しています。統合リ
 スク管理体制においては、事務局を務めるコーポレートスタッフ部門担当部署が全社的観
 点でリスクを統括します。

・気候変動によるリスク(物理的・移行)は、重要なリスクの中でも、事業投資に関わるリ
 スクやカントリーリスクに次ぐ重要度と位置づけ、対応策を講じています。詳細について
 は、第2 事業の状況 2. 事業等のリスクをご参照ください。

指標と目標

・当社では以下のとおり各種環境指標や目標を設定、モニタリングを継続して実施していま
 す。

 (1)親会社+連結子会社(含むUn-incorporated Joint Venture)のScope1+2およびScope3
    カテゴリー15(投資):2050年の「あり姿」としてのネットゼロエミッションを掲げ、
    その道筋として2030年に2020年3月期比GHGインパクト半減を目指す。

 (2)親会社+連結子会社(除くUn-incorporated Joint Venture)のScope1+2:2030年のGHG
    排出量を2020年3月期比半減させる。

 (3)発電事業における再生可能エネルギー比率:2030年までに30%超に引き上げる。

 

 

④人権とサプライチェーンに係る取組み

当社は、世界中の国や地域でグローバルに事業を展開していることから、国際基準に則った人権に対する配慮はサステナビリティ経営の基盤であると考えており、中期経営計画2023において、ビジネスと人権をサステナビリティ経営における重点課題の一つに特定しています。

サプライチェーン上の人権問題への取組みについては、人権デューデリジェンスを実施し、周知、特定、調査、開示・改善の4つのプロセスでPDCAを回すことで、当社の事業に直接関係する人権問題と環境問題の防止、そして解決を図っています。本年5月には当社方針、取組みの周知を目的としたサプライチェーンマネジメントハンドブックを作成、公開しました。

なお、新規事業参画や拡張、および事業撤退に際しては、ESGデューデリジェンスチェックリストを活用しESG影響評価を行っており、人権に関しては当該チェックリストに基づき、労働安全衛生や、開発事業における現地住民をはじめとする関係者の人権等について社内審査を行っています。

 

 

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(6)2023年3月期連結業績予想

①2023年3月期連結業績予想

 

[業績予想の前提条件]

予想

実績

期中平均米ドル為替レート

120.00

113.04

原油価格(JCC)

98ドル

77ドル

期ずれを考慮した当社連結決算に反映される原油価格

88ドル

68ドル

 

単位:億円

2023年3月期

業績予想

2022年3月期

実績

増減

増減要因

売上総利益

11,500

11,414

+86

 

販売費及び一般管理費

△6,600

△5,963

△637

新規子会社化

有価証券・固定資産

関係損益等

500

190

+310

資産リサイクル

利息収支

△750

△273

△477

金利上昇

受取配当金

1,350

1,965

△615

商品価格下落

持分法による投資損益

4,300

4,313

△13

 

法人所得税前利益

10,300

11,645

△1,345

 

法人所得税

△2,000

△2,268

+268

 

非支配持分

△300

△230

△70

 

当期利益

(親会社の所有者に帰属)

8,000

9,147

△1,147

 

 

 

 

 

 

減価償却費・無形資産等償却費

2,500

2,964

△464

 

 

 

 

 

 

基礎営業キャッシュ・フロー

9,500

11,587

△2,087

 

 

・為替レートは2022年3月期の113.04円/米ドル、83.33円/豪ドル及び21.44円/伯レアルに対し、2023年3月期はそれぞれ120円/米ドル、88円/豪ドル及び25円/伯レアルを想定します。また、2023年3月期の原油価格(JCC)を98米ドル/バレルと仮定し、期ずれを考慮した当社の連結決算に適用される原油価格の平均を88米ドル/バレル(2022年3月期比20米ドル/バレル上昇)と想定します。

 

オペレーティング・セグメント別での業績予想(当期利益(親会社の所有者に帰属))は以下のとおりです。

 

 

(単位:億円)

2023年3月期

業績予想

2022年3月期

実績

増減

増減要因

金属資源

3,300

4,976

△1,676

鉄鉱石価格・受取配当金

エネルギー

1,600

1,140

+460

原油・ガス価格

機械・インフラ

1,600

1,208

+392

前期損失反動、

プロジェクト稼働開始

化学品

700

689

+11

 

鉄鋼製品

200

269

△69

鋼材市況

生活産業

500

615

△115

前期利益反動

次世代・機能推進

400

576

△176

FVTPL益、

商品トレーディング

その他/調整・消去

△300

△326

+26

 

連結合計

8,000

9,147

△1,147

 

 

オペレーティング・セグメント別での基礎営業キャッシュ・フロー予想は以下のとおりです。

 

(単位:億円)

2023年3月期

業績予想

2022年3月期

実績

増減

増減要因

金属資源

3,700

5,528

△1,828

鉄鉱石価格・受取配当金

エネルギー

2,700

2,802

△102

受取配当金

機械・インフラ

1,300

1,440

△140

受取配当金

化学品

900

938

△38

 

鉄鋼製品

100

124

△24

 

生活産業

400

352

+48

 

次世代・機能推進

300

466

△166

FVTPL益、

商品トレーディング

その他/調整・消去

100

△63

+163

 

連結合計

9,500

11,587

△2,087

 

 

② 2023年3月期連結業績予想における前提条件

2023年3月期連結業績予想における商品市況及び為替の前提と価格及び為替変動による当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は以下のとおりです。

 

価格変動の2023年3月期

当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額

2023年3月期

前提

 

2022年3月期

実績

市況商品

原油/JCC

98

 

77

連結油価(*1)

22

億円(US$1/バレル)

88

 

68

米国ガス(*2)

10

億円(US$0.1/mmBtu)

4.89

 

3.72(*3)

鉄鉱石(*4)

22

億円(US$1/トン)

(*5)

 

153(*6)

石炭

原料炭

5

億円(US$1/トン)

(*5)

 

272(*7)

一般炭

1

億円(US$1/トン)

(*5)

 

110(*7)

銅(*8)

7

億円(US$100/トン)

9,150

 

9,315(*9)

為替(*10)

米ドル

46

億円(\1/米ドル)

120.00

 

113.04

豪ドル

25

億円(\1/豪ドル)

88.00

 

83.33

伯レアル

3

億円(\1/伯レアル)

25.00

 

21.44

 

(*1) 原油価格は0~6ヶ月遅れで当社連結業績に反映されるため、この期ずれを考慮した連結業績に反映される原油価格を連結油価として推計している。2023年3月期には約35%が4~6ヵ月遅れで、約60%が1~3ヵ月遅れで、約5%が遅れ無しで反映されると想定される。上記感応度は、連結油価に対する年間インパクト。

(*2) 当社が米国で取り扱う天然ガスはその多くがHenry Hub(HH)に連動しない為、上記感応度はHH価格の変動に対するものではなく、加重平均ガス販売価格に対するインパクト。

(*3) 米国ガスの2022年3月期実績欄には、2021年1月~12月のNYMEXにて取引されるHenry Hub Natural Gas Futuresの直近限月終値のdaily平均値を記載。

(*4) Valeからの受取配当金に対する影響は含まない。

(*5) 鉄鉱石・石炭の前提価格は非開示。

(*6) 鉄鉱石の2022年3月期実績欄には、2021年4月~2022年3月の複数業界紙によるスポット価格指標Fe 62% CFR North Chinaのdaily平均値(参考値)を記載。

(*7) 石炭の2022年3月期実績欄には、対日代表銘柄石炭価格(US$/MT)の四半期価格の平均値を記載。

(*8) 銅価格は3ヶ月遅れで当社連結業績に反映される為、上記感応度は2022年3月~12月のLME cash settlement price平均価格がUS$100/トン変動した場合に対するインパクト。

(*9) 銅の2022年3月期実績欄には、2021年1月~12月のLME cash settlement priceのmonthly averageの平均値を記載。

(*10)上記感応度は、各国所在の関係会社が報告する機能通貨建て当期利益に対するインパクト及び一部海外出資先からの受取配当金の影響。円安は機能通貨建て当期利益の円貨換算を通じて増益要因となる。関係会社における販売契約上の通貨である米ドルと機能通貨の豪ドル・伯レアルの為替変動、及び為替ヘッジによる影響を含まない。

 

注) 経営成績に対する外国為替相場の影響について

2021年3月期及び2022年3月期の海外の連結子会社及び持分法適用会社の当期利益(親会社の所有者に帰属)の合計はそれぞれ3,384億円及び7,505億円です。これらの海外所在の連結子会社及び持分法適用会社の機能通貨は、主として米ドル、豪ドル、伯レアルです。2023年3月期連結業績予想の当期利益(親会社の所有者に帰属)に対する為替変動の影響について、当社は簡便的な推定を行っています。

(a)具体的には、業績予想策定の過程で、海外関係会社の予想当期利益(親会社の所有者に帰属)を各社の機能通貨別に集計し、まず豪ドル、伯レアル建ての予想当期利益(親会社の所有者に帰属)の合計額を算出するほか、両通貨以外の機能通貨を使用する関係会社の予想当期利益(親会社の所有者に帰属)を全て米ドル相当額に換算しました。これら3つの通貨別に表示された海外関係会社の予想当期利益(親会社の所有者に帰属)に一部の海外出資先からの通貨別の配当金を合計した金額に対して為替変動の影響を評価しました。これによれば米ドルに対する円高は、1円当たり46億円程度の当期利益(親会社の所有者に帰属)の減少をもたらすと試算されます。また、豪ドル及び伯レアルに対する円高の影響は、1豪ドル及び1伯レアル当たりでそれぞれ1円の円高で25億円及び3億円の減益となります。

(b)なお、豪ドルを機能通貨とする資源・エネルギー関連生産会社の当期利益(親会社の所有者に帰属)は、両通貨と契約上の建値通貨である米ドルとの間での為替変動の影響を大きく受けます。この影響額は、(a)に述べた3つの通貨毎の当期利益(親会社の所有者に帰属)合計の円相当評価による感応度と別に勘案する必要があります。

(c)但し、資源・エネルギー関連生産会社などでは、一部において、販売契約の契約通貨である米ドルと機能通貨の為替ヘッジを行っているほか、外貨建の当期利益(親会社の所有者に帰属)の円貨相当評価に係る為替ヘッジを行っている場合があります。これらの影響額についても、(a)に述べた3つの通貨毎の当期利益(親会社の所有者に帰属)合計の円相当評価による感応度と別に勘案する必要があります。

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